あちらこちらで聞こえる虫の音。秋でも夜は冷える。静まり返る四条の館の外戸をそっと開ける。今日も愛しい人の元へ向かう。  
この夜の帳の向こうにあなたがいる。まるで遠足に行く子供のよう。  
 
幸鷹はうきうきした顔で花梨の寝所へと足を運んだ。何度か体を合わせた。今日もよければ…こんなことをいうと困らせるでしょうか?  
ちゃんと明りが付いていた。花梨が私を待っている。期待に燃えて御簾を上げた。  
 
「あ、やっぱ、きちゃったんだ…」  
「当たり前です。あの夜以来、独り寝がわびしくて仕方ありませんでした」  
 
睦言を紡ぎ出した幸鷹の視線が花梨の横に留まる。良く聞けばもう一人分の寝息が聞こえる。花梨の側には紫姫が眠っていた。  
花梨の衣の裾を握り、すやすやと寝息を立てている。いつも一人で寝ているはずの彼女がどうしてここに?  
思わず詰問調になってしまった。  
 
「どうしてこんなところにいるのです?」  
「ごめんなさい…私の家族の話をしたら…元の世界で家族で川の字で寝てたって話をしたの。私と一緒に寝てみたいって断れなくて…」  
「だからって何も貴方がこのようなことをしなくても…」  
「深苑くんが出て行ってしまって、いつも紫姫独りでがんばってるから。私で出来ることがあったら何かしてあげたくて……」  
「花梨…」  
「だから今日はごめんなさい……幸鷹さん」  
 
申し訳なさそうに花梨が手を合わせた。これには幸鷹も参った。花梨は本当に優しすぎる。ここで押し倒すわけに行かない。  
内心舌打ちをしながらも花梨の顔に手を伸ばす。  
 
「せめてこのくらいはさせていただかないと」  
「きゃっ……んんっ……」  
 
唇をあわせるだけでは足らず、中をこじ開けて舌を絡ませる。逃げる体を押さえつけてキスをねだる。花梨が息をする間も与えない。  
 
「はああっ……あ……」  
「お姉さんの役はほどほどにしてください…でないと怒りますよ」  
 
顔を赤くして、肩で息をする花梨の耳元で物騒な台詞を囁いて、幸鷹は庭へと降りていった。後姿を見送る余裕はなかった。  
全身の力が抜けてしまった。あれだけのことで体の芯が疼いている。  
 
「ばかあ…死ぬかと思ったじゃない…紫姫に怒ることないでしょ…」  
 
それは一晩ではすまなかった。次の日も、その次の日も花梨の横には紫姫が居た。眠っている姿はかわいらしいが、睦み合うには邪魔。  
花梨の体を抱くのに慣れた身に、一人寝はわびしかった。  
「最悪の夢ですね」  
大きなため息をつく。  
昨夜の夢は、泣き叫ぶ花梨を押さえつけて、欲のままにむさぼっていた。ちぎれた衣。恐怖に引きつる顔。  
その顔を楽しげに見下ろしながら、腰を動かしている自分に嫌悪感を覚える。  
「これではどうにかなりそうだ。なんとかしなくては」  
 
反対に花梨は静かな夜を満喫していた。幸鷹との閨が嫌なわけではない。だが手加減しているとはいえ、抱かれるのは体力を消耗する。  
下手すれば札を取りそびれることもあった。側で眠る紫姫の顔を眺めつつ、花梨は笑みを浮かべた。  
「十分役に立ってるよ。紫姫。そんなに一人で何もかも背負わないで」  
幸鷹の言葉をすっかり忘れていた。  
 
そして数日がすぎた。  
 
「まあ!そんな理由で通うのをためらっておいでとは…知恵者と呼ばれる別当殿らしくございませんわ」  
くすくす笑う女房頭に幸鷹は赤面する。こんなことを相談するのも気が引けた。しかし女房頭は動じない。さすが年の功。  
「もっと早く言ってくだされば…紫姫は一度眠るとちょっとの物音では起きませんのよ」  
「ええ?」  
 
「別当殿にも不得手なところがあるとは…ほほ…何のために塗篭があると思っておいでですの?」  
女房頭はこそこそと幸鷹に耳打ちをした。幸鷹の表情が変わる。嬉しそうに頭を下げた。  
 
月がかすかにあたりを照らしている。現代に比べて静か過ぎる夜にも慣れた。虫の音は様々で綺麗。デジタルな音より心が和む。  
「今夜もゆっくり眠れるんだあ……」  
伸びをして花梨は衣を被った。側に紫姫が眠っている。今日も御伽噺を聞かせてあげた。喜んでいたなあ。ふふっ。  
長い髪を伸ばして、ほんとにかわいい。まつ毛が長くて小さくて。まるで日本人形みたい。いいなあ。  
紫姫の寝顔に見入っていたので背後の物音に気づかなかった。  
 
記帳をゆっくりと引き上げる音。衣擦れの音。  
花梨は一瞬体を堅くした。侵入者かと思った。だが侍従の香りに花梨の緊張が解ける。  
「今晩も遅くまで起きておいでですね…花梨」  
「幸鷹さん…忙しかったんだね…大丈夫?」  
「二日分の仕事を片付けるのは大変でしたが、もう終りました」  
「ええ?」  
いつもとどこか違う。声が一本調子で余裕が感じられない。  
 
かすかな炎に照らし出された顔は険しい。まだ私を神子だと認めてなかった頃の顔。  
「あなたは随分と元気そうですが…私のことは考えも及ばなかったのですか?」  
「あの…どういう意味?」  
「私をほんの少しでも哀れとはお思いにならなかったのですか?」  
「幸鷹さん…ちょっと待って…紫姫が寝てる」  
「もうその言い訳は聞けません」  
 
