所々に溶岩の海が広がる灼熱の洞窟はまるで季節を間違えたかのような  
蒸し暑さで、鎧を着込む俺の体力を着実に奪っていくのだった。  
「この姿になったからには、生かしておけないわよ」  
現在俺の目の前では、谷口的美的ランクAA+の美少女が微笑みを浮かべている。  
「それと宝剣“草薙”も持ってるみたいだから、  
始めから本気でいかせてもらうわ」  
谷口に見せてやりたい。この八本首の化け物。これのどこがAA+なんだ?  
あいつも曇ったな。  
「ねぇ……また長門さんに守ってもらったら?どうせ何も出来ないんだし」  
「ただの挑発。炎耐性無しに突っ込んだら炭化もしくは蒸発するから気を付けて」  
わかってるさ。こんな安い挑発に乗って死ぬ気は無えよ。  
何たって……これはハルヒの仇討ちだからな。  
*  
なんてシリアスな展開になるなんて思いもよらなかった海の上、  
俺たちは相も変わらず海の化け物としたくもない命のやり取りをしながら  
船旅を続けていた。  
目指すはジパング。人を乗せて空を飛ぶ鳥「ラーミア」を誕生させるための鍵  
“オーブ”があると言われている場所だ。  
「ジパングには独自の文化があるって話よ。今から楽しみね!」  
あぁ、言われなくても大体わかる。  
つーか俺に日本史を教えてくれたのはお前じゃないか。  
「何言ってるのキョン?痺れくらげから変な電波を受信しちゃったの?」  
いや何でもないこっちの話だ。忘れてくれ。  
「まぁアンタの話なんてどうでもいいわ。そろそろ島が見えてきたわね」  
あれが全滅回数18回を誇る恐怖の島“ジパング”か。  
どうだ長門、俺たちのレベルは適切なのか?  
「平均的なレベル。今までこのレベルで攻略できた回数は0」  
うげ、もしかして俺たちはここへ来て初めての全滅を味わうのか?  
「可能性は高い。そして今回の敵は勝たないと振り出しに戻されてしまう」  
他の皆が生きててもか?  
「そう。これは魔王にも無い能力」  
ということは、今回の敵は  
「この冒険の山場。あと20年もループし続ければ  
初期能力で勝てるようになるけれど、推奨できない」  
ああ、当たり前だ。記憶がなくなるからといってエンドレスエイトと  
変わらないようなのはごめんだ。  
 
「ちょっと、キョン、有希!魔物が出てきたら私語は禁止!」  
ハルヒはうじゃうじゃ迫りくる海の魔物達を、  
流れるような無駄の無い動きで仕留め続けていた。  
俺の隣でぼーっとつっ立っている長門はハルヒを指差して  
複数の補助魔法を掛け続けている。俺の出る幕ないじゃん。  
*  
ジパングに到着。そこにあったのは古代から近世までの日本史を  
ごった煮にしたような日本村。  
村人はみづらとかちょんまげとかじゃなく普通の髪型で、  
俺はそこんところに結構驚いたりしている。  
 
「まずは聞き込みね。誰かー!パープルオーブ知りませんかー!」  
でかい声を出すな。俺ら思いっきり怪しい人達じゃないか。  
「おいっ!」  
ほら見ろ怒鳴られた。  
ハルヒよく覚えとけ村社会はよそ者に対して冷た……ってあれ?  
「キョン?キョンなの?」  
「ハルヒ、何でお前がここに!?」  
この国の伝統衣裳を来た俺そっくりな奴がやってきて、  
すごい剣幕でハルヒに掴み掛かっている。歳は俺よりちょっと上くらいか  
……なんじゃこりゃ。  
「ど、どうしてって、お宝を探しに来たのよ」  
「お宝?俺がお前のために作ったあの剣なら俺ん家に置いてあるぞ」  
「いや、剣なんて知らないわよ。それよりもパープルオーブって知らない?」  
なあ長門、どうして俺が二人もいるんだ?  
「あなたの異世界同位体」  
なるほど……デタラメだってことは良くわかった。  
「ぱあぷるおーぶ?何じゃそりゃ。……お前は俺の知っているハルヒとは  
別人みたいだな。とにかく家に来てくれよ。もう一人の俺と、長門もさ」  
*  
「すごーい、キョンくんがふたりいるー」  
もう一人の俺の妹は俺のあぐらの上できゃいきゃい笑っている。  
一応は他人なんだから少しは警戒しなさい。  
「なんだか面白い世界ね。私が神だなんて!」  
ハルヒは作戦会議中の悪の総帥みたいな邪悪な笑みを浮かべている。  
「ああ、お前が不思議な力を使ってこの国を治めていたんだ。」  
以下もう一人の俺(俺B)の話を要約すると、  
・俺Bはこの国で一番の刀鍛冶で、妹と二人で暮らしている。  
・この国ではハルヒが神で、超能力を使って国を治めていた。  
・朝比奈さん、長門、古泉は一般人らしい。  
・パープルオーブを探してもいいが、この村のはずれの洞窟には  
「やまたのおろち」という化け物がいるから、そこにだけは近づいてはいけない。  
やまたのおろちは5年毎に処女を生け贄に捧げないと暴れる。  
といった感じか。  
 
