冷えた月が僕を見下している  
いつだって背中に付いて回るそれから、僕は身を隠す術を知らない  
狂ったように光り輝くそれは、僕を酷く狂わせる  
だから僕は、いつだって君を傷付けることしかできない  
 
狂い月  
 
ある日、〈白龍の神子〉という駒が、男の手の中に転がり落ちてきた。年端もいかぬ少女は、彼にとって、そして源氏にとって、とても都合がよく便利な存在だった。  
彼女は純粋で優しく、柔軟な考えを持ち、初めから彼の言葉をよく聞いた。  
弁慶は、御しやすい初心な少女に好感を抱くと同時に、傍らに立つことで苛立ちと居た堪れなさを感じていた。なぜか。  
―彼女を見つめることは、己の罪を見つめるに同じ。  
神を呪った罰を与えられた。  
神子を守る八葉に選ばれたことで、清らかな少女はいつも彼に屈託のない笑顔を向ける。  
容易に、純粋に信頼を寄せ、彼を疑いもしない。  
無防備に近づいて、恋心を隠そうともしない。  
彼女を手酷く裏切っても、責めようともしない。  
(そして簡単に傷付く…いや、違うな。僕はわざと傷付けてきた)  
近づくなと暗に言い聞かせるため、優しい言葉をかけた後は、冷たく突き放した。  
だから、彼女の心が離れるのは当然であり、それは一番に弁慶が願ったこと。  
(…酷い男に恋したのだと、気付いたのかな)  
最近―熊野に入ってから、望美の様子が一変した。  
道中。いつも弁慶の後ろを歩いていた少女が、彼の目を避けるように別の仲間といるようになり、極力接触を避け、目すらまともに合わせようとしない。  
徹底的に避けられている。そう感じた時、弁慶は無性に腹が立った。  
つい先日までは、どこに行くのか?誰と会うのか?一緒に行ってもいいか?正直うんざりする程に纏わりついてきたのに。  
―理由は何だ。嫌われるようなことをした覚えはあるが、なぜ突然?  
理由なく避けられていることに、腹を立てている自分に腹が立つ。  
理由を知れば納得するだろうと、今朝方濡れ縁で寝転ぶ少女を見つけ、なぜか始めから罵倒されたが―久々に会話らしい会話をした。  
そして、翡翠の目に宿るものに気付く。  
―憤りと、諦め。そして、押し隠した恐怖心。  
その目が不愉快で、酷く鼻についた。いつからそんな目を向けるようになったのか、慕情をむき出しにしていた、あの目はどこへ。  
寝不足だと聞いていたので、弁慶は彼女の為に薬を調合していた。懐には二つの薬包紙―普通の睡眠薬と、媚薬。  
彼女の言葉次第で、渡す方を決めようと思っていた。簡単に言えば、聞きたいことは体に聞いてしまおうという安易な考えだ。  
自分で作っておきながら、どこか冷静に、使うことはないだろうと考えていた。使えば後戻りができなくなる、苛立ちや怒りが湧き出る源流を自覚してしまう。  
媚薬を選んだのは、無意識だった。弁慶は不思議に思う。無意識に何かを選び取ってしまうことなど、経験にないことだった。  
―つまり、もう後には戻れないということだ。  
〈復讐〉だと言い、弁慶を縛り付けた彼女は、終始泣きそうな顔をしていた。  
その後庭に立ち、白い鱗を握りしめた彼女は確かに、一人でどこかに行こうとしていた。  
(そんなこと…神が許しても、僕が許しませんよ)  
*  
月を見上げながら、黙考していたらしい。  
フッと自嘲(わら)いが零れ、腕の中の紫苑の前髪が揺れた。  
両の腕には少女の重み。漆黒の袈裟に包まれた肢体は温かく柔らかい。  
薬を嗅がせ眠らせたので、見下ろす男から翡翠の瞳は見えず、少女を抱いて静かに歩む足元には月光を受け、仄かに光る白い花―仙人草が咲き乱れて進む度に花弁が散る。  
フワリと夜風に舞ったそれが、望美の睫毛を撫で目蓋に落ちた。  
「……悪戯な花弁ですね」  
立ち止まり、くす…と誰に向けてでもなく笑む。  
濡れた薄い唇が白い花弁をくわえ、そのまま静かな寝息を立てている唇にそれを押し付けた。  
 
