平家が西へ逃げたことにより源氏が勝利し、表向き平和になった異世界で  
相変わらず望美は梶原低にお世話になっていた。  
応龍も復活し神子としての束縛も解けて、元の世界に帰れたはずなのに  
京に留まる理由は唯ひとつ…。海辺の小屋で過ごした一夜のあと、知盛  
の行方が分からなくなったからだった。  
あれは自分の願望が幻になって現れた…ただの夢?それにしては、知盛の  
温もりをいまだに体は覚えてる。  
望美はあてがわれた部屋から庭を眺めてそんなことを考えていた。  
ふと庭の隅では景時が洗濯物を干しながら鼻歌を歌っているし、朔は新しく  
生じた小さな黒龍と遊んでいる。皆が幸せを噛み締めてるのに。  
「先輩、朝食の用意が出来ましたよ。」  
「うん、すぐ行くよ。」  
気を使って庭の方から譲は声をかけてきた。こんな調子で譲にも心配を  
かけさせ、結果的にこの京に留まらせてしまった…。  
 
「譲くん、今日もあの場所までついてきてほしいの。」  
「…それで先輩の気がすむなら、いいですよ。」  
朝食が終わったあと、望美はこっそりと譲に護衛を頼んでいた。一度、  
護衛もつけずに梶原邸を抜け出したことがあり、この時ばかりは景時にも  
朔にもこっぴどく叱られた経験から譲に頼むことにしたのだった。  
「望美、気をつけてね。…それとみつかるといいわね。」  
「朔、ありがとう…。」  
望美がそう答えると、譲は寂しそうに微笑んだ。  
朔が黒龍を抱っこして、手を振って見送ってくれている。景時は複雑な  
表情を顔に浮かべてふたりを送り出した。馬にのったふたりの背中が  
遠ざかっていくのを見送ると景時が口を開いた。  
「譲くんも気の毒にね…。」  
 
この世界に車などの交通機関がないことを、望美はこれほど恨んだこと  
はない。元の世界なら楽につける距離でも、馬の足ではたかがしれている。  
動物なので休ませなければならないし、のっている人間の方もくたびれて  
くる。馬をつなぎ、休憩にはいると望美は譲のそばに座った。  
「譲くんには迷惑かけっぱなしだね。本当にごめんね…。」  
「…先輩、いつまでこんなこと続けるつもりですか?あの場所に何度足を  
 運んでも、結果はいつも同じなのに…。」  
譲が暗い瞳で望美に語りかける。望美は立ち上がり、譲に背を向けると  
言葉を続けた。  
「…ごめん…。譲くんに対して残酷なことしてるって分かってるのにっ。  
 でも、もしかしたらって思ってしまうの。」  
譲はそんな望美の様子にため息をついた。昔から、変なところで頑固だった  
望美に説得は通用しないと自らを諭すように。  
譲は馬の手綱を握ると、望美に言った。  
「先輩、急ぎましょう。」  
「うんっ。」  
譲は望美が自分の背に捕まるのを確認すると、急いで馬を走らせた。  
 
海辺の小屋に着いたのは、もう随分と日が暮れてからのことだった。譲は  
いつものように少し離れたところに馬をつなぐと、望美を見送る。  
いつもと変わらぬ潮騒の音だけが、望美の耳に響く。何度この場所に来ては、  
肩を落として帰ったのだろう…。  
望美は海辺の小屋の戸を開くと、誰もいないことにまた落胆する。  
何度もきては、囲炉裏に炭をいれて火が消えていくのを眺める…それがこの  
場所を訪れたときの望美の行動だった。  
今日もまた望美は囲炉裏に座り込むと、パチパチと炭が燃えるのを眺めている。  
すると、遠くで何かが倒れるような音が望美の耳に届いた。  
「譲くんっ!」  
望美は窓を開け、譲の姿を確認しようと身を乗り出し叫んでいた。  
同時に、望美の背後の戸が勢い良く開くと何者かがなかに駆け込んできた。  
 
物音に驚いて振り向いた望美は、入ってきた男にいきなり肩を掴まれて床に  
押し倒される。必死にもがく望美の膝を足で割り、望美の着物の袷に手をかける。  
「へへっ、いい女じゃねぇか。あんな坊主ひとりの護衛じゃ…こうなるぜ。」  
「いやぁっ!」  
望美の白い肩があらわになり素肌が男に触れられそうになってもう駄目だと  
思った時、いきなり男の体が遠ざかっていくのを感じた。  
怖くて何がなんだか分からなくて、ひたすら目を閉じて自らの肩をだき震える  
望美。荒々しく戸が開く音と、争うような音…。辺りが静寂に包まれると、  
望美は恐る恐る目を開ける。  
ギッと再び戸が軋む音が望美の耳に届いた。望美は戸のほうに顔を向けると  
そこには銀髪で長身の青年が立っていた。  
「知…盛…。」  
「…あの坊やなら安全なところに寝かせておいたぜ。」  
望美の前に立っているのは、間違いなく知盛だった。源氏と戦っていた時の  
鎧ははずされ、ただの武士が身につけるような衣装だった。  
「お前も…あきらめの悪い女だな…。」  
あんなに待ち焦がれていた再会のはずなのに、望美の危機に都合よく現れた  
知盛に望美は疑問を抱いていた。しかし、今の知盛の言葉で疑問は解けた。  
「ずっと、後をつけてたの?私が…私が何度もここに足を運んでるのをみて  
 笑ってたの?」  
溢れ出す感情を押さえきれずに口をしてしまった言葉。望美はばつが悪そうに  
知盛から目をそらした。  
戦乱の時代に幾度か剣を交わしただけの知盛…海に飛び込み、この小屋で  
ただ一度体をあわせただけだが、そんな男じゃないことだけは分かる…。  
気がつくと、望美のうえに暗い影が落ちていた。いつのまにか、望美のそばまで  
来ていた知盛は自称気味に笑うと望美を抱きしめた。  
「…源氏のやつらが話しているのを聞いた…。…早く…早く元の世界に帰れと  
 そればかり思っていた…。」  
「どうして…?」  
 
