蛙のような荒魂と対峙した千尋。同属性のため、なかなか攻撃が通じない。  
不気味な大きな口が開き、紫色の瘴気を吐き出した。  
 
「くっ!」  
 
苦しい表情をして自らの肩を抱いて、千尋は地面に膝をついた。  
その隙にと、荒魂はカギ爪のついた手を振り下ろす動作に入る。  
 
「千尋!…この、させるかっ!」  
 
自分の目の前の敵を倒し、千尋の元に駆けつけた那岐。駆けつけ様に御統を高く掲げて、素早く詠唱する。間もなく、荒魂の足元で光が弾け、雄叫びをあげながら、荒魂は消え去った。  
 
「あ、ありがとう……那岐、」  
 
息苦しそうに呼吸をする千尋。纏わりつく瘴気が原因なのだろう、那岐は胸の前に御統を突き出して、浄化の呪を唱える。するとまばゆい光が紫色の淀みを祓い、千尋から息苦しさが消えた。  
 
「まったく、心配かけさせるなよ」  
 
長い前髪を払って、言葉は突っぱねているが、照れたような表情で手を差し出す那岐。それをとって、千尋は笑顔で『ありがとう』と言った。  
 
 
 
 
天鳥船に戻った千尋一行。船は飛び立つ様子もなく、各々は自由な行動をしていた。  
自室で竹簡を読んでいた千尋だが、戻ってきてしばらく経った後、身体に異変を感じた。  
あの荒魂にかけられた瘴気がまだ残っていたのだろうか、息苦しくて身体が熱い。我慢しようとしたが、時が経つにつれてひどくなる始末だ。  
あまり迷惑をかけたくはなかったが、那岐の元を訪ねることにした。  
 
今日は穏やかな天気で、先程まで外に出ていたから、きっと那岐はあの堅庭のとっておきの場所で昼寝をしているだろう。そう思って、千尋は、今度はきちんとおしえられた通りの場所から、そこへ行った。  
千尋の判断は正しかった。階段の上からそこをのぞくと、投げ出された足が見えた。階段を降りて、壁に上体をもたれ掛けたまま眠る那岐を見つける。  
千尋に気が付かないのだろうか、起きる様子はない。伏せられた瞼を縁取る長い睫毛が風に揺れる。目鼻立ちがすっきりと整った端正な顔を、千尋はじっと見つめてしまった。  
途端に、湧き上がる熱が千尋の息苦しさに拍車をかける。心臓の音がが大きく鳴って、鼓動が早くなる。胸を押さえて、俯いた。  
やや治まって、顔をあげると、那岐の薄く開いた唇に目を奪われた。  
 
(―――あ、)  
 
ガツンと頭を叩かれたような衝撃が千尋を襲った。噴き出す汗。荒い呼吸。  
どうしようもなく、那岐の唇に惹かれた。触れたい衝動。抑えるが、耐えられず、自分のそれをそっと重ね合わせた。  
 
「……っ、ん?!」  
 
突然触れられた感覚に、目を覚ます那岐。慌てて眼前の千尋を引き剥がした。  
 
「な、ち、千尋!なにしてるんだ…!」  
 
赤い顔でまともに視線を合わせられない。突然のわけのわからない千尋の行動に混乱する那岐だが、おなじような赤い顔をした千尋は、熱に浮かされたように、那岐の手を解いてしがみついた。そしてまた口づけを施す。今度は触れるだけでなく、深く交じり合う。  
 
「んっ、ふぅ……ンんぅ」  
 
舌を差し入れて、歯列をなぞって、舌を絡める。溢れる互いの唾液が、受け止めきれずに口端からこぼれた。  
ちゅっ、と音を立てて名残惜しそうに離れれば、二人のあいだに銀の糸が渡った。  
 
「ぁ…、ちひろっ…」  
 
だらしなく唾液をこぼしたまま、妖しく微笑む千尋。  
いつもと様子がまったく違う千尋に戸惑うがしかし、身体の奥から熱が生まれ始める。千尋の身体から放たれている香気が、不思議と那岐の理性を奪っていく。  
那岐は頭を振って、懸命に抗おうとした。  
 
「な、ぎぃ、…」  
 
潤んだ瞳で那岐を見上げる千尋。透き通る蒼の瞳に、欲に塗れた自分の顔が映って、すぐに顔を背けた。  
細い白い指が、那岐の緑がかった衣の襟元に滑り込み、それを大きく開かせた。  
現れた首筋と鎖骨に触れ、唇を寄せる。チクリ、と僅かな痛みを感じた。  
抵抗したい那岐だが、なぜか身体がいうことをきかず、千尋にされるがままだ。  
千尋の左手が、股間に滑り降りた。ズボンの上から触れられ、身体が大きくはねた。  
 
「く、あっ、や、やめろっ…」  
 
急いで左手を押さえるが力が入らない。すぐに払いのけられ、敏感になっていた自身が剥き出しにされた。  
細い指が筒身を包み込み、湧き上がる快感を奥歯で噛み殺そうとした。しかし意味がない。  
 
「あ、これが那岐の……アツい、んっ、ちゅ、ふぅ…んン」  
 
うっとりした顔で那岐のモノを見つめて、小さな口に含んだ。  
 
「あああっ、うぁ、ち、やめ…あうっ、」  
 
熱い舌が張り詰めた裏筋をなぞり上げる。指先で鈴口の窪みを愛撫して、肉筒にやさしく歯をたてた。  
与えられる快感に応じて努張は膨れ上がる。引き剥がそうとしてかなわなかった那岐の手が、千尋の頭上で持て余していた。  
 