シャラ  
その時、首に下げた金色の鎖が音を立てた。  
規則正しく上下する胸に白い鱗が落ちて、それを合図に唇を放す。  
そして、それを握り潰したい衝動に駆られ手を伸ばした。その時。  
「………んけ…い、さ…」  
少女の唇が動く。目覚めたのかと思ったが、未だ夢の中にいるようだ。  
「………」  
弁慶は視線を虚空に向けて逡巡する。そして土がむき出しになっている地面に、何かを見つけた。  
―パリン  
少し力を入れただけで、足元に転がった白い陶器のような欠片は割れた。  
弁慶は屈んで、片手だけで少女を支える。そして、赤ん坊の拳ほどの割れた欠片に手を伸ばして、懐にしまう。  
安らかに眠る少女を見下ろすと困ったような笑みを浮かべ、闇夜を照らす三日月から逃げるように、その場を後にした。  
*  
ジャラ…ジャラ  
夏の虫しか鳴かない深夜。  
柱から伸びた四本の長い鎖が立てる、耳障りな金属音が暗い小舎に響く。  
そこは熊野にいくつかある弁慶の隠れ家の一つで、荒ら屋とまではいかないが、お世辞にも手入れが行き届いているとは言えない建物だ。  
埃を被った葛篭、以前は武器の隠し場所だったのか、中には物騒なものも無造作に転がっている。  
「無駄ですよ」  
暗闇の中、床の上で必死に蠢く影に、からかう様な声がかかる。  
「!?」  
小舎の中に自分以外の人間がいると思わなかったのか、望美は弾かれたように声のした方向―宵闇の中を見つめた。  
黒い影が灯明台の油に火を点け、灯りが燈される。  
「…ずっと見てたんですか?」  
よく知った顔の男は、目覚めた望美が四肢を鎖に繋がれてもがいているのを、物陰でずっと見ていたらしい。  
趣味が悪いと非難する視線を、弁慶は人を食った微笑みで難なくかわす。  
「ええ、なかなかそそられましたが…眠っている君を抱くなんて無粋なことはできませんし、僕のほうが拷問を受けているようでしたよ」  
飄々と言いながら少女に歩み寄り、覆い被さる。  
そして小さな頭を挟むように、褥―彼の袈裟に手をつく。  
「ひ……人を、呼びますよ」  
情欲を孕んだ熱い視線が注がれている。声が震える。  
体を捩ることもできず、視線から逃げるように顔を逸らして褥を握りしめた。  
「気付いているんでしょう、無駄だと。…ここは僕の隠れ家なんです、邪魔は入りませんので何も心配いりませんよ」  
男は意地悪く微笑むと、震えている華奢な体に、自分の体を重ねる。  
望美は着衣と着衣越しに彼の高い体温と昂ぶる熱を感じ、青ざめていた頬にカッと朱を差す。  
そして、怯えた瞳を悟られまいと目蓋を閉じる。  
「あの…許して……って言っても」  
「聞けませんね。手足は十分に動くはずなので、頑張って抵抗して下さい」  
力で抵抗して叶うはずがないと分かっていて、わざと鎖に余裕をもたせているのだ。  
望美は思わず引き攣った笑みを浮かべ、背中を伝う冷たい汗を感じた。  
「そんな…無理、です」  
酷い恐怖と激しい恋情が綯い交ぜになって震えが増し、目がじわりと熱くなる。  
「そうですか」  
男は眉一つ動かさず、静かに言う。  
左手で褥を握っていた手を引き剥がし、指を組んで重ね、褥に縫いつけた。  
「…あっ……弁慶さん…やだ…ッ!!」  
女性のように滑らかな手の平が、短いスカートから伸びた白い内股をさわりと撫でる。  
一撫でされただけで、腰から背筋へと這い上がる得体の知れない疼き。  
 
「ん…っ!…だめです…だめ…」  
望美は、その手に触れられただけで、どうにかなってしまいそうだった。  
これ以上を許さないように足を閉じようとしたが、先を読んだ男の体が容易に割り込んでくる。  
「触れているだけです、望美さん…そんなに怖がらないで」  
小刻みに震えている柔らかな内股に、右手がゆっくりと這う。  
袋小路に追いつめられるような気分なのに、撫でる手は優しく、探る指の甘い感触に、望美は泣きそうになった。  
「だめぇっ!触らないで…!!」  
仕舞いには足の付け根に到達し、指がそこを探る。  
唯一自由な左腕を動かし、肘を床について後に逃げようとするが、右手は褥に縫い付けられたままだ。  
体に伸し掛かる男の重みも相俟って、抵抗は後頭部と背中が褥の上を滑るだけで終わってしまう。  
「おかしいですね、望美さん。…肌着が濡れています」  
弁慶は股の間の膨らみを親指で押しつぶすように、純白のショーツに触れる。それは色が変わるほどしとどに濡れ、本来の役割を成していない。  
「ほら、音がしますよ…いやらしいな」  
肌に張り付いたショーツを指の腹で上下に擦るだけで、くちゅくちゅと淫らな音を立てる。  
「やだ…っ…やめて!」  
左手を伸ばして悪戯に動く弁慶の手を止めようとするが、袖にしか手が届かない。  
「足に触れただけでこうはなりませんよね。もしかして…君は僕を辱めながら、ここを濡らしていたんですか?」  
懸命に若草色の袖を引っ張っていた手が、ぴたりと止まる。  
「…そうなんですね。全く君という人は」  
琥珀の瞳を細め、望美を見下す。呆れとからかいが混ざった視線と口調。  
「ち…がいます…違います!」  
体中が熱くなり、余りの羞恥に見開かれた翡翠の瞳が潤む。  
「君は素直で、嘘が吐けない人だ…だから、酷く虐めたくなるんです」  
「べんけ…さ…っ!…ふぅ…ン…ぅん」  
今にも泣きそうな望美に、不意打ちに噛み付くようなキスをする。  
戦慄く薄紅の唇を割って舌を入れ、咥内を舌先で擽り弄ぶ。  
何度も方向を変え、柔らかな口唇を貪りながら、右手だけで器用に帯紐を解いて一斤染の単衣を脱がしていく。  
「はぁ…ん、く…ふぅん…」  
首を振り、左手で弁慶の胸を押して抵抗していた望美だが、次第に艶かしい舌の動きに翻弄され、巧みな口付けに夢中になっていく。  
「っ……ふふ…綺麗な肌ですね、僕は見慣れているけれど」  
唇を放すと、口付けに酔ったような翡翠の瞳が名残惜しげに男を見上げる。  
弁慶は最後に、チュッと濡れて艶めく唇を吸った。  
「はぁ…はぁ…や…めて…下さい、そんな言い方」  
膨らみを隠している、さらしの上に注がれる視線。  
望美は彼の視線が恥ずかしくて、居たたまれなくて、両手で隠そうとするが、両腕を掴まれてしまった。  
「ねえ、望美さん。傷を作った時や、気分の優れない君を診るとき……わざとこの肌に触れていたのに気付いていましたか」  
「!?」  
望美は彼のことを接触過多な人だと思っていたが、薬師としての癖かなにかだと思うようにしていたので、衝撃を受ける。  
が、やっぱりそうなのか、とも納得してしまった。  
「軽蔑しますか?…でも、君も僕を意識してくれていましたね。それが嬉しくて、つい」  
いつも怪我をする度に手を煩わせ、申し訳なくて謝ると『これも役得ですよ』と、彼が冗談混じりに言うのだ。  
その度に、その視線が気になってしまい紅潮して、患部や肌に指が触れると小さく跳ねてしまって、それを彼に笑われた。  
「ひ、ひど…すごく恥ずかしかったのに…弁慶さんの馬鹿!!」  
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、自分を組み敷く男を蹴り上げたくなったが、足に体重が掛けられていて出来そうにない。  
望美はギリリと歯噛みした。  
「…今も?……ずっと震えているのは、僕が恐ろしいから?それとも、他に理由が?」  
羞恥に染まる頬を、手の甲でさらさらと撫でる。  
ねえ、答えて―と、耳朶を甘く食(は)み、熱を籠めて囁く。  
 
