異世界の京に月が昇る。綺麗な満月…。
望美はあてがわれた部屋に体を横たえていた。花断ちを覚えるために
毎日のように神泉苑にて、練習を重ねていた望美。
剣など握ったこともなく、まして平和な現代で暮らしてきた望美にとって
簡単に物事が運ぶわけがない。めげそうな気持ちの中、望美の心に浮かぶのは
あの時空ではぐれてしまった将臣のこと…。
―ひとりぼっちでどこにいるの?将臣くん。―
望美は目を瞑って将臣の顔を思い浮かべると、そのまま深い眠りに落ちていった。
ふと気づくと、望美は学校の教室に佇んでいた。
人影のない夕陽が差し込む教室のなか、ぼんやりと辺りを見渡していると
望美を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。聞き間違えるはずのない声に望美は急いで
振り返ると、机の上に行儀悪く乗りながら微笑む将臣の姿だった。
「将臣くん!やっぱり無事だったんだね。」
近くに駆け寄り思わず抱きつくと、夢だと分かってるはずなのになぜか
温もりを感じた。ふと、我に返って慌てて望美は体を離す。
「お前は変わらないんだな…。」
「ん?将臣くんも全然変わってないけど…。」
望美の言葉に少し悲しげに顔を歪ませた将臣は、徐に制服のポケットを漁ると
古びた懐中時計を取り出した。
「やっぱりあった…。これお前にやるよ。」
「ありがと。すっごく嬉しいよ…。」
顔をほころばせて喜んでいる望美を照れくさそうにみつめる将臣。時計の蓋を
開くとオルゴールが悲しげなメロディを奏ではじめる。
将臣は机の上から降りると、望美と向かい合うように近づいた。
「ねえ、将臣くんは今どこにいるの?」
「俺はちょっとした用事で、京にいるんだよ。」
将臣もこの時空で少しはぐれただけで、きちんと京に辿りついていたのだと
望美はそう思っていた。
「私も京にいるんだよ。会えないかな?」
「悪りぃ…ゆっくりしていられる時間はないんだ。」
そうか…と言ってため息をつきながら俯いてしまった望美を、将臣は両腕で
包み込んだ。思ってもみなかった行為に、望美は上目遣いで将臣をみつめた。
「そんな顔すんなよ…反則だぜ。」
何度こんな風に抱きしめられることを、頭に思いえがいたのだろう…。
幼馴染として培った関係をすべて壊してしまいたいと思ったこともあった。
でも、できなくて…時間だけが過ぎていって…。
そして離れ離れになって、淡い想いははっきりとしたものに変わった。
―将臣くんが好き―
望美は将臣の広い背中に腕を回すと、きつく体を密着させる。相手の胸の
鼓動が自分に伝わり、心地よかった。
「夢なのに…変だよな。」
少年の面影を残す将臣の顔が朱色に染まっている。中学にあがるころには
こんな間近で顔をみることはなくなっていた。
どちらからともなく唇を塞ぐと、将臣はゆっくりと望美を机の上に押し付けた。
夢だからだろう…望美も制服に戻っていることに今更気づく。
望美の長い髪がサラサラと重力に従って揺れる。将臣は望美の存在を確かめる
ように、頬に指を這わせ切なそうにみつめながら言った。
「…いいか?」
望美は無言で頷くと制服の上着を脱ぎ、首に巻いていたタイも外し始めた。
将臣がじれったそうに、望美のブラウスのボタンをひとつひとつ解放していくと
素肌が冷たい空気にさらされる。柔らかい肌に将臣の唇が触れると、望美はピクッ
と体をこわばらせた。
「緊張してるのか…?俺もだ。」
将臣はそう言って、望美のブラを押し上げると小ぶりだが形の整った胸が顔を
のぞかせた。頂にある突起は少し刺激を受けただけなのに、硬く存在を主張して
いた。将臣は望美の胸を包み込むと、手で弄びはじめた。
「やぁ…んん…くすぐったいよぉ。」
望美の反応を楽しむように、突起を指でこね回しもう片方は口に含んで
吸い上げる。はじめての刺激に望美の手は、体を預けている机の脚を握って
