ふわふわと柔らかそうだったとか、甘い匂いがしているとか。  
そんなことは後から思ったことで、兎に角その瞬間は何も考えられなかった。  
はむ、と口に含んでしまうと思ったよりもずっと柔らかくて。  
菓子のような感触のそこは、口に入れた瞬間は冷たかったがすぐに温める。  
舌で転がしているうちにとろけてしまうのではないか。  
それならそれでいいのだが。  
そんなことを考えていると、硬直していた少女が声を上げた。  
「……か、勝、真、さんっ……!」  
切なげな声は普段の快活なそれとは違い、艶を含んでいる。  
吐息交じりで抗議されても、却って煽るだけとは分かっていないのだろう。  
ああ、もっとこの声を聞いていたい。  
そう思って、弱くではあるが歯を立てる。  
腕の中の少女に触れてたいという欲望。  
それが今の勝真を突き動かしていた。  
「……ん、」  
唇を離せば銀の糸が細く光った。  
すっかり赤く色付いて濡れたそこを恥ずかしそうに手で隠すと  
涙目で少女は勝真を睨みつけた。  
「いきなり、しないで、くださいっ!」  
「仕方ないだろう、こういうのは突然湧いてくるもんなんだ」  
「だからって、もうちょっと雰囲気とか、心の準備、とか……」  
段々とうつむき加減になる少女に、今更ながら罪悪感が湧いてくる。  
それでもこんな少女も愛らしい、と思ってしまう。  
先ほどまでの愛撫だけではなく、真赤に染まった花梨の耳朶を  
見つめながら、勝真は次は何処を触れるべきか悩み始めていた。  
 
おわり  
 

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