「「ジャンケンホイ!ッショ!ッショ!」」
大の男が小学生のように気迫のこもった声で、ジャンケンをしている。
望美は風呂上がりの火照った身体に将臣がどこかから買ってきた大胆下着とベビードールを着け、
譲特製のマカ配合美容健康ジュースを飲みながら、ニコニコと二人のジャンケンを見守っている。
「「ウオォォッ!」」
勝った者と負けた者の雄叫びがそれぞれ上がって、勝った譲はすぐさま風呂場へ向かった。
「くっそぉ〜…」
負けた将臣が望美の座っているソファの隣へドサッと座り込む。
「たまには良いじゃない。譲くんはジャンケン弱んだから。」
「……」
将臣は面白くないと言わんばかりの顔で望美を睨め付けたが、その視線は自分の選んだ下着に包まれた
望美の肢体にねっとりと降りていく。
「…思った通りだ…似合うな…」
言いながら将臣は望美の太腿を撫で上げ、ベビードールの裾から中へと手を滑らせた。
「…あん…ありがと…」
望美が流し目で将臣に視線を送れば、将臣が答えるように胸を揉み上げる。
「なあ、今ここで一発ヤッちまおうぜ…」
将臣が耳もとで囁くと、望美はゾク、と身体を震わせたが、慌てて身体を反転させた。
「だ…ダメ!順番守らないと譲くんが可哀想じゃない!」
背中を向けて残ったジュースを一気飲みすると、すぐに立ち上がる。
「先に行ってるから!」
言い捨てて、望美はそそくさとリビングを出て行った。
「ちぇ…」
将臣は望美を見送ってからソファの背もたれに仰け反って天井を見上げる。
それから急に立ち上がって、風呂場へと向かった。
「なんだよ兄さん!いきなり入ってくるな!まったく、少しは待てないのかよ…!」
「お前、もうおっ立てやがって、張り切りすぎだっつの…」
有川家は、今日も賑やかである。
三人は、幸せだった。
同じ幼馴染みを愛してしまった兄弟。
兄弟のどちらかを選べなかった幼馴染み。
告白と嫉妬と戸惑いと、後悔と諦めと別離と、決意と再燃と涙と。
何年も、何年も悩んで傷ついて。
それから長い話し合いの末。
三人は、三人で愛し合うことを選んだ。
戸籍なんてどうでも良かった。
家族にも異論を唱える者はなかった。
春日家の娘が、有川家へ嫁に行く。
嫁に行く先が長男であろうと次男であろうと、隣接した二つの家の生活に大きな差はない。
子供達の悩む姿を見て苦しんできた親達も、早く苦しみから開放されたかったのだ。
「…あ…あっ…譲くんっ…もう…ダメ…!」
「…先輩…ああ…すご…い…俺も…っ…」
風呂から上がった将臣が寝室に入ると、譲が早くも絶頂の時を迎えていた。
もうそろそろ慣れても良かろうに、譲は未だに望美の絶頂の締め付けに耐えられないらしい。
ちなみに未だ先輩呼びなのは、何故か先輩と呼ばれると濡れる望美の嗜好に合わせている。
「…ああっ…!」
「…せんぱい…っ!」
将臣は二人の絶頂を見せつけられて焼けるような自身を持て余しながら、サイドボードに譲が用意した缶ビールを開けて口を付けた。
先ほどルール違反をしようとして望美に怒られた将臣にだって、一応の武士道がある。
二人の様子では将臣が来たことも気付いていないようだが、将臣だって最高の瞬間を邪魔するほど野暮ではない。
精を望美に注ぎ込んで、一旦ガクリと崩れた譲だったが、そのまま望美から離れずに口付けなどし始めた。
「…先輩には敵わないな…良すぎるんですよ…」
譲が甘く囁くと、望美が照れ臭そうに目を細める。
「譲、自分の早漏を望美のせいにするなよ。」
バスローブを脱ぎながら将臣が茶々を入れると、二人はギョッとして将臣を振り向いた。
「将臣くん…!」
「…兄さんが遅漏なだけだろ…先輩は名器ですよ。」
譲は慰めるように望美の頬へキスをすると、名残惜しそうにベッドを離れた。
入れ替わりに、将臣がベッドへ向かう。
「ま、望美が名器なのは認めるけどな…」
身体を桃色に染めてベッドへ横たわる望美が、恥じらいに身をくねらせた。
将臣はベッドに片手を付いて軽い身のこなしで望美の足もとに飛び乗る。
譲に注がれた白濁を垂れ流したままの花芯をしばらく眺めてから、将臣はいきなりそこへ割り込んだ。
「ひゃ…あんっ…も…将臣くん…乱暴…」
