「先輩!?」  
俺が弓の鍛練から帰ると縁側で先輩が倒れていた。  
昼食の時には具合は悪くなさそうだったのに、  
俺は見逃してしまっていたのだろうか。  
「先輩大丈夫で…」  
「クカー」  
…寝ていただけみたいだ。  
「まったく…こんな所で寝てたら風邪を引きますよ。先輩、起きて下さい」  
「んんっ…」  
声を掛けても起きる気配が無い。  
疲れているのかもしれないな。  
「まったく、しかたの無い人だな」  
そういうとオレは部屋から打掛を取って来て先輩に掛けた。  
「…」  
先輩が寝言を言う。  
何か夢を見てるみたいだ。  
その顔は幸せそうでうなされている訳では無いらしい。  
そういえば、先輩は兄貴の夢を見たって言ってたな。  
今もそうなのかもしれない…  
俺の中で嫉妬の火がともるのを感じた。  
俺は首筋に唇を押し付けると所有の証を残す。  
「先輩…俺だけを見て下さい。他の誰も…」  
 
「ゆ…ずるくぅん…」  
起きたのかと慌てて俺は先輩から離れた。  
だが寝言だったみたいで先輩は、すやすやと寝息をたてている。  
「俺の夢を見てくれてるんですか?」  
俺は嬉しくなった。  
「夕食は、先輩の好きな天ぷらにでもしましょうか」  
そう言うと俺はその場から離れた。  
その、嫉妬からした悪戯が望美にどんな事をもたらす事になるのか知らずに…  
 
「…み、望美!」  
「んっーん…」  
「ほら、起きて!夕食の時間よ」  
「夕食!?」  
私は、夕食の言葉に釣られて目を覚ました。  
「クス、譲殿の言うとおり  
夕食の言葉で起きるなんて。しょうのない人ね。」  
もう日は沈み世界は闇に包まれていた。  
眠ったのは、お昼食べた後すぐだったから  
結構寝てたみたいだ。  
「おはよう朔。それ、他の人には言わないでね。恥ずかしいから」  
「はいはい。それよりも早くいかな…望美!」  
「へっ、どうしたの」  
朔は私の首筋をじっと見つめる。  
「望美、あなた…」  
「先輩!起きましたか  
夕食ですよ。」  
「あっ、はーい!ほら、朔行こっ」  
「の、望美!」  
私は、朔の手を引っ張って居間に向かった。  
 
「はぁ」  
夕食後、朔は溜息をついた。  
この状況で溜息をつくなと言う方が無理がある。望美の首筋には朱い所有の刻印がくっきりとその存在を主張している。  
九郎殿は気付いて無いからよいとして。  
弁慶殿は、その存在を見つけて黒い笑みを浮かべ。  
ヒノエ殿は、不機嫌そうだ。  
兄上は、落ち着かない様子であの子と目を合わせないようにしてる。  
敦盛殿は、真っ赤になって目を背け。  
先生は、いつも通り変わらない。  
譲殿は、その様子に嬉しそうに微笑んでいた。  
(相手は譲殿みたいね。ここに来る前に隠してあげられたらよかったのだけれど…)  
「はぁ」  
また、朔は溜息をついた。  
 
「ねぇ、神子!赤い点があるよ!痛くない?」  
幼い白龍の無邪気な発言に場が凍った。  
「へっ?別に痛くないけど」  
状況に気付いて無い望美は普通に答えた。  
「蚊にでも刺されたか。まったくお前は、あんな所で寝るからそんな事になるんだ。」  
さらに場を読んでない九郎の声が響く。  
「いいじゃないですか!あそこ、風が通ってて気持ちがいいんです。」  
「気持ちが良くってもだな。かぜで…」  
「九郎、望美さんは慣れない世界に来て疲れているんでしょう。あまり、責めるものではありませんよ。」  
九郎の言葉を遮る様に弁慶が言った。  
「そうだよ〜。そんな風に言うのは酷じゃないかなぁなんて」  
「体力の無い者を戦場に出すなど危険だろう!」  
「わ、悪かったわねぇ!どうせ、九郎さんみたいには体力ないですよっ」望美の瞳に涙が滲む。  
「えっ、あ、わ、悪かった。」  
「姫君を泣かすなんて酷い奴だね。可愛い姫君を守る自信も無い奴なんてほっとけよ。」  
「なっ」  
「ヒノエ」  
敦盛は、名を呼ぶ事でヒノエを注意する。  
「神子…九郎殿は、心配しただけ…だと思う。だから」  
「うむ、神子は日々強くなっている。気に病む事は無い。」  
 