「だめだって、やめろ…だめだってばっ…!!」  
 
身体に力が入らない今、言葉を発すること以外に意志を示すものがない那岐は、必死にやめろと叫ぶ。しかし千尋は聞かない。聞こえないのだ。  
 
「あふ、ん、れろっ、ちゅ…んんん…」  
 
舌先を細く尖らせて窪みを抉る。ぐりぐりと押し込むようにすれば、那岐はたまらずに千尋の頭を押さえ込んだ。突然の上からの力に切っ先が押し込まれ、のどを突いた。  
 
「んぶっ?!ん、んんんっ、あ、はぁ…ん」  
 
むせそうになったが抑え、猛りを離さない。なおも奉仕し続ける。  
 
「も、だめ…だめだってば、あっ、ぅああああっっ!」  
 
湧き上がる射精感を抑えられるはずもなく、那岐は大きな声を上げて、千尋の口内に欲望を放った。  
 
「っ?!ンンっ、ふあぁっ、あ、…くっ」  
 
千尋の小さな口ではすべては受け止められず、顔にも精液を受け止める。淡い黄金(きん)の前髪に、白濁液がはねた。  
 
「はあぁ、あ…、はあ…」  
 
射精後のけだるさに荒く息を吐く那岐。自分の精液で汚れた千尋を見て、最後まで残っていたひとかけらの理性が消え去った。  
 
「きゃぁっ?!」  
 
突然地面に組み敷かれた千尋。足を大きく開かれ、羞恥に顔がさらに赤く染まった。  
 
「や、な、なぎっ?」  
 
那岐の手によって、白い下着が剥かれる。それが片足だけ抜かれ、隠されていた蜜壷が顔を晒した。そこはすでに蜜に濡れ、メスの顔をしている。指が中心に触れた。  
 
「ひあぁっ!」  
 
びくりと身体を震わせる千尋。那岐の細く長い、しかし骨ばった指を二本、いともたやすく呑み込んでしまう。もう一本もすぐに呑み込まれた。  
 
「うあぁっ、あ、あンン、」  
 
ナカを探られて、快感がとまらない。入り口の上にある尖りに親指が触れたとき、なお一層、千尋の身体が弾んだ。  
 
「指だけで、イった?イヤラシいね、千尋は」  
 
弄りながら、先程のお返し、とばかりに言葉で攻める。『イヤラシい』と言われ、千尋は手のひらで顔を覆った。  
 
「顔、隠すなよ。ズルいだろう」  
 
右手で簡単に解かれる守り。ひとつにまとめられ、頭上に縫いつけられた。  
ナカの指が抜かれ、入り口に熱い猛りが押し当てられる。本能的な恐怖に、僅かに身が縮む。  
 
「入れるから……」  
 
そう耳元で呟かれてすぐに、身体を裂かれるような感覚に、千尋は襲われた。  
 
「っ、い、ああああっっ?!」  
 
僅かに抵抗を感じたが、知らない、と那岐が一気に努張を奥まで埋めた。  
 
「あ、あうぅ……」  
 
痛みと圧迫感に身を責められ、強く閉じられた眦にひと粒の涙が滲んだ。  
那岐がそれを唇で拭ってやる。  
 
「痛い?ごめん…」  
 
「なぎ……ん、」  
 
謝罪を口にした唇に触れた。痛みが和らいだような気がした。  
 
「大丈夫…だから、う、動いても平気っ、だから、っ」  
 
この言葉が、まるで自分からねだっているように思えて、言ったあとにすごく恥ずかしくなった。  
 
「ああ、ありがとう」  
 
もう一度、今度は那岐から口づけをして、腰を動かし始めた。  
ギリギリまで自身を引き抜いて、すぐにまた穿つ。滑る愛液に混じって、破瓜の血が突かれた衝撃で飛び散った。  
 
「ああああっん、うあぁっ、あっ!」  
 
奥まで叩きつけるように腰を振る。那岐の額から噴き出た汗がひと粒こぼれ落ちた。  
 
「ひぁっ?!そこ、こすんないでぇっ!」  
 
ある一点を突くと、千尋がより一層鳴いた。そこを執拗に攻め始める那岐。感じすぎて、身体も頭もどうにかなりそうだった。  
 
「ちひろ、…ぅあ、くっ!ヤバい、」  
 
那岐にも限界が近づいた。突き上げる速度が増す。  
 
「あ、も、やだっ!なに、これぇっ、いやぁっ、ああっああああっっ?!」  
 
大きな声をあげながら千尋が達した。ナカが急速にうねりをあげる。  
 
「はっ、あ、ち、ちひろっ、うぁっ、あっ!」  
 
窮屈な締め付けにとうとう那岐も達した。耐えられず、千尋のナカに吐き出す。すべて余すことなく放出してから、那岐は自身を抜き去った。  
 
「あ、はああ………」  
 
千尋の全身に疲労感が降り降りる。目を閉じると簡単に意識を手放せた。那岐は眠りたい衝動をぐっとこらえ、深く溜め息を吐いた。  
 
 
 
 
目を覚ますと、千尋は天鳥船の自室にいた。  
 
「ゆ、夢だった…の?」  
 
夢にしてはリアルなものだった。千尋の頬に朱が射す。  
火照った顔を冷まそうと、ベランダに出るために寝台から立ち上がろうとした。  
 
「痛っ…い」  
 
その瞬間、下半身に走った鈍い痛み。夢がリアルへと変わった瞬間だ。  
 
「ゆ、夢…じゃなかった……」  
 
一からすべて覚えていた出来事。千尋は恥ずかしさに頭を抱えた。  
次から那岐と接するときはどうしようかと、回らない頭で必死に悩んでいた。  
 
 
おしまい。  
 
 

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