「政子さんが、私を?」  
「はい、是非お話がしたいと。」  
使いの人がきっぱりとそう告げた。どうやら、今来てもらいたいとの事らしい。  
誰かと一緒に──とも思ったが、九郎と弁慶・景時は仕事。譲は弓の修行。  
朔と白龍は買い出し。将臣とヒノエ・先生は用事があると言って出かけていた。  
敦盛も外出したのか、姿が見当たらない。  
「…一人で行くしかないか。」  
九郎さんのお兄さんだし、モタモタして心象悪くしたら立場もまずくなるだろうし。  
そう考え、気乗りはしなかったがそのまま大倉御所へと向かった。  
 
 
「望美が大倉御所に?俺は、そんな話聞いてないぞ?」  
夕方、仕事から戻った九郎は先に戻っていた朔たちから話を聞き、顔をしかめた。  
「急に使いの人が来たみたいなの。それで、私たちが皆出かけてていなかったから  
望美一人で行ったって…。」  
「た、単に個人的な話じゃないかな〜?ほら、同じ女性同士だし、何かと話も合うと  
思ったんじゃない?」  
「それだったら、何故先輩一人呼び出すんですか?どう考えてもおかしいですよ。」  
「…我々も向かおう。」  
リズヴァーンの提案に九郎と讓に弁慶、白龍が頷く。  
「…私はここで待っています。元とはいえ、私は平家の者。  
下手をすれば、神子に迷惑がかかる。」  
「そうだね〜。お、オレも残るよ。何かあった時は式神で連絡つけられるし。」  
「…俺も行くぜ。」  
「将臣殿!?し、しかし…。」  
「わかってるって、敦盛。あくまで望美の無事の確認だ。  
それを確かめたら、すぐに戻ってくるさ。。」  
笑って、軽く敦盛の頭を叩く。  
「……ならば、私も共に行きます。」  
「ああ。」  
「早く行こう!神子の周りに何か…とても嫌なものを感じる。」  
白龍は不安げに朔の袖を引っ張った。  
「そうね。」  
「では、急ぎましょう。望美さんが無事であってくれれば良いのですが…。」  
「何を言ってる。兄上の所で、そのような事があるわけないだろう。  
それよりも、あいつが何かしでかしてないかどうかが心配だ。」  
「そうですね…。」  
弁慶が景時をちらりと見ると、彼はすぐに目を反らした。  
鎌倉殿が絡んでいるのは間違いない。とすると──。  
 
弁慶はふと、以前呼び出され、薬を作ってくれと頼まれた事を思い出した。  
断る訳にもいかなかったし、妻が使うと言うので大した疑問にも思わず承知して、  
ついこの間届けたのだが。  
まさか、あれはそのために──?  
「何をぼさっとしている!?行くぞ、弁慶。」  
「え、ええ。そうですね。」  
弁慶は心の内で望美の名を呼び、無事であるように願った。  
 
 
門番の人に呼び出された事を告げ、案内された場所は薄暗い部屋だった。  
「どうか、こちらでお待ち下さい。」  
案内を終えた男は望美一人残し、去って行った。  
少しして、お茶が運ばれ、もう少し待つよう言われ、また一人きり。  
「まだかなあ…?」  
こんなことなら、せめて朔の帰りを待つんだったと思いつつ、お茶を飲む。  
それから、政子が来るまで少しの時間が経った。  
「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」  
「あ、いいえ。そんなでもないですよ。」  
「そう、それだったら良いのだけれど。」  
「あの、それで話って…?」  
「そんなに堅くなる必要はございませんわ。今日は、ごく個人的な話をしたくて来て  
もらったんですから。女同士にしか出来ぬ話も…あるでしょう?」  
ふふ、と顔は笑ってはいるが、どうもこの人は好きになれない。  
前の福原の時だってこの人は笑いながら奇襲をかけろと言っていたのだから。  
「はあ…。」  
「時に、あなた。…心に想う人はいらっしゃるの?」  
「えっ!?」  
思わぬ問いかけに顔が熱くなるのを感じた。  
「まあ、いらっしゃるのね。それはいつもあなたの側にいる殿方ですの?」  
「は…いえ、まあ…ところで、このお部屋、暑くないですか?」  
「そう?わたくしはちょうど良いけれど。…熱でもあるのではありません?」  
手を額に当てると、それはヒヤリと冷たくて。  
「やっぱり。今日はここでお休みになった方がいいわ。景時の所にはお伝えして  
おきましょう。」  
「すみません…。」  
「謝らないで。わたくし、いつも鎌倉殿のために力を尽しているあなたに、とても  
感謝しているのですから。」  
「はあ…。」  
グラリと景色が歪む。政子様の顔までも醜く歪んで見えるのはこの熱のせいだろうか?  
吐き出す息までもが、熱くなる感じ。意識が朦朧としてくる。  
なん、か…へん…だよ…。せん、せ…。  
 
「大丈夫ですか?龍神の神子殿。」  
倒れそうになる体を後ろから支えられた。  
いつの間に入ってきたのか、支えてくれた人以外にも、二人ほどの兵が控えている。  
「…あ、ありがとう…。」  
「さあ、こちらへ…。」  
にやにや笑いを浮かべつつ、ねっとりと汗ばんだ手で掴まれて、  
どこか気持ち悪さすら感じる。  
 
隣の部屋には既に寝具が用意されていた。いやに用意がいいなと思いつつ、  
兵士にもう大丈夫だから、と退出を促す。  
「いえいえ。お着替えも手伝いましょうぞ。」  
と笑いを消さず襟に手をかける。  
「何するんですか!」  
ピシャリと手を叩こうとするが、もう一人に手首を掴まれ、阻まれる。  
払いのけようとしても、力が入らない。  
両手を掴まれたまま、床に押し倒される。逃れようとしても、足も押さえられて、自由がきかない。  
着物を無理やり脱がされ、白い肌が露になる。  
「やめ…っ!」  
「いいですねぇ、龍神の神子様のだと思うと、なおさらですなあ。」  
「くっ…!」  
唇同士が触れるギリギリの所でそれに噛みついた。  
「…っ!」  
「大人しくなんてしてやらない。…トコトン抵抗してやる…っ!」  
「これは怖い。でも下の方は…どうですかな?」  
そう言って男は陰部をゆっくりとなぞる。  
「やっ…!」  
「おや、濡れている…感じられているのですか?淫らな神子様だ。」  
「そんなわけ…。」  
「嘘はいけませんぞ…ほら。」  
指を一本入れて、小刻みに震わせる。  
「いや…あっ…!」  
体がやけに熱い。男から受けている刺激に興奮を覚えている事を認めたくなくて、首を振る。  
「音が聞こえますか、神子様?いやらしい音が鳴ってますぞ?」  
と指を動かす度に水の音も増す。  
体だけでなく、息すらも熱い。自分が自分でなくなっていくようだ。  
大丈夫だと思ったのか二本目の指がゆるゆると侵入してきた。  
「ああっ…!」  
「いいですなあ、こちらのお口は噛みつく事なく受け入れて下さる。  
何より神子様の御慈悲を感じます。」  
抜き挿しを繰り返していき、水音も大きくなっていく。  
「やぁ…っ。やめ…て…。」  
「そんな事言って。腰を振っているのは欲しいからではありませんか?」  
「…んっ…。」  
指が抜かれ、布越しに膨らんだ男を軽くあてがわれる。  
「これが…欲しいのでしょう?」  
ぐいぐいと強くその部分を強調するかのように押し付ける。  
「…くっ…。」  
「ほら…。」  
男が布を取り、性器を出した。  
もう、だめ…。  
 