「はい!先生。ありがとう皆!ところで、何で皆、私と目を合わせないの?」  
九郎と白龍以外は一瞬固まった。  
「そんなわけ無いだろう。」  
九郎は、迷いもなく即答した。  
固まった中でいち早く立ち直った弁慶だった。  
「ふふっ、僕の視線をいつでも向けていて欲しいんですか?君は、いけない人ですね」  
「オレが姫君と目を合わせないなんて事あるわけ無いだろ。麗しいオレの姫君から目がはなせないからね。」  
「神子は、綺麗だから。皆の目を引き付けて、はなさないね。」  
「その…あの…気のせい…では無いだろうか」  
「あ、敦盛君の言うとおりじゃないかなぁ〜」  
「八葉が神子を疎うような事は無い。安心しなさい。」  
「そうですよ先輩。気にしすぎです。」  
譲が言った瞬間、譲に複数の殺意がさりげなく向けられた。  
「そ、そうかな?ごめんね!じゃ、もうそろそろ部屋に戻るね」  
望美はそういうと立ち上がる。  
「あっ、望美さん。後で僕の部屋に来て下さいね。」  
「へっ?何か用ですか」「首の虫刺されに一応薬を塗っておきましょう。痕が残ったら大変ですから」  
「別に平気ですよ?」  
「僕が気になるので。お願いします。」  
「はーい」  
そう言うと望美は部屋に戻った。  
 
(さて…どうしましょうか?)  
そう思いながら  
もう既に弁慶の手には薬の包みが握られている。目の前には急須がありサラサラと包みの中身を入れる。  
(このお茶を九郎や白龍以外が素直に飲んでくれるとは思えませんね。特に甥は感がいいですから)  
と弁慶は少しだけ頭を悩ませる。  
(まっ、そんな事どうにでも出来ますが。)  
弁慶は、もう一つ懐から包みを取り出すとそれを飲んだ。  
(目の前で僕がおぼんに残った湯飲みで飲めば皆さん飲んで下さるでしょう。)  
弁慶は湯飲みと急須をおぼんに乗せて居間に戻った。  
 
「弁慶さん入りますよ。」  
「あぁ、どうぞ」  
望美は、湯浴み後弁慶の部屋を訪ねた。  
湯浴みの後にしたのは塗り薬を塗った後だと薬が落ちてしまうからだ。  
望美は、部屋を見渡すとある事に気がついた。  
「あれ?部屋、少し片付けました?」  
「えぇ、少しだけ。君に嫌われたくありませんから」  
「あははっ、そんな事で嫌いになったりしませんよ。しかも、よく見たら片付けたってより。積み重ねたって感じですね。」  
「おや、ばれてしまいましたね。さて、ここに座って下さい。」  
「はい」  
望美は、弁慶の前に座った。  
「すいません。望美さん。実は、薬を塗るというのは嘘なんです。」  
「えぇ!?どうして嘘なんて…」  
望美は、弁慶に問う。  
 
「理由はこれです。」  
そう言うと弁慶は饅頭を差し出す。  
「わっ、お饅頭だぁ〜」「残念ですが、全員分は無くて。ですからこっそり望美さんと食べようかと」  
弁慶は、にっこりと微笑みながら言う。  
「ありがとうございます〜。甘い物大好き!」  
「それなら良かった。お茶も用意したんです。」弁慶は、急須のお茶を湯飲みに注ぐと、望美に差し出した。  
「さっすが弁慶さん!いっただきまーす」  
そう言うと、望美は饅頭を食べはじめた。  
甘い饅頭に、苦い日本茶はよくあっている。  
「美味しい!」  
「それは、良かった。さっ、もっと食べていいですよ。全員分は足りないといっても七個ありますから。六個は君の物です。」  
「えっ、弁慶さんは一個でいいんですか?」  
望美は、驚いて声をあげた。  
「えぇ、君に美味しく食べて貰った方が嬉しいですから。」  
「あの、朔と白龍にあげてもかまいませんか?」  
「えぇ、もちろん。それはもう君の物ですから」  
 
「ありがとうございます!それじゃあ…」  
望美は立ち上がった瞬間、強い暈に襲われた。  
「望美さん!」  
倒れかけた体を弁慶が支える。  
「すい…ませ…ん」  
直ぐに離れようとしたが、体に力が入らなかった。  
それに、体が…  
「熱い…」  
体の中心と弁慶の触れる所から熱い痺れが広がっていく。  
「はぁ…あっ」  
「あぁ、やっと効いてきましたね。」  
そう言うと弁慶は、望美の頬に触れた。  
「んっ…」  
望美の口からは無意識に甘い吐息がもれる。  
その、あどけなく開いた唇に弁慶は深い口付けを落としながら服を脱がせていく。  
「んっ…んんん」  
望美はそれから逃げようとするがやはり体に力が入らない。  
「いやあぁぁぁー!」  
深い口付けから解放された望美は息絶え絶えながらに叫んだ。  
「ふふっ、君はいけない人ですね。乱れた姿を他の人に見られたいんですか?」  
「!?」  
「残念ですが。助けはきませんよ。皆眠りに落ちていますから。だから、声をあげても平気ですよ。」  
そう言うと弁慶は首筋や胸を愛撫し赤い花を散らせていく。  
「やぁ……あっ…あぁん」  
少しずつ、望美の思考は快感に甘く溶けていく。  
 