「…………っ」  
僕が好きか?そう、遠回しに聞いている。  
―素直に、好きだと言えば、彼は生きてくれるのだろうか。  
怖い。望美は、彼と肌を合わせることも、彼がこの世から居なくなることも怖い。  
答えられず、ぎゅっと、絡み合った指に力を入れた。  
「……そうですか…君はそうやって、僕の心を滅茶苦茶に掻き乱す…とても、不愉快です」  
弁慶は、口を噤んで涙を溜める望美に微笑む。  
「きゃ!…いゃああぁ!!」  
―ビリッ!ビリビリ…  
さらしが形の整った爪に引き裂かれる。  
解放された果実のような乳房が、弁慶の眼前でぷるんと弾んだ。  
「君がこんな仕打ちを受けているのは、なぜでしょう?一生懸命、僕に許しを乞うて下さいね」  
いい子いい子と紫苑の髪を撫で、残酷な言葉を放つ。  
「べ、弁慶さ…やだ、こんなの、やめてください!私、弁慶さんが…!」  
かぶりを振って、豊かな双丘を両手で隠す望美を、弁慶は感情の見えない瞳で見下ろし、薄い唇を開く。  
「もう、どちらでも構いません」  
望美の顔が凍るのを見て、男は優しげな笑みを深める。  
―どちらでも構わない。好きでも、嫌いでも。  
「………弁慶、さん?」  
瞳が溢れんばかりに見開かれ、弁慶を見上げていた。  
「望美さん。君の体で僕を鎮めてくれますね?」  
「…し…ず?」  
壊れた人形のように、かくりと首を傾げる望美。  
弁慶は柔和な笑みを仮面のようにずっと貼り付けたまま、冷たい琥珀色を少女に向ける。  
そして、胸元で交差させている細い手を掴み、着物を押し上げている荒ぶった自身に導く。  
「!」  
衣越しでも伝わるその熱さに、思わず手を引くが、男の力が許さない。  
「分かったでしょう。この淫らな体で…僕の気が済むまで奉仕するんです」  
ポロリと、真珠のような涙が目尻から溢れ落ちて、黒い褥を濡らした。  
「わ…たし…」  
唇が錆付いてしまったかのように、上手く言葉が紡げない。  
そこに男の指先がぴたりと当てられ、遮られる。  
「…分からない。とは言わせませんよ。誰に教えられたか知りませんが、ちゃんと僕を愉しませて下さいね?」  
縋るような瞳で見上げてくる少女に、辛辣な言葉を浴びせる。  
止めどなく綺麗な雫を溢す目蓋に愛しげなキスを落とし、男は微笑った。  
*  
「こんなに震えて…先程も同じことをしたでしょうに」  
灯明油が燃え、影がユラユラと頼りなく揺れている。  
聞こえるのは、口調は気遣わしげだが淡々として感情の読めない男の声と、衣擦れの音、そして緩慢に揺れる鎖の音。  
しゅる…  
鎖に繋れたままの少女は膝立ちになり、震える指で藍鉄色の帯紐を解く。  
着物がはらりと肌蹴、細身の体が露になった。  
「……っ!」  
常に漆黒の衣で隠している肌は、どこも女性のように白い。  
だが筋肉が隆起し、引き締まっている男らしい体つきに異性を感じ、恐怖から手が止まってしまう。  
「僕を焦らしてはいけませんよ、望美さん」  
「あっ…!」  
ジャラ!  
鎖がうねる。弁慶は肢体を乱暴に引き寄せ、胸に抱いた。  
「待つのは得意ですが、別に好きなわけではないんです」  
髪にかかる甘い吐息。  
触れ合った素肌。  
頬には熱い体温。  
耳からは早い鼓動。  
全身に弁慶を感じて、ぞわりと体が戦慄く。  
 