ぺしん、と力なく将臣の胸板を叩いた望美だが、すぐにその手は将臣の背中に回る。
「前戯は終わってるだろ…」
形だけの悪態をむしろ悦ぶように将臣が淫靡な笑みを見せれば、望美はその笑みに酔ったように瞳を閉じた。
「あ…そこ…い…ダメ…」
早くも望美が乱れ始める。
4年近く京女やら平家の女房やらに色んな意味でシゴかれ続けた将臣である。
望美の反応を見ながら好い場所を突くなんてテクは、朝飯前だ。
譲がバスローブを羽織っただけの姿でサイドボードに寄りかかり、腕組みをしてそれをジッと見据えている。
睨むようなその瞳は、嫉妬と言うより向学心。
「…ああっ…いやぁ…またイっちゃ…んんっ…」
瞳を潤ませて懇願する望美にも、将臣は余裕の笑みを浮かべたままだ。
望美に翻弄されるばかりの譲にはまだ、ここまで望美を乱れさせることはできない。
「…あはぁぁっ…!」
望美が仰け反って、絶頂を知らせる。
ぐったりと身体を弛緩させて荒い息を吐く望美に、将臣は腰の動きを緩めると、今度は優しく触れ始めた。
「…何度見ても可愛いな…またお前をイかせたくなっちまう…」
唇や首筋、耳朶や胸など、あらゆる場所にキスを落とし、舌で舐め上げる。
もちろん下半身も休んでなどいない。
円を描くように掻き回したり、上壁を擦ってみたり、奥まで突いてみたり。
絶頂に荒く乱れた望美の息が落ち着き、うっとりと戯れの行為を受け入れ始めると、将臣は身体を起こした。
身体を繋げたまま望美の片脚を抱え、鮮やかに横からの体位へと移行する。
「…ん…あっ…んはっ…」
将臣に絶対的信頼を置く望美の方も、すぐに横壁を突かれる感覚へ意識を沈ませる。
再び将臣が動く。
抱えていた脚を反対側に降ろすと、望美の身体を引きずり上げて膝立ちにさせた。
「…や…あ…んんっ…」
後ろから攻められ始めても、相変わらず望美は従順に快楽を貪っている。
「兄さん…先輩を玩具みたいに扱うなよ…壊れてしまいそうだ…」
譲が耐えられずに口を挟んだ。
だが、その身体は望美を乱暴に扱う様子に反応して熱く猛っている。
「望美が良がってるんだ、ノープロブレムだろ。」
意に介さない将臣の様子に、譲は小さくため息を吐いてバスローブを脱いだ。
うつ伏せになって喘いでいる望美の前へ、身体を滑り込ませて座る。
「先輩、見て下さい。さっきイッたばかりなのに、もうこんなに大きくなって、硬くなってしまっているんです。俺がどんなに先輩を愛しているか、分かってくれますか…?」
望美が夢から目を覚ましたように譲自身を見る。
「…ん…うれし…よ…」
そのまま望美はとろけた笑みを見せて、いきり立った譲自身に舌を這わせた。
「…っ…」
譲がそれだけでゾクゾクと身体を震わせる。
もちろん望美の後ろでは、将臣が相変わらずマイペースで望美を攻め立てている。
「デカけりゃいいってもんじゃねぇぜ。見てろ…!」
言うと、将臣は片手を望美の花芽へと伸ばした。
「…あ…!」
花芽を擦られて、望美が譲自身から唇を離す。
「先輩…俺のことも忘れないで…」
譲がそれを追いかけて、自身の先端を望美の口内へ押し込む。
「…ん!…んむ!…んぅ!…」
口内を塞がれた望美の嬌声が、悲鳴のようになった。
将臣に与えられる快楽に溺れながらも、狂ったように譲自身に吸い付いている。
「…あ…せんぱ…上手です…」
譲が息を荒げながら望美に合わせて腰を動かし、愛おしそうに望美の髪を掻き乱す。
花芽を刺激され、後ろと前から内を満たされ、否応なく登り詰めていく望美。
将臣とて、そんな望美に締め付けられて何も感じないわけではない。
余裕の笑みを浮かべながらも、精神力とテクニックで幾度となく波をやり過ごしているのだ。
「そろそろイっとくか…」
掠れた声で呟くと、将臣は高速で望美を突き始めた。
「…あ!…っあ!…あぁ!…」
譲を舐めていられなくなった望美が、仰け反って喘ぐ。
差し出された乳房を譲が揉みしだくと、望美の身体が痙攣した。
「…あああっ!…」
「…のぞみ…っ…」
望美の絶頂と同時に将臣も精を吐き出す。
崩れ落ちた望美を譲が抱き留めて、将臣は礼の意を込めて望美の尻を撫でながら離れた。
「…良かったぜ、望美。」