意識が遠のいていく中、どこからか男の低めな笑い声が聞こえてきた気がした。  
 
「さわら…ないで…」  
「これが九郎の言っていた白龍の神子か。淫らに乱れる様…見せてもらおう。」  
 
九郎は薄暗い部屋で目が覚めた。頭を振って、今までの事を思いかえす。  
「確か、兄上にお会いして、望美の事を聞こうとして…。」  
「あ…。」  
声のする方を見ると、そこには自分と同じく横たわっている望美がいた。  
「望美!?一体今まで何やって…って何だ、その格好は!」  
望美は着物がはだけていて、素肌が露になっていた。その姿はどこか色めいて。  
九郎は顔を赤らめ、背中を向ける。  
「政子さんとお話してたの。心配かけてごめんなさい。」  
「い、いや…何もなければいいんだ。…それでどういう話をしていたんだ?」  
「好きな人はいるのか…って…。」  
「そ、そうか。」  
「私、その時…あなたの顔を思い浮かべました。」  
「なっ…何を言ってるんだ!?お前が好きなのは…っ!?まだ着てなかったのか!」思わぬ台詞に望美の方を振り向き、また背中を向ける。  
「どなたと勘違いなさっているかはわかりませんが、私が好きなのはあなたです。」  
「本気…なのか?」  
「嘘や冗談に聞こえますか?ならば…。」  
望美は九郎の前に来ると笑顔を浮かべて、唇を重ねる。  
「なっ…!?」  
九郎は思わず後退する。  
「私が嫌い、ですか?」  
後退した分だけ迫り、顔を覗きこんだ。着物から見える胸がふさふさと揺れる。  
「そっ、そんな事はないが…。」  
ふと師の顔がちらついて、目をそらしてしまう。  
「好きな方がいる…とか?」  
顔を反らした九郎の顔を再び自分に向き直させる。  
「い、いや…。」  
「女として意識できませんか?」  
襟から手を入れ、胸板をなで回す。  
「…っ!そういうわけでも…ない。」  
まさぐる手をのけようと望美の手首を掴んだものの、力が入らない。  
「好きです…大好き…。」  
再び唇を重ね、腕を首に絡めた。二人の体がぴったりと密着する。  
望美から漂う香りが、柔らかな唇が、胸板に当たる心地良い感触が考える力を失わせていく。  
「望美…っ!!」  
どこかで糸が切れたのを感じた九郎は、望美を抱きしめ、床に寝かせた。  
 
すみません、先生──っ!!俺はもう…っ!  
 
最初は強情な女だと思っていた。大人しくしていろと言っても聞かないし、何かと言うと  
喧嘩ばかりしていた。  
女人で今まで剣を持った事もないのに、戦うと言う。ついには花断ちまで身につけて。  
何故そんな事までするのかわからなくて、聞いてみたら  
どこか遠い目で  
「守りたいから、かな。」「…守りたい?」  
「誰かが私のために犠牲になるのは…いやなの。だから、私…強くなって守れる力を得たい。」  
今にも泣き出しそうな目で正面をまっすぐ見つめる。それを見た時、  
俺の中で何かが変わった気がした。目が離せなくなっていた。  
その後、朔殿と讓の話で望美が先生に好意を抱いている事。  
そして、先生もまた同様に彼女を見つめている事を知った。  
そう言われてから二人を見てみると、なる程と頷ける。  
同じ弟子である自分とも、他の仲間とも明らかに違う視線。  
叶わぬ想いだと思っていた。尊敬する師ならば安心して任せられる、と諦めていた。  
それが単に勘違いで、自分を好きだと言ってくれている。  
夢ではないのかとすら思う。いや、こんな甘美な夢ならばむしろ、覚めて欲しくはない。  
先生には申し訳ないとも思う。けれど、この温もりを手放したくはない。  
「望美…。」  
想像以上に熟れた唇を十分に貪り、首に。そしてふくよかな胸へ。  
「んぅ…。」  
左の乳房を揉み、右の乳房に吸い付く。  
しばらくその感触を味わってからそそり立った男根を望美の中へ入れた。  
「ああっ…!!」  
初めて受け入れたのだろう。九郎を痛い程に締め付ける。  
射精しそうになるのを必死で押さえ、腰を動かし始める。  
「大丈夫か…?」  
「は、はい…いい、すご…んっ!」  
動きが早急になってゆく。擦れる刺激が互いを高みへと昇りつめ──果てていった。  
 
「望美…。」  
「…せん、せ……。」  
くたん、と互いを抱きしめたまま幸せそうに眠る二人。  
 
 
「まあ、幸せそう。」  
「九郎を頼む。」  
「はい…うふふ。」  
にたりと笑うと、九郎と共に忽然と消えた。  
 
 
大倉御所まで来たのは良いものの、九郎しか中に通してはくれず、  
その九郎もいくら待てども出てくる気配が一向になかった。  
「先輩と一緒なんだろうか?」  
「だったらいいけどな。」  
将臣はぎり、と爪を噛む。あの頼朝の事だ。どんな企みがあるか知れない。  
「…!?神子!!」  
急に白龍が体を強ばらせ、御所の方へ顔を向けた。  
「どうした?」  
「神子が…助けを求めてる…。悲鳴が、聞こえた。」  
「何だと!?」  
「…もう、一刻の猶予もなさそうですね…忍び込みますか。」  
弁慶はそういうと門番に何事か告げ離れていく。  
将臣たちは焦って後を追いかけた。  
「お、おい!忍び込むって…。」  
「容易に入れてくれないだろうとは思ってましたので、準備してあるんですよ。」  
そう言って、弁慶は縄を取り出した。  
「リズ先生、この縄を持って塀の向こうへ飛び越えて頂けますか?  
僕たちはその縄を登って、潜入しますから。」  
「わかった。」  
 
中への潜入は成功したものの、少しばかり進んだ所で、警備の兵に見つかってしまった。  
「誰だっ!?」  
「ちっ…遊んでるヒマなんかねーっつーのに。」  
「ここは、私が食い止めよう。」  
リズヴァーンが剣を抜き、皆の前に進む。  
「リズ先生!?」  
「早く、神子を。」  
「わかった。ここは頼むぜ、望美は必ず助け出してみせる。」  
「ああ。」  
 
