知盛とやっと再会できた望美は、心配をかけた景時や朔に報告するため  
京の梶原邸に戻ることにした。護衛のため一緒にいた譲は、望美の様子  
から再会できたことに気づいていた。譲にも望美への想いを断ち切る  
ときが来たようだった。  
数日後、望美は梶原邸であてがわれていた部屋をきれいに掃除していた。  
今までの恩を返すように丁寧に床をみがく。望美は、掃除をし終えると  
感慨深く部屋を見渡していた。  
「先輩…、明日発つんですね。」  
「うん、今まで本当にありがとう…譲くんがいてくれて良かった。」  
困ったように照れながら微笑む譲に、望美は本当の幸せを掴んでほしい  
と心から思っていた。  
「俺も明日、神泉苑から元の世界に帰ります。兄さんの行方が気にかかるけれど…。」  
「…そうだね…でも、将臣くんのことだから。譲くんあの…私の両親に会ったら…。」  
「元気だと、伝えますね。」  
望美と譲のお別れの宴が終わって皆が眠りについた頃、望美はひとり寝付けずにいた。  
新たな人生の始まりに不安と期待が入り混じり、頭が冴えてくる。なんだかやっと自分  
の幸せについて考えられる…。最初にこの世界に来た時は、白龍の力を強めて元の  
世界に帰る事が目的だったのに…。いつのまにか心配してるはずの家族よりも、  
心惹かれた相手との幸せを優先していた。なんて親不幸なんだろう…そんなことを  
考えながら望美は眠りに落ちていった.  
 
京を発つ日、望美は梶原邸の表玄関でお世話になったこの屋敷に心のなかで礼を  
いっていた。海辺の小屋まで護衛してもらう景時の部下を待っていると、朔がちいさい  
黒龍を抱きながら話しかけてくた。  
「望美、元気でね…幸せになるのよ。」  
「うん…必ず会いにくるよ。」  
互いに瞳を潤ませながら手を取り合っていると、屋敷の人たちに混じって景時と譲が  
見送りにやってきた。  
「望美ちゃん…、俺たち君には本当に感謝してるんだよ…絶対に忘れないから。」  
「兄上、もう二度と望美に会えないわけじゃないんですよ。」  
譲はなにも言わずにただ黙って微笑んでいた。望美は馬にまたがり、景時の部下の  
背に捕まると皆に笑顔を向けて去っていった。見えなくなるまで振り返りながら。  
 
海辺の小屋に到着したのは、もう日が暮れてからだった。小屋の窓には灯りが  
点いていて、そばには馬がつながれている。確かに生活の匂いがする。望美は  
小屋の近くまで送ってもらうと、景時の部下が去っていくのを見届けた。  
以前と変わらぬ潮騒の音…。初めてここへ来たのは、随分まえのことのように  
思える。知盛を助けるつもりが逆に助けられてここで一夜を共にして、そして  
ようやく再会して…。よく考えると、互いを知る前に体を重ねていたようだ。  
戦乱のなか刀を合わせたのも数えるほどで、会話なんてないに等しい。  
なんだか望美はすごく大胆なことをしてしまったんではないかと、今更思えて  
顔が赤くなってくる。小屋の戸を開けるのも、緊張で手が震えてくる。なんとか  
平常心を保って戸を開けると、のんびりと知盛が床に座ってお酒を飲んでいる  
ところだった。  
「よう…。」  
「ひ、久しぶりだね。」  
緊張で声がうわずってしまった望美は、真っ赤になりながらも知盛と向かい  
あって座る。ふたりで生活するためにここへ来たはずの望美は、知盛の顔も  
まともにみれずにただ座っている。そんな望美の様子を、知盛は楽しそうに  
眺めていた。少し緊張も解けてくると、以前と小屋の様子が変わっている  
ように思える。  
「あれ?小屋の隙間が塞がれてるよ…。もしかして、知盛が…。」  
「ああ…。」  
こんな生活感溢れる知盛を望美は想像できなかった。小屋を修理する姿  
なんて想像できなくて、思わず望美は声をあげて笑ってしまった。  
知盛は少し怪訝な顔で望美を見ると、小さく笑ってから言った。  
「失礼な奴だな…。」  
「あはは、笑ってごめんね。」  
謝りながらも笑いを止められずにいる望美のそばまで来た知盛は、望美の  
長い髪をかけながら顔を近づけて耳たぶを舐めあげた。  
「やぁ…ん。」  
切なそうに眉根をよせて、声をあげる望美の顔をのぞきこむと知盛は唐突に  
言った。  
「将臣に会いたくないか…。」  
 