呟くように言って、息を荒げたままベッドを降り、サイドボードの缶ビールを一気に飲み干す。
「ウマイッ!」
短く言って、将臣は空き缶を握り潰した。
ベッドでは、望美が譲の膝の上でぐったりとして髪を撫でられている。
「痛くなかったですか…?」
眠り込んでしまったかのように瞳を閉じる望美に、譲が囁く。
「…ん…だいじょ…ぶ…」
うっとりと答えてから、望美は気怠く身体を動かして、先ほどの続きとばかりに譲自身を舐め始めた。
「…っあ…!」
譲がビク、と震える。
が、譲は自身を貪り始めた望美の身体を抱き起こした。
「先輩、せっかくですけど…」
言いながら、望美を膝の上に座らせるべく軽々と持ち上げる。
将臣が注いだ精をトロトロと逆流させ始めた望美の花芯に自身の先端を合わせ、そのまま座らせると、
重力により奥深くを突かれた望美が仰け反った。
「…ひ…!」
声にならない悲鳴をあげた望美の唇を、容赦なく譲が塞ぐ。
舌を絡め合う淫猥なキスをひとしきり楽しんでから、譲はやっと唇を離して言葉を継いだ。
「…この方がきっと、あなたにも悦んでもらえる…ほら、こうすれば、奥まで届くでしょう…?」
「…あぁ…ゆずるく…おっきいの…くるよぉ…」
譲が下から突き上げる度、望美がビクンビクンと震えてうわごとのような言葉を漏らす。
「…それに、これならあなたの舌も同時に味わえる…ねえ先輩、さっきしていたように俺の舌を舐めて…」
言われるまま、望美は先ほど譲自身にしていたように、譲の舌や唇を舐め始めた。
「…ん…は…」
望美の行為に低く喘ぎ声を漏らしながら、譲は望美を突き上げている。
「…あ…んぅ…っふ…」
譲の首に腕を回し、望美は最奥への甘い蹂躙をそのまま返すが如く、譲の舌に吸い付いている。
「…ぁ…あ…」
快楽へ意識を奪われて、譲がうっとりと目を閉じる。
「…んむ…んふ…」
望美も焦点の合わない瞳を半分開いて、本能の赴くまま、行為に夢中だ。
「…大きいだの硬いだのって…ただ突っ込んでるだけの奴に言われたくねぇよ…」
2本目の缶ビールを飲んでいた将臣が、ひとりごちる。
望美のことしか考えていない譲の言葉が微妙にコンプレックスを刺激するのだ。
端から見れば、あまりに仲睦まじく上下共に塞ぎ合っている二人。
憮然としてしばらく見ていた将臣だったが、急にニヤリと笑んだ。
我を忘れている二人に、そっと近づく。
いきなり譲を後ろに倒すと、あっけなく二人は繋がったままベッドに寝転んだ。
「…!…兄さん!」
「…?」
憮然とする譲と、その上に乗ってぼんやりとした顔をこちらに向ける望美。
「まあそう怒るなって。もっと気持ち良くしてやるからさ。」
二人の足もとに座り込みながら、将臣は不敵に笑んで。
指をひと舐めしてから、望美の後孔に侵入させる。
「「…ぁ!」」
望美がビク、と震えて譲に縋る。
同時に譲が強く締め付けられて望美と似たような声を漏らした。
「な、イイだろ。」
将臣はそう言って望美から指を引き抜くと、代わりに屹立した自身をゆっくりと埋め込む。
「「…ぁああ!…」」
望美が譲に爪を立てながら首を振って、譲も締め付けと壁越しの将臣を感じて顎を浮かせる。
「やっぱイイよな、コレ。」
三人で悦くなる手っ取り早い方法は、かなり早い段階で将臣が指南した。
初心な二人の震えが収まるのを待ってから、将臣が優しく声を掛ける。
「いくぜ…?」
返事もなく快楽に荒い息を吐いている二人の状態を了解と受け取って、将臣は抜き差しを始める。
「…っあ!…ああっ!…やぁ!…」
ほどなく、譲もそれに合わせて動き始めた。
息の合ったリズムで、望美を同時に突き上げる。
さすがは兄弟。
「…望美…ホントお前、最高だな…」
「…う…せんぱぃ…キツ過ぎて…俺…」
「…ああ!…っぁ!…二人とも…大好き…!」
三人分の体重が、ベッドをうるさいほど軋ませる。
「今夜もお盛んなようね?」
階下の寝室で、有川母が囁いた。
「そうだな。この分なら近いうちに孫の顔が見られるんじゃないか?」
暗闇の中、有川父が笑んだ声を返す。
「そうね。ああ、楽しみだわ。誰に似ても、きっと可愛い良い子よ。」
「ああ。それに優しい子に違いない。」
有川家は、今夜も幸せに包まれて眠りにつく。