「…ン……ごめんなさい、弁慶さん」  
ちゅ、と鎖骨の薄い皮膚を啄ばみ、見上げる。  
男の肌は汗ばんで、しっとりと望美の唇に、肌に馴染む。  
「……上手ですね、可愛いな」  
チロチロと猫のように舌を這わせ、皮膚の薄い箇所に柔らかな唇で吸い付き、男の体に幾つもの赤い花を散らす。  
「君は…僕の知らないところで、こんなことを覚えて……ふふ」  
弁慶は懸命に胸の飾りを吸う少女の髪を、さらさらと撫でる。  
そして一房掬うと、口付けながら低く囁く。  
「…殺してやりたい」  
「っ!」  
生まれた殺気に、条件反射で細い肩が跳ねる。  
望美が恐る恐る見上げると、そこには悋気に燃える瞳があった。笑みの形のままで、薄い唇が動く。  
―君に、こんなことを教えた男を。  
「……弁慶さんは私のために、そこまでしないですよ」  
「ふ……そう思いますか」  
何か諦めたような、悟ったような少女の目が不快で、髪をついと上に引く。  
「い…ッ」  
痛みに小さく悲鳴を上げた少女の後頭を撫ぜ、首元に擦り寄る。  
「お口が疎かですよ?僕の忍耐が長く持てばいいけれど…どうしようかな」  
ぴくりと肩が震えた。  
それを合図に弁慶がくつくつと喉を鳴らして笑い、息を深く吸った。  
髪から芳る仄かな甘い香りが鼻孔を擽り、また新たな熱を生み、誘う。  
「僕の忍耐が持てばいいけれど…あれは特製の媚薬だから、もし君を抱いてしまったら朝まで衝動が止まらないかもしれないな」  
中途半端に脱げた一斤染の単衣。  
そこから剥き出しになった丸みのある細い肩に、時間をかけて吸い付く。  
白い肌に、赤い花弁が残った。  
「ッ!…ちゃんと、します…から」  
翡翠の瞳に、緊張と焦り、恐怖心が宿る。  
「…嬉しいな、では期待していますね」  
望美は弁慶が立ち上がるのを確認し、今にも大口袴を突き破りそうな昂った中心に手を伸ばす。鎖が耳障りな音を立てた。  
隆起した塊を、白衣の上から柔く撫でる。  
「あ……濡れ、て」  
しっとりと濡れていながら、そこは熱された鉄のように熱い。  
「ずっと我慢していたんですよ。だから…褒めて、慰めて欲しいな」  
子供が甘えるような口調で言い、大きな手の平が、望美の頭を掴む。  
「さあ、望美さん」  
名前を呼ばれる。お願いではなく、それは命令に聞こえた。  
―咥えろ、と。  
弁慶は衣をずらし、己の昂りを外気に解放した。  
遮るものを無くしたそれは、望美の眼前で勢い良く跳ね上がり、揺れて天を仰ぐ。  
「っ!……べ、弁慶さん…さっきより、も」  
以前見た時よりも太く、反り返った雄々しいそれを見て望美は狼狽え、そして尻込みする。  
「それはそうです、今は縛られていませんし。それにこんな可愛いらしい君を目にしたら…僕も男ですから」  
なぜか照れた顔をし、長い蜂蜜色の髪を指先でくるくると弄ぶ。  
 