「ふふっ、望美さんは感じやすいんですね。」  
「いやぁ…ちがっあぁぁー」  
弁慶が胸の頂きを甘噛みすると望美は、ビクンビクンと体を震わせて達してしまった。  
「先に達してしまうなんて。ふふっ、そんなに気持ち良かったんですか?」  
「っ、どうしてぇ…」  
望美は、理性を振り絞り弁慶に問う。  
「どうして?それを僕に聞くんですか?君は、意地悪な人ですね。この花は誰に付けられたんです?」  
そう言いながら首筋の跡を指でなぞる。  
「はぁん…はなぁ?」  
望美は、その刺激に反応しながら問い返す。  
「口付けの跡です。望美さん、誰に付けられたんです?」  
「そんなの…知らっ、ああぁん」  
弁慶は望美の秘所に手を伸ばし激しく刺激する。  
 
「誰です!!」  
「ほん…はひっ…とうにしら…な…んああぁ」  
「そうですか」  
弁慶は冷たくそう言うと熱いたかまりを望美の中心に押し当て一気に貫いた。  
「痛っ!痛いよぉ!やめてぇ!」  
望美の締め付けとその声に弁慶は動きを止めた。見ると望美の秘所からは破瓜の血が流れていた。  
「望美さん、初めてだったんですか」  
「うっ…うぇ」  
望美は泣きながら、こくこくと頷いた。  
「すいません。僕は、酷い事を…」  
そう言うと弁慶は苦笑を浮かべた。  
「憎んでも、恨んでもかまいません。最初から…そのつもりでしたから。」  
望美が大分落ち着いたのを見計らって弁慶はゆっくりと動き出す。  
「いたぃ…うぅ」  
気を使った動きでも痛くて望美は泣き続ける。  
「すいません。それでも僕は貴女が欲しい」  
そう言う弁慶と目が合う。  
その顔は微笑んでいるのに目は、泣いているみたいだった。  
「べん、けいさん?」  
その顔に望美は自分の中の何かが変わる気がした。  
「愛しています…望美…」  
 
段々動きが速くなる。  
なぜかもう痛みは感じ無かった。  
「はっ…あぁん」  
激しい動きで自分を見失いそうになりながら、望美はその変わった何かが何なのか解った。  
泣きそうな目が耐えられない。  
その、理由も…  
望美は、弁慶の首に手を回し抱き寄せ耳元に顔を寄せた。  
「のぞ…みさん?」  
「すきぃ…べん…けいさんがすきだから」  
「望美!」  
「あっあぁぁぁぁー」  
その、不意打ちに耐え切れず弁慶は、望美の胎内に熱いほとばしりを放った。  
それと同時に望美も達した。  
望美は、意識が遠退くのを感じ必死に弁慶に  
「…」  
囁きを贈ると意識を失った。  
 
「望美さん…」  
弁慶は、意識を失った望美に口付ける。  
初めてだというのに酷い事をしたと思う。  
彼女は僕を好いていてくれたのに。  
そう思うとさらに苦しくなる。  
『泣かないで』  
そう、囁いた君の言葉はもしかしたら自分を責めるであろう僕を気遣ってだろうか?  
君は、優しいから…  
きっと君は、謝罪を口にしたりしたら怒るんでしょうね。  
だから…僕は…  
この言葉を何度でも君に贈りましょう。  
『君を愛しています』と  
 
「あの野郎、やりやがったな」  
そう言うとヒノエは、ふらふらしながら立ち上がった。  
あのお茶をヒノエは飲まないようにしていた。  
しかし、弁慶の  
「おや?毒でも入ってると思ってるんですか」  
の一言のせいで飲まざるおえなかったのだ。  
出来るだけ少量  
口に含み飲み込まず  
吐き出す為に急いでいた所に運悪くリズ先生にぶつかり飲み込んでしまった。  
すぐに出来るだけ吐き出し井戸水で口をゆすいだが  
その場で寝てしまっていたらしい。  
「望美、待ってろよ」  
そう言うとヒノエは、フラつきながら弁慶の自室へ向かった。  
 
「痛っ!痛いよぉ!やめてぇ!」  
部屋に着く前から望美の悲痛な声が響いていた。「今、行くから…」  
ヒノエは必死に足を進める。  
中々辿り着けない自分がもどかしい。  
「くそ!動けよっ」  
そうして、必死の思いで辿り着き、襖に手をかけた瞬間に望美の声が響いた。  
「すきぃ…べん…けいさんがすきだから」  
そのとたん、ヒノエはその場に座りこんだ。  
「ばっかみてー」  
そう言うヒノエの瞳から涙が零れる。  
本気なのは解ってた。  
だけど、泣くほどとはね…  
「望美…」  
ヒノエはそう呟くと  
精神だけで持たせていた薬の効力に身をまかせた。  
 

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