好きだとか、大切だとか…そんな煩わしい感情じゃない。ただの排泄行為。言うならば生理現象。  
 
「ん…っ……はぁ…ぁ…」  
 
利害の一致  
 
「…ぁっ……ん…」  
 
それだけ。  
面倒なのは嫌い。  
 
 
「千尋」  
 
 
風早がいない日に行われる儀式。  
 
成長期の僕等は無意識の内に、自分と異なる性の部位に興味を示していた。  
 
誰もが持つ情欲。  
 
 
千尋は月の周期が近くなると僕を求める。持て余す欲望を発散すべく。  
 
それに僕は応えた。  
渇きを潤す様に、千尋の総てを愛して。  
 
 
耳元で囁き、息を吹きかけ、耳朶を口に含み、舐め上げては音を響かせる。  
 
うっすらと色付く姿に気分が高まり、互いに更なる快楽を求めた。  
 
首筋に唇を滑らせ、痕が残らない程度に口付ける。身を捩らせ擽ったそうな千尋の姿に僕は満足感を得るんだ。  
 
豊かな膨らみに到達した時、僕は千尋の顔を見て軽く笑う。  
 
「千尋ってエッチだよね」  
 
今日ある行為は千尋からの誘い。  
天井へとそそり立つ高みは、これでもかと言うほどに自己主張している。  
 
「…見える?僕を誘ってるみたい」  
 
 
いわゆる言葉攻め。  
千尋はこれに弱いのだ。  
 
羞恥心を煽り、感度を高める。  
僅かに揺れる腰を撫で、ソレを甘く噛んだ。  
 
「んぁっ!やっ」  
「良いくせに」  
「ちがっ……ぁんっ…ふぁ…」  
 
今晩求めてきたのは千尋…君からなんだよ?素直にならないから意地悪したくなるんだ。  
 
もっと  
もっともっと求めて?  
僕を。  
 
 
 
 
 
飽くことなく、膨らみを苛め続け、焦れったさが全身を駆け巡っているであろう姿に、なんともいえない感情が浮かび上がってくる。  
 
 
「那岐…っ」  
「なに?」  
 
揺れる腰など見て見ぬ振り。  
 
 
さぁ早く、紡いで…?  
 
 
「ぉねが…」  
「聞こえない」  
 
荒々しく胸を上下させ、震えた唇から発せられる言の葉。  
 
 
「……欲しいの」  
「どこに?」  
 
「ソコ…」  
「ソコってどこさ?」  
 
 
十分に潤った秘部には触れずに、その周りを可愛がる。  
 
ヒクヒクと、まるで別の生き物のように動く千尋の下腹部。  
 
 
「…ゃだ……いじめないで…」  
 
その後に続く言葉に僕は飢えを満たされた。口にするにはとても恥ずかしかっただろうに……顔は真っ赤で涙目。  
 
あぁ、いいね。  
自分にこんな顔があるなんて知らなかった。  
 
 
「ごめん」  
 
舌で滴を舐め取り、頬に口付けを落とした。  
待ちかねたであろうに。溢れ出る泉の蜜に指を絡ませ、指数本を一気に挿入…と同時に、ぷっくりとした突起を擦り潰せば千尋は即座に絶頂を迎えた。  
 
「はぁ…ん…」  
 
とろん  
とした目をし、普段の千尋からは考えられない大胆な艶姿。  
 
流石の僕も耐えられなくなる。  
 
膨張した自身にゴムを被せ、押し当てた。  
 
「いくよ」  
「んっ」  
 
来て、  
と言わんばかりに千尋は腕を広げて僕を受け入れた。そんな千尋に僕は覆い被さり、腰を押し進める。  
 
 
「ひ、あぅっ…あぁ!」  
「…っ」  
 
強い締め付けに目眩を感じる。  
気を抜いてしまえば、きっと直ぐに達してしまうだろう。  
 
幾度体を重ねても、千尋の中に己を押し込めたその瞬間、千尋という存在に全てを包まれて、まるで慈しまれてる感覚に捕らわれては、戸惑いを覚える。  
 
―――――なんだろ?  
 
頭のどこかで声がする。  
それを受け入れない心がある。  
 
うるさいうるさいうるさい!  
 
 
雑念を振り払うように、腰を激しく突き出す。  
 
 
「あぁっ、あ…ああっ!…ぃ…ふぁっ」  
 
千尋の喘ぎ声と、グチャニチャという厭らしい音。愛液がシーツを濡らしては瞬く間に染みを作る。  
 
抽送を何度も激しく繰り返し、時に焦らして千尋を攻め立てる。  
 
ギシギシと音を立てるベッドのスプリングが二人を更に追い立てる。  
 
凄く、やらしい。  
 
「っ、あぁ…っ…ぁっ!ぁああ…ぃい…っ……なぎっ…なぎぃ!」  
「っ……くっ…」  
 
僕の背中に回された手が、指先が、縋るように掻き毟る感触がピリッとして心地良い。  
 
千尋の中はうねりを魅せ始め、終わりが近い事を僕に知らせる。  
 
深く深く、もっと奥に。  
そう…欲しいの。  
 
導かれるままに激しく快感を貪り、高みを目指す。  
 
「なぎっ…もっ……だ、だめっ…んっ…んああっ…ぃっちゃ…あっ!…あん!…ふぁ…ぁっ!…はぁああぁ!!」  
「千尋っ…!」  
 
強烈な締め付けに耐えられず、精を注ぎ込む。  
 
 
力無く倒れ込む千尋を抱き止め、髪をそっと流し、慣れた手付きで後処理をする。  
 
そっと寝かせた千尋は、先程の姿が嘘のように穏やかだ。  
 
 
そっと頬を撫で、顔を近付けあと数センチ…だが、そこでストップ。  
 
自嘲が込み上げる。  
 
 
さて、お風呂を沸かそうか。  
馬鹿げた頭を冷やすには水風呂が丁度良いのかもしれないな。  
 
「おやすみ千尋」  
 
 
好きだとか考えたくない。  
 
 
これは一種の発散方法。  
そうだろう…?  
 
 
面倒臭いのは…嫌いだから。  
 
 
 
だから  
これは  
恋  
なんかじゃ、ない。  
 
 
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キスなんて絶対しない。  
それが僕のボーダーライン。  
 
END  
 

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