「………あの…口に」  
先端部分が口に入るのかすら怪しく、じりじりと後退る。  
「入るところまででいいんですよ。ほら…」  
有無を言わせず括れた太い先端を、濡れた唇にぴたぴたと当てた。  
「待って、べっ…むぅ、…ふう…!」  
望美が思わず拒否の声を上げた瞬間を狙い、グイと唇を割った先端が、狭い咥内に無理矢理押し入ってくる。  
―顎が外れる!  
圧倒的な質量が唇から喉奥までを占領し、余りの息苦しさにボロボロと涙を溢す。  
「…さあ、半分入りましたよ。大分苦しいようですね」  
吐き出さないように、歯を立てないように、そればかりで頷くこともできず、奉仕などできそうもない。  
苦しいと必死に目で訴えたのが通じたのか、熱の塊がゆっくりと外に引かれた。  
―ああ、よかった。と胸を撫で下ろす。  
「では始めは僕が動きます。…君は体を使って下さい」  
逞しい両手が、頭をがしっと掴む。  
ズンッ、ズンッ、ズンッ  
弁慶は腰を前後に振り、欲望を少女の喉奥に突き立てた。  
「ンーーーーッ!!!」  
悲鳴混じりに呻く望美。首はぴくりとも動かせず、とっさに腹を殴ろうとした腕は片手で掴まれ、自身の豊かな乳房へ導かれる。  
「ほら…こうやって、挟んで扱くんです。…出来るでしょう?」  
無遠慮に腰を振りながら更なる奉仕を命じた男は、望美をじっと見下ろす。  
―君はいつ音を上げるのか、どこまで僕に従うのか。と、好奇に満ちた、探るような目で。  
「………っ!」  
腹が立って、望美は自分を見下ろす男をキッと睨みつける。  
そして暫しの躊躇いの後、ゆっくりと両手を動かす。乱暴に口唇に出入りをしている、長い肉茎を、大きな白桃のような双乳で挟む。  
ぬちゅっ、ぬちゅ…くちゅ!  
拙い動きが要領を得て、徐々に速さを増す。  
男の腹と豊乳に挟まれ、密着した彼の分身が悦ぶ。鈴口から止め処なく淫涙を溢して、扱き上げられる度に淫音を立てた。  
「望美、さん……君の口も、胸も、全部柔くて…ふふふ、腰が蕩けてしまいそうですよ」  
鼻をつく男の匂いに眉を寄せながら、望美は必死に舌を動かし、ぎこちない口淫をする。  
「く…ぅ、はぁ…ふぅうンん…」  
鼻にかかった吐息を洩し、舌先で先端や裏筋を擽り、つつく。  
望美の唾液と弁慶の先汁が混ざり、ふっくらとした唇の端からダラダラと淫液が溢れる。顎を伝った半透明のそれは、糸を引いて白い胸元に落ちていく。  
「…ふふっ、そんなに乱れて。早く終わらせたいですか?」  
硬い手の甲で赤い頬を撫ぜ、涙を拭うと翡翠の瞳を覗きこむ。  
望美は奉仕を続けながら、小刻みに何度も首を縦に振った。  
「んんー!くぅ、ふうぅぅうッ」  
―許して!もうしませんから。と言ったところか。  
懸命に舌を絡め、ちゅうちゅうと口を窄めて、弁慶の怒張を鎮めようと吸い付いてくる。  
「では、ここからは一人で頑張って下さい。僕は見ていますから」  
望美は眉を顰めたが、コクリと頷く。一度塊から口を放すと、濡れて生々しく艶めく赤黒い杭と小さな舌が、名残の糸でツウと繋がった。  
「…ふはぁ……はぁ…」  
肉茎の根元にぶら下がる大きく膨らんだ双球を、唾液を絡めた舌で、じぷっと舐め上げる。  
片方を口一杯に含むと、舌でそれを弄び、転がす。  
「…ン、む……ふ…ぅっ」  
慣れない口淫をして舌も顎も疲れてきたのか、愛撫が緩慢な動きへと変わった。  
苦しそうな顔で弁慶の中心を手に包むと、ゆるゆると扱き上げる。  
「その調子では、最後までいけそうにありませんね。…もう降参してはどうです?」  
目を細め、意地の悪い笑みを浮かべた。  
往生際が悪く首を振る望美の白いスカートを捲り上げ、張りのある小さな尻を鷲掴みにして揉み、柔く撫でる。  
彼の指先の動きを感じ取ったのか、若草色の着物を握り締めて声を上げた。  
 
「やッ…待って!……弁慶さん、待っ」  
…ぐちゅり  
男の中指と人差し指が、涎を垂らす秘唇にショーツごと押し入る。  
下の唇は先程よりも濡れそぼっており、溢れた花蜜は既に内股まで伝っていた。指先は何の抵抗もなく肌着の布と共に蜜壷へ埋まり、淫靡で物欲しげな音を立てた。  
「ぁあああ…ッ!だめ…だめぇ」  
少女の悲鳴と鎖の悲鳴が同時に上がる。  
あられもなく、望美はまんぐり返しにされ、潤みきったショーツが無防備に弁慶に晒されてしまう。  
「君のここも正直で可愛いな…ひくひく動いて、早く僕が欲しいと言っていますよ」  
蜜で透けたショーツが、その下に鮮やかな桃色の花弁があることを教え、男を誘っている。  
「やだっ!!なんでも…言うこと聞きますから、そこは…」  
怯える少女の悲鳴は彼の鼓膜を刺激し、それは行為を止めるではなく促進剤となって、弁慶は甘く艶かしい香りに誘われるがままショーツをずらし、露になったそこに顔を寄せた。  
じゅぅうううぅ  
整った形の唇が開く。秘部全体を覆うように吸い付いて、蜜を啜り大きな淫音を立てる。  
「やぁあああ!!べ…弁慶さ…きた、汚いです、そこ!」  
望美は悲鳴を上げ、陸に上がった魚のように跳ねた。  
本来排泄口であるそこに口を付け、蜜で顔を汚す弁慶を直視できずに離れようともがく。  
「ン…どうして?君も僕にしたでしょう」  
くぷぷ  
熱い舌を蜜壷に突き入れ、高い鼻が充血し膨らんだ肉芽をぐりぐりと押す。  
「くぅう…だめぇええ、そこ押したら…ぁあん…!」  
甲高い声を上げてしまうのが恥ずかしいらしく、望美は褥を噛む。  
だが無意識に括れた細腰が浮き、男の頭の動きに合わせて押し付けるように揺れてしまっている。  
白い足が床に敷かれた弁慶の袈裟を何度も撫で皺を作り、足枷から伸びる鎖が忙しなく音を立てた。  
「辛いでしょう。一度果てますか?…頑張ったご褒美ですよ」  
膝裏を掴んだ腕の力は弱めずに、ふわりと微笑む。  
「やぁ…ん……は、はずかし…よぉ」  
くちゅっ、くちゅ…ぴちゃ…ちゅる…  
ぶんぶんと首を振る。耳を塞ぎたくなるような卑猥な水音が、望美の羞恥心を煽る。  
弁慶は構わず舌を蠢かせ、柔らかな膣内をぐちゃぐちゃと掻き回す。そして激しく出し入れし、蜜口を刺激した。  
「ぁあ……ふぅう…弁慶、さん…やっ」  
震える指が、弁慶の蜂蜜色の癖毛に弱々しく絡みついてくる。  
止めて欲しいと強請っているのだろうが、もっと欲しいと催促しているようにも見え、の欲情を更に刺激した。  
「……随分はしたない顔をしていますね。僕とするのは嫌だったのでしょう?」  
男は舌を締め付ける肉襞の動きを察し、喘ぎながら登り詰めていく望美の顔をジッと見つめ視姦し、言葉で辱める。  
「ぁ…!べんけ…さっ…い、じわる…ぁあんッ!…見ない、で」  
褥を噛むことも忘れてしまっている。呼吸が速く上気しており、上擦った甘い嬌声が、彼女の絶頂が近いことを弁慶に教えていた。  
「駄目ですよ、見せて……君の果てる顔が見たい」  
望美はせめてもの抵抗に力の入らない腕で顔を隠そうとするが、弛んだ鎖であっさりと腕を巻かれてしまう。  
「い…ちゃう…ぁああ…!…だめぇええ…!!」  
舌を注挿したまま指の腹でクリクリと蕾を捏ね、更に爪先で擽るように引っ掻くと、とぷっと蜜が溢れ出て弁慶の白い顔を濡らした。  
「ふぅうう、いぁああぁあ…ッ!」  
望美は舌をだらしなく突き出して背を弓なりに仰け反らせ、甲高い嬌声を張り上げる。  
びくびくびくっ!  
全身を電流が走ったかのように震わせ、果てた。  
四肢は硬直し、足を浮かせてピンと伸ばしたかと思えば、ぐったりと褥に沈む。  
「はぁ…はぁ…はぁ…………べんけ、さん?」  
が、弁慶はそれを許さず、沈む体を軽々と持ち上げた。  
「寝るにはまだ早いですよ…僕の気が済むまで付き合ってもらうと言ったでしょう」  
望美を抱えた男は胡坐をかき、ぽたぽたと愛蜜を滴らせる唇―望美の入り口に、滾った己の欲望をピタリと押し当てる。  
 
