部屋の中に淫らな水音が響いていた。  
 
「んはっ……ぁあん…よりひ……さ…さんっ……」  
 
闇に浮かび上がる白い肢体に浅黒い肌が絡みつき、うごめいている。  
ぴちゃぴちゃと子猫がミルクを飲むような音を立てて、頼久の舌があかねの秘所を這い回る。  
ざらつく舌の感触が強い快感となって全身を駆け巡り、あかねは知らず腰を浮かせて妖しく揺らめかせた。  
 
「ああ……神子殿…あなたのここは、とても甘い……」  
 
愛液で喉を潤しながら頼久がささやく。  
その息の熱さに、更なる官能を刺激されつつ、あかねは羞恥で顔を覆ってしまう。  
 
「……も…いやぁぁ…ぁんっ」  
 
それでも、揺らめく腰の動きは止まることなく、より深い愛撫を求めてしまうのは、頼久に幾度も愛され開発された身体が  
自然に高みを目指すことを強要するからだ。  
じっくりとあかねの蜜の味を堪能すると、頼久は愛液にまみれた舌をあかねの中に潜り込ませた。  
 
「ああっ!!…やっ……」  
 
ぬらぬらとうごめく舌の感触に、あかねが泣きそうな声を上げて悶える。  
大きく足を開かされて男の舌を受け入れるという、恥ずかしい責め苦を受けて乱れるあかねの姿は少女から女に代わる時期の  
妖しい色香を放ち、頼久をますます煽り立てる。  
熱い舌が勢いをつけて差しこまれ、蜜壷がかき回される  
彼女の足を押し広げていた手がそろそろと移動し、つんと上向いた花芽をきゅっとつまみあげた。  
 
「あああぁぁんっ!!」  
 
びくびくっと身を仰け反らせ、軽く達してしまったあかねの秘所はこぽっと音を立ててまた蜜をあふれさせる。  
それを丁寧に舐めとり、飲み干すと頼久は顔を上げ、片足を持ち上げて白い内股に唇を這わせた。  
 
「……今日は、誰とお出かけになったのですか?」  
 
愛撫の手を休めずに……むしろ激しくしながら尋ねる。  
一度達したために敏感になっている花芯をなぞり、花芽に指を添える。  
 
「あ…あんっ……と…友雅さん…とぉ…っ……鷹…通さ…ぁんん……」  
 
あかねの口から左近衛府少将の名が出た途端に、頼久の表情が険しいものになった。  
 
「……友雅殿と、ですか?」  
 
思わず手に力がこもり、爪で花芽を引っかいてしまう。  
 
「ふぁっ……ぁぁあっ!」  
 
たまらず喘ぎ声を上げる少女の内股に赤い所有印を刻み付け、頼久はゆっくりと顔を移動させた。  
唇でかすかになぞるようにしながら、少しずつ上へとあがっていく。途中、白い肌に幾つも赤い華を咲かせ、  
甘い声を引き出しながらふしくれだった長い指が花弁を掻き分ける。  
 
「……び……白虎の…呪詛…さがし……て…たのぉっ。」  
 
頼久の声に何か不穏なものが含まれているのを感じ取って、あかねは同行者の人選が間違っていないことを言外に告げる。  
今日は、一日彼らと京を歩き回ったので、頼久とは会えなかった。  
屋敷に戻ってからも、何故か居座って何くれとあかねの世話を焼こうとする白虎の二人を相手にしているうちに、  
頼久のいる武士団の詰め所にも行きそびれてしまった。  
藤姫に追い立てられるようにして二人が帰った後、ようやく自室で一息ついていたところに、頼久が忍んで来たのだ。  
普段とは違う鋭い『男』の顔をして入ってきたかと思うと、有無をも言わさず組み敷かれ求められた。  
驚きはしたものの、会えなかった寂しさもあってすぐに許してしまったのだが―――――――。  
 
(頼久さん……友雅さんのこと嫌いなのかな……?)  
 