「ところで、お前達が探しているのはこれか?」  
俺Bがその辺の箱から取り出してきたのは紫色に輝く水晶球だった。  
俺にはよくわからん。誰か鑑定頼んだ。  
「……これはパープルオーブ」  
「こんなもんでよかったらやるよ。探してるみたいだしな」  
俺たちの探していたものは意外なほどあっさり見つかった。  
本当にここで18回も全滅したんだろうな?  
「本当。私たちの旅はいつもここで滞る」  
「キョン?アンタまだおかしなこと言ってるの?  
あたし達はまだ全滅してないし、これからも全滅するわけないじゃない!」  
いや何でもないんだ。忘れてくれ。  
そ、そうだそう言えばこの国のハルヒはどこにいるんだ?  
「…………」  
俺が話題を変えようとして無理矢理持ち出したテーマを聞くと、  
俺Bは途端に暗い顔になった。それは俺が生きてきた中で  
一度もしたことのないような鬱顔で、さっきまで賑やかだった場の空気は  
凍り付いたように静かになってしまった。  
「キョンくん、ハルにゃんのことは言っちゃダメ!」  
妹に頬をぺちっと叩かれた。見ると妹は目を潤ませて俺を見ている。  
……悪い。聞いちゃいけないことだったか。  
「ああ、気にすんな。あいつは五年前、十六の頃に死んじまった。  
……生け贄になってな」  
そんな、何故そんなことを  
「あいつが言いだしたんだよ。『生け贄のふりをしておろちを倒す』ってな。  
だから俺も協力して剣を作った。……ほら、そこにあるやつだ」  
もう一人の俺が指差す先には、見事な装飾が施された、  
緑色に輝く剣が掛けられていた。  
「名前は『宝剣“草薙”』。  
あれが完成したらやまたのおろちを倒すっていう算段だったんだが……」  
もう一人の俺はその鬱顔をさらに暗くして続けた。  
「完成まであと一息ってところで、ハルヒは何者かにさらわれて、  
……生け贄に捧げられた。」  
…………  
「俺は剣を完成させて復讐しようとしたんだが、  
俺は剣を振るうことには向いてないらしい。俺が返り討ちにあって  
下手におろちを暴走させたら村が壊滅するしな。本当、どーしたもんかね」  
もう一人の俺は、最後は涙声になっていた。  
妹は顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。  
「許せないわねその化け物!是非あたし達がけちょんけちょんに  
ぶちのめしてやりたいわ!」  
話聞いてなかったのかお前。もし俺たちが負けたら村ごと吹っ飛ぶんだぞ?  
「それはそうだけど!何とかならないかしらねぇ……」  
 
