「おはようございます先輩、そろそろ起きてください」  
「・・・ん・・・・・まさおみ・・く・・・ん・・・・」  
なんと聞こえたか何度も反芻したが、間違いなく望美は兄の名を口にした。  
この世界に来て以来、自分が一番そばに居て、自分が一番頼りにされている  
そんな自負が譲の中で砕けた。  
いつも近くに居る俺よりも、遠く離れてどこに居るかも分らない兄さんを彼女は夢の中まで求めている、  
今のは聞き間違いだと思いたくて、半ば睨むように望美の顔を凝視していた。  
その唇が再び微かな動きを見せた。  
もう彼女の声が兄さんの名を呼ぶのを聞きたくない、譲は望美の唇を強くふさいだ。  
 
 
「俺は情報通なんだよ」  
「でも将臣君、何か危ない事とかしていっっはぁん・・・」  
「ん、どうした望美?」  
唐突に私の口から漏れた甘い声に将臣君は目を丸くしている。  
「・・んは、ええと、わかんない。なんだか急に・・・」体が熱くてふらついた。  
「ああそうか、お前も人の子だしな、仕方ないさ」  
なんだか分らないけど将臣君は納得しながらふらつく私を支え、机の上に横たえてくれる。  
「こっち着て暫く経つんだろ、ずっと禁欲生活じゃ寝てる間に色々起こるだろうよ」  
どうしてそんな解釈になるのよっ!と言い返そうにも口から出るのが熱い吐息ばかり、  
「まあ、心配すんなって、俺が慰めてやるからさ。」  
「・・・きゃ・・っふぅ」  
そう言いながら唇をふさがれ、ますます全身の力が抜けていく。  
 
いけない、無抵抗の先輩を犯すなんて。  
唇を離し、一層苦い思いで望美の顔を見つめているた。だが、  
「・・・っふぅ」  
吐息が譲の理性を霧の彼方へ連れ去った。  
「先輩・・・酷ですよ、もう無理ですっ・・・」  
小さく囁きながら大きく望美の胸元を開き、寝乱れた髪に顔をうずめる、  
耳たぶを弄び、首筋を下でなぞりながら、予想よりも白く柔らかな胸を揉む。  
目は閉じたまま、ぼんやりと開いた唇からの甘い吐息が譲を絡めとっていた。  
昏々と無抵抗なことすら、もはや彼の劣情を掻き立てるのみだった。  
 
「大丈夫だって、どうせ夢ん中だ、お前の躰が傷つく事なんてないさ」  
将臣君が耳を甘噛みする、首に吸い付きながら手が胸に触れる。  
「っはぁぁふぅ・・・だ・・・だ・・め、・・・・だめだ・・よ」  
躰の中から溶けていくのが自分でも分った、でも、イヤ。  
「俺がイヤか?」  
困ったような切ない顔して、すっと将臣君が身を離した。  
「はぁ・・・はぁ・・・ひどいよ、・・・はぁ・・こんなのダメだよ。ごめんね」  
呼吸を整えながら、何故か謝ってしまった。  
「でもさ、お前のココ準備OKじゃんか」  
油断していたところで足の間に手を忍び込ませ、私の中心に指があてがわれる、  
「そんなことないっ」  
意地悪く笑う顔に言ってやったのに、指が中に入ろうとした途端、  
熟れた果実がはぜる様に私の蜜があふれ出した。  
 
「っく、あっあん・・・はあぁぁぁぁぁん・・・!」  
「な、大丈夫だろ」  
余裕な声が、屈辱感を刺激する。  
自分の中を将臣君の指が弄ぶ、かき回す。  
こんなのはイヤ、教室の机に組み敷かれているのも、私の気持ち無視してこんな事されるのも、  
それが何より将臣君なのが悲しい、幼馴染で、親友でだと思ってたのに、  
それなのに…将臣君、勝手だ。  
「・・あっはぅ・・・くふん・・・・はふぅ・・・」  
イヤ、やめての声すら、もう喘ぎ声にしかならない。  
「俺のほうも準備OK」  
潤んだ視界の向こうで、将臣君自身が怒張しているのが見えた。  
「じゃ、入れるから・・・っ」  
 
