「んっ…」
千尋がうっすらと目を開けると、
見知らぬ天井が映っていた。
「ここは…?」
千尋はボーッとする頭でここが何処なのかを
思案するが全く思い当たる場所が
浮かばず、視線を辺りにさ迷わせた。
「おはよう千尋。よく眠ってたね」
ベッドに横になっている千尋の
すぐ側で声がする。
声がした方へ顔を向けると、
那岐が千尋を見つめていた。
「那…岐?ここは?」
寝起きの少し掠れた声で、
那岐に声を掛けながら、千尋は
体を起こそうとしたが手足の自由がきかず、
そのまま体をベッドに寝かせるように
仰向けに倒れてしまった。
千尋が動かない両手を見ると、
手首は紐でベッドに縛りつけられ、
同じように両足も縛られて大の字で
寝かされている形になっていた。
そこまでして、ようやく千尋の頭も
完全に覚醒した。
「那岐!これは何なの!?」「何って、千尋の手足を縛って
動けなくしたんだよ」
那岐の冷静な突っ込みに千尋は
手足をバタつかせて拘束を外そうとする。
しかし、かなり頑丈に結んであるのか
一向に外れる気配はなかった。
「なんでこんな事するの!?お願い、外して!」
手足を拘束されている恐怖に
千尋は声を荒げて懇願する。
しかし、那岐はそんな千尋の様子を
面白くなさそうに見ているだけだった。
「多少は動ける位の長さには
調整してあるんだから、そんなに
起こるなよ」
そう言いながら那岐は千尋の頬に手を添える。
那岐の声が冷たかったからなのか
手が冷たかったからなのか、
その冷たさに千尋は背筋に悪寒を感じた。
「千尋が悪いんだよ。
他に好きな奴がいるくせに
無防備に僕に笑いかけて、期待させて…」
「那岐?」
那岐の言っている事が理解できず
千尋は那岐の顔を見つめた。
「好きなんだ千尋」
幼い頃から一緒に過ごしてきた
少年に告白されて、千尋は言葉を
発せずに目の前の緑色の瞳を
見つめる事しかできないでいた。
「千尋を抱く」
そう言うと、那岐は千尋の唇に
自分のそれを重ねる。
千尋は唇を離そうと顔を背けるが
手で顎を押さえられ、抵抗できなくされる。
那岐はそのまま無理矢理唇を
こじ開けると自分の舌を捩じ込み
歯列をなぞり、舌を絡め口内を蹂躙していく。
たっぷりと自分の唾液を飲ませてから
那岐は顔を離した。
「はぁはぁ…っ…助けて…」
目に涙を溜めながら、呼吸も
ままならない状態で千尋は想い人の名前を呟く。
「千尋…今だけは僕を見て…
僕の名前を呼んで…」
辛く切ない表情で那岐は千尋に囁く。
「…っ…」
那岐のあまりに切ない顔に、
千尋は彼の人の名前を呼ぶ事が
できなくなってしまった。自分は今、目の前の少年に
無理矢理組み敷かれ、犯されようと
しているのに、思い切り拒絶する事が
出来なくなってしまったのだ。
「那…岐…」
そのまま、目の前の少年の名前を呟く。
「愛している千尋…明日になったら
全て忘れているから、今だけ…今だけは…僕を…」
千尋の言葉に那岐は泣きそうになりながら
愛を囁き、首筋に口付けていき
そのまま、服を脱がせていった。
ジリリリーッ
那岐が下着に手を掛けようとした瞬間
部屋の中に、けたたましい音が鳴り響いた。
次の瞬間、先程まで那岐が組み伏せていた
千尋の姿が消え、今まで千尋がいた
ベッドにはマネキンのような人形が姿を現した。
「あ〜あ、時間切れかぁ…」
那岐は溜め息をつきながらベッドから
降りて砂時計を止めた。
「効果は1時間ちょいかな?
しっかし、アイツも面倒くさい事
頼んできたな」
那岐はぶつぶつ文句を言いながら
メモを取っていく。
なぜこんな事をしたのかと言うと
―――――
『那岐、鬼道で人形を千尋そっくり
(声や動き付きで)に見せる事は
できないか?』
『多分できるけど…』
『頼む…鬼道で、声と動作付きで
千尋人形を作ってくれ』
『嫌だね。面倒くさい』
『頼む!最高級羽毛布団を譲るから』
『……分かったよ』
と、いう八葉(仮)に頼まれたからである。
「まぁ、前居た世界で言うダッチワイフ
って事かな?喋りはするけど
まだ動かせないんだよな
まぁ、ア○ュ○ンは無理矢理とか
好きそうだからいいだろうけど
サ○キは和姦タイプだよな」
こうして那岐は八葉(仮)の為に
千尋人形作りを頑張るのであった。
「次からは僕が試さなくても、
本人に試作ダッチワイフを試させた方が
早いな…」
糸冬