ハルヒは歯に何かが挟まったような顔をして腕を組んでいる。  
……ここで18回も全滅したってことは、結局はぶつかる相手ってことか。  
「とりあえずだ、おろちを倒そうなんて変な気は起こすなよ」  
俺はもう一人の俺に生返事をしながら、どうすればいいのか考えていた。  
*  
暗くなってきたので、俺たちは近くの宿に泊まることにした。  
宿屋の女将はなんと朝比奈さんで、  
「ゆっくりしていってくださいね」  
という最高回復呪文とともに、何を勘違いしたのか布団が一つしかない  
部屋を用意してくださった。  
「あははー、えっちだー。えっちの準備だー」  
女の子がそういうことを言っちゃいけません。  
なぜ妹が一緒にいるのかというと、あのどんよりした雰囲気の家に  
置いておくことがはばかられたのと、もう一人の俺を  
一人にしてやりたかったのである。  
「今日はやる気になれんからな」  
俺は女子メンバーにそう釘を刺すと、さっさとロードワークに出掛けていった。  
*  
結局あれからキョンは塞ぎ込んだままだった。やっぱり許せないわね  
「やまたのおろち」。オーブのお礼もまだなんだし、何とかして  
ぶっ飛ばせないかしら。敵がどんな奴なのかキョンに聞いてみましょ。  
あたしは夜のトレーニングの前にキョンの家に向かうことにした。  
*  
すっかり暗くなってるけど、キョンはまだ起きてるわよね。  
「はぁ……はぁ、ハ、ハルヒ、ハルヒ……!」  
えっ?キョンがあたしを呼んでる?息も苦しそうだし、何かあったのかしら?  
「キョンっ!どうしたの!?」  
「うわっ、わあぁっ!」  
あたしが家の中に入ると、  
キョンはびっくりして咄嗟に何かを隠すように布団をかぶった。  
「な、何だよ!」  
キョンは何故か耳まで真っ赤にして怒鳴ってるけど、  
あたしは構わずキョンの布団に腰を下ろす。  
何だよってアンタがあたしを呼んでたんじゃない!  
「い、いや、そういうわけじゃないんだ。それより何の用だ?」  
何だか話をはぐらかされたような気がするけど気のせいかしら。  
まぁいいわ。キョン、やまたのおろちについて何か知らないの?  
「どうしてだ?」  
キョンは急に怪訝な顔つきになる。  
敵の情報がわかれば潰せるかもしれないからに決まってるじゃない!  
「ダメだ、教えられない。なにより村が危険だ。それに……」  
キョンは真剣な目付きになってあたしを見据えた。  
「お前を二度も死なすわけにはいかない」  
その表情に不覚にもきゅんとしてしまった。キョンのくせに。  
 
……わかったわよ。そんな風に言われたら断れないじゃない。  
「ああ、そうしてくれ。  
出来ればもうお前には一切危険な目に逢って欲しくないんだ。」  
あたしのことえらく大事に扱うわね。  
「ああ、お前が好きだからな」  
ふぇっ!?いぃ、いきなりそんなこと言わないでよ!  
「はは、やっぱり可愛いよお前は。  
……ものは頼みなんだが」  
い、いい言ってみなさい?オーブのお礼くらいは聞いてあげるわ。  
「少しの間でいいんだ。俺の知ってるハルヒだと思って、抱き締めてもいいか?」  
あたしは恥ずかしさでいっぱいになって、  
こくこくと頷くことしか出来なかった。それを見たキョンは、  
「ありがとう」  
そう言ってあたしを後ろから優しく抱き締めた。  
……あったかい。  
キョンは後ろで嬉しそうに微笑んでいる。  
もう一人のあたしが余程好きだったんだろう。  
それを思うと、キョンが可愛相で、涙が出てきてしまった。  
「……悪い、やりすぎた」  
キョンが腕を離そうとする。違う、嫌じゃない。  
言いたくても涙で言葉が何も出せなかったから、  
キョンを布団に押し倒すことにした。  
「ま、待て!悪かったって!」  
真っ赤になって抗議するキョンに、あたしは早口でまくしたてた。  
うるさい、あたしはこういう辛気臭い雰囲気が大嫌いなの!  
よりによってあたしを泣かせるなんて、本来なら死刑よ死刑。  
でも情状酌量の余地があるから快楽地獄で許してやるわ。  
「ちょ、待って、俺初めてだからアーッ!」  
*  
……まずいことになった。  
「キョンくん、むきむきでかっこいー」  
俺を襲うはずのない妹が、俺に欲情し始めたのだ。  
「あたし、へんなきぶんになっちゃった」  
妹の異世界同位体は、俺の妹よりも成長していたのである。  
「この国の処女は、生け贄にされちゃうって、聞いたでしょ?」  
だから背が伸び、出るとこが出始めているのだ。  
すまん長門。膨らみは妹の勝ちだ…って何を言っているんだ俺は。  
「だから、キョンくんがもらってくれれば、生け贄にならなくて済むの」  
あのな、兄弟ではそういうことやっちゃいけないんだぞ。  
「ここにいるキョンくんとは血は繋がってないよー」  
 