知盛の話によると最後の戦いで望美たちを足止めしてる間に、将臣は平家  
のものたちと南方の島に逃げ延びる計画を立てていたそうだ。  
あの時源氏はまんまとその作戦に踊らされて、取り逃がしたから将臣率いる  
平家の生き残りは南の島のどこかにいるはずだと知盛は話してくれた。  
もちろん幼馴染に会いたい望美は、船を貸してもらうため熊野別当である  
ヒノエに頼みにいったりで慌しく時は過ぎていった。  
船のうえで望美は、知盛の顔をみたヒノエは驚いていたななどと考えていると、  
遠くに島がみえてきた。最後のひとつ…。ここにもいないとなると、もう  
消息はつかめない。不安と期待が入り混じった気持ちのなか、望美は上陸の  
準備をしている船員の様子を遠巻きに眺める島民の先頭にたつ人物に気づく。  
「将臣がいるぜ…。」  
知盛は将臣の姿を確認すると、望美を残してさっさと船をおりてしまった。  
上陸の準備が整うと、急いで将臣のもとに向かった望美。  
将臣は知盛と楽しそうに語らっていたが、望美の姿をみると目を見開いて  
驚いていた。知盛と望美を交互にみて呟いた。  
「お前っ、帰ったんじゃないのかよ?なんで、お前ら…。」  
「いろいろあって…ね。それより将臣くん、私も言いたいことあるんだけど!」  
知盛は、幼馴染であるふたりのやり取りをただ呆れ顔で眺めていた。  
 
その夜、ささやかだが知盛と望美の歓迎の宴が開かれた。望美は船旅の  
疲れと少しの疎外感から、先に部屋にて休むことにした。望美が出て行くのを  
見計らって、将臣は知盛に尋ねた。  
「お前は…生き残る側…を選択したわけだ。」  
「どうだろうな…俺はあの女に助けられたようなもんさ…。後から海に飛び込んで  
 こなかったら、こうして生きてお前と会うこともなかったからな。」  
将臣は知盛の望美に感謝しているような口ぶりに、複雑な思いを抱いていた。  
自分の知っている知盛は、生か死かぎりぎりのところでしか喜びを見出せない…  
そんな男だったはずだ。知盛を変えたのは…。  
 
そんな会話が交わされているとは知らずに、望美は早めに床についていた。  
なんだか目が冴えてしまって眠れずにいた望美の耳に、誰かの足音が近づいて  
くるのが聞こえた。部屋の戸を開けて廊下をのぞきこむと、知盛が機嫌よく  
望美に向かって歩いてきた。強引に望美の部屋に入り、後ろ手に戸を閉めると  
知盛は望美の両腕をつかんだ。  
「と、知盛…酔っ払ってるの?」  
「………。」  
そのまま、望美を押し倒すと知盛は首筋に唇をつけ吸い上げた。  
「きゃっ…だ、だめだよっ!」  
「…いい…だろう…?」  
ここには客として来ているのにそんなことはできないと考えて、望美は体を  
よじって抵抗した。しかし、知盛は望美の頭上で両腕を拘束する。  
知盛はもう片方の手で望美の寝巻きの上から、ふくよかな胸を乱暴に弄った。  
手の中で望美の胸の突起がみるみる硬くなっていくのを感じる。  
「あぁっ。」  
「お前も感じてるんじゃないか…。」  
望美の寝巻きの間に手を入れて下着を脱がせた知盛は、望美の膝を足で割り  
その間に体を滑り込ませた。望美の太ももから手を這わせて、泉に指を突き  
立てる。いきなりのことにピクッと体を震わせる望美。  
「んっ…やぁ…ああ。」  
もうすでに望美の泉からは蜜があふれ出していた。知盛の指が抽出される  
たびにくちゃくちゃという水音が望美の耳に届く。  
知盛は望美の寝巻きの袷を肌蹴させると胸の突起を吸い上げ、もう片方の胸の  
突起を指でこねはじめる。望美の最奥にいつもよりも大きな疼きが灯りはじめた。  
いつもより乱暴な知盛の愛撫にだんだんと追い詰められる望美。  
「ひゃっ…あぁん…もぅ…だめぇ。」  
大きく体を捩って達した望美の泉から知盛は指を引き抜くと、今度は自身の  
熱いたかまりを泉にあてがい一気に貫いた。  
 
