「棟梁がいないぞっ!」  
「奥方もだっ」  
いつの間にやら姿を消した二人に気づき、熊野水軍の面々が俄かに騒ぎ始めた  
 
 
―同時刻、熊野山中  
「ヒノエ君…宴会抜け出しちゃって大丈夫?」  
少し息を切らして望美はヒノエに問いかけた。  
「だぁーいじょうぶだって。重要な会議は終わったし…」  
ヒノエは望美の手を取って先導する。  
「それにこう毎日宴会じゃ、俺の大事なお姫様と過ごす時間がないだろ。」  
いつもの笑顔でウィンクする。  
 
結婚式を挙げてからもう一月以上経つ。  
その間、宴会が無かった日なんて数えるほどしかない。  
熊野の人たちとの宴会は楽しいものだったが、ヒノエの言う通りゆっくりと二人だけの時間を取る機会はあまりなかった。  
望美の話は面白く、宴会では男女関係無く常にいろいろな人に囲まれているという始末。  
特に「全盛期のヒノエ」シリーズは大人気だ。  
陽気な熊野の雰囲気が好きな望美も、期待に応えようと毎回新しいネタを考えてはみんなを笑わせていた。  
 
「川辺の方に行こうか。走って酔いが回ったろ?」  
望美は元の世界で多少興味もあって酒を口にした事はあるが、飲みなれていない。  
「うん、そうだね。ちょっと休みたい。」  
暫くヒノエに手を引かれるまま続いて歩くと、少し開けた場所に出た。  
 
「うわぁ…。綺麗。」  
雲一つ無い夜だった。月明かりを遮る物は何も無く、青白い光に照らされ川面がきらめく。  
心地よい風が望美の頬をなで、火照った体を少しづつ鎮めてくれる。  
月を背に立つ望美の体は月光に縁取られ、まるで物語に出てくる天女のようだった。  
 
「俺だけの秘密の場所。ずっと望美に見せてやりたかったんだ。気に入ったかい?」  
「うん、すっごく綺麗。ほんと…綺麗。」  
キラキラと月明かりを反射させ輝く川と、そこに映る月。緑が生い茂り、水の流れる音と風が木々を優しく撫でる音だけが聞こえる。  
幻想的で、とてもこの世のものとは思えなかった。  
「でも俺には望美の方がその何倍も美しく見えるよ。」  
そう言って手ごろな岩に腰を据えると、そのまま望美を自分の足の間に座らせ後ろから抱きしめた。  
 
月に照らされた望美がこのまま天女の如く儚く消えてしまうような、そんな気がした。  
ばかばかしいと思うものの、つい逃すまいと望美を抱く力を強める。  
 
「望美…愛してる。」  
望美の首筋にヒノエの吐息がかかる。いつもの囁きと違うように感じるのは顔が見えないせいだろうか。  
その為何度も聞いた台詞なのに、いつもの何倍にも膨らんでぞくぞくと快感に変わる。  
 
ヒノエはそのまま後ろから首筋に口付けをすると、望美の着物の胸元をくつろげる。  
「えっ…ちょっとヒノエ君?」  
驚いてヒノエの手を止めようとするが、ヒノエはやめない。  
するすると着物を肩から外していく。ヒノエの口付けはその後を追うように肩から背中へと移る。  
軽く唇を当てて何箇所にも口付けをし、舌で背筋をすっと舐め上げる。  
 
「んっ…あん…」  
「俺の女神はなかなか淫らな声を出すね。」  
背に口付けを繰り返し、舌でなぞり、手は露になった望美の胸の膨らみをまさぐり始めた。  
望美の腕ごと抱えるように後ろから手を回すと、両手のひらで柔らかい胸を左右から寄せ上げ、  
指先は硬くなった双丘の頂を優しく愛撫する。指の腹で転がし、二本の指で挟んでコリコリと優しく捻る。  
 