固まっていてはまた先程のように見つかりやすいからと言う弁慶の提案で、  
それぞればらばらになって捜す事となった。  
 
敦盛は兵に見つからぬよう、探索を急ぐ。  
その内、白龍が望美に呼び掛ける声が聞こえてきた。  
見つかったのかと思い、声がした方向へ向かう。  
奥に進むと、薄暗い部屋に横たわる望美がいた。  
「神子…っ!」  
無事だったかと安堵して駆け寄ろうとした時、彼女が決して無事ではない事を  
露わになった肌から思い知らされた。  
しかも白龍は望美の太股を舐めようとしているではないか。  
「白龍っ…!止めてくれ…!!」  
敦盛は必死の思いで止める。もしも今望美が目覚めれば、と思うと空恐ろしい。  
「どうして?だって、神子…怪我してる。治療しないと。」  
「怪我?どこだ?」  
「ほら、ここ…白い水に混じってうっすらとだけど、血が流れてる。」  
白龍が指差した先を見て、敦盛は衝撃を受けた。  
先程の姿でもしや…とは思っていたがはっきり証しまで見せられると気分すら悪くなる。  
増してや相手は尊く清廉な気を持った白龍の神子。あの綺麗な体を男のいいように  
もて遊ばれたのだと思うと、視線を向ける事は出来そうにもなかった。  
「…白龍。これは…怪我ではない。」  
「そうなのか?」  
「ああ…。」  
「そうか、良かった。」  
「……。」  
白龍は心からそう思っているのだろう。  
だが、望美は一生癒せぬかもしれぬ傷を負わされた。体の傷ならば時が経てば癒えようが、  
心は──。  
(私は癒す術を、知らない)  
 
「白龍…に敦盛君ですか?。」  
廊下の曲がり角から、弁慶が姿を表した。  
「…彼女を…診てやってくれ。」  
「…?何処か怪我でもしてるのですか?」  
「そういう訳では…ないが。…神子が目覚めた時…。」  
「…?」  
敦盛の顔に翳りがさした気がした。  
「…よろしく頼む。私たちは兵が来ないか見張っているから。」  
「見張りの兵が見当たりませんが?」  
「私が来た時には神子しかいなかったよ?」  
「そうですか…。」  
敦盛たちが見張りに立ったのを確認し、部屋に入る。  
望美は裸体のまま寝かせられていた。  
太股の間からどろりと流れているものが痛々しい事実を顕している。  
「…手遅れ、だったんですね。」  
敦盛が退席したのも頷ける。先程の『目が醒めた時、よろしく』と言ったのは、何と  
言っていいかわからないからだろう。  
弁慶は被っていた外套で望美の体をくるむ。  
「…申し訳ありません。」  
自分をいくら憎んでくれても構わない。だが、そうしても彼女が犠牲になってしまった  
事実は、消えない。  
やりきれなさと、罪悪感に苛まれ、思わずギュッと彼女の体を抱きしめた。  
とりあえず、早くここから逃がさなければ、またいつ兵が来るかわからない。  
弁慶は、望美を抱き上げた。  
「せん、せい…。」  
気がついたのか、薄く目を開けこちらを向く。  
「申し訳ありません。僕で…。」  
「助けに来てくれたんですね、先生…。」  
「!?」  
虚ろな目でこちらを見ている。  
様子がおかしい。  
顔はしっかりこちらを向いているのに、その瞳はどこか狂気にも似た光を映し出して。  
それは誰が見ても正気には見えなかった。  
「幻覚、ですね…。」  
確か、あの薬には時間が経つと幻覚が見える兆しが見える時がある。  
いつも誰にでも、というわけでもないのだが。  
「僕は…リズ先生に見えているというわけですか。」  
「…先生?」  
「ならば、せめて見せてあげましょう。…愛しい人の腕に抱かれる夢を。」  
弁慶は障子を閉め、望美を降ろす。  
結構な時間が経っているというのに、兵が誰一人として来る気配がない。  
他の所に人員を割いているのだろうか。  
それとも何か罠が──?  
ここに見張りも立てず、神子をそのままにしておくというのも変だ。  
もう少し様子を見た方がいいかもしれない。  
 
「先生…?」  
「…どうした?」  
神子の頬にそっと手を当てる。  
「助けに来てくれたんですね、嬉しい…。」  
唇を軽くついばみながら、望美はそのまま、背中へと手を回した。  
「ああ、体は…何とも、ないか。」  
望美の肩がビクンと揺れる。  
「…ごめんなさい、私…兵の人たちに無理やり…っ。」  
「謝らなくて、良い。」  
「ごめん、なさ…。」  
最後の言葉を口づけで塞ぐ。  
君は何も悪くないと心の中で呟いて。  
薬を作りあげたのは自分。罪は寧ろ自分自身にあるのだから。  
舌を侵入させてみると、初めてなのか最初ビクッと体を  
強張らせはしたが、その後はさせるがままで、拒絶の意思は見せなかった。  
「ん…。」  
しばらく舌を絡ませ、名残り惜しく思いながら離すと、その未練が糸となり、唇を繋ぐ。  
首筋に痕が付けられていないのを確認して、着物を脱ぎつつ桃色に染まる尖端を軽く食む。  
「んぁっ…。」  
舌でコロコロ転がすと、次第にそれはぴんと立っていく。  
「感度がいい。」  
「先生だから…です。」  
クスッと笑って続きをせがむ。  
薬の効果なのか、いやに今日の望美は積極的だ。  
いつもならば、耳元で囁いただけで赤くなるというのに。  
「それも…悪くないですがね。」  
舌舌は胸から腹、そして内股を緩やかに這っていく。  
内股を吸いあげながらも、股の間に流れるものを布で拭く。  
「…先生?…あんっ!」  
何をしているのか覗きこもうとするのを中に指を入れて制する。  
「ひゃ…あっ!」  
「…ここがいいのか?」  
「んっ…いい、です…。」  
指の動きに翻弄される望美の顔を見ながら、自分の中心に手を伸ばす。  
手を上下に動かしながら、望美の敏感なところを容赦なく責めたてる。  
「あああっ!…そんなに責められたらっ…っちゃう…!!」  
「まだ、だ。」  
指を抜き、滴る液体をぺろりと舐める。  
「せん…せ?」  
「まだ、早い。いくなら共に。」  
「…はい。」  
己の手で大きくしたそれを望美の中へと入れていく。  
自分とは違う白い液体が内股に滴るのを感じて、不快感を感じた。  
それを布で拭いあげ、床へ叩きつける。  
「…せんせ?」  
「何でもない。」  
望美に笑顔を向けて、腰を動かす。  
「あ…っ!はあ…ん。」  
普段では聞けぬ艶めいた声が余計に欲情をそそる。  
求める動きが性急になり、絶頂が近いのを感じた弁慶はさらに動きを早める。  
望美が高い声を上げた所で、弁慶は自身を抜き、布の上へと解き放つ。  
 