「だ…だめ!……ホントに…今日は、だめなんです…!」  
「……往生際が悪いですよ、望美さん。君の気持ちなんて知らないと言ったはずですよ」  
のたうち暴れる望美を軽く往なして、弁慶は柳眉を寄せ、顔を顰めた。  
「そんな…ちょっとくらい、聞いて下さい!あの、せ……生理が、先週終わったばかり、で」  
恐怖心で声が震える。鎖でぐるぐる巻きになった腕で、逞しい胸を押す。  
「知っていますよ。君の月のものの周期は君よりもしっかり把握しています。薬師ですから」  
「……ぇ……と?」  
所謂、今日は危険日なのだ。彼はそれを知っていると言う。  
最後の砦とも言える腕を退けられ、震えが増す。全てを見透かしたような彼の強い視線に、眩暈を覚えた。  
「……子供ができて困るのは君だけ。そんなことで僕から逃げようとしても無駄です」  
望美を抱えていた腕は腰と肩に回って、支えを失った体は自身の重みで深く沈む。  
そして、彼女を貫くことを待ち侘び、聳り立っている肉槍の上に落ちる。  
ズズッ、ズズズズ!  
望美は自分の体が貫かれ、抉られていく音を聞いた。  
狭い膣には許容外の質量。狂暴な肉槍が彼女の中に無理矢理押し入り、処女特有の狭い壁を引き裂くように拡げる。  
「…………ぁ、く」  
その瞬間感じたのは、自分の中の自分のものではない熱、そして酷い息苦しさ。入り口から、一気に最奥を突かれた大きな衝撃に声が出ず、ただただ唇が戦慄く。  
「………………あの……望美、さん?」  
―狭すぎる。  
弁慶は眉根を寄せ、余りの狭さに違和感を覚えた。そして、苦痛に顔を歪め、呼吸さえままならない望美の様子を窺う。  
経験と感覚で分かるものだが、相手の反応を見れば尚更、確信する。  
「………ば……か…!」  
望美は下腹部が痛んで力が入らないのか、幼子が駄々を捏ねて殴るような力で、彼の胸を叩く。  
「すみません、望美さん。初めてだと思わなくて……」  
「…そうじゃ……ない……そうじゃないのに」  
今度は、先程よりも強い力で叩く。  
弁慶は痛みを感じるほど幾度も叩かれたが、それを止めさせる気にはなれなかった。  
「なんで………そんなに自分勝手なの…私の気持ちなんて、なんにも…ッ!」  
ドンッ  
望美は突然の衝撃に驚き、目を瞑る。声が出ないと思ったら、床に叩き付けられていたらしい。  
顔半分を灯明かりに照らされた男が、泣きそうな瞳をして見下ろしている。  
「望美さん……僕は、酷い男です。君に嫌われて当然で、始めから好かれるほうがおかしいんです」  
「………嫌う…って」  
―そんなのは、とっくに諦めた。  
どうやっても嫌うことができないから、彼のことを諦められないから、必死に隠そうとしていたのだ。  
「いいんです。君の心が離れていくことは、分かっていた。いつか還ってしまうことだって…分かっていたのに!………分かっていたのに、耐えらそうもない」  
男は膝立ちになり望美の足を抱えると、一方的に腰を振り、律動を開始する。  
「あ……ッ…い…た!……痛、い!!」  
自分の下でもがき、痛みから逃げようと腰を退く望美を彼は許さず、離れようとする度に攻め立ては一層激しくなり、細身の体を乱暴に揺すり立てた。  
「……望美さん……痛いですか?ほら…君の一番奥に届いていますよ」  
ギシッ…ギシッ…ギシッ…!  
老朽化した床板が二人の重さでたわみ、弁慶の動きに合わせて不満げな音を立てる。  
雁高の先端が狭い内壁を抉り、子宮口を叩く。その度に望美は、苦しげに呻く。  
「うっ…く、……い、たい……べんけ…さ…止め…!」  
腕に鎖が絡みついたままで、男の体に縋ることもできず、激しく揺さ振られ続けて舌を噛みそうだった。  
硬い楔で、望美の体を床に打ち付けようとしているようだ。後頭部や背中が床に当たり、更なる痛みを生む。  
 
