「どうした? そう、身を硬くして」
「わたし……あなたの……奥さん、になったんだな、って思ったら緊張してしまって」
人が二人大の字で寝転がっても余るほどの、豪奢な常世風の寝台は、
千尋にはどうにも居心地が悪く、端で小さくなっているばかりだった。
「なに、息子たちほどの歳のそなたを、どうこうしようとなど思わぬ。それにしても……」
先王スーリヤは、ふっと苦笑した。
「私がそなたを妃に迎えると伝えた時の、アシュヴィンの表情は見ものだったな」
千尋もそのことを思い出して、ぷっと吹き出す。
「ええ、棒読みで『義母上』なんて呼ばれたわ」
「あれは、私にも嫌味を言ってきおったくらいだからな」
二人でくすくすと笑っている内に、どこかぎこちない空気も解けてきたのだった。
「こうして、両の腕に抱くだけで十分だ。それだけで、私は救われる」
スーリヤは、縮こまる千尋をかき抱いた。
「私は今も信じられぬ。そなたのような、美しくて聡い娘が、こんな年寄りのところに嫁いできてくれるとはな」
常世の先王は、寄り添う自分の娘ほどに若い花嫁の背を、愛しげに撫でた。
「年寄りなんて、思わないわ! それに、年齢のことなんて、関係ないって思うんです。
……あなたを、独りにしたくないと思ってしまったから」
そういって、にこりと微笑む千尋。
スーリヤは、その強面を柔らかく崩し、力強く花嫁を抱きしめた。
ところがふと、
「あ、あの……スーリヤさん……?」
少女は困ったように視線を反らし、頬を染める。
腹部の辺りに感じる、何か硬くて熱を持ったもの。それが何かに思い当たったのだ。
先ほどまでは自己主張していなかったそれは、今や痛いほど張り詰めていた。
スーリヤは、悪びれもせず、低く笑う。
「……私もまだ若いな。いや、それだけそなたが魅力的だということか……よいか?」
「え……ええ」
千尋の返事を聞いて、スーリヤは、荒々しく千尋に挑みかかった。