「…あなたは、綺麗ですよ。どのような事があっても、  
あなたは無垢で…可愛らしい。」  
弁慶は、望美をそっと抱きしめた。  
 
 
「望美っ!?」  
将臣の声と同時に障子が開けられる。  
「…に弁慶…か?…何…やってんだ?」  
将臣の声色が段々怒りの混じったものに変わっていく。  
「…見つけた時には既に事は終わっていたようなので、せめて慰めになれば、と。」  
将臣の顔が苦渋に満ちる。剣を握る手も震えていた。  
「…そっか。」  
声だけが、穏やかなものになる。どこか無理している感はあるが。  
「…だが、それはもっと適任がいるんじゃねぇか?」  
「大丈夫ですよ。」  
「?」  
「彼女は薬を飲まされていて、幻を見てるんですよ…愛しい人のね。」  
弁慶は、望美に近付くと耳元で囁く。  
「神子」  
「先生…?」  
「そうだ。」  
「良かっ…た…。」  
すっかり安心しきったように笑って、指で弁慶の髪をすく。  
「安心しなさい。私は常にお前の側にいる。」  
「はい、先生。」  
「…ね?」  
弁慶は、将臣の方を振り向き、にっこりと笑った。  
「…なるほどな。」  
「やってみますか?」  
なんて事を言いながら、涼しい顔で後処理を済ましていく弁慶。  
頼朝並に油断ならない人物だと思う。望美にどうこうしたりはしないとは信じられるが。  
「…そうだな。」  
「僕は辺りを見回って九郎を捜してきます。」  
「ああ。」  
将臣は鎧を脱ぎ望美に背中を向かせると、つつ、と背骨や脇腹の辺りを幾度にも渡って  
舐めあげる。  
その度に聞こえる声は将臣の雄を刺激して。  
「望美…。」  
熱を持ったそれは望美の潤った部分へと難なく入っていく。  
「せ…。」  
想い人の名を呼び掛ける口を二本の指で邪魔をする。  
(今お前を抱いてるのは、俺だ…先生じゃねぇ。)  
矛盾していると思う。  
望美が先生だと思っているから抱けるのだとわかっているのに、  
将臣と望んでこの腕の中にいるんだと──思いたい。…有り得ないとはわかっていても。  
 
「動くぞ。」  
緩やかに挿入を繰り返す。  
「んっ!」  
「…どうだ?」  
指を一旦出し、顔を近づける。  
「いい…もち、…よぉ。」  
「聞こえない。」  
動きを止める。  
望美が何をして欲しがっているのをわかっていて、わざとそうしているのだ。  
「やっ、あん…め、ないで…。」  
動き始める腰を手で抑える。  
「続けて欲しいんだったら、もっと大きく聞こえるように言う事だ。」  
「意地悪…。気持ち、いい…すごく…あっ!」  
奥へ一突きすると、ビクンと体を震わせる。  
ずっと妹のように頼りなく思っていた幼馴染みが、自分の腕の中で女になる──。  
どこか少し満たされた感じは、征服欲だろうか。  
 
望美がはっきり女なのだと意識したのは中学の頃だったか。部屋に入ったら  
着替え中だったって言う漫画でよくあるお約束なパターンだったのだけれど。  
その夜は思わず自慰行為に走った。その時はエロ本も普通に見ていたし、単なるオトコの  
本能だと思っていた。  
それが違うと認識したのはこっちの京に来て、誘われるままに女を抱いた時。  
達する直前、ふっと望美の顔が浮かんで。  
行為もそれ一度きりで。  
相手も遊びと割りきっていたし、それきり会ってない。  
顔も名前も忘れたから、出てきてこられても困るわけだが。  
 
抱きたいのはあいつだけなんだと離れてから気がつくなんて。  
しかも、ようやく再会した時には既に他のヤツに取られちまったなんて…笑えねぇよ。  
 
お前、知らないだろ。  
どれくらい名前を呼んできたか。  
想像でヌいてきたか。  
 
いいだろ、別に。  
俺がこうしてキスしても、嫌がらない。望美はリズ先生としてるんだ。  
甘い夢を見てる…そう思ったらいいだけの事だ。今夜のみ、一夜限り。  
もう、体なんてとっくにゲス野郎共に汚されているのだから。  
 
将臣は再び指を口に入れ、挿入を繰り返す。  
「んっ…ふ…っ。」  
「…のぞ、みっ…!」  
そうしていくうちに、それが激しいものへと変わっていき。  
口に入れていた指を外し、両手を腕でがっしりと捕えた。  
望美の最奥を将臣自身で突いていく。己の想いをぶつけるかの如く。強く、深く。  
「やあ…ダメッ…!あああああっ!!!」  
望美の悲鳴が、果てを告げ。  
「…ぅっ、…ぞみっ!!」  
急に中心を締め付けられて、将臣もまた果てた。  
 
 
「先輩!!…兄さん。」  
「…讓。」  
讓は目の前にある光景が信じられなかった。  
自分の兄と自分が何より愛しい少女が睦み合っているのだから。  
しかも、二人がそういう仲ならまだいいのだが、彼女の想い人が別にいる事を知っていた。  
「…何を…してるんだ?」「見たまんまだ。」  
将臣はいつもと変わらずひょうひょうと言う。汗かいて気持ち悪いとまで言ってのける。  
譲はカッとなって思わず顔を殴りつけた。  
抵抗も避ける事もしなかった将臣の体が部屋の奥へとふっ飛んでいく。  
「…ってぇ…。」  
「何考えてるんだよ!こんな事して!!…自分が何したか、わかってるのか!?」  
「わかってるさ。」  
「…どうしたの、先生?」  
横たわっていた望美が起き上がり、将臣の顔を覗き込む。  
「何でもない。」  
将臣は頭を撫で、横になるよう促した。  
望美は笑って頷き、将臣の側で横たわる。  
「…先輩!?」  
「…こういう事だ。」  
「正気じゃないな…何があったんだ?」  
「頼朝に飲まされた薬でこうなっちまったみてぇだ。幻覚が見えるんだってよ。」  
「幻覚…。」  
「だから、当然抱かれてもリズ先生に抱かれたとしか思わねぇ。  
…例えそれが頼朝とかその部下だとしてもな。」  
「…まさか…。」  
「多分だがそれが狙いだろうよ。どこの誰がヤッたのかは知らねぇがこいつはもう…。」  
「そんな…くそっ!!」  
彼女は源氏に協力してきたというのに、こんな仕打ちを受けるなんて。  
望美を見ると、恍惚とした顔で将臣に寄りかかっている。  
「…だからと言って、先輩を好きにしていいって言う事にはならないぞ。」  
「望美の心はもう手に入らない。…なら、せめて体だけでも…と思うぐらい…いいだろ。」  
間違っている、と心の中で思いつつ、それを口に出す事は出来なかった。  
望美に目をやると、そこではまだ薬が効いているのか、  
艶めいた顔で呼吸を繰り返している。  
まさしく、それは男を誘う顔で──。  
「チャンスは一度きりだ。これを逃したら、もう体を抱く事すら出来ねぇんだぞ?」  
将臣に肩を叩かれ、譲はおぼつかない足取りで望美の元へ歩いていった。  
熱い頬にそっと触る。  
「…先生?」  
ずっと小さな頃から好きで好きでたまらなかった。  
よく好きな人が夢の中で告白すると言うけれど、讓はそんな夢すら見た事なかった。  
夢の中ですら望美は手を振りつつ、手の届かない所へ行ってしまう──。  
けれど、今はそばにいる。  
 
