お前が好きだ。好きで好きで仕方がないんだ。  
だから・・・俺以外見ないで欲しい。そう思うのは俺の我儘なのか―――?  
 
束の間の穏やかな時がながれていた秋の初め。  
「ん、ぅん?く、ろう、さ・・・?」「・・・・起きたのか」  
俺は六波羅の屋敷にに望美を連れ込んでいた。  
「気分はどうだ?なんだか疲れていたようだが・・・よく眠れたか?」  
連れ込んだというか一度来たいというから招いたところ、  
彼女が目を離した隙に眠り込み、そのまま朝になっただだけなのだが。  
「あ・・私せっかく誘ってもらったのに寝ちゃって・・・でも、良く眠れました。」  
望美はそういって笑う。(何にも知らないで・・・)  
彼女は目をこすると、ゆっくり体を伸ばそうとしたのだが・・  
ーガチャン。  
 
それは叶わなかった。  
「−っ!?え、何これ・・・?」鈍い金属音が響く。  
「それか?・・見てわからないか。手枷だ」  
俺は起き上がろうとした彼女に覆い被さりながら告げた。  
・・・うっすら笑いながら。きっと最低な顔をしているだろう。  
「えっ・・?ちょっと!手枷って何・・・!!」  
「俺がしたんだ。お前が逃げられないように」これからお前を犯すために・・・。  
 
「何言って・・・・?冗談・・・ですよね?」  
望美はまだ俺がふざけていると思っているようだった。  
俺は彼女の問いに答える代わりに  
「いやっ!いやぁ・・・・!」  
もう片方の腕にも鎖を巻きつけた。もうお前は逃げられない。  
 
今は普段ならまだ日が出ている時刻のはずだが、  
今日は朝からから俺の心の中を映したかのような黒雲が広がり、この部屋の中は薄暗い。  
「九郎さん・・・・・本当にやめて!!」  
この部屋にある明かりらしい明かりは蝋燭の炎と、それを鈍く反射している手枷の光だけ。  
やっと必死になって抵抗を始めてもがく望美の髪は乱れ、目からは涙が溢れていた。  
こんな暗い中でもお前の涙が見えるのは罪悪感からなのだろうか・・・?  
「残念だな、もう止められない。・・・・一度だけでいい、我慢してくれ」  
俺は馬乗りになると彼女の服を脱がしにかかった。  
 
・・・本当は一度だけでいいなんて嘘。ただお前を愛しているから抱きたいだけなのに。  
でもきっとこんな一方的な想い受けとめてはくれないだろうから・・・。  
だからせめて・・一度だけ、身体だけでも・・・。  
 
望美はその後も抵抗を続けていたが、もともとの力の差の上に手が不自由な事もあって、全然意味をなしていなかった。  
それをいいことに上半身をあらわにさせると俺は望美の胸の突起に舌を這わせる。  
「いやだぁ・・・!本当にやめて・・」  
とめどなくあふれていく望美の涙。怖いから?痛いから?  
泣き顔を見たくなかった俺は彼女の首筋に顔をうずめた。白い肌をなめ上げてそのまま跡を残して。  
体のラインを下りながら、彼女の下着へと手をかける。  
「・・・望美・・愛している」  
俺は自然に小さくつぶやいていた。・・・・お前の耳には届かなかったみたいだけど。  
でもそのほうがよかったのかもしれなかった。  
もし届いていたら、この気持ちまで嘘と捉えられていたかもしれないから。  
 
滑り込ませた手はすぐに下着を取り払い、快楽にぬれ始めたそこへと手が伸びた。  
蜜花の周りをなぞるようにして刺激を与え始める。  
「んぁぁ!あ、あ、・・・」「もっと声をだせ」  
感情を押し殺し、彼女の姿を見下しながら冷たくいった。  
しばらくすると表情にもだんだんと快楽の色が見えはじめてきた。  
片手でその顎を持ち上げ唇を重ねる。  
「ん、んっ・・・」  
 
初めて味わった愛しい人の唇は血の味がした。きっと強く噛み締めすぎて切れてしまったのだろう。  
フとみると、彼女の手首も鎖が擦れて血がにじんでいた。  
俺は望美を傷つけてるんだ。一瞬また罪悪感が襲う。  
・・・・でも、今きっとお前の頭の中には俺の事しかないはず。  
たとえそれがどんなに黒い感情だったとしても。  
「―!ゃ、ひぁ・・・っ!」  
彼女花からでている蜜を絡ませ、頑なに拒むナカへと指を侵入させていった。  
はじめは痛がっていたけれど、敏感な胸の突起を舌先で転がせば。  
だんだんと溢れていくきみの愛液、甘い声――。  
「すまん。もう限界だ・・・」  
「ひぁ、ぁ・・・あぁっ!!」  
無理矢理に押し入った望美のナカ。俺は夢中になって抽挿を繰り返した。  
いやらしく濡れた音が静かな部屋に響く。もっと、俺を感じて・・・?  
「あ、はぁ・・・く、ろう、さ・・・ゃ、ぁっ!」「望美・・・っ」  
「あ、もうダメ・・・ダメ・・・っ」「先にいけ・・・」  
「あ、あぁ・・・っ」「く・・・っ」  
 
愛してるから。  
お前を誰よりも愛してるから。  
独り占めにしたかった、ただそれだけなんだ―――――  
 
 
「ん・・・」  
「すまん・・・」「っ、九、郎さん・・・」  
行為のあと望美は気を失って。それは少し間のことだったが俺が自分の過ちを後悔するのには十分な時間だった。  
逃げようともがいて傷ついた細い手首。悲しすぎる涙の跡。  
眠る胸元に咲く乱暴に付けられた印。無理矢理の行為に傷ついたお前の身体と・・・心。  
“愛してるから”なんて己の罪悪感から逃げるための言い訳にしかすぎない・・・。  
「すまん・・・」「・・・」  
何も言ってくれる筈ないのはわかっていた。こんなに傷つけておいて、いまさら許してもらおうなんて思ってない。  
ただ・・・  
「いまさら・・・遅いが。・・・好き、なんだ。お前の事が」  
だから嫉妬した。俺以外の人と喋り、笑いかけるお前に。  
 
俺はお前の恋人でもなんでもない。今の関係を壊すのが恐くて何もできなかった、ただの臆病者だから。  
自分勝手なのは自分が一番よく分かってる。けど俺は・・・俺は・・・  
「お前の事、独り占めにしたくて・・・俺だけを見て欲しくて・・・。間違ってるのは分かってたんだ。だが・・・」  
手に入れたかったんだ・・・。  
 
「・・・・・・か」「・・・」  
「・・・九郎さんの馬鹿!!」  
望美の口からは当然の言葉が紡がれてきた。  
「・・・・分かっている。だからもう俺はお前の八葉ではいられな・・・・」  
「今度はまた何馬鹿なこといってるんですか!!」  
「・・・・・・は?」  
意味不明な発言に床を見ていた視線を上げると俺をにらみつける望美と目が合った。  
 
「私の気持ち聞かないで・・・私が、どれだけ九郎さんを見てたか・・・知らないくせに。・・・私はずっと好きだったんですよ!?ずっと好きだったのに・・・なのに・・・」  
涙を溢れさせながら、俺に抱きついてくる・華奢な身体は小さく震えていた。  
 
・・・俺は、やはり馬鹿者だ。こんなに愛する人を傷つけて。  
俺に彼女を抱き締める資格なんかあるのだろうか?  
「九郎さん・・・好きです・・・」「え、待て・・・」「黙って」  
重なった唇はやわらかく、そしてどこか甘酸っぱい気がした。  
 

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