同じ時刻、知盛が部屋を出た後もひとり酒を飲んでいた将臣はフラフラした  
足取りで自室にむかうため廊下を歩いていた。暗い廊下を少し歩くと、望美に  
割り当てた部屋の戸の隙間から光がもれているのに気づいた将臣。  
灯りを消し忘れたのだろうと、将臣は部屋のなかを覗き込んで絶句した。  
蝋燭の灯が揺らめくなかで、知盛が望美に覆いかぶさって激しく腰を打ちつけ  
そのたびに望美の背が魚のようにしなる。幼い頃からずっと一緒だった望美が、  
乱世で将臣とともに仲間として戦った知盛に貫かれ喘いでいる。  
知盛と望美の痴態に将臣の酔いはすっかり醒めてしまって、金縛りのように  
その場に立ちすくんでいた。  
―ふたり揃ってこの島に来たときに、分かっていたはずだった―  
あの病的なほど戦だけに執着していた知盛を、落ち延びて生きるのは退屈だと  
言い切っていた知盛を現世に留めたのは望美しかいない。  
「ああ―――っ。」  
限界が近づいた望美の喘ぎ声に将臣はハッと我に返った。そして小さく頭を  
ふると自室へ向かって足を速めた。灯りも点さず、真っ暗な部屋の真ん中に  
将臣は座るとひとり呟いた。  
「なんで…、よりによってあの男なんだよ!」  
 
次の日、知盛は昨日ゆっくり話せなかった尼御前と安徳帝のところへ出かけて  
いったので将臣はやっと望美とふたりで話す時間を手に入れた。  
小さな島を案内すると、望美は目を輝かせて喜んでいた。こうして、ふたりで  
いると元の世界に戻ったようだった。  
砂浜までやってくると、望美は履物を脱いで海の中に足を浸ける。邪魔になった  
のか、着物の裾を捲り上げて一箇所にしばりながら…。  
「将臣くん!気持ちいいよ〜。」  
望美は両手で海水をすくって、将臣にかけはじめる。望美の白い肢体に目を  
奪われていた将臣は、避けそこねて思いっきり水をかぶってしまった。  
「あ〜あ、濡れたついでだ。あの島まで競争しないか?」  
将臣は、近くに見える小さな島を指差しながら言った。  
 
「いいよ!負けないからね。」  
負けず嫌いな望美は、将臣の挑発にまんまと乗ってきた。後先考えず、着物の  
まま泳ぎはじめた望美の後を将臣は追いかける。子供のように無邪気に振舞う  
望美に、昨日のことは悪い夢じゃないかと思えてくる。しかし、望美の首筋に  
赤い花がついているのが見えて将臣は現実を突きつけられる。  
「一等賞っ!やったね。」  
望美は笑顔で将臣の方を向こうとした時、いきなり後ろから抱きしめられる。  
「望美…。」  
突然のことに固まってしまっている望美の首筋に唇を這わせ始める将臣。  
その感触に身を震わせて、将臣を振り払おうと前を向いた望美。将臣は強引に  
望美の肩を掴んで浜辺へ押し倒すと、濡れた着物を一気に剥いだ。  
「お願い、やめて!」  
「そういわれて…素直にやめるとでも思ってんのかよ。」  
低く冷たい声で言い放つ将臣に、望美は背筋が寒くなるのを感じた。それでも  
力いっぱい身を捩って、抵抗してみるが将臣に軽々と押さえ込まれてしまう。  
将臣は荒々しく望美の唇を塞ぐと、舌を強引に吸い上げ始めた。同時にふくよかな  
胸を揉みしだき、胸の頂にある突起を指でこねあげる。小刻みに震えて将臣の  
愛撫に身を任せ始める望美。将臣を押しのけようとする手に力が入らない。  
望美の下腹部をつたって、泉に手を触れる将臣。泉の入り口に指を差し入れると、  
とろりと蜜が溢れ出る。  
将臣は早く望美を味わいたくて膝の裏に手を置き左右に押し開くと、一気に貫いた。  
「ひゃっ!」  
前戯もろくにされないまま貫かれた望美は、痛さのため浜辺の砂を握り締めた。  
将臣はただただ自分の欲望のためだけに腰を打ちつけ続ける。やがて、じんわりと  
望美のなかに甘い疼きが灯り始めた。  
「やぁぁ…知盛じゃ…なきゃ…あぁ―!」  
望美が知盛の名を口走ったことで、ますます将臣の行為は荒々しくなっていく。  
何度も何度も望美を味わって、印を刻み込む。やっと満足したのか将臣は自身を  
望美から引き抜くと、望美の泉から熱い欲望がドロリと流れ出た。将臣が身支度を  
整えるのをぼんやりと眺める望美。無理やりとはいえ知盛を裏切った…。望美は  
涙を零しながら睨み付けると、将臣の頬を引っ叩いた。  
 
