「どうしたんでしょうね、望美さんは」  
「あー、いつもの事だ。放っておけ」  
ポッキーを咥えたまま九郎の目の前をこれみよがしにうろうろする望美を、  
弁慶と将臣がなまあたたかい目で見ていた。  
社会勉強の一環として新聞を広げている九郎は望美に気づく気配は全くない。  
しばらくかまって欲しそうにチラチラと九郎をうかがう望美を観察していたら、  
ついに業を煮やしたのか、勢い良く九郎に歩み寄った。  
「お、行ったか」  
「行きましたね」  
 
 
「九郎さん」  
望美は九郎の目の前にくると、再びポッキーを一本咥えてみせた。  
「もーも」  
おそらくは「どうぞ」と言われたのだろう。  
ずいっと鼻先につきつけられ、九郎は困惑する。  
「なんだこれは、俺に何を求めているんだ」  
怪訝そうに望美を見れば大げさに肩をすくめられた。  
「ええっ、九郎さん知らないのぉ?」  
しらじらしく驚いてみせる望美に少々ムッとする。  
「その顔は腹が立つからやめろ」  
照れと企みが渾然一体となった望美のにやにや顔を許容できるネオロマンス  
ではなかった。  
 
「今日はポッキーの日なんですよ」  
 
と望美は言った。  
ようやく納得のいった九郎は、望美が過剰な期待をしている事も分かった。  
「やらんぞ、俺は」  
「そこをなんとかお願いします」  
「いや、やらんと言っている」  
「九郎さんってすごく格好いいですよねーすごく」  
「褒めてもやらん」  
「ケチですね」  
しばしの押し問答のあと、譲が夕飯の支度が出来たと二人を呼びにきた。  
これ幸いとばかりに意固地な望美を放って食卓へ向かう。  
望美はむすっと押し黙ってしまった。  
それから望美の機嫌が直る気配はなかった。  
 
「望美、しょうゆ」  
「九郎さんはケチだからだめです」  
 
「望美、先に風呂に入るからな」  
「九郎さんはケチだからだめです」  
 
「望美、ドライヤーを借りるぞ」  
「九郎さんはケチだからだめです」  
 
「望美…」  
「だめ」  
 
ベッドの上でささやく声も望美はかたくなだった。  
九郎によってすでに十分に体をほぐされ、したたりを溜めているというのに、  
最後の最後で抵抗している。  
昂ぶった熱をもてあましつつ、九郎はひといき嘆息した。  
望美のしつこさに舌を巻く。我慢しているのは自分だけなのかと思うと口惜  
しい。  
この少女は自分との行為に慣れてしまったのだろうか。  
苛立ちとともに少々乱暴に愛撫すると、望美はシーツの上で狂おしく体をく  
ねらせた。  
「だめです、だめ… んんっ だめ」  
それを見る限りでは、ただの虚勢だった。  
息がたかぶって、目も潤んで、一身に九郎を待ちわびているというのに、た  
だ自分の言い出した我侭で自縛しているに過ぎない。  
九郎が体のどこかに触れるたび、望美はびくびくと震わせた。  
脇からわき腹を指先でくすぐると、いっそう苦しげな声があがる。  
「ひ…っ うぅ…ああっ」  
ほとんど崩れ落ちんばかりに四肢をなげだして望美はベッドに沈んだ。  
いつのまにか、九郎の口元に笑みが浮かんでいる。  
望美が哀れな気持ちもあったが、本音を言ってしまえばこの状況は楽しかった。  
「どうだ、これでも駄目なのか?」  
言いつつ、望美の体を攻めるのをやめない。最終的にもう一度最初から唇  
で愛撫をほどこしてやることにした。  
「だめです んっ… くぅっ」  
望美の足の間から見上げれば、いまにも泣きそうになっている望美の目が、  
じっと九郎を見つめていた。そのうらめしそうな目は決してそらされることはなかった。  
 
「「駄目」だな」  
「えっ」  
望美が制止するひまもなく、潤みの増した花唇に自身を突きたてた。  
「あぁぁっ あっ く、九郎さん…!」  
「辛抱できん、と言ったんだ」  
うらめしそうな、それでいて期待した目だったのだ。  
「だめって…言ったのに…」  
「おまえの 「だめ」 は駄目だと言っていなかった」  
すぐに九郎が体の中を行き来しはじめたので、望美のくちびるからは抵抗の声と  
共に、あられもない嬌声があがることとなった。  
「ちがう ちゃんと私…、だめって言った…」  
切れ切れに抗う望美の声は、すでに色を変え始めていて言葉とは裏腹の意味を持  
っていた。  
「だめ、いい あぁ、気持ちいい…」  
やがて、望美の意固地だった声が、素直な言葉を漏らし始めた。  
「九郎さん、いいです 九郎さんっ」  
「俺もだ、望美」  
ようやく「だめ」を言うことをやめた望美と共有した快楽を確かめ合うと、心行くまで  
行為に没頭した。  
 
 
まさか寝台にまでポッキーを持ち込むとは思わなかった。  
「つぶつぶ苺味ですよ」と言いつつ、二人が果てたあとの寝台の上で望美が取り出  
したものに、九郎はげんなりした。  
ポッキーを咥えたままいっこうに眠る気配がない望美は、このままでは明日も学校  
に遅刻してしまうだろう。望美が寝過ごすことを考慮し、九郎は観念した。  
望美の咥えているその菓子の、数センチを噛んだ。  
望美は残りのポッキーを自分で食べてしまってから、咲きほころぶように笑った。  
「やった、うれしい」  
「そんなに嬉しいのか?」  
聞かずとも本当は分かる。望美はとても嬉しそうだった。ベッドの上を意味もなくゴロ  
 
ゴロと転がっている。  
厳格な九郎もこのときばかりは子供っぽい、と注意するより愛しさを募らせるにとどめた。  
「嬉しいですよ。こういうちょっとした楽しみを九郎さんと分け合えられて」  
「強引すぎたがな」  
「いいじゃないですか。こういうちょっとした事九郎さんとずっとしたいんですよ」  
何気なく言った言葉に胸を突かれた。  
衝動にまかせて望美の唇を奪う。おそらく、望美は気づいていないだろうし、わざわざ  
言うつもりもないが、この少女が未来のことを話すのが九郎は好きだった。  
これからも話し続けてくれるであろう小さな口腔は、たしかに望美が話したとおりの味がした。  
「つぶつぶ、分かりました?」  
「ああ、分かるものだな」  
 

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