彼が消滅してしまってから、朔はいつも心に虚しさを感じていた。  
たまらなく寂しく、たまらなく悲しかった。  
時々自分でもどうしようもない感情が湧き上がり、言葉にならない言葉を叫びたい衝動に駆られていた。  
泣きわめき、黒龍を、自分を、みんなを責めたかった。  
それでも少しずつ、ほんの少しずつではあるが朔の心は悲しみから癒されていった。  
望美と、彼女の八葉たちの優しさは朔の慰めになったからだ。  
 
しかし朔は真実を知ってしまった。  
熊野で、弁慶が赤い髪をした見知らぬ男と人目を避けるように話しているのを  
偶然聞いてしまったのだった。  
「お前が……するから…」  
「でもそれは…平家を…」  
途切れ途切れにしか聞こえない会話で、だがそれだけははっきりと朔の耳に入った。  
「僕が黒龍を消滅させたから…」  
弁慶は確かにそう言った。  
朔は息を呑み、両手で口を押さえた。  
そうしないと、言葉と感情が溢れてしまいそうになったから。  
ひどく耳鳴りがする。足が震え、立っていられない。  
朔は大きなクスノキにもたれかかった。  
 
足音に振り向くと、弁慶が朔の後ろに立っていた。  
赤い髪をした男性の姿はそこにはもうなかった。  
「弁慶…殿」  
「聞かれてしまいましたか…」  
「どう、いうことですか」  
「……」  
「説明してください!!」  
朔は感情を持て余し、押さえきれない烈しい言葉を発する。  
それでも弁慶は、悲しそうな顔をし、自分の体を抱きしめるように俯くだけだった。  
「弁慶殿!!」  
悲鳴のような声なき声。  
「聞いたとおりです。黒龍を消滅させたのは、僕です。」  
「どうして!」  
「平家が応龍を操る事が許せなかった。」  
「それだけで?」  
「神に挑むという、愚かな自己顕示欲もあったのでしょう。」  
朔が弁慶の頬を打った。  
「黒龍を返して!」  
弁慶はただ悲しい顔で地面を見つめるだけだった。  
朔はブルブルと震えながら、自分の手をぎゅっと握った。  
「…みんなに言います」  
「それは困ります。僕にも計画している事があるので、今みんなに知られるのは都合が悪い。」  
「いいえ、共に戦う仲間に隠し事は出来ないわ。」  
「そうですか…」  
そういって幽かに笑った弁慶は、朔が見たことのないゾッとするような笑顔だった。  
「ではどうあっても黙るようにするしかないですね。」  
 
その笑顔が怖くなり、朔が逃げようとすると、弁慶は朔の首に巻かれた絹織物の端を素早く捕まえて手に巻きつけた。  
「あっ!」  
首が絞まり、朔が後ろによろけると、待ち構えていたように弁慶が手を伸ばして抱きとめた。  
そのまま後ろから朔の着物の合わせに手をかけると勢いよく左右に引き剥がす。  
熊野の原生林の中、降り注ぐ木漏れ日が朔の露わになった胸に降り注ぐ。  
「キャ…」  
弁慶は大きな手で朔の口を塞ぐ。そのままクスノキに押し付ける。  
空いた手で朔の胸をゆっくりと嬲る。朔は首を左右に振り、逃げようと身をよじった。  
小刻みに震える朔の形のいい乳房に弁慶が舌を這わす。  
くぐもった呻きと涙が朔からあふれ出る。  
乱暴に胸を揉まれ、肌に歯型を付けられた。痛みと屈辱以外の何も感じない。  
朔が抵抗しようと手を伸ばすと弁慶の外套に触れた。  
それを引っ張ると止め具が外れ、布は地面にはらりと落ちた。  
普段目にしない弁慶の長い髪が朔の頬にかかった。  
弁慶はそれにちらりと目をやると、朔に足払いをかけた。  
朔が倒れこんだのは、ちょうど弁慶の外套の上だった。  
 
弁慶は朔が硬く閉じた膝をあっさり割ると、裾から手を忍ばせてきた。  
朔の悲鳴を唇で塞ぐ。舌で舌を弄びながら、指で秘部を擦る。  
いつまでも濡れないため指を唾液で濡らし、指の腹で円を描くように朔の蕾を  
愛撫した。長い指をゆっくり挿入し、奥の上部を擦ると朔の体は微かに痙攣した。  
 
弁慶が袴の紐を解こうと体を起こした瞬間、朔は逃げ出そうと飛び起きた。  
しかし背後から足首を掴れ、うつ伏せに倒れた。  
「やれやれ、もう観念して下さい。」  
弁慶が覆いかぶさってくる。  
怖くて振りむけないが、そこにあの笑顔があるのは分かっていた。  
「大人しくしていれば、酷いことはしませんから。」  
着物の裾を腰まで捲り上げる。朔の白い下半身が剥き出しになった。  
細い腰をしっかりと掴んで、自分のものを押し当てる。  
「いや…」  
それはゆっくりと朔を蹂躙した。  
「イヤアアアァァァ!!!」  
深く、深く。  
「あっ!あぁっ…」  
突かれる度に押し出される声にならない声。  
何度も、何度でも。  
 
弁慶を支配するのは、自嘲だけだった。  
いつも僕は罪を犯す。  
坊主が女犯の禁を破っただけでなく、相手は尼僧。  
しかも梵字の褥で女を抱くとは、御仏もさぞお怒りだろう。  
お互いどちらにも愛情などない、なんの意味も成さない行為。  
いつも僕は後悔する。  
本当に選択肢はそれしかなかったのか、それを選んで正しかったのか。  
答えはいつも見つからない。  
冷たい目で朔を見る。何度も黒龍の名を呼ぶ彼女を見て、心底すまないと思う。  
しかし、自らの罪を雪ぐためにはこの計画は誰にも知られてはいけない。  
一刻も早く戦を終わらせるために。そして黒龍の逆鱗を破壊するために。  
これはそのための礎。  
そう自分に言い聞かせないと、弁慶は罪の意識に押し潰されそうになるのだった。  
なすべきことは、贖罪のみ。そのために手段は問わない。  
 
 

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