耐えていた。胸を弄ばれてるだけなのに、なぜか下半身が熱くなっていく。
望美は堪らなくなって、両足を擦り合わせはじめる。
将臣は望美の無意識の反応に気づくと、片手でスカートの裾をめくりあげる。
ショーツの上から望美の泉を撫であげると、もうすでに蜜を潤ませているのが
薄い布の上からもはっきりわかった。
将臣は体を起こすと望美の足の間に体を滑り込ませ、ちょうど泉が顔の高さに
なるように屈みこむと、ショーツを取り去った。
誰にも見せたことのない場所が、将臣の瞳に映っている…そう考えるだけで
顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「ま…将臣くんっ…ぁ。」
何をするのか尋ねようと口を開いた途端、将臣は望美の蕾を口に含んで吸い
あげた。
「あっ…あぁ!」
胸の刺激とは比べ物にならないほどの快感が体を駆け抜ける。将臣は吸い上げ
ながら、細く長い指をゆっくりと沈ませていく。
望美は少しの違和感に耐えるため、さらに机の脚を握り締める。溢れ出す蜜の
おかげで軽く進入を許した将臣の指は、ゆっくりと抽出を繰り返す。
「はぅ…あ…あぁ。」
蕾への刺激と指が望美の中心をとらえるたび、今まで一度も感じることの
なかった疼きが灯っていくのがわかる。それはだんだん膨れ上がっていく。
「だ…だめっ、怖…い…あっ。」
ピクンっと望美の体が魚のようにはねた。何も考えられないくらい、頭が
真っ白になる。荒かった息を整えて目を開けた望美は、心配そうに将臣が
自分をみつめているのに気づく。
「大丈夫か?きつくしすぎたのか…俺。」
「大丈夫…心配しなくていいから…きて…」
将臣は望美の膝の裏に手をかけて両足を開き、泉に熱いたかまりを押し当てた。
たっぷりと蜜を含んだ泉は、将臣を飲み込んでいく。将臣が体を沈めるたびに
望美の体を預けている机は、ギシッと悲鳴をあげる。はじめての圧迫に眉根を
寄せる望美は、ますます机の脚を握る手に力がこもる。
「俺の腕…掴んでろ。」
将臣は望美の手を机の脚から離すと、自分の腕に掴ませた。途端にキュッと
力がこもる。
「あっ…。」
「動くぞ…。」
かすかに頷いた望美を合図に、じんわりと腰を進める将臣。熱いたかまりに
絡んだ蜜が、教室に水音を響かせる。将臣に揺らされるたび、ふたりの体重を
支えている机が水音の合間にギシギシと啼く。先程の疼きが、望美の最奥に
再び灯りはじめる。この先待ち受ける感覚に、少し恐怖を覚えると望美は
ますます将臣の腕をきつく掴んだ。
「あっ…あぅ…やぁ…あぁ…。」
将臣は望美の唇を塞ぐと、動きを速めた。望美は将臣の肩に顔を押し付け、
手は背中を激しく掴んだ。
「あ…またっ…。」
「望美っ。」
ドクンっと望美のなかに、将臣の熱い欲望が解き放たれたのを感じた。
遠ざかってく意識のなかで、将臣のやさしげな顔と腕につけた痣が望美の
瞳に映っていた。
「望美…大丈夫?」
唐突に夢から醒めた望美がみたのは、心配げに覗き込む朔の姿だった。
気持ち悪いほど汗だくだったが、ここは確かに夕べ床に就いた部屋のままだった。
「うん…変な夢みちゃった…。」
「うなされてたから心配したわ。湯殿用意してあるから、使ってね。」
そう言って出て行く朔を見届けると、湯殿のある場所まで向かう。
籠に汗を吸い込んだ寝巻きを放り込み、ショーツを脱ぎはじめた望美。
トロリ…なにかが太ももをつたう感触に驚いて指で拭うと、それは朱が
混じった欲望の痕…。泉から溢れでるものに望美はうろたえる。
―あれは夢…唯の夢なのに、なんでなの?―
急いで湯を体にかけてから、望美は湯殿に身を沈める。自分で自分を抱きしめると
必死で心を落ちつかせようと試みる。起きた時に感じた体の痛みは、気のせいとは
片付けられない。望美の髪から滴る雫が波紋を広げていく…。
―将臣くんに逢えば…きっとすべてが分かるはず…―
望美は今という現実に集中するため、そっと瞳を伏せた。