「…目を、閉じていなさい。」  
真っ直ぐ見る視線が痛くて、低い声でそう呟いた。  
「はい、先生。」  
声などまるきり似てないだろうに。それでも完全に自分を  
リズ先生だと信じきっている。今ならば拒絶される事もなく、抱ける。  
譲は、着物を脱ぎ彼女に覆い被さった。  
彼女の柔らかな唇に躊躇いがちに触れると、何の抵抗もなく首に腕を絡めてくる。  
ヌルリとした感触が入ってきて、ゆっくりと侵す。  
唇から首へ移動してゆく。紅い印はつけないよう、舌で首筋を這わし。  
片方の手で、やんわりと頂きを揉みほぐし、手の平でコリコリと突起の部分を刺激する。  
止めろ。今ならまだ間に合う、と頭のどこかで声がする。  
最後まで行ってしまったら、もう二度と彼女の瞳を真っ直ぐ見れない。  
「あっ…。」  
揉んでいる手に力が入ってしまったのか、眉をしかめる。  
「すっ、…痛かったか?」  
「ううん、いい…気持ちいい、よぉ…先生ぇ…。」  
先生。  
幾度も口にするのは、望美が欲する人の名前。  
彼女が抱かれているのは、あくまでも先生で…讓ではない。  
どす黒い靄が胸の中へ広がっていく。  
「入れるぞ。」  
「うん、先生…。」  
もう、止めろと言う声は聞こえなくなった。  
熱を持った己自身を潤っている部分へと挿入させる。  
あっさりと侵入を許すそれは、その前に男を受け入れた証しで。  
初めての彼女の中は熱く、柔らかくて。ヒクヒクとうねり譲自身を締め付ける。  
「…愛し、てる。」  
「私も。先生を世界、の…ん…誰より、愛、してる。」  
背中に手を回し、愛の言葉を紡ぐ。自分に対してではない、他の男に対して。  
譲はぎゅっと掌を握りしめた。熱いものが目から溢れてくる。  
「…どうして泣いてるの?」  
「…何でも、ない。」  
「嘘。先生、泣いてるよ。何があったのかわからないけど…悲しまないで。  
私が、ずっと側にいるから…ね?」  
空虚な光を宿らせて、こちらを見る。  
いや─見ているのはもっと遠い場所。  
(先輩…っ!)  
涙を手の甲で拭い、再び行為を繰り返す。幾度も、幾度も激しく。  
「あんっ…はあ…っんっ…ああっ…。」  
「くっ…!」  
譲は達しそうになるのを感じ、自身を望美の中から抜いた。  
途端に、白い液体が望美の腹の上へ放たれる。  
己の荒い息遣いさえも讓にはやけに遠く感じられた。  
体中に流れる汗を感じつつ、手拭いで彼女の体を丁寧に拭う。  
 
「先生…。」  
「…もう、寝なさい。」  
こちらを向こうとする顔をそっと押さえ、目を閉じらせる。  
「はい、先生…。」  
望美はそのまま安らかな寝息をたてはじめた。  
譲は、服を来て部屋から出る。  
もう、彼女の口から自分ではない名前を聞きたくなかったからなのか、  
それとも心が向いてない事を承知の上で彼女を欲求のはけ口にした後ろめたさか。  
いずれにしろ、彼女を知ってしまった以上、もう顔を合わす事は出来ない。  
この怨霊にも似た禍禍しい欲望が、何時また彼女を求めるかわかったものではない。  
もしも、正気なままで彼女を無理矢理抱いてしまったら──。  
彼女は拒絶するだろう。やめて讓くん、と脅えた目でこちらを見て。  
力に任せて押し倒したら、泣き叫んで先生の名を呼ぶだろう。  
俺は嫉妬のあまり先輩を口づけで黙らせて、姦する。  
そこまで想像して、俺は自分の頭を殴る。  
そうなるぐらいなら、以前見た夢のように死んだ方がマシだ。  
部屋を出た所で、将臣に遭遇した。  
「どうだ、気分は?」  
「最悪だ。」  
それだけ言って、顔も見ず横をそのまま通り過ぎていった。  
 
将臣は溜め息をつき、彼女の想い人の方へ向かった。  
 
 
「リズ先生、もう追手は大丈夫か?」  
来てみると、そこには二十数名の兵が寝かされていた。  
汗を特にかいた様子もなく、平然と剣を収める。  
「ああ…神子は?」  
「俺たちが駆け付けた時には…もう手遅れだった。」  
「殺されたのか!?」  
腕を強い力で掴んでくる。  
ぎりぎりと締め付けて、骨が折れるんじゃないかと思うぐらいだった。  
「いって…っ!リズ先生、落ち着けって!望美は生きてるから!」  
「そ、そうか…済まぬ。」  
慌てたように、腕をぱっと離す。  
腕がじんじん痛む。多分、軽く痣くらい出来ているだろう。  
この人がここまで動揺するなんて、初めて見た。  
「あいつらが狙っていたのは命じゃない。…カラダだったんだ。」  
「…そうか。」  
リズヴァーンは眉間に深い皺を刻みつけ、拳を握り締めた。  
以前に神子を守るのは八葉の義務だと言っていたのを聞いた事がある。  
しかし、それだけの理由でないだろう。  
望美を心から想っている事は誰の目にも明らかだ。  
「あいつ…薬でおかしくなってる。行ってやってくれよ、リズ先生。」  
「わかった。」  
それだけ告げるといつもと同じように姿を消した。  
「俺も最低、だな…。」  
自嘲気味に笑い、呟く。  
だが、何も知らないままで幸せならばそれで良いとも思う。  
犯されたのは間違いではないのだから。ただ、その中に自分も含むだけの話で。  
将臣が仰いだ空には満月が浮かんでいた。  
「ごめん、な…。」  
 
 
すっかり暗くなった部屋で望美が横になっていた。  
ぐったりとしているのはいいだけ遊ばれた結果なのだろうか。  
「……神子。」  
近づくと、望美の体を弁慶の外套でくるんでいるのが見えた。  
彼もここに来ていたのなら、何故助けもせず一人にしておくのだろうか?  
疑問は残るが、とりあえずは望美を助け出す方が先決だ。  
リズヴァーンは、望美を抱き上げた。  
。彼女は顔を向け、手を伸ばす。  
「起きたか。しっかり捕まっていなさい。すぐ邸に戻る。」  
話を聞いていないのか、返事もせずに髪を掻き上げ、耳にかける。  
「…神子?一体どうし──!?」  
リズヴァーンは体を硬直させた。  
望美が耳たぶを軽く食んだのだ。  
「なっ、何を…?」  
「私を…抱いて。」  
囁き、息を吹きかける。  
「!?」  
「体が…熱いの。お願い、先生…。」  
ふと、先程の将臣の言葉を思い出す。おかしくなった、とはこういう事だったのか。  
弁慶がいないのも頷ける。  
「…厄介なのを任されたな…。」  
これが他の人なら、やりたいようにさせておくのだが、相手は何より愛おしい望美。  
いくら年月を重ねても、彼とて男。それなりに欲もあり、体も反応する。  
とはいえ、このままここにいるわけにもいかず。  
(忍耐…忍耐だ…)  
望美が執拗に誘うので力も思うように使えず、歩いて帰る羽目になったのである。  
 