「なんで?なんでよ!」  
「ここまでされて、まだ分かんねぇのかよ!」  
将臣と望美の間に冷たい空気が流れる。望美はのろのろと濡れた着物を再び身に着けた。  
幸せを手に入れたはずなのに、こんなことになるなんて…。  
「将臣殿、そこにおいでになられるのですか?」  
浜辺から尼御前の声が聞こえる。将臣は動揺する望美を尻目に、至って冷静に答えた。  
「ご心配をおかけしてすみません。今戻りますよ。」  
対岸では、知盛も尼御前に寄り添うように立っていた。将臣は知盛をみつけると挑戦的に  
笑いかける。知盛は将臣を怪訝な顔で見つめ返していた。  
 
あれから望美は、努めて普段と同じように将臣と接していた。知盛を裏切った事実は望美を  
心底苦しめたが、あれは事故なのだと自分に言い聞かせていた。ふたりを避けるように、  
尼御前や安徳帝のもとへ通う望美。京に来たばかりの頃、たった一度だけ会ったふたりだが  
安徳帝は望美に懐いてくれたし、尼御前は生きて知盛と再び出逢えたことを感謝してくれた。  
源氏の神子と呼ばれて平家の敵であった望美を、知盛の妻として迎え入れてくれた。  
これからは、知盛だけをみつめて生きていける…望美はそう思っていた。  
 
その頃将臣はひとり、納屋のなかで仕事道具を整理していた。感情にまかせて望美を抱いた  
ことに、将臣は後悔などしていなかった。  
「還内府殿は…ひとの女に手をだすのがご趣味のようだな…。  
望美の様子に、 俺が気づかないとでも思ったのか…?」  
いつのまにか納屋の戸口に立っていた知盛に、そう言われても将臣は振り向きもせず黙々と  
作業を続けていた。  
「俺は認めない…望美がお前のものだなんて。」  
将臣は唐突に振り向くと、剣を知盛に向かって投げ渡した。反射的に受け取った知盛は、将臣の  
意図をすぐに感じ取った。  
「譲や他の八葉だったらともかく、なんでお前なんだよ!」  
将臣は吐き捨てるように言い放つと、自分も手にしていた剣を知盛に向かって抜いていた。  
暗く冷たい瞳で知盛を睨みつけながら。  
「…以前、俺が味方で残念だと言ったよな?今から望美を賭けて戦おうぜ。いいよな?」  
「クッ、いいぜ…受けて立ってやる…。」  
 
波の音だけが穏やかに流れてくる屋敷のなかに、いきなり外の喧騒が飛び込んできた。  
安徳帝と遊んでいた望美は、いやな胸騒ぎを感じて屋敷の外へと飛び出してゆく。  
尼御前も安徳帝も、望美に続いて外へ出る。  
「知盛!将臣くん!ふたりとも何しているの!」  
望美の目に映ったものは知盛と将臣が浜辺で互いに向き合って、剣を突き合わせている姿だった。  
島民たちは源平の争いのなか平家が落ち延びるために戦ってきてくれた将たちが、剣を交える姿に  
震え上がっていた。  
「お前を賭けて戦ってんだよっ!」  
将臣がそう叫ぶと、周りの島民たちの目が望美に集まる。尼御前も望美に目を向けるが、やがて  
険しい表情でふたりに再び視線を戻した。剣がぶつかり合う音が響く。知盛も将臣も互いに全力で  
ぶつかっている。望美は唇を噛み締めると、ふたりの前に駆け出していった。  
「いい加減にして!」  
誰かの影が目の前に飛び込んできたことで、ふたりの剣が止まった。知盛を背にして、望美は将臣と  
向かい合う。身を挺して知盛をかばった望美をみて、ため息をついてから剣を収めた。知盛もそれを  
みて、同じように剣を収めた。ふたりが剣を収めたことで、島民の間にも安堵の表情が見て取れる。  
望美は将臣を睨みつけると、思いっきり頬を叩く。そして、知盛の頬も引っ叩いた。  
「私はものじゃない!勝手に賭けたりしないで。…もう、誰にも死んで欲しくないのに…  
 戦いなんて大嫌いだよ。」  
泣き出した望美の肩を抱く知盛をみて、将臣は自称気味に笑った。自分のほうが長い時間を望美と  
過ごしてきたっていうのに、たった数回剣を合わせただけの知盛に掻っ攫われた事実をようやく  
受け入れられる…。  
「勝負あったな…さっさと行けよ…。」  
 
再び、望美と知盛はあの海辺の小屋に戻るため船の上にいる。ひたすら続く青い海を眺めていた知盛に、  
望美は話しかけてきた。  
「知盛…あのね、私…。」  
「…何も言うな…。」  
望美を自分の胸に引き寄せながら、知盛はそう言った。望美は知盛の胸に抱かれながら、ようやく  
始まるふたりの生活に想いをはせる。異世界でたぐり寄せた糸が切れないように願いながら…。  
 
【完】  
 
 

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