悪 夢  
 
白龍の逆鱗を得て自分だけ元の世界に戻った日。あのとき私は運命を変えようと思った。  
大切な人を助けようとした。そして運命は変わって、私の側に大切な人が眠っている。  
 
なのにどうして悪夢は繰り返すんだろう。運命を上書きした代償なのか。  
あの人を助けた後でも、私の中からあの日の悲しみは、苦しみは消えない。  
幸せな日々を送っていてもそれは時々顔を出す。  
 
「どうしたんですか?また夢を見たんですか?」  
「ゆ、ず、る、・・」  
 
視力がないからうんと顔を近づけてくる。お互いの息が聞こえるくらいまで。  
困った顔でほおにたまった涙をぬぐう。その息遣いが、暖かい指の感触が、少し上気した  
顔が嬉しくてまた涙が出る。  
 
「これじゃいつまでたっても眠れませんね」  
「ごめんね・・またあの夢を見ちゃって・・」  
「ちゃんと俺はここにいます。なのにまだ泣くんですか?」  
「ごめん・・」  
 
焦れた顔で譲は唇を重ねてくる。  
 
「本当に・・しょうのない人だな」  
「ちょっと・・」  
「まだ涙を止めるには足らないですね・・」  
 
唇をこじ開けて舌を絡めあう。喉の奥まで犯していくような感覚に意識がぼやけてくる。  
いつのまにか背中に手を回して倒れこんだ。誘っているつもりはないのに。  
 
「ふあっ・・・あ・・・」唇が離れると同時に必死で息を吸い込む。その隙に譲は両手でぐいとパジャマの襟を広げた。  
ボタンが飛んだのも気にせず、あらわになった胸をわしづかみにする。  
慣れた体は痛みも快楽に感じてしまう。一際高く上がる甘い声に譲の理性も吹き飛んだ。  
 
「夢が怖いなら・・夢を見ないくらい深く眠れば・・いい・・」  
「ひいいっ・・ゆずる・・」  
「確かめてくださいよ・・先輩・・俺が生きてるかどうかって・・」  
堅くとがった先端を口に含み、片方は指で強めにこすってやると望美は頭を  
左右に振った。  
飛び跳ねる体を押さえつけ、のしかかる。  
ぼやけた視界でも望美の体の輪郭はわかる。指先で、唇で望美の体を覚えこんだ。  
声の調子、体の動きでどれほど感じているかもわかるほど、寝ている。  
 
「ああ・・こんなに堅い・・感じてるんだ」  
「やああっ・・あああ・・」  
 
もう片方の手でパジャマを引き下げ、下着の横から秘所を撫でる。濡れた布を寄せて、  
熱くなった場所に指を突き立てた。体が跳ねる。  
 
「駄目ですよ、逃がしません」  
「もう許してえ・・・あああん・・」  
 
性急な愛撫に望美はどんどん追い詰められる。複数の刺激にもう限界が近い。  
哀願の声も涙も譲を駆り立てるばかり。  
指がさらに増やされ、望美の中をかき回す。ぐちゃぐちゃと音が高くなり、  
望美は悶えて泣いた。  
 
「これでも俺が死んでるって言えるんですか?」  
「いやああ・・・ああ・・あああーーーー」  
 
パジャマを半端に脱がされたままで望美は意識を飛ばした。  
ひくひくと震える体から指を引き抜くと飛沫が飛んだ。譲は指をなめると望美の  
パジャマを全部脱がしていった。下着も全部ベッドの側に投げる。  
 
「俺を感じてください・・夢なんて忘れたらいい・・」  
「ゆずる・・あああ・・・」  
 
脱力した両足を肩にかけると譲は十分濡れた処に自身を宛がう。少し腰を浮かして  
思い切り体重をかけた。  
 
暗闇の中水音と悲鳴が交差する。体の奥まで抉られ、揺らされて。互いの名前を  
呼びながら上り詰めていった。  
やがて一際高い声があがり、動きが止まった。  
 
 
譲は望の横に倒れこんだ。ずるりと譲のものが出て行くと白いものが溢れた。  
荒い息をつきながら譲は望美の顔に目を向ける。  
急速な眠気に襲われながら、見た顔はいつもの望美に戻っていた。  
涙の跡は自分が性急に求めたから。  
 
「また泣かせてしまったんですね・・すいません・・謝るのは明日にします・・先輩」  
 
満足げに笑みを浮かべて譲も目を閉じた。  
 
次の日、腰が痛いとさんざん望美に文句を言われたのはまた別の話。  
 
 

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