「やっ…はぁっ…ん。外で…なんて…」  
「たまにはこういうのも悪くないぜ。それに…いつもより、感度が増してるみたいだけど?」  
そう言うと着物の裾を開かせ、望美の片足をヒノエの膝の上にかけさせる。  
あまりの自分の姿に足を閉じようとするが、もう片方の足もしっかりとヒノエの足に絡められていた。  
足は恥ずかしく大きく開かされ、手は肘の辺りまで肌蹴させられた着物のせいで満足に動かせない。  
 
「やぁっ…嫌ぁ…。こんな格好、恥ずかしいよっ…」  
羞恥の為か、火照りの冷め切らない望美の体はますます熱くなり、薄桃色に染まっていく。  
そうするつもりがあったわけではないものの、自然と望美を拘束するような形になってしまった。  
「こっ拘束プレイはヒノエ君の専売特許でしょ。」  
「あれは俺の趣味じゃないって。縛られるより、縛る方が好きなんだ。」  
身動きの取れない望美の嫌がる仕草が可愛くて、愛しくて、ヒノエ自身もいつもと違う興奮が湧き上がってくるのを感じていた。  
 
大きく開いた足の間に手を下ろし望美の秘所に触れ、たっぷりと分泌された蜜をすくい上げる。  
「ほら、いつもより濡れてるぜ。」  
そう言うと滴るほどの蜜を指に絡ませ望美に見せつける。  
「凄いな…こんなに溢れさせるなんて。望美は外で興奮しちゃう淫乱な神子姫だったんだ。」  
 
望美はヒノエの言葉にますます体を熱くする。違うと否定したいのに、出来ない。  
事実ヒノエの言う通りなのだ。外で、あられもない姿で胸を、秘所を攻められ興奮している自分がいる。  
「い…じ…悪。ヒノエ君の意地悪っ…」  
「苛めたくなっちゃうくらい可愛いお前が悪いんだよ…。それに、宴会で俺のある事無い事言いまくってる罰だ。」  
そういうと望美の熱く蠢く蜜壷に指を入れ、くいと指を曲げ内壁を擦り上げる。  
「あっ…それ…だめぇ…んぁぁ…っ!!!」  
 
いつも優しすぎるくらいに望美を抱くヒノエだが、今日はいつもと違う。  
やはり『全盛期のヒノエ君はウィンクしただけで女性が失神した』とか  
『全盛期のヒノエ君は舟の舵を握っただけで平家が泣いて謝った。心臓麻痺を起こす兵も』  
とか言ったのがいけなかったのだろうか。  
望美としてはヒノエを褒め称えているつもりだったのだが、気に入ってもらえなかったのかと少し落ち込んだ。  
 
「望美。何、考えてるの?」  
新しい全盛期ネタを考えているとは口が裂けても言えない。  
「あっん…ヒノ…エ君が…怒ってるとは思って…んっ…なくて…ごめっ…なさい。」  
実際ヒノエは怒ってなどいない。「よそ者」であるはずの望美が熊野に馴染めるか、受け入れられるか、  
最初は心配したがそれも杞憂に終わった。  
望美の性格もあるが、それ以上の努力ですっかり熊野の連中の心を掴み、馴染んでしまっている。  
水軍の中での人気は今やヒノエに次ぐ勢いだ。ヒノエの妻としても、熊野別当の妻としても、  
これ以上ないくらいの強く美しい最高の女だった。  
 
「怒ってなんていないよ。お前はよくやってくれている。ただ…お前を独占できなくて…」  
――少し、嫉妬してたんだ。  
耳元でそう囁くと、望美の中から指を抜いた。  
 
望美を立たせると今まで座っていた岩に手をつかせた。  
ヒノエはその後ろに回ると望美の着物を腰までたくし上げる。  
着物はこれ以上ないくらいに乱れ、肌蹴てしまっている。  
 
「そんな姿にも…そそられるね。」  
ヒノエは望美の蜜の源泉にいつも以上に膨張した自身を宛がうと入り口を弄り、焦らす。  
すでに溢れ出る蜜は太ももを伝って地面に染みを作っていた。  
「ふぁっ…ヒノ…くん。もぅ…それ以上…」  
「それ以上、何?我慢できない?」  
くすっといたずらっぽく笑う。  
 
