クリスマスの夜、とうとう千尋は忍人と一線を越え
二人は結ばれたのだが、あの日以来
二度程しか忍人と夜を共にする事ができず、
千尋は悶々としていた。
行為自体は慣れない為に痛みはあるが、
それも回数をこなせば慣れて
気持ち良くなってくると雑誌に書いてあったので、
その内に良くなってくるのだろうし、
痛いのは構わなかった。
何よりも裸で触れ合う心地良さに
千尋は魅せられているのだ。
「肌と肌が触れ合うのが、
あんなに気持ち良いなんて知らなかったな…」
忍人との情事を思い出し、静かな自室の中、
千尋は一人頬を染める。
新年という概念は豊葦原にもあるらしく
お正月は祝い事や年始の政で慌ただしかったが、
一段落着いた今日から数日間、
狭井君の取り計らいにより休暇を貰う事ができ、
千尋はあの時の出来事を思い出しては
ニヤニヤしていたのだ。
「今日から連休なんだし、
忍人さんと一緒に居たいなぁ」
溜め息を浸きながら千尋は項垂れる。
クリスマスの日、二人が結ばれた事を知った
数名の妨害により千尋は忍人と、
なかなか二人きりになれずにいるのだった。
やれサザキは珍しい土産が手に入ったからと
1〜2週間に一度は王宮に立ち寄り、千尋の側を離れず
やれ柊は、我が君にはより一層
この世界について学んでもらわなければ
と、夜な夜な勉強をさせられ
やれアシュビンは、常世と豊葦原の外交の為だと、
しょっちゅう豊葦原に来ては
千尋に案内を頼む始末で、
そんな状況で、ここ最近は
まともに忍人と会話も出来ていないのである。
流石の千尋もストレスで限界に近かった。
「誰でもいいから、私と忍人さんを
二人っきりにしてぇ」
「お任せ下さい」
「千尋の願い叶えましょう」
思わず心の声が出てきてしまった途端、
窓の外から聞き覚えのある声がした。
窓の外を覗くと、そこには敏腕摂政の狭井君と
自称保護者の風早が立っていた。
「ふ…二人共、な…何でこんな所に…」
恥ずかしい事を聞かれた為、千尋は焦り、
顔が真っ赤になってしまう。
「私は陛下の心の声を聞きつけ
馳せ参じまいりました」
「いやぁ、そろそろ俺の出番かな?
と思って来たら狭井君と合流しちゃって」
何とも的を得ない回答だが、
この二人なら何でもありだと
千尋は納得するしかなかった。
「例の者達については、私と風早にお任せ下さい。
休暇の間、陛下は葛城将軍とお楽しみ下さいませ」
「大丈夫ですよ千尋。
那岐も俺達に協力してくれますから
ゆっくり休んで下さいね」
お楽しみ下さい、と休んで下さいに含む物を感じたが、
千尋はあえて聞き流す事にした。
「ありがとう二人共!」
去って行く二人に礼をすると千尋は、
勢いよく自室を後にするのであった。
「忍人さ〜ん!」
部下達の訓練を終えた忍人が戻ってくるのが見えたので、
千尋は大声で想い人の名を呼んだ。
「陛下…何をそんなに慌てて?」
息を切らせながら千尋は忍人の腕を掴み、
引っ張っていく。
「今から旅行に行きましょう!」
「な…何を言っているんだ。
急にそんな事できるわけがないだろう!」
千尋のあまりの強引さに、
思わず忍人も素に戻ってしまう。
「大丈夫です!狭井君の取り計らいで、
今日から数日間は私と忍人さんは
お仕事お休みなんですよ!」
息を切らせながら、嬉々として
千尋は忍人を連れて行く。
『あの人ならやりかねないな』
道中、千尋の話しを聞きながら、
忍人は苦笑いをするしかなかった。
「皆で旅をしていた頃を思い出しますね」
お供も就けずに、二人きりで目的の宿を目指しながら、
千尋は嬉しそうに話している。
本来なら千尋を一人で宮から
出させるわけにはいかなかったが、
これも狭井君のお陰なのか
麒麟の背に乗りながら空を飛んでいるので
安心して宿を目指す事ができたのだった。
目的地に着くと麒麟は何処ともなく
居なくなっていた。
「この宿、那岐の鬼道の力で、
私が居た世界のホテルみたいになっているんです」
そこにはホテル『ベルサイユ』と書かれた看板と、
色とりどりのネオンが点いた
洋風のお城のような建物が建っていた。
「さぁ、入りましょう」
嬉しそうな千尋の後について中に入っていくと壁には、
いくつもの部屋のパネルが並んでいた。
「あの…忍人さんはどんな部屋がいいですか?
