「あれあれ?これは犬の首輪だねっ!誰が飼ってるんだい?」
鶴屋さんの発言に、部室の空気は凍りついた。
「わ、わたしじゃないですぅ…!」
あわてながら否定する朝比奈さん。
今日は古泉はバイトで欠席。
長門も一瞬来ただけですぐ帰ってしまった。椅子の上の本には「マルキ・ド・サド 悪徳の栄え」と書いてある。こいつの最近の読書傾向はどうなってるんだ。
ハルヒはネットサーフィンを続けているが、全力で聞き耳を立てているオーラが出ている。
仕方ない…。
「あー俺なんですけどね。まあ飼ってるというより、一度ちょっと面倒をみただけで」
「へえー、じゃあその犬はいま首輪してないのかなっ?ちょっと危なくないかい?」
「…まあ、危ないかといえば、大変危ないですね」
「ちょっとキョン!」
ハルヒ、机に足を乗せるんじゃありません。
「どうしたんだい、ハルにゃん?」
「犬の話をしているだけだぞ」
憤然と座りなおすハルヒ。
なりゆきで俺がハルヒに首輪を付けて犬の真似をさせてしまったのが三日前。
あの件について、SOS団の面々からたいした情報は得られなかった。
「涼宮ハルヒや情報統合思念体その他によるいかなる改変も認められない。あれはただの首輪」
「ごめんなさい、この件に関しては、わたしも何の指示も受けていないんです。役に立たなくてごめんなさい…」
「涼宮さんの精神状態はむしろやや安定しています。機関の方では、これを特に問題とは認識していません」
ということは、単に俺たちが変態ということか。
「そもそも正常・異常という定義は、人間の精神には…」
フォローになってねえ。
そういうわけで、団長机の首輪を俺は懸命に無視し続けてきたのだが。
一見空気を読んでそうで実は全然空気読まない大王・鶴屋さんはなおも首輪をいじり回している。
「狼を飼いならしたのが犬だからねっ。キョンくんもうちで飼いならしたげよっか?」
この人は一体どこまで話をわかってるんだ。
「喜んで遠慮させてもらいます」
「しかたがないねえ、じゃあ可愛いみくるを飼おうかなっ」
「ふえ〜〜!?」
鶴屋さんは朝比奈さんを引きずって出ていった。メイド服のままでいいのか?
ドアが閉まり、部室には俺とハルヒが取り残される。
「…キョン、あんたはあーいう、お人形さんみたいに可愛らしくて、ちゃんと言うことをきいて、しかもドジっ子な犬が好みなわけ?」
「俺の犬の好みをきいてどうするんだ。…お前はそんなに犬になりたいのか?」
むっ、と口をつぐむハルヒ。
そして俺の手には例の首輪があるわけだが…これが誰の仕込みでもないとすれば、始めたのはハルヒか?俺か?
ハルヒの抵抗は形だけで、首輪は簡単にその首に収まった。
「……」
あきらめたようなほっとしたような顔で、ハルヒはおとなしく床に四つんばいになった。
「犬の自覚が出てきたな、ハルヒ」
「…わん」
「よーしいい子だ」
さて、こいつをどうしたものかね。
引き綱をつけて散歩というのもありだが、正直ハルヒのこんな姿を他人には見せたくない。
ボールを拾ってこさせるのも同じ理由で却下だ。
この前ハルヒは犬の格好をさせた朝比奈さんの服を脱がそうとしてたな。あれはやりすぎだったが、今のハルヒは命令すれば本当に脱ぐかもしれない…。
などと俺が考えているうちに、ハルヒは手と膝で俺に近づいてきて、器用に口でチャックを…ってマジか!!!
「ちょ、お前…!!」
くわえられた。
これは、また、なんという…。
ハルヒの熱い体温と、濡れた感触…これは舌か?
「はハルヒ、お前なにやってんだ!?」
ハルヒは俺のをくわえて真剣な顔だ。
挑戦か?奉仕のつもりか?
「俺はやれって言ってないぞ…!」
無茶苦茶だ。朝倉涼子事件よりも現実離れしている。
ハルヒは吸い付いてきて、離そうとしない。
上目遣いのハルヒの瞳に、いつもの勝ち誇った色が見えた気がした。
俺は…ハルヒの頭をつかんで、腰を突き込んだ。
うぐ、とも、えげ、ともつかない声がハルヒの喉から漏れた。
腰を引き、また突く。
その度に隙間から無様な声が漏れる。
繰り返すうちに、ハルヒの喉がごぽごぽ鳴るようになり、唾液がねばねばしてきたが、止めない。
ハルヒは涙目で、口からはねばついた唾液があふれ床にしたたっていたが、それでも懸命に舌と唇を動かしている。
強烈な射精感。
ハルヒは上気した顔で、俺の出したものを、たぶん逆流してきただろう吐瀉物と一緒に全て飲み込んだ。
息をはずませながら、まだ舌で俺のを舐めようとする。
…さあ、俺はこいつを叱るべきか?誉めるべきか?
とりあえず俺はポケットティッシュを出して、べたべたになったハルヒの顔を拭いてやり、自分も拭いてちゃんとチャックを閉めた。
まったく、学校でとんでもないことをやっちまったな。
「ハルヒ」
「…わん」
ハルヒは得意げだ。尻尾があったら振ってるんじゃないか?
「すまん、やりすぎた」
俺はハルヒの首輪を外してやった。
ハルヒはちょっとの間ぼうっとしていたが、すぐに立ち上がって、伸びをした。
「ん〜」
微妙に気まずい。
いや、何をしたかを考えれば猛烈に気まずくてもおかしくないが…。
俺はロッカーからバケツと雑巾を出して、床を掃除することにする。さすがにこのままにはできん。
「今日は終了よ。カギかけなきゃならないんだから、とっととすませなさい」
「へいへい」
ハルヒは、なにごともなかったかのように帰り支度をはじめた。だがまだ顔が赤い。
「なあハルヒ、その首輪なんだが…」
「なによ!?」
「俺が持っておいていいか?」
「そうね、いいわよ。でも…」
ハルヒは例の笑顔を見せた。
「ちゃあんと毎日持ってきなさい。いい?団長命令よ!」
…お前は毎日これをやるつもりか。
一方その頃鶴屋邸では、朝比奈みくるが想像を絶する調教を受けていたのだった。
「わたし火の輪くぐりなんて無理ですぅ〜!!」
「弱音を吐いちゃダメにょろ!!」
たぶんおわり