八葉という存在は、揃うと安定するものらしい。  
一旦戦線を離れた熊野、という土地柄もあるのだろう。  
しかし、いくら羽を伸ばしていて男湯に八葉しか居ないとはいえ  
こういった話題に話がずれるのは…やっぱり若さゆえ、なのかな?  
 
 
温泉小噺  
 
 
「玉って、一般人には見えないんだよな?」  
「イッパンジン…ああ、龍神の加護を受けていない方々には確かに見えないようですよ。」  
「それがどうかしたの、兄さん。」  
「いやな、こっちにきてそれなりに経ってるからそれなりの経験は積んだんだけどよ。  
玉のある位置って、触れられると結構こねぇ?」  
「は?…って何の話だよっ!」  
「ふぅん、その調子だと天の白虎殿は華を愛でた事がないみたいだね。」  
「ヒノエ、譲殿は心に決めた女性がおられるようですからそれを追求するのは酷ですよ。」  
「話戻していいか。ほら、俺の玉って際どい所についてるだろ?  
積極的な相手だと、噛んできたり舐めてきたりするんだよなぁ。」  
「そういうことですか。僕の玉は、睦言の際に触れるには少々大人しめな位置にありますから…。  
ああ、でも可愛らしいお嬢さんにそっと触れられると、ぞくりと来るものはありますね。」  
「ふーん、そうなのか。麗しの神子姫にお願いして、今度額に口づけて頂こうかな。  
きっと天にも昇る心地になれるに違いないね。」  
「お、お二人とも何言ってるんですか!」  
「おや、そう言いつつ首筋を押さえてるのは何故ですか?  
何方かに口づけられるのを想像でもされましたか…ああ、湯当たりしたようですね。」  
 
「うわっ、譲しっかりしろ!弁慶…お前わざとだな。」  
「私はもうあがる、譲殿も一緒に連れて行こう。」  
「頼みますよ敦盛殿。しかし九郎も人聞きの悪い事を。  
貴方の玉の位置なら、睦事の際に触れられる事も舐められる事もあるんじゃないですか?」  
「なっ!!…そんな慎みのないことをする女と事に及んだ事はないっ!!」  
「慎みがない、って随分と余裕がないね九郎。  
ある程度姫君たちの好きにやらせてあげるのも、男の嗜みってやつだろ?  
勿論、最後に主導権は返してもらうけどね。」  
「そうだよなぁ、今度機会があったら試してみたらどうだ?  
なかなかイイぜ。やられてるのは玉だけだが、全身にびりびり来る。」  
「お前らなぁ、揃いも揃って…先生、何とか言ってやってください!  
…あ、まさか先生?」  
「答えられない。」  
「先生の玉の位置も、僕と同じような物ですからね。  
そう言えば、将臣殿や譲殿と同じぐらい際どい所についてる人がいましたっけ。  
景時、貴方はどうなんですか?」  
 
弁慶、どうしてそういう話題を振ってくるかなぁ。  
皆、すっかり寛いじゃって。まぁここは話に乗らないと拙いよね。  
 
「え〜、オレ?いい年だから女の子とそういう事に及んだ経験はあるけど、  
其処まで積極的な相手に当たった事がないからわからないなぁ。」  
「へぇ、意外だね。  
押しが弱そうだし、てっきり強気な華には押し倒されてるものだと思ってたけど。」  
「そりゃないよヒノエ君〜、オレこう見えても立派な男だよ?  
それに、相手に主導権握られるのってちょっと苦手なんだよね。」  
 
温泉って場所は、つい寛いでしまう物みたいだ。  
思わず本音がでてしまった。自分の意思に関係なく身体を弄られるの、オレは苦手。  
そうじゃなくても、望まない仕事を強いられて手が血に染まっちゃってるものだから。  
 
「ほら見ろ!男ってそういう者だよな景時!」  
「勿体無い事いうやつらだな。一度任せてみたらいいじゃねえか。」  
「何事も経験、と言いますしね。案外癖になるかもしれませんよ?」  
口々に言い募る皆を見回し、ちょっと困ってオレは笑う。  
こればっかりはね…例え心密かに恋い慕う彼女が相手でも、ご遠慮願いたいかな。  
 
 
 
 

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