 
「ん…。」  
頭や顔を撫でる大きな手を感じ、目を開けた。  
朝の光が辺りに広がり、鳥の声が聞こえる。  
「目が覚めたか。」  
「先生?」  
すぐ側に先生がいた。  
「よく眠っていたようだな。」  
「私、一体…。」  
そう言いかけて、互いの姿に気づき、顔を赤らめた。  
「せ、先生っ!?」  
「身体は何ともないか?」  
「は、はい…大丈夫、です。」  
「ならば良い。」  
「あの…昨日の事、まったく覚えてないんですが…。」  
「そうか。」  
どこかほっとしたように、目を細めた。  
「昨日、何があったんでしょう…?」  
「…答えられない。」  
有無を言わさぬ答えに、望美はそれ以上問われるはずもなく。  
「先生…。」  
「他に質問は?」  
「…じゃあ、せめてどうしてこんな姿でいるのかくらいは答えてくれます?」  
「着物が見当たらなかった。」  
「……は?」  
「気を失っていたお前を連れ帰ったのは良いが時間も遅く、朔も休んでしまっていた。  
汚れた着物のままで寝かせる訳にもいかなかったから、脱がせた。」  
「…先生までが裸になって側にいるのはどうして?」  
「そのままでは寒いだろうと思い、人肌で温めようとしたまで。」  
望美は頭を抱えた。  
「…もういいです。十分わかりました…。」  
「そうか。」  
「でも、気を失ってたって本当何してたんだろ…思い出せない。」  
「…ままでいい。」  
「え?今、なんて言ったんですか?聞こえなくて…。」  
「…何でもない。」  
「…?」  
 
──知らないままでいい。  
何も、知らないままで。  
 
「あ、ちょっとお水飲んできます。なんか、いっぱい汗かいちゃったみたいで喉が…。」  
「水なら、ここにある。」  
起き上がろうとするのを手で制し、側に置いてあった器を手に取る。  
「あ、ありが…!?」  
リズヴァーンは水を口に含むと、望美を引き寄せ唇に触れた。  
口の中に、ほんの少し温くなった水が渇いた喉を潤す。  
入りそこねたのが口端から首すじをつう、と一筋通っていった。  
「ん…。」  
水より温かいものがゆっくりと口の中をなぞっていく。  
いきなりの事で戸惑いながらも彼に応えようと舌を絡ませる。  
もう少し味わおうとしたところで、あっさりと彼の方から離れてしまう。  
「…先生?」  
「神子。汗をかいたと言っていたが、気持ち悪くはないか?」  
「あ…そうかも。お風呂、入って…ってお湯沸いてないか。」  
「湯殿ならば、朔が用意してくれている。」  
「え、そうなんですか?じゃあ…。」  
「私も行こう。」  
男風呂とか別れていたっけ?なんて事を思いながら湯殿に着くと、彼もまた後ろに  
ピッタリと付いてきていた。  
「あの…先生?」  
「どうした、神子?」  
「ここは脱ぐ所なので、その…。」  
「汗を流したいのだろう?早くせねば風邪をひくぞ。」  
脱がそうと着物に手をかける。  
「ち、ちょっと待って下さいってば!子供じゃないんですから、一人で出来ます!」  
「そうか。」  
望美の着物から手を離すと、自分が脱ぎ始めた。  
鍛えあげられた肉体が朝陽に照らされる。  
「せせせ、先生っ!!?」  
「どうした?」  
「まま、まさか…一緒に入るつもりじゃあ…?」  
「最初から、そのつもりだが?」  
「な…な…な…。」  
「私とは嫌か?」  
「い、いえ。そーゆー訳じゃあ…。」  
「ならば問題ないだろう。」  
問題大アリです!という叫びも虚しく、風邪をひくからと半ば強引に着物を脱がされ、  
湯殿まで彼に抱き上げられる形となってしまった。  
 
「入る前に体を流さねばならぬな。」  
着いた所で望美は降ろされ、湯をかけられる。  
「えっ?あつっ…。」  
体が冷えていたせいか、熱くピリピリする。  
「熱いか?」  
「あ、大丈夫です。」  
湯をかけながら、さすっていく。首すじから背中を伝い、背中から脇へ。  
「く、くすぐったいです。」  
「そうか。」  
手が脇から、乳房に移る。湯をかけつつ、円を描くようにゆっくりとなぞる。  
時折触れる先の部分にささくれだった手がつんと刺激していく。  
あまりに気持ち良くて足がガクガクする。  
「せ、先生…座ってはダメ、ですか?」  
「もう少し待ちなさい。」  
臀部も同じように触り、太股を撫で上げる。  
特に揉む訳でも舌を使う事もなく、ただ淡々と湯で流しなぞるだけ。  
それが余計に体の疼きを増して。  
全身をくまなく巡った頃には既に力が入らなくなってしまっていた。  
その手が、望美の一番敏感な所に触れる。  
「こっ、ここは…ダメ…っ!!」  
「こことて、汗はかく。」  
膝をつき、隠そうとした手をのけられてしまった。  
「痛かったら言いなさい。」  
湯をかけられ、先程よりも丹念に撫でていく。  
「やっ…ふっ…。」  
指が望美の中まで入り、掻き出すかのように幾度も抜き挿しを繰り返す。  
声を出したらダメだ。単に体を洗ってくれているだけなんだからと自分に言い聞かせる。  
その指が一番感じる所に触れる。  
「あん…っ!」  
声を抑えようとしても、指の動きに思わず出てしまう。  
そんな心情を知ってか知らずか指の動きが段々激しくなる。  
聞こえる荒い息遣いが自分のものか、彼のものなのかわからないぐらい、遠い。  
「あっ…やぁ…んっ、先生、もう…。」  
「止めるか?」  
「ちがっ…。先生が、欲しい…の。」  
先程のもあり、羞恥心はもうどこかへ消えてしまっていて。  
ただ、心のままに口を動かしていた。  
「…私をか?」  
「先生しか…いらない…。」  
彼は目を見開いた。しかし、すぐいつもの表情に戻り、  
「…わかった。」  
そう言うと、望美を抱え直し、ゆっくりと己自身を望美の中へ入れていく。  
「ああっ…。」  
「神子。私の首に腕を回しなさい。」  
「はい…。」  
「これから激しく動かす。しっかりと掴んでいなさい。」  
「はい…先生。」  
腰に手を回した辺りで、望美が首を傾げる。  
「どうした、神子?」  
「よく思い出せないんですけど…初めてなはずなのにどこかで  
こんな風にされた事があるような気が……きゃああっ!」  
最後まで言わせぬかのように望美の体を大きく揺らし、肉を激しくぶつけ合う。  
揺れる事でより最奥まで強く刺激が増す。  
「ああっ…やあっ…!!」  
同時に胸を強い力で吸い上げられ、より意識を高ぶらせる。  
息が荒くなる。  
何度となくぶつけ合ううちに、互いの絶頂が近い事を感じた。  
「せんせえっ…もう…っ。」  
「…うむ。」  
リズヴァーンは望美を座らせて、さらに早くそれを打ち付ける。  
「やあっ…あああ───!!!」  
望美の高い声が上がり、互いに絶頂を迎えた。  
 