焦れた声と一緒に花梨はさっさと持ち上げられた  
「衣が……」  
「この程度では起きませんよ」  
紫姫の下にあった衣が引き出される。小さな手から衣が離れた。紫姫は寝返りを打って、寝息を立てている。  
「どうやら問題なさそうですよ」  
炎を消すと、花梨のひきつった顔を無視して幸鷹は塗篭に向かった。  
 
女房頭は約束どおり塗篭を開いていてくれた。明りも替えの衣も用意してある。あとは花梨を連れて入るだけだった。  
衣の上に出来るだけそっと花梨を横たえる。そして幸鷹は戸の入り口に棒を立てた。  
これでよほどのことがない限り誰もここには入れない。幸鷹は急いで自分の衣を脱いでいく。  
 
花梨が思わず後ずさった。ようやく幸鷹の意図を察したがもう遅い。壁に突き当たる。  
「ほんの数日なのに半月にも一月にも思えましたよ」  
おもわず両手を前に出したが片手でねじり上げられる。今まで見たことがない余裕のない顔。  
「今まで十分休みになられたでしょう?」  
「わざと幸鷹さんを焦らした訳じゃないよおっ」  
「私はずっと飢えてました…貴方に…分かりますか」  
いつもと違うぎらぎらとした眼。花梨を捕らえて離さない。花梨の動きを封じてしまう。  
「今日は手加減できそうにありません…覚悟してください」  
 
片手で着物の合わせ目を一気に開いた。下着を着けてない胸があらわになる。小さめな胸が揺れる。  
「ひ…」  
いきなり先端を噛まれ、片方は指で揉まれて、体が反り返った。強すぎる刺激は快楽と痛みを同時に伝える。  
それでも久しぶりの刺激に先端は堅く立ち上がる。こりこりと指で、唇で責めて、花梨を快楽に落としていく。  
「ああ……あああっ」  
「もっと乱れてください…かりん」  
何度も壁に体を打ち付ける音が響いた。もっといい声が出せるはずだ。数日休んだのだから。幸鷹の目が光を増す。  
 
どれほどこの体を抱きたかったか。久しぶりに見た白い肌。柔らかな胸。熱い蜜を溢れさせる花。  
子供一人にあれほど躊躇した自分が馬鹿みたいだ。子供二人きりの親族ということでつい甘くなってしまう。いけませんね。  
 
弱いところを重点的に指で、唇で攻め立てる。印をつけるだけで足らず、わざと噛んだ。軽く噛んだが、赤く円形に跡が残る。  
首筋に、胸に、二の腕に印をつけていく。消えないように何度も吸い上げて、濃く染める。今日だけはお願いは聞きません。  
「ううっ…あああっ」  
「かりん…かりん…私の名を呼んで」  
 
数回よびかけると、やっと花梨が視線を向けた。とろんとした目は女の目。いつもの少女の奥に隠れた女の顔。  
「ゆきたかあ…どして」  
「これも私です…あなたを独り占めしたくて仕方ない」  
耳たぶを齧りながら、熱っぽく囁く。ねじり上げた両手を放すとぱたりと下に落ちた。やがて背中に回される。  
 
帯を解いて、着物を下まではだけさせる。白い腹から、茂みまでよく見える。下着を着けてないのが嬉しかった。  
ふわりと花梨の匂いがする。  
「ああ、花梨、濡れてますね」  
「やああっ!」  
 
両足を広げると幸鷹は花にしゃぶりついた。一際高い声が上がった。快楽におぼれる声を聞くのは心地いい。  
花梨は辛うじて壁に持たれ、激しい愛撫に身をよじる。床にずり落ちそうになるのを堪えている。  
指でさらに奥を抉り、すり付ける。蜜はさらに溢れ出して床に零れ落ちた。部屋中に水音が響く。  
脚ががくがくと震え、花梨が頂点に上り詰めていく。  
「ひい……ああ……あああっ…」  
頭の中にもやがかったようだ。もっともっと乱れればいい。自分なしで居られないようにしたい。  
ぐいと指を奥まで押し込み、花芽を押しつぶす。一番高い声を上げて花梨の体が跳ねた。  
 
ずるずると花梨の体が横に崩れ落ちる。  
指をくわえた所がひくひくと小刻みに震える。投げ出された四肢。半分開いた眼は幸鷹を見ていない。涙の跡がついている。  
飢えたモノはまだ満足していない。幸鷹をせかす。濡れた指を引き抜き、脱力した体をゆっくりと抱え、一気に押し込んだ。  
 
「もう…やああっ……」  
 
何度達しても体を離してもらえず。強い痛みと快楽に震えながら、幸鷹の名を呼び続けた。  
もう、一人でいたことが思い出せないくらいに、溶け合って。  
 
朝には紫姫の側に寝かされていた。後始末はきちんとしてあった。しかし体中の節々が痛んで動けない。  
ぐったりとした花梨をみて紫姫は慌てた。  
「申し訳ございません。一晩一緒に寝ておりましたのに…虫の痕まで……私が何も気づかないなんて、お兄様に怒られてしまいます」  
「いいの。紫姫のせいじゃないの…大丈夫だから」  
「いけません。今日はお休みください。神子様のお体に差し障りがあってはなりませんわ」  
頭が床に着きそうなほど必死に謝る紫姫。  
花梨は本当の理由を説明できず、大きなため息をついた。  
 
まさか幸鷹に一晩中抱かれたなんていえない。女房頭に頼んで、紫姫は翌日からまた独り寝をすることになった。  
起きられるようになったのは翌日の昼ごろ。事情を知らない他の八葉たちの見舞いにも心が痛む。  
もう二度と幸鷹さんは怒らせまい。花梨は固く胸に誓った。  
 

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