「僕は、とても気持ちが良い……っ…君の中は狭くて、柔らかいですね」  
弁慶が柔らかな内壁を抉る度、誘うように揺れる淫乳。  
それを欲望のまま両手で鷲掴みにし、搾るように揉みしだく。  
「…けい……さん……弁慶、さん…っ…」  
余りにも横暴で、一方的な行為。  
それに快楽など見出せない少女が、涙声で一心不乱に呼ぶのは、男の名だ。  
「望美さん…っ…僕は、君を傷付けることしかできない…こんな恋など、知らないから」  
「……馬鹿………弁慶さんのばか……!」  
指で、蜂蜜色の柔らかな髪を強く引っ張る。  
「ふふ…いいんですよ。憎んで下さい。そして…今日のことを、忘れないでいて」  
「!?」  
望美が強い力で引っ張っているというのに怒りもせず、ちっとも気にしていない様子で、そんな言葉を呟く。  
―聞いたことのある言葉だ。少し違っているが、意味は同じように思えた。  
「…前と……何にも、変わってない…何に…も。ひっく…ひ…っく…ぅうう」  
では、迎える未来は同じなのだろうか。そう考えただけで、見っとも無いと分かっていても嗚咽が止まらなくなる。  
「…………そんなに、泣かないで下さい。君の涙を見ると、酷く胸が痛むんです。どうすればいいのか、分からなくなる」  
「優しく、して。……一度だけで、いいです…優しく抱いて…ください」  
こつん。小さな額を弁慶の胸に寄せ、甘えている。  
「……のぞみ、さん?」  
頑固な彼女が、他人に甘えるところなど見たことがなく、柄にもなく、弁慶は狼狽した。  
「どう…すれば、優しくしてくれますか?消えないで…生きてくれますか?いつか消えてしまう背中を、追いかけるのは…もう嫌です。……悲しい。貴方がいない世界は、寂しい」  
赤ん坊のようにしゃくり上げ、男の胸にはらはらと熱い雫を落とす望美を、弁慶は強く掻き抱く。  
彼女の言葉は、まるで夢の中の台詞のように要領を得ない。  
だが弁慶は、己の存在が望美を苦しめていたということだけは、十分過ぎるほどに理解できた。  
「……………僕を好きだと、言ってくれますか?」  
自分にとって、都合のいい人間としか関わってこなかった。必要のないものは斬り捨て、女性と関係を持っても、恋情などその必要のないものの一つに含まれていた。  
だから愛しい少女の涙の止め方も知らない。  
上手く慰めることもできない。  
こんな時でも、自分勝手に答えを求めることしかできない。  
―自分でも、嫌気が差すのに。  
「愛してるんです……貴方と出会う、ずっと前から」  
嗚咽と共に吐き出した言葉。  
彼女がまるで血を吐くように苦しげに言うので、弁慶は思わず加減を忘れて抱き締めてしまった。  
*  
ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ―  
「ぁああ、そんな、だめです…突いちゃ…ぁあっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!だめ、だめぇ!」  
「嘘はよくありませんね…腰が浮いていますよ」  
狭い小舎の中で行われる情事。  
灯明が作った二つの影が忙しなく蠢き、激しく重なり合う。  
一体の影が横になっており、もう一体がそれに馬乗りになって何度も跳ね上がっている。  
下の影が上の影を突き上げると古い床板が悲鳴を上げ、同時に鎖もジャラジャラと煩く鳴り、何とも淫靡な空間を作り上げていた。  
「ぁああっ…べんけ、さ……もうこれ…とって」  
深く繋がった接合部から、二人の体液が混ざり合った淫液が溢れて飛び散る。  
それには赤い筋が混じっており、少女が純潔を貫かれたことを意味していた。  
「ふふ。そうですね……でも、折角ですし、もう少し雰囲気を楽しみましょうか」  
弁慶は、鎖に繋がれた少女を自身の上に乗せて突き上げ、彼女の発する啼き声を聞いて愉しんでいる。  
がさがさ…  
「!?」  
草むらを掻き分ける音と、人の声。近づく気配に望美は身を硬くした。  
弁慶は素早く灯明台に手を伸ばし、仰いで火を消す。  
 