 
ちゃぷ…。  
辺りに広がる湯気が互いの視界を狭めていたのもあり、  
思ったより気恥ずかしさは消えていた。  
程良い加減のお湯も相まって、心を和ませたのもあるかもしれない。  
それでも、先程のをまた思いだして、顔が赤くなった。  
「…すまなかった。」  
背中越しに聞こえる声は、少し沈んだ感じで。  
「…先生?」  
いつもとはどこかが違うと思い、彼の方を向く。  
湯気でよくは見えないのだが、側にいることはなんとなくわかる。  
「そろそろあがるか。十分温まっただろう?」  
「…やっぱり変ですよ、今日の先生。何か、あったんですか?」  
「神子が気にする事ではない。」  
「…いつもそうなんですね。私、先生が何を考えているのか、わかりませ…っ!?」  
背中から急に抱き締められ、体が固まる。  
「…お前が知る必要のない事。」  
「そんな…そんなのって…。」  
それでは先程の行為は一体何だったというのか。  
ただ単に体のみを求められたと思われてしまったのだろうか?  
「私は先生が…っ。」  
「もうあがる。神子も十分温まったらあがりなさい。」  
そっけなく告げて、さっさとその場を後にする。  
「先生…っ!!」  
 
「私は先生が好きなんです!!先生…っ!」  
望美の声が一人残された湯殿に空しく響き渡った。  
 
 
湯上がりに、庭に出て先程の言葉を思い出す。  
『私は先生が好きなんです!』  
先程自分のみを求めた事から考えても、あれは仲間として、ではないだろう。  
「好き、か…。」  
幾度そう言っては命を散らした神子を見てきた事か。  
『私、先生の事が好き。』  
『守りたいって思うの。みんなもそうだけど、何より、先生の事を。』  
『先生…泣かないで。私ね、先生が無事で…本当に良かったって思ってる。  
幸せに…生きて。』  
浮かぶのは、自分に笑顔を向け、目を閉じた姿。  
「…私は何度殺せば気が済むのだ……っ!!?」  
どん、と強く拳を膝に叩き付ける。  
あの口づけや湯殿に入れたのも、清めるためだけのつもりだった。  
どこの誰ともしれない下卑た男達に慰みものになったと聞いて、  
その者らに触れた可能性のある箇所を洗い流したかった。  
全てが落ちる訳ではないが、せめて少しでも汚れが落ちるなら、と。  
まさか、あんな風に求めてくる事になろうとは思ってもみなかった。  
いや、もしかしたら神子は自分のこの想いを見抜いたからなのか。  
神子を抱いた時、痕跡を消すためだ、といい聞かせていたが、  
本当はただ己の欲望に逆らいきれなかっただけではないのか──?  
…どちらにしろ、もうあのような行為をする事はない。  
ただの八葉として神子を守るだけだ。  
私の事は色好みな最低の男とでも思ってくれれば良い。  
今は鬼に惑わされているだけだ。  
いずれは目も醒め、自分の世界に帰り、他の男を好きになるだろう。  
その時が来るまでは、ただ守るのみ。  
もう二度とあのような真似は繰り返さぬ。  
「神子が覚えてなかったのは幸い…だな。」  
忘れたままでいい。思い出さなくていい。  
覚えていたとて、神子の傷を広げるのみなのだから。  
 
「昨日は……疲れた。」  
長いため息を吐き、眠るため部屋へと戻って行った。  
 
 
「ん…。」  
目が覚めると、大倉御所にある部屋の一室で寝かされていた。  
「起きましたか、九郎?」  
「あ、政子様!どうして、こちらに?俺は一体…?」  
「昨日の事は何にも覚えていらっしゃらないの?」  
「あ…。」  
昨日の情事を思い出して赤くなる。昨日の彼女は、いやに…色っぽかった。  
「あの…望美は?」  
「顔を合わせるのが恥ずかしいと、先に帰ってしまわれましたわ。」  
「そ、そうですか…。」  
確かに自分としても恥ずかしいという気持ちはある。  
しかし、これでは次に会う時、余計気まずいではないか。  
九郎は、すねたように唇を尖らせた。  
「鎌倉殿にも会わせて頂けるのでしょう?」  
「ええ、必ず…兄上に紹介します。」  
「楽しみだわ。あのお嬢さんはとてもかわいらしい方だし。」  
政子はくすっと笑った。  
鎌倉殿の正室という身分にも関わらず、このように無邪気なところもある。  
彼もまた、そこを気に入っての事かもしれないが。  
「政子様にそう仰って頂けるなら、光栄です。」  
問題は望美が何か失敗をしでかさないかだが──。  
その前に、先生に言わないといけないな。望美の事を。  
昨日、確かに自分を好きだと言ってくれた。  
自分の気持ちを誤魔化すつもりもない。遠慮なんてしたら却って二人に失礼だろう。  
 
「九郎。」  
帰り道、弁慶に呼ばれた。心なしか、厳しい顔つきだ。  
「弁慶か…どうした?」  
「少し時間を頂け…。」  
「あ〜いたいた、九郎!頼朝様が至急来るようにって。」  
「そうか。すまん、弁慶。話なら後で聞く。」  
「…いえ。」  
弁慶は九郎を見送り、姿が見えなくなったところで景時に振り向いた。  
「…景時。あなたは…時間がありますよね?」  
「……。」  
 
邸から少し離れたところで、弁慶が切り出した。  
「あなたは、望美さんがどうなっても平気なんですか?」  
「そんな訳、ないじゃないか…。」  
「…望美さんが兵に辱めを受けた事…知ってますね?」  
「……オレにどうしろっていうの?」  
「…あくまでも言いなりなんですね。少しは彼女の事を想っていると信じていたんですが。」  
弁慶はため息をつき、邸へと戻っていった。  
「…どうしようもないじゃないか。人形は…逆らえない…。」  
人形には口応えなんて許されない。抱け、と言われれば白龍の神子もこの手で抱くし、  
殺せと言われれば…そうする他ない。  
意思も想いも…人形にはいらない。持ち主の怒りを買えば人形だけではなく  
その周りをも壊してしまう。  
人形には…守る力さえもない。  
(ごめんね…望美ちゃん…)  
ぽたっ…と滴がいくつか落ちて、消えた。  
 
 
その翌朝、リズヴァーンは鍛練のため海岸へと向かった。  
「…先生。」  
後を追ってきたのか、後ろから九郎がやってくる。  
「九郎か。どうした?」  
「お話があります。」  
「…何だ?」  
「…俺は、望美を愛しています。」  
ざあ、と風が髪をさらう。  
「な…っ!?」  
「先生もまた俺と同じ気持ちだと言う事は知っていました。  
だから、言っておきたかったんです。」  
真っ直ぐな眼光がリズヴァーンをとらえる。矢で的を射るかの如く。  
「九郎…。」  
「…彼女からも好きだと言われました。だから…。」  
「…それでいいではないか。何を気にする事がある?」  
「しかし!!」  
「神子は白龍の神子で私は八葉…それだけだ。」  
「先生…わかりました。望美は、俺が幸せにしてみせます。俺の、生涯をかけて!」  
「…うむ。」  
「では、失礼します。」  
(神子…九郎との運命を選んだのだな。)  
昨日の態度に呆れてしまったのだろう。  
そして、九郎を選んだ。  
胸がちくりと痛むが、望美の幸せを思えば、微々たる事。  
リズヴァーンは頭の雑念を振り払うため、剣の稽古を始めた。  
 