指と舌で躰をなぞって望美の最奥の入り口に譲の指が達したとき、そこは以外にも濡れていなかった。  
眠っている躰に欲望をぶつけただけでは当たり前の結果かと、自嘲してみたその次、  
離そうとした指がソコを軽くなぞると、驚くほどの蜜が突然溢れ出した。  
「・・・は・・は、先輩・・・・」  
この蜜は自分のためにか兄のためになのか、分らない悦びの証に譲は泣き笑いになる。  
指に蜜を絡ませ続けているうち、望美の寝顔はいつの間にか桜色に染まり、  
吐息ばかりがとめどなく出る唇ばかりが誘うようにふわふわと動いている。  
「・・先輩、今だけ俺のもので居てください」  
そっと自分のものを望美の奥深くうずめた。  
 
「っんん、せんぱ・・・いっ」  
眠っているはずの躰が自分を強く捕らえ、腰がくすぐられた様に動いてしまう。  
「・・・はぁ、先輩・・・先輩・・・」  
幾度も自分をぶつけた。  
この快楽は俺のものか兄さんのものか、既に先輩の心は兄さんでいっぱいなのか、  
どう足掻いてもいずれ兄さんに奪われてしまうのか・・・。  
「あぁ・・・先輩、先輩、・・・のぞみさ・・ん・・・っっ!!」  
頭を締め付けるのが快楽か苦しさか分らないままに、譲は果てた。  
「・・・はぁん・・・」  
望美は一つ吐息を漏らして言った  
「・・・イヤ」  
するりと将臣君自身が侵入してきた 
「っふぁ、あぁぁぁぁん」  
イヤだと分っているのにいやらしい声が盛大に出る、  
イヤだと口にしようとするほど激しく喘いでしまう。  
「ああぁん、あぁん、はぁぁん」  
「お前躰が素直すぎだぜ」将臣君が口を歪めて笑う。  
「中も最高に気持ちいいしよっ」将臣君が何度も腰を打ちつけてくる。  
体全体がガクガクと揺さぶられるまま、されるままに声を出す。  
イヤ、イヤ・・・なのに躰が確実に感じている、体の輪郭が溶けてなくなるように  
将臣君がするとおりに感じてしまう。  
「そろそろ・・・イクぞ」  
一層激しいストロークに自分の意思じゃない嬌声に声がわなく。  
イヤ、イヤ・・・こんなに自分がいやらしい女と知ったら、彼はどんなにか冷たく私を見るか、  
もうやさしく微笑んではくれないだろう。  
「はっぁん・・たす・・けて・・ゆずる・・くん・・・・・・・っっう・・・はぁん・・・」  
達するのと同時に胸が張り裂ける。  
「・・・イヤ」  
 
机の上に何かがポタポタ落ちるのを聞いた、しずく?涙?私?泣いてる?  
「っおい、望美、どうした、大丈夫か?」  
大丈夫って何度も言ったのに大丈夫か?はないでしょう!  
言う代わりにできたのは弛緩したまま精一杯にらみ付けた。  
将臣君は、見た事がない程やさしく笑ったまま泣いていた。  
「ごめん、な。そんな気がしていたんだ、いつかハッキリされちまう日が来るの分ってた。  
本当はこの世界のどこかに居ないか探し出して連れ去りたかったのにな、  
飛ばされた先まで譲と同じなんて、お前らホント縁があるな、かなわねぇよ。  
ごめんな、俺のこと許さなくてもいい、忘れてくれ。ごめんな。」  
将臣君の「ごめんな」を何度も聞いているうちに黄昏の教室が白く光りだした。  
「将臣君、忘れるなんて無理だよ」  
泣きながら私が言った事は彼に届いただろうか。  
 
 
ものの程度でよく「死ぬほど」というけど、譲は今ほど「死ぬほど」後悔したことはなかった。  
後悔の余り死ぬなら死んでしまいたい、一番大切な人をほかならぬ自分が傷つけたのだ、  
しかも夢の中からも拒絶されるとは・・・。  
悄然と望美の枕元で正座をしたまま、譲は逡巡し続けた、  
このまま夜具を整え自分のしたことをなかった事にすべきか、  
目覚めた望美に正直に伝えてそのまま、嫌われてしまうか。  
既に自分が最低なのは分った、しかし少しでもマシな手立てはないか。  
悶々考え、ふと望美に目をやると彼女はパッチリ目覚めていた。  
「っっ!!せ、先輩、あの、す・・・」  
「・・・譲君っ」  
譲が何か言おうとしたのを遮って、望美は抱きついて泣き出した。  
「どうしたんですか先輩、こんなに震えて、怖い夢でも見たんですか」  
「夢、見たよ、怖くて切ない夢。・・・もう少しこうしてもいい?」  
そこで譲は腹を決めた。  
ええ、先輩、あなたが望むだけ、こうしていても、憎んでもいいですよ。  
 
 

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