「べん……」  
ぴたりと、唇に人差し指が添えられる。まるで内緒話のようだ。  
「し…黙って。仲間の誰かがこんなところまで邪魔しに来たようですね。………面白くありません、このまま続けてしまいましょう」  
二人で壁際によって外の気配を探っていたが、弁慶はそのまま望美に覆い被さった。  
「えぇ!?で、でも…声が、ぶふ!」  
望美は獣の交尾のような体位が恥ずかしくて、文句を言おうとした口が、大きな手の平に塞がれる。  
「僕が塞いであげますから、どんなに啼いても大丈夫ですよ…ほら」  
パンッ!!  
月の光を照明にするしかない宵闇に、肌がぶつかり合う高い音が響いた。  
「ンーーーーっ!」  
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ  
男は四つん這いになった少女に腰を打ち振るい、止まることのない激情を膣奥に叩き込む。  
「あぁ…望美さん。さっきよりも深く繋がっていますよ。…ほら、ここまで入って、この手の下の僕が分かりますか?」  
空いている手で、望美の下腹部をグッと強く押す。  
わざと膣内を圧迫し、狭い膣道を更に狭くしてその締め付けを悦ぶ。  
「ふふ…そんなに締め付けられたら、また抑えがきかなくなってしまいます」  
弁慶は先端を子宮口に押し付けながら、腰をグラインドさせる。  
雁高で中を掻き回して、ぐりぐりと膣壁を抉った。  
「ふぅう…くっ……んっ、んっ、んっ、んんんんーーー!!」  
喘ぎ声が口の中に封じられ、熱がいつまでたっても外に放たれず体内に留まり、望美の絶頂を近くする。  
「苦しいですか?そろそろ、解放してあげましょうか」  
望美は額に汗を浮かべ上気した顔で、こくこくと素直に頷く。  
少女の口を覆った手、もう片方の手で細い腰を支える。  
限界まで張り詰め熱く脈動する肉槍で、彼女の最奥を滅茶苦茶に突き上げた。  
「ふううぅんんッ!」  
子宮まで到達しそうなほどの激しい打ち付けに、弁慶の手の下で、甲高い善がり声が上がる。  
それを合図に、膣襞が彼の分身を扱き上げるように蠢いて、奥に吐精を促す。  
「だ…だめ…です、外に…!」  
体を離そうとする望美の腰を、弁慶は両手でしっかりと掴む。  
自身を膣道の入り口ギリギリのところまで引き抜き、最後に一層強く子宮口を突き上げた。  
「ぁああんッ…べんけ、さぁぁあん……っ!」  
「くっ、はぁ…のぞみ……!」  
ビュルルル!  
二人同時に絶頂し、嬌声を上げる。  
弁慶の欲望が一瞬ぐんと膨れ上がり、終には鈴口から熱い精が放たれた。  
「ふぁあああッ」  
どくっ…どくっ…どくんっ…  
熱された白濁が、子宮口をトントンと何度も叩く。  
望美は蕩けそうな表情で無意識に腰を振り、その快感にびくびくと打ち震える。  
 
「……ふふ、困ったな。まだまだ鎮まりそうにありません」  
未だ摂取した薬の効果が続いているらしい。  
脈打つ欲望は射精後も萎えることなく、子宮口に煮え滾った子種を撒き散らしながら、彼は腰を振り、いつまでも注挿を続けている。  
「はぁ…はぁ…駄目って…言ったのにっ……弁慶さん、酷い……」  
ぐったりと力を無くし、体を褥に沈めながらも、弁慶を恨みがましく睨む。  
繋がったままの接合部から、納まり切らなかった白露がこぽっと溢れた。  
「ふふふ…僕は酷い男ですね。………君が僕の子を孕むまで、ここに閉じ込めてしまえたらいいと、本気で思います」  
*  
小鳥が歌う、小さな窓から朝日が差し込み始める朝。  
あれから、回数も分からなくなるほど抱き合った。  
弁慶は肌蹴た着衣を直した。そして己の傍ら、漆黒の袈裟に包まれてすやすやと眠る望美の頭を撫で、懐からあるものを取り出す。  
それは、ただの砕けた白い陶器の欠片。  
本来の〈白龍の逆鱗〉の力がどんなものなのか、望美が発した言葉の端々を繋ぎ合わせ、それと己の持つ龍神についての知識をあわせて、おぼろげだが理解した。  
「…君が、すんなり騙されてくれればいいんですが」  
白い鱗から金の鎖を抜き取り、陶器の欠片と共に少女の枕元に置く。  
―これが彼女に吐く、最初で最後の嘘になればいい。  
眠る少女を置いて、起こさぬように小舎を出る。  
そして目と鼻の先の、朝露に濡れて光る白い花畑へ足を踏み入れた。  
仙人草の白い花弁が雪のように舞う。乱れ咲く狂い花。  
花畑の真ん中辺りに丁度良い切り株を見つけ、弁慶はその根元に逆鱗を埋めた。  
「…………ごめんなさい、望美さん」  
 
いつだって背中に付いて回るそれ。  
いくら逃げても纏わりつき、いつの間にか、そこにあるのが当たり前になっていた。  
今はもう、僕を見下ろすこの光がなくなった時のことを、考えることすら恐ろしい。  
 
end  
 
 

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