自分の肩越しにヒノエの方を振り返っている望美の目には涙まで浮かんでいた。  
望美はもうこくこくと頷くしか出来ない。  
ヒノエももう我慢できなかった。それを隠すかのように望美に罪を着せる。  
「ホントに、淫らな神子姫だっ。」  
そういうと望美の腰を掴み、一気に貫いた。  
 
「んぁっ…あぁんっ!」  
もう限界までに焦らされていた望美は歓喜の嬌声を上げる。  
望美の中の壁がきゅっと締まり、ヒノエを放さない。  
「…っ。こんな濡れてるのに、中はすっげキツイ。別の生き物みたいに、俺を咥えて放さないなんて…」  
最奥まで一旦沈めると、望美の中が落ち着くのを待つ。  
そうしないとすぐに熱を放出してしまいそうなくらい、感情が昂ぶっていた。  
 
(俺とした事が、望美相手だと情けないな…)  
そう自嘲する。今までいろんな女と寝たが、こんな事はかつてなかった。  
「平気か?動くぜ。」  
やはりこくこくと頷くだけの望美。そんな仕草までヒノエを高ぶらせる媚薬になる。  
 
いつもと違う体位のせいか、この状況のせいか、望美はいつも以上に乱れ声を上げる。  
ヒノエもいつもと違う攻め方で、望美を悦ばせる。  
後ろから浅く深く複雑に突き、手を前に回すと望美の肉芽を指で優しく擦り上げる。  
 
「ひぁっ!だ…だめ。そんなに同時にっ…あっ…んんんっ!」  
ふるふると振るえ、今までよりも強くヒノエを締め付ける。  
と、ヒノエは動きを止めてしまった。  
「ぁ…な…んでぇ…」  
「だめ、まだイかせないよ。」  
 
そういうと望美の中から自身を抜くと、望美の体をこちらに向けヒノエの首に腕を回させる。  
「後ろからもいいけど、お前のイク顔が見れないなんて勿体無い事できるかよ。」  
そういうと望美の足の内側から膝裏に手を回し、そのまま抱き上げる。  
 
「えっ、えっ?」  
抱きかかえ、腰の位置を合わせるとそのまま硬さを保っているヒノエの男に望美を沈めていく。  
重力も手伝って、最奥を突き上げられる。  
「これなら硬い地面に寝かせる必要もないし、望美の顔も見られる。」  
望美が痛い思いをしないように、傷つかせたりしないように、きちんと考えている。  
 
「愛してるよ望美。お前より大事なヤツなんていない。絶対に、放さない。俺の女だ。」  
「私も、愛してる。…知ってる?私の中、ヒノエ君で…いっぱいなんだよ…」  
「気持ちいい?」  
「うん…気持ちいい。けど、それ以上に…幸せで、満たされてるの。心も、体も。」  
甘い囁きで精神を、巧みな愛撫で体を。  
心身共に、ヒノエによってもたらされる幸せで満たされていた。  
 
こんなにストレートに望美がヒノエに愛を囁く事はなかった。  
一瞬聞き間違えかと思った程だ。望美を突き上げながらもう一度聞く。  
「もう一度聞かせて、俺の姫君。」  
「あっあっ…んんっ。好きっ!ヒノエ君が好きなの。あ…愛してるのは、ヒノエ君っん…だけだから。」  
 
望美の中でヒノエが硬さを増す。望美と同じく心身共に満たされていくと、  
つい動きが激しくなってしまう。  
「はぁぁっ…んぁっ…ヒノ…エくっ…。そっ…なに激しくされたらっ…!」  
―ヒノエ君とこんな野外でするなんて、頭がフットーしそうだよおっっ  
 
「んぁ…んっ、もうっだめ。もっ…」  
「望美。イっていいぜ。見せて、お前のイくところ。」  
そう言うとよりしっかりと望美を抱え、更に攻め続ける。  
「あっあぁ、んっ、イっ……っっ!!!」  
一層締め付けがきつくなり、ビクンビクンと内壁が波打ち、体はガクガクと震えた。  
それに誘われるようにヒノエも精を放った。  
 