「……あの方は、神子殿に想いを寄せておられます。」  
 
そんなあかねの思考を読み取ったかのように、固く屹立した乳首に到達し、薄紅色の蕾を嬲りつつ頼久はつぶやくように言った。  
眉間にしわを寄せ、何かを思い出したような苦い表情である。  
 
「…そ…んなの……考…え……過ぎ…やぁぁんっ……」  
 
あかねの反論は、頼久が右の人差し指を秘所に押し込んだことによってさえぎられてしまう。  
まとわりつく内壁の肉の感触を確かめるように抉ると、あかねの中はきゅっと締まって頼久の指を捕らえようとする。  
胸の蕾を啄ばみ、唇で強く吸い上げれば唾液で濡れたそれは光を弾いて震え、男を誘う。  
 
「あなたは分かっておられません……ご自分がどのように周囲の者の目に映っているのかを。……友雅殿だけではありません、  
鷹通殿も、他の八葉の方々も……皆あなたを想い、欲しているのです。」  
 
中でも最も行動的なのが友雅なのだ。頼久の気持ちにいちはやく気付いて、牽制をかけてきたのは彼である。  
あかねが頼久と結ばれた今でも、隙あらば奪おうと画策していることは疑いない。  
 
「あなたをこの腕に抱いている今でも、不安でならないのです。……私は無骨な武士に過ぎません。  
いつか他の方の元へ行ってしまわれるのではないかと―――――――。」  
 
いつになく饒舌に真情を吐露する頼久の紫苑色の瞳は、癒えない渇望に霞がかってあかねの乱れるさまを映す。  
 
「あんっ……そんなこ、と…な……!!私がす…き…の……頼…ひ…さんっ…だけ…だもんっ」  
 
快楽に痺れる思考で懸命に言葉を紡ぐあかねのけなげな姿に胸を熱くしながらも、頼久の行為はますます激しくエスカレートしていく。  
出し入れする指の本数は三本まで増やされ、それぞれが別の生き物のようにあかねの中で蠢く。  
仰け反らせた白い喉に噛み付くような口付けを与え、赤く色づかせると、左手で細い顎を捕らえて小さな唇を貪った。  
 
「んんぅっ!!んふぁっ…ん……」  
 
蜜壷をかき回されてただでさえ息が荒くなっているのに、唇を塞がれてあかねは苦しげに身をよじる。  
逃さないといわんばかりに左手を首の後ろに差し入れ、さらに深く口付ける。  
執拗にあかねの舌を求め、口腔を蹂躙する頼久の舌になんとか応えようとするあかねの拙い舌づかいが愛しい。  
 
「…ん……はぁっ……」  
 
吐息と唾液が混じりあい、離れる唇の名残を惜しむように糸を引く。  
秘所から溢れ出す愛液は頼久の指をしとどに濡らし、完全にあかねの身体の用意が整っていることを伝えていた。  
 
「神子殿…。」  
 
「あ……。」  
 
こちらもすっかり準備の整った頼久自身で入り口の辺りを擦り上げると、あかねは切なげな声を上げつつも身をわずかに強張らせる。  
幾度行為を経験しても抜けない初々しい仕草に、頼久は征服欲を駆り立てられる。  
すぐさま突き立てたい気持ちを押さえてなおも入り口を刺激する。  
 
「……どうして欲しいですか?」  
 
耳元でささやかれ、あかねの顔に朱が散る。  
 
「……や…。」  
 
ふるふると首を振って嫌がっていることを示すが、頼久は許さない。  
 
「言わなければ、分かりませんよ?」  
 
耳朶を優しく噛まれ、甘い痺れがぞくりと背中を駆け上がる。  
 
「…あっ……だめぇ…」  
 
熱い頼久自身が、花芽の部分を集中的に責めたて、あかねは涙声で懇願する。  
頼久の訪れを待ちわびる秘所の疼きはいよいよ耐え難く、自ら腰を擦り付けるように動かしてしまう。  
 
