譲はぎしり、と階段をきしませて二階に上がった。
荷物を置くのにも、着替えをするのにも、その行動は必要だった。
自分の部屋の手前の、兄の部屋は細く戸が開いている。これでは、見ようと思わなくても
ついつい目が部屋の中を探ってしまう。その細いすきまから見えたものは。
これ以上見るな、と警鐘が鳴っている。しかしどす黒いもので満たされた心に沸き起こる
好奇心と誘惑には勝てず、譲は視線だけで部屋の中を探った。
まず見えたのは、床に散らばる服だった。小さいレースの下着が落ちているのを見ると、
心臓どころか身体中がドクンと鳴った。次いで、兄のベッドから零れ落ちる長い髪。顔は向
こう側に背けられて見えないが、白い肌が無残にもさらされ、どうやら意識を失っているよう
だった。――そしてさらに、上半身を起こして、そんな彼女を見つめる兄。
身動きもできずその光景を、呆然と細い隙間から見つめていたとき、不意に兄が顔をこち
らに向けた。
まずい、とは思わなかった。見られて困るなら、始めから戸を開けておくな、と怒りにも似
た感情で思った。
ぎしり、と音がしたときから、譲が帰ってきたのはわかっていた。
まずいかな、とは思ったが、もうすでにごまかしようがない。望美は意識がないし、今更あ
がいてみせても、譲はおそらく気づいているだろう。妙に開き直った気分になった。
だから、戸の隙間から注がれる視線と目が合ったとき、将臣はに、と笑った。
「――お前にもやろうか。望美からのバレンタインプレゼント」
譲の全身がかっと熱くなった。
「え……あっ……?」
急激な胸への愛撫に、望美が意識を引き戻されてみれば、自分に覆いかぶさっている
存在は将臣ではなかった。乳房の先端をぎゅっと吸われ、そのまま舌先で小刻みに弄ら
れる。もう片方は指で押しつぶされてきゅんと身体の奥がきしんだ。
「ん、あ、ああっ、や、譲、くん?」
年下の幼馴染みのいきなりの出現に軽く混乱して、望美の身体がよじられる。しかしそれ
を譲は押さえつけて封じた。ぐるりと身体をひっくり返して背中をあらわにすると、ぐいっと
腰を持ち上げる。兄の名残がつ、と白い太腿を伝ったのを見ると、妙に黒い感情が湧いた。
「……先輩。俺のぶんも、くれますよね……?」
背中から覆いかぶさって耳元にそうささやくと、そのまますでに十分勃ちあがった昂りを
後ろから押し込めた。
「あっ……! ああああああんっ!!」
すでに十分濡れていたそこに、ずぶずぶと呑み込まれていくそれ。ずん、と何度も何度
も強く奥に突き立てれば、中が誘うようにさざめいて心地よく締まった。彼女が受け入れて
くれた、ということに譲は喜びを覚える。初めて味わった想い慕う人の身体は何よりも甘く
思考をとろかした。
「あふっ……はぁっ、あっ、あん、……あ、きもち、い……」
シーツを握り締め、後ろからの刺激に先ほどの将臣のときとは違った快感を覚えたらし
い望美は喜びの喘ぎ声を漏らす。背中が淫らにくねって譲の脳裏が一瞬くらりと回った。
それでますます中に入ったものが膨張し、さらに望美に快感をもたらした。
「ああああんっ……! そこ……あ」
しばらくその様子を見ていた将臣だったが、さっきは自分にあれほど善がっていた女が
別の男に乱されるのは面白くない。おもむろに望美の前に移動すると、シーツに突っ伏し
ていた顔をぐいと上げさせた。
「ほら、こっちも見ろよ」
「あっ、まさおみ、くん……あんっ」
「今度はこっち。思う存分食っていいぞ」
そう言って望美の口に、硬く突き立った自身を差し出す。ぐい、と望美の髪を掴んで股に
押し付ければ、それは素直に望美の口腔に呑み込まれていった。
「兄さんは、さっき十分味わったんだろ?」
「固いこと言うな。望美が喜んでんだから、いいだろ」
その言葉通りに、望美は根元を持って、口の中で舌を使ってその塊をしゃぶりだした。後
ろから譲に押されるリズムに合わせて加わった上下動が、さらに将臣の快感を誘う。
「ん……んふっ……」
前から手を伸ばして、動きに合わせて揺れる乳房を掴んでやわやわと握れば、喉の奥か
ら「んっ」と声にならない声が漏れて、それがさらに将臣にも、後ろの譲にも痺れるような快
感をもたらした。
「……先輩……っ!!」
切羽詰った声を上げて譲が抜き差しのスピードを速めれば、望美の白い背が美しく反ら
される。
「んっ、ん――――――――!!!」
その瞬間、ぎゅううっと中が締まって絶頂を迎えたことに耐えられず、譲は欲望を望美の
中に吐き出した。同時に前の将臣も、白濁を望美の口内にぶちまける。二人の欲を同時に
呑み込まされた望美は、ぐったりとその場にくず折れた。
「はあっ………」
零れたため息は、誰のものだったか。
望美の上下の口から同時にとろりと白い濁りが零れたのを見て、兄弟の全身が同時にど
くりと鳴った。