私は、天蓋付きベッドのある部屋がいいんですけど」
「君の気に入った部屋で構わない」
なぜ恥じらいながら部屋について
問うてくるのか分からず、
忍人は決定権を千尋に委ねるのであった。
中に入ると、薄暗がりの為か、
千尋がいつも以上に艶かしく見えて
忍人は背徳感めいた気分になってくる。
普段は自分を律する性格なのだが、
今ここには自分と千尋しか居らず、
独特の部屋の雰囲気から忍人は、
普段の欲求を抑えられなくなりそうだった。
「遅くなりました。忍人さん湯冷めしてませんか?」
長湯になってしまった千尋は、
先に風呂に入って待っていた忍人の側に行く。
千尋が近づくと、忍人は千尋を抱きしめた。
「お…忍人さん?」
突然の事に顔を上げると、唇が重ねられる。
何度も触れるだけのキスを繰り返していると
キスの気持ち良さから、千尋は
忍人の背中に腕を回し、自分からも
唇を触れさせていく。
それが合図のように、忍人は
舌を千尋の口内に侵入させていく。
「ん…ふぁ…」
上手く息ができずに、千尋の口からは
微かな喘ぎにも似た声が漏れる。
構わず忍人は千尋の舌を自分の舌で絡めとり
唾液を絡ませ、歯列をなぞり
ますます激しく口内を蹂躙していく。
ようやく唇を離すと、千尋は
瞳を潤ませ、荒く呼吸をさせながら
忍人の胸に体を預けた。
「すまない。今の俺は余裕がないようだ」
千尋を気遣いながら、忍人は謝る。
「最近、千尋と二人きりになれず
俺は自分で思っていた以上に、
君に触れたくて仕方がなかった」
「わ…私もです!」
乱れた呼吸を整えるように言うと
忍人は千尋の首筋に舌を這わせる。
そして、そのまま服越しに胸を揉んでいく。
「ぁ…ん」
キスだけで蕩けていた千尋は
立っているだけで精一杯になっていた。
それを感じ取った忍人は千尋を抱き上げると
ベッドに運び、そっと寝かせる。
「愛している。君が欲しい」
耳元でそう囁くと、
服をそっと剥いでいく。
「私も、貴方が欲しいです」
そう言い、忍人の服を脱がせていく。
お互い裸になると、忍人は胸への愛撫を始める。
舌で右の胸の尖端を舐め、
音を出して吸い付きながら、
左手で空いている胸を揉みしだく。
「あ…んっ…やぁ」
愛撫の気持ち良さに、声を押さえる事ができず
千尋はだんだん声が大きくなっていく。
『声が押さえられない』
自室でした時は、采女に聞かれるかもしれない
という不安から声を出さないように
していたが、ここは那岐が改良してくれた宿で
誰も居ない。その安心感からか
二人は大胆になっていく。
忍人は空いている右手で千尋の脇腹
太ももを撫でていく。そのまま、
秘所に触れるか触れないかの部分に
手を滑らせ、何度もその上を擦る。
恥毛の上をかすかに触れるだけの
愛撫に、千尋は知らず腰を動かして
快感を得ようとしていた。
それに気付いた忍人は、千尋の
片足を肩に掛けると秘所に舌を這わせる。
「いやぁ…あぁん」
あまりの衝撃に千尋は何も考えられなくなり
ただ喘ぐ事しかできないでいた。
「千尋は甘いな」
秘所から溢れ出てくる蜜を舌に絡めながら
忍人が囁いてくる。あまりの恥ずかしさに
千尋は手で顔を隠して、嫌々を
するしかできないでいた。
「顔を見せてくれ。千尋の顔が見たい」
「き…今日の忍人さん、いつもと違います…」
千尋が瞳に涙を溜めて訴えると
忍人も、そう感じていたらしく
「君の色々な姿が見たくてたまらないようだ」
と、優しく言いながら尚も
舌で執拗に秘所を攻め立てていく。
そのまま指を一本、中に入れると、
抵抗もなくするりと入っていき、
忍人の指を離さないように膣が
きゅうっと絞まる。
「やぁ…だめぇ…はぁっん」
焦らすように指を動かしていると
千尋はますます淫らな嬌声をあげていく。
今まで見た事もない千尋の扇情的な姿に
忍人の男根も限界にきていた。
「挿れるぞ」
忍人はそう言うと指を抜き、
反り上がった男根を千尋の秘所に宛がうと
一気に中に挿入させる。
抵抗もなく忍人のそれを受け入れた
千尋の腟は男根をきゅっと締め付けていく。
「くっ」
あまりの快感に忍人からも余裕のない声が洩れる。
「大丈夫か?」
苦しそうな千尋を気遣い、額に頬に
キスをしていく。
「ふぁ…動いても大丈夫…ですよ」
挿入時に痛みが少なかったせいか
忍人に笑顔で答える。
千尋の笑顔を見て安心した忍人は
そのまま腰を上下に振っていく。
「あぁん…気持ち…いい…やぁ」
「くっ…俺ももう…」
限界が近いのか、忍人はますます激しく腰を動かす。
「ダメ、もうダメ!」
「出すぞ…中に」
言うが早いか、忍人は千尋の腟へ
精を放つのだった。
「熱い…」
ボーッとしながら千尋は忍人の
精を受け入れていた。
『赤ちゃんができたらどうしよう』
などと思いながら、後始末を済ませた二人は
情事の気だるさからそのまま
寝入ってしまうのだった。
「昨日の忍人さん激しかったです」
「すまない。千尋がいつもより
艶っぽく見えて自分を押さえられなかった」
麒麟の背に乗り帰る道中、
昨晩の事が気になり、千尋は忍人に
聞きながら帰っていた。
その後、宮に戻った千尋は早速那岐に
忍人と遠出をする度に、鬼道で
普通の宿がラブホテルに見えるように
してほしいと頼んだとか…。
「ね…お願い那岐。また鬼道使って
こんな恥ずかしい事を頼めるのは
那岐だけなの」
「はぁ…?千尋わかってる?
僕も男なんだよ…」
糸冬