「おねがっ……い…。も……入れ……てぇっ…!」  
 
悲鳴のような声を上げるあかねに、頼久はしかし意地の悪い笑いを浮かべて言った。  
 
「何を…ですか、神子殿?」  
 
「いじわ…る……しない…でぇ…っ欲しい……の…頼久さんのがぁ……!!」  
 
自分の身体でくすぶる熱を、どうすればいいのか分からなくなって、あかねはとうとう恥ずかしい台詞を口にしてしまう。  
 
「承知いたしました。」  
 
羞恥に震え、涙を浮かべるその表情に満足して、とろけるような甘い笑みを浮かべると、頼久は猛り狂う自身をあかねの中心に突き立てた。  
 
「あああっ…!!ふぁぁぁんっ!!」  
 
望むものを与えられた悦びと、それを上回る快楽の波に翻弄されて、あかねは高い嬌声を上げた。  
ぐちゅぐちゅと耳を覆いたくなるようないやらしい水音が部屋を満たし、肉のぶつかりあう音と甘い喘ぎと共に室内楽を奏でる。  
両足は一杯まで開かされ、肩の横で固定させられて奥底の深いところまで蹂躙される。  
 
「…あっ……くぅっ……ぁぁはんっ!!」  
 
苦しい体勢で貫かれ、呼吸すらままならないあかねは、息苦しさとあまりに激しい快楽にぽろぽろと涙をこぼして啼く。  
柔らかい髪が扇のように広がり、なまじそれが短いために尼を犯しているような背徳感が頼久を刺激する。  
理性など、とうの昔に消え果て、ただ欲望の命じるままに突き上げると、あかねの中がぎゅぎゅっと収縮して頼久を締め上げる。  
 
「く……っ…神子殿っ……そのようにされては…!」  
 
専門用語で言うなら、ミミズがどうの、数の子がどうした・・・と、あかねのものは俗に言う名器であった。  
すぐさま中に想いの丈を吐き出してしまいたいのをこらえ、頼久はいっそう激しく腰を打ちつける。  
 
「やあああっ!…も…ゆるして…だ……めぇ…イッちゃ…うよぉっ!!」  
 
限界が近づき、あかねが狂ったように頭を振り立てる。  
 
「神子殿……神子殿…共に……!!」  
 
切羽詰った頼久の声を聞きながら、あかねは白濁した世界に意識をゆだねた。  
少し遅れて頼久の精があかねの中にそそぎこまれる。  
ほとばしりが膣の壁を叩く感触に身を震わせ、あかねのうつろな眼差しが頼久を映す。  
想いを遂げ、一度吐き出したにもかかわらず、頼久の表情からはいまだ情欲が抜けきっていない。  
 
「……あ…。」  
 
少しずつ戻ってくる意識のどこかで、頼久のものが再び成長を始めたことを感じ取って、あかねはかすかな声を漏らした。  
内壁を押し開くようにして膨張を続けるそれは、行為が続けられる予感をもたらし、あかねの表情に怯えが走る。  
その表情さえも楽しむように、頼久はあかねに口付けると、彼女の腕をつかんで起き上がらせた。  
 
「…っ!……や、やだっ!!」  
 
頼久と向かい合って座るようなこの体勢では、いまだつながっている部分が否応なく目に飛び込んでくる。  
真っ赤になって目をそらそうとするが、頼久はそれを許さない。  
 
「……ご覧になれますか?この頼久のものが、あなたに包まれているのが…。」  
 
顔をその部分に向けさせられ、情欲に掠れた声で卑猥な言葉をささやかれて、あかねはますます身を強張らせた。  
その動きが、知らず知らずのうちに頼久自身を締め上げ、彼を興奮させる結果となっているのだが、あかねはそれに気付いてはいない。  
 