 
「九郎さん、話って何ですか?」  
「あ〜その、何だ…。」  
顔を真っ赤にして、頭を掻いてる。言い辛い事でもあるのだろうか?  
「その…兄上に…。」  
「お兄さん…頼朝さんがどうしたんですか?」  
「お前の事を話したら、会いたいと仰られて…。」  
「頼朝さんが?…まあ、構いませんけど。」  
「そそうはするなよ。」  
「私ってそんなに信用ないですか?」  
「そういう意味じゃない。兄上との話が終わったら、改めて、言いたい事もあるしな。」  
「今、言えないんですか?」  
「ああ。まずは兄上に会ってからだ。」  
「…?わかりました。じゃ、きっとお話してくださいね。」  
「ああ。」  
九郎はこれ以上ないと言うぐらい幸せな笑顔を向けた。  
 
 
後日、望美は再び大倉御所へと向かった。今度は弁慶と讓、将臣、リズヴァーンを引き連れて。  
 
「よく来たな、白龍の神子。」  
「はあ…。」  
ここには前も来たけれど、実のところあまり覚えてはいなかったりする。  
ただ、あの時以来から皆何かが変わった。九郎さんが奇妙なぐらい優しくなったり、  
将臣くんは…変わらないかな。ふざけてくっついてくる度合いがちょっと増えただけで。  
弁慶さんも相変わらず。  
讓くんは…まったくこっちを見なくなった。話があるときもいつも背中向けてばかり。  
一度怒って無理矢理振り向かせた事があったんだけど…その時の悲痛な顔が忘れられなくて、  
聞き出す事が出来なくなった。  
景時さんも変わらないけど…元気がないようには見える。  
聞いてもそんなことないよって誤魔化されるけど。  
敦盛くんも顔を合わせなく…なったかな。話がある時は普通にしてくれるけど、  
どこかぎこちなさすら感じる。まるで腫れ物に触るよう。  
先生も…変わらないかな。前以上に過保護になったって事以外は。  
私もあの朝の事は出来るだけ気にしないようにはしてる。  
どのみち話してもくれないし。  
色々気にかかる事は多いけど…今は戦を終らせるのが先決だから。  
仲間として大事にしてくれてる…それだけでいい。それ以上は…贅沢だよ。  
時々思い出しては…体が疼くけど。  
考えてみれば、私、あれが初めて…なんだよね。よく言われる痛みとかはなかったけど。  
先生…結構筋肉ついてたんだな。  
先生の腕の感触が今も身体に刻みつけられている。  
 
「…おい、望美。聞いているのか?」  
少し苛立った九郎さんの声で我に帰る。  
「えっ?あっ、いえ…ごめんなさい…。」  
何だか今まで考えていた事が見透かされそうで、顔を上げられない。  
「全くお前というやつは…しょうがないな。」  
「…九郎から話はよく聞いているぞ。」  
「はあ…。」  
どんな話なんだろう?  
あんまりいいものではない気がする。会っては喧嘩ばかりだし。  
「…お前、私の部下らと体を交してはおらんかったか?」  
「え…っ?」  
「なっ…!?」  
「それだけではない。そこの蒼い髪の男とも…弓遣いや弁慶とも交していたな?」  
「嘘っ…そんなの、嘘です!だって、身に覚えが…。」  
「この間来た時だぞ?…景時に聞いたところ、何も思い出せぬのであろう?」  
「あ…。」  
「ごちゃごちゃうるせぇな。身に覚えねぇっつってんだろ!?」  
「ああ、そういえば。お前はあらゆる男に先生と呼んでいたな?…九郎に抱かれた後も。  
政子に聞けば高熱を出していたと聞く。大方、その先生とやらと間違えていたのであろう?」  
「先生と…間違えた?」  
「う、そ…。」  
 
 
その後、大倉御所から帰ってきたのは弁慶ただ一人だったと言う。  
九郎義経が謝罪しながら自ら命を断ったとか、鎌倉殿に斬りかかって返り撃ちに  
あったのが実は還内府だったとか、色々言われていたが。  
一つだけはっきりしているのは、その大倉御所で狂ったような女性の悲鳴が  
聞こえたという事だけ。  
それは周囲にも響き渡ったという。  
 
 
それから、朔は梶原邸を出て尼寺に駆け込んだ。  
彼女は泣きながら、大事な人たちの菩提を弔いたいと訴えたと言う。  
時々、兄の景時が訪れても顔も合わさぬらしい。  
 
そしてまた、弁慶も源氏の元を去った。  
噂では鎌倉殿に復讐するつもりで熊野水軍の元へ行ったとか、平家に  
寝返ったのだとか色々言われてはいるが、姿を見掛けた民は誰もいない。  
 
その噂の中で、夜毎暴れる鎖に繋がれた怨霊や、危害を加えず  
「せんぱい…。」と呟きながら辺りをさ迷う人影を見掛けた者がいたとか。  
 
 
「あなたったら嘘ばっかり。」  
兵もいない部屋で政子は頼朝に寄り添って耳元で囁いた。  
「何の事だ?」  
「この間の事ですわ。あのお嬢さんに嘘教えましたでしょう?」  
「ああ、九郎たちを呼んだ時の事か。」  
「あの時、兵と最後まで交してなどいなかったではありませんか。  
すんでのところでお止めになったくせに。」  
「八葉どもの事は本当だったがな。」  
「あの顔と悲鳴…わたくし忘れられそうにありませんわ。」  
ふふっと笑い、頼朝の頬を指で軽く突いた。  
「しかし、ああも次から次へとかかってくるとは予想外だったな。  
九郎と事を成せばそれで十分だったものを。」  
「神子とは男を魅惑させる力に長けていらっしゃるのかもしれませんわね。」  
「単に淫乱なだけではないのか?」  
「まあ。」  
ふふっと笑い、頼朝の頬に口づけする。  
 
 
 
「…神子。私は何処をどう間違えてしまったのだろうな…?」  
頼朝に呼び出されたあの日。真実を伝えられた時、神子の絶叫と共に白龍が消え、  
それに伴い、神子と私の逆鱗にひびが入り、時空を越える事は叶わなくなってしまった。  
もう、やり直す事も…神子を救う事も。  
「私は何のために…神子の側にいたのだ。神子を苦しめるためだけに存在していたと…  
いうのか。」  
悲鳴をあげる前、私の顔を見てごめんなさいと涙を溜め何度も呟いていた。  
…神子のせいではないのに。  
 
ただ、神子の幸せのみを願っていた。  
その為ならば、この命など惜しくはなかった。  
なのに、神子が黄泉路へと旅立ち、私はここに残ったまま。  
 
涙が逆鱗に落ちる。  
月光に反射してキラリと光ったのみ。  
 
 
 
 
〈おわり〉  

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