他に探すところがなくて、ここに足を運びことしか出来なかった望美に対して  
知盛の言葉が冷たく響いた気がした。  
「そうすれば、俺も…あきらめられたからな…。」  
「知盛…。」  
知盛の本音が聞けたことで、望美の心にやっと再会の喜びが感じられた。  
望美は少し体を離すと、知盛の顔を見上げた。知盛も望美の顔をのぞきこむように  
顔を近づけるとそのまま唇を塞いだ。夢じゃない…温もりが望美の唇に伝わる。  
歯列をなぞり舌を絡めはじめると、望美の体の力が抜けて立っていられなく  
なってくる。知盛は望美の背中に腕を回すと、望美を気遣うようにゆっくりと  
床に体を横たえた。望美の着物の袷を左右に押し広げると、綺麗な素肌が空気に  
晒される。知盛は望美の首筋に、唇をおとすときつく吸い上げた。  
「んっ…。」  
切なそうに眉根をよせて、可愛らしい声をあげる望美の反応を楽しむかのように  
知盛は唇の端をあげる。柔らかい肌に花を咲かせ続ける知盛。  
だんだんと、知盛の唇が望美のふくよかな胸までおりてくる。もうすでに硬く  
存在を主張している胸の頂にある突起を、口に含むとねっとりと舌で舐め転がす。  
「やぁ…あぁ…。」  
同時に片方の胸の突起を指でこねあげると、望美の体に熱がこもってくる。  
知盛は望美の着物の帯を解き下着を取り去ると、膝の裏に手を置いて足を一気に  
押し広げた。望美の泉はすでに蜜が溢れ出し、いやらしく光っていた。  
「敏感…だな…。」  
そう知盛は呟くと望美の泉に唇を近づけて、舌で上下に舐めあげた。  
「あぁっ…あ―。」  
知盛の唇が蕾に移動し、軽く吸い上げると望美が身を捩って声をあげる。  
泉に指を突き立てて抽出を繰り返すと、望美のなかに甘い疼きが灯りだす。  
初めて経験したときよりも、大きな刺激が望美を限界へと導き始める。  
「やぁ…やだ…だめっ…あぁ…あんっ。」  
望美が激しく身を捩り、ビクっと足をしならせた。そんな望美の様子に知盛は  
満足げに笑うと、泉に熱いたかまりをあてがいゆっくりと腰を沈めていった。  
 
望美はますます眉根をよせて、知盛にされるがままに身をまかせていた。  
腰を打ち付けられるたび望美の泉から溢れ出す蜜が絡まり、小さな小屋に  
水音が響く。最奥をせめられる度、だんだんと先程よりも大きな甘い疼きが  
望美のなかに灯り始める。知盛は望美のプクリとおきあがった蕾を、同時に  
指でこねあげた。電流が走ったような感覚が望美の体を駆け抜ける。  
「ひゃっ…そんなとこ…あぁんっ…。」  
「ふっ…いい表情だぜ…。」  
知盛は背を壁に預けると、望美を抱き起こし自分の上に座らせた。望美の  
細い腰に、知盛は手をかけると上下に揺らし始める。  
「あっ。」  
先程とは違うところがせめられて、望美の背中は魚のようにはねる。  
自然に望美も腰を揺らし始めると、知盛は唇の端に笑みを浮かべてさらに  
強く突き上げる。望美のなかの締め付けがさらにきつくなって、ふたりに  
限界が近づく。互いの背中に腕を回すと、知盛は望美の首筋に唇を落とす。  
「あんっ…もう…だめっ…あぁ―!」  
「望…美っ!」  
ドクンと望美のなかに、知盛の熱い欲望がすべて注ぎこまれる。望美は  
ぼんやりと顔をあげると、知盛の顔をみつめた。  
ふたりは余韻を楽しむかのように、再び口付けを交わした。  
 
知盛と望美は身支度を整えると、お互い無言でそばに座っていた。京へ  
戻らなければならない…望美は頭では分かっていたが、今知盛のもとを  
去ると二度と逢えなくなる気がして怖かった。  
知盛に問いかけようとした時、遠くで譲の声が聞こえたような気がした。  
「行け…俺は…もう逃げも隠れもしない…覚悟ができたら…  
 ここへ…来い…。」  
知盛の言葉に希望を抱き、望美は一度だけ振り返ると笑顔をみせて小屋を後に  
した。ひとり残された知盛は、さっきまで望美に触れていた手をじっとみつめて  
いた。名残を惜しむかのように。  
 

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