―――  
 
川で身を清めていると、ガサガサと茂みが動く。  
「…っ!ヒノエ君っ。何かが…」  
慌てる望美を他所に、何か心当たりがあるのかヒノエは落ち着いている。  
全裸の望美を着物でさっと包むと言った。  
 
「いつから、いたんだ。」  
急に茂みの中の音が消える。  
「怒らないから、出てこいよ。」  
これ以上ないくらい怒りを含んだ声で命令する。  
観念したのか茂みから顔を出す。熊野水軍の一人だ。  
 
「お…お頭、奥方っ!さ…サーセン!!!」  
聞けば二人を探しに数名が山に入ったらしい。  
「何やら話し声が聞こえたもんで。で、声を頼りに来てみたら…」  
「ほーぅ、それで俺の姫君を覗き見かい?」  
怒りの炎が翼となってヒノエの回りを舞う。  
 
ついカッとなってやった。今は反省している。としどろもどろに言い訳を並べ立て、  
「あっ…あの。ほんとすいません!みんなには上手い事報告しておくんで。ゆ、ゆっくりしていってね!!!」  
そういびつな笑顔で言うと、目にも留まらぬスピードで逃げ帰って行った。  
 
――――――――――――――――  
 
今日はなかなか筆のノリが良かったせいか、少し余裕があった。  
「そろそろ、いらっしゃる頃かしら。」  
最近はもうこれが日課のようになってしまっている。  
と、いつもの足音が聞こえてくる。今日は幾分弾んでいるようだ。  
 
「精が出るな。邪魔するぞ、MA☆SA☆KO」  
やはり毎回同じ登場の仕方しかできない頼朝である。  
「どうだ。仕上がったのか?」  
「ええ、これで短いお話が三本。一冊の本にするには十分でしょう。」  
そうか、と言い腰を下ろすと、仕上がったばかりの原稿を手に取る。  
 
「今回は少し、変わったプレイを取り入れてみましたの。」  
最初はわからんと言って内容に興味は示さなかったが、近頃では感想を言ってくれるようになった。  
「む…な、なかなか、腕を上げたな。政子よ。」  
「まぁ、嬉しい。始めはどうなる事かと思いましたけど、こうして無事仕上がったのも  
鎌倉殿のおかげですわ。」  
そう言うと、本当に嬉しそうにニッコリと微笑んだ。  
 
「この三本で一冊完成なのだな。」  
「ええ、もう一本くらいお話を書きたい所ですけれど…。もう手短なモデルが九郎殿しかいなくて。」  
「…さすがにそれは止めてもらおうか。」  
「わたくしにとっても義理とはいえ弟君ですからね、止めておきましょう。」  
それはそれで面白そうですけれど、とからかう様にうふふと笑った。  
 
「しかし…前から思ってたのだが、こう、面白ワードを交えないで書く事はならぬのか?  
それがなければ、もうちょっと、雰囲気を壊さず気持ちも入り込めそうなものだが。」  
痛い所を突かれてしまった。  
政子も悩んでいたのだ。でも、これが政子の性分なのだろうか。  
どうしてもお笑いに走ってしまう。それに、真面目にエロスを書く事に対する照れ隠しでもあった。  
 
「わたくしも悩んだのです。でも思いついてしまったら書かずには…いられなかったのですわ。」  
思わず、目に涙を浮かべる。  
「ま…政子。泣くでない。お前に泣かれると困る。」  
そう言うと政子を引き寄せ、抱きしめた。  
頼朝の膝の上にしなだれかかる政子。頼朝の不器用な愛情表現を可愛いと思った。  
 
「政子がこんなにも一生懸命やってくれているのは、私の為…。こんなに尽くしてくれる妻を  
持てた私は幸せ者だ。感謝するぞ、政子。」  
「ええ、全ては鎌倉殿の望む国を作る為…わたくし、その為ならどんな事でもいたしますわ。」  
 
熱く抱き合うと、冬祭り参加申込書の記入方法を模索し始める頼朝夫婦だった。  
 
―おしまい―  
 

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