「…あ…いやぁ……。」  
 
頼久を呑み込むその部分に吸い寄せられるように視線を落とし、熱い彼自身が自分の中に突き入れられていることを今更ながらに自覚する。  
それを見せ付けるように頼久が腰を動かし、あかねを掻き混ぜると熱く潤んだそこはぬぷぬぷと湿った音をたてて存在を強調する。  
 
「あなたは、私のものです。誰にも渡しはしない――――――。」  
 
熱いささやきと共に、ことさらゆっくり抜き差しを始める。  
 
「あ……ああ…んっ…」  
 
じれったいようなゆったりした快感があかねを包み、内壁を擦るものの感触が生々しく伝わってくる。  
頼久のもので、大事な部分を貫かれている――――その自覚が、常にない感覚を呼び起こし、潤んだ目許が女の艶をにじませる。  
 
「よ…りひさ…さんっ…」  
 
自分を包み込む切ない感覚をどうにかして欲しくて、あかねは手を伸ばし、頼久の首に絡ませた。  
すがりつく姿勢で頼久の肩に頭を預け、熱い吐息を漏らす。  
 
「神子殿……もっと私を感じてください。」  
 
頼久は逞しい腕であかねの身体を抱え上げると、自分の膝の上に腰掛けさせた。  
自身の身体の重みで、頼久のものがより深くあかねを穿つ。  
 
「ああっ!!……くふぅっ」  
 
そのまま間髪入れずに突き上げれば、あかねの身体が面白いほど跳ねる。  
暴れる身体を抱きすくめ、更に突き立てて、思うさま甘い声を上げさせる。  
 
「ふぁあああんっ!!あ……やぁっ…駄目っ!!」  
 
下からの容赦ない責めに、あかねの理性や羞恥心といったものはこなごなに粉砕され、与えられる激しい快楽にただ、よがり狂う。  
断続的に上がる嬌声に酔いしれながら、頼久は再びあかねを高みへと押し上げていく。  
 
「…も……おかし…くなっち……ぁぁああああっ!!」  
 
今度は同時に絶頂を迎え、頼久の想いの奔流をその身に受けたあかねは、最早意識を保つことすらできずにぐったりと頼久にもたれかかった。  
頼久は行為の余韻を楽しむようにあかねの身体をしっかり抱きしめると、涙に濡れたその瞼に唇を押し当てた。  
 
「……お慕い申し上げております。神子…あかね殿……。」  
 
臣下の身には、決して許されない名前を呼び、意識のないあかねを腕の中に閉じ込めた頼久の表情は、この上なく幸せそうなものだった。  
 
 
 
「だから……もういいですって……。」  
 
「…しかし…!」  
 
先程からずっとこの繰り返しであった。  
あれから夜が明けて、そろそろ屋敷の者も起き出そうかという頃――――――。  
まだ薄暗さの残る室内には、ひたすら謝り倒す頼久と、止めようとするあかねの姿があった。  
 
「同行できなかったからといって、同じ八葉である友雅殿や鷹通殿に嫉妬し、あまつさえその矛先を神子殿に向けるなど……!!」  
 
頼久の頭の中では、嫉妬のあまり獣のようにあかねを求めた昨夜の行動が悔恨の情と共にぐるぐる回っている。  
 
(はぁ……。)  
 
あかねは内心ため息をついていた。  
これでいったい何度目だろう―――――?  
ぷっつんキレて(それ以外に言い方があるだろうか?)激しくあかねを求めた後は、必ずといっていいほどこうなる。  
なまじ熱く強引に愛された記憶も生々しいため、その落差は激しいを通り越して呆れの境地だ。  
大きな身体を縮めるようにしてうなだれている頼久の様子は、まるっきりしかられたシェパードか何かである。保護欲をそそられるのは、仕方ないが……。  
 
「申し訳ございませんっ……!」  
 
(……本当に、この人で良かったのかしら?)  
 
真剣に自分の選択に疑問を投げかける、元宮あかね16才の初夏であった。  
 

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