「先輩……その、本当に」
挿れていいんですか、とはダイレクトすぎて流石に訊きづらく、譲は言葉を濁した。
「……ん、いいよ……」
自分の身体の下に組み敷いた愛しい人の言葉に、天にも昇る心地になる。
まるで夢のようで、だからこそ、その夢が覚めてしまいそうな気がして、
不安で、ついつい、くどいほどに確認してしまうのだ。
「本当に? 本当に大丈夫ですか?」
「もう、大丈夫だってば。心配性だなあ、譲くんは」
望美は呆れたように笑いながら、ぐに、と譲の頬を摘む。その何気ない仕草に譲の緊張も少し解けた。
「……すみません。その、俺、ずっと先輩の事、好きだったから……」
世界なんてどうなったって構わないくらいに大事な人だから、些細な傷もつけたくないのだ。
「うん、知ってる。ずっと譲くんは私の事、大事にしてくれた。守ってくれたから」
だからいいんだよ、と望美は瞼を閉じて。
「いっぱい、愛しあおう?」
そう言って、きゅっと譲の背を抱き締めた。
「……はい。愛しあいましょう……」
譲は覚悟を決めて、潤ったそこに宛がった己の欲望を、ぐっと押し進めた。
「ん……きつ……っ」
狭い入り口に押し出されそうになりながらも、ゆっくりと昂りを奥に挿れていく。
その間、望美の事を省みる暇などなく、ただただ夢中だった。
ようやくその余裕が出来たのは、全てを望美の中に収めてからだった。
「す、すみません先輩、大丈夫ですか? 痛くないですか?」
その慌てぶりがおかしかったのだろう、破瓜の涙を滲ませながらも、望美はくすくすと笑みを零した。
「少し痛いけど、大丈夫。大丈夫だから、ね?」
そして囁かれた言葉に、譲は思わず聞き違いではないかと戸惑う。
――もっと、激しくしてもいいよ、だなんて――
(――そんな、都合のいいこと)
あるはずないとそう思って、また望美の顔を見つめると、望美はこくんと頷いてみせる。
そこでついに譲の理性が決壊した。
「先輩、先輩っ……!」
うわ言のように呟きながら、ただひたすら本能のまま、腰を動かした。
(――ああ、俺は、先輩と)
やっと、一つになれたんだ、とここに至って初めて、幸福感が譲を包み込んでいく。
――初めて結ばれたこの時、たとえ心臓が止まってしまったとしても、悔いはない。
柔らかな身体をきつく抱き締めながら、ぼんやりとそんな風に譲は思ったのだった。