にしし、と笑う妹は確かに可愛いが、こいつとまぐわったら本物の変態だ。  
長門、ラリホー頼んだ!  
「了解した」  
長門の口が高速で動き、指先から緑色の光が放たれる。  
「ラリホー」  
発動する呪文。眠りだす俺。ちょっと、長門さん?  
「あなたが呪文の発動対象を設定しなかったので、  
あなたに発動させることにした」  
そ、それは屁理く……  
「にゃはは〜」  
妹の笑い声を最後に俺の意識は睡魔に屈し、  
翌日俺の身体には、服を着たら見えなくなるところに  
びっしりとキスマークが打ち込まれていた。 *  
「えへへ……ちゅ〜なんてしてないよぉ」  
「あなたの命令に違反するようなことはしていない」  
俺は朝っぱらからこの一晩で妙に大人っぽくなっちまった妹と  
まったく悪びれる様子のない長門に説教をしていた。 「キョンくんだいすきー」  
と腕にまとわりつく妹に言うべき小言を二、三考えていると、  
下の階から男の怒鳴り声が聞こえてきた。何かあったのだろうか。  
「……朝比奈みくるがさらわれた、と聞こえる」  
何だって!?我がSOS団のマイスゥイートエンジェ「みくるちゃーん!」  
妹は俺の腕を離して下の階まで駆けていった。長門、俺たちも行くぞ。  
*  
下の階に行くと、村人達が集まって何やら話し合っていた。  
その中にハルヒも交じっている。  
「キョン!みくるちゃんが生け贄にされちゃう!」  
どうやらそのようだな。村人からも「もう許せない」とか「みくるちゃんだけは」  
とかの声がちらほら聞こえる。俺も生け贄に朝比奈さんをチョイスした  
能無しに対する呪いの言葉を10数個くらい考えていたら、  
「おい!朝倉様がいないぞ!」  
新たに宿屋へ来た村人がそう叫んだ。その情報はどうやら  
一大事を告げるものらしく、さらに村人たちは騒然となる。  
しかし俺には他の疑問符が浮かんだ。朝倉?  
「この国の長の名前らしいわ。  
もしかしたら既にみくるちゃんを助けに行ってるのかも」  
ハルヒは顎に手を当てて事件の推理を始めた。朝倉があの朝倉涼子だとしたら、  
助けに行っているという線はまずない。これは俺が身を以て体験したことだ。  
「とにかく行ってみましょ。万一ドンパチが起こっても、  
みんな村ごと吹っ飛ぶ覚悟は固まったみたいよ」  
 
ハルヒの指差すところを見ると、村の男達は各々武器を持って息巻いていた。  
俺もその中に加わって朝比奈さんへの称賛の言葉を二つ三つ叫びたかったのだが、  
女性の方々の「男ってやーねー」という視線が痛そうだったのでやめておいた。  
しかし普通の村人がおろち討伐に参加していいのか?相手は化け物らしいが。  
「戦闘訓練していない者は来ないほうがいい。眠らせる」  
長門が呪文を唱えると、その場にいる村人全員が眠りに落ちた。  
「よし、これでやまたのおろちをぶっ飛ばす口実が出来たわね!じゃ、行くわよ!」  
俺たちは瞳に炎を浮かべて走るハルヒを先頭に、村外れの洞窟へ向かった。  
*  
「あっついわねー、ここは」  
洞窟は所々に溶岩があるために明るかったが、あまりにも熱かった。  
暑いじゃなくて熱い。あまり長居してはいけないような環境である。  
「やまたのおろちは恐らく火を吹いてくるわね。  
谷口から吹雪を吐くイエティでもガメてくればよかったかしら。」  
あいつはスライム系しか使っていないし、イエティはこんなとこ入れないだろ。  
「確かにね。吹雪を吐いてちょうど適温になるような暑さだわ」  
ハルヒは武道着の胸元をぱたぱたさせている。  
……まずいな。レベル上げをする暇もなかった。  
「私たち以外に洞窟へ入った者がいる」  
長門がぽつりと呟いた。それは、生け贄にされそうな朝比奈さん以外にか?  
「そう。おそらくやまたのおろちを倒そうとしている。  
これで私たちから逃走の選択肢は消えた」  
「面白いじゃない……二度と悪さできないようにしてやるわ。  
覚悟しなさい!やまたのおろち!」  
ハルヒはまだ見ぬ敵に高らかな宣戦布告をしたあと、  
洞窟の最深部に向かってダッシュしていった。  
*  
奥へと進んでいくと、別れ道のあるところに到着した。  
「ごちゃごちゃ考えてる暇はないわ!  
あたしは真っすぐ行くから、キョンと有希は曲がりなさい!」  
ハルヒは走って行ってしまった。俺たちも同じように急ぐ。  
向かった先のはドーム状の広い場所だった。遠巻きに二人の人間の姿が確認できる。  
「飛び込む前に補助魔法をかける。待ってて」  
俺たちは物陰に隠れてそれを確認していた。どうやら二人は  
口論をしているようだ。一人はものすごい勢いで怒鳴り散らしている。  
「私の能力はこの世界では大幅に制限されるため、わたしから  
敵の詳しい情報を事前に伝えることは出来ないようになっている。  
でも事前に準備をすることなら可能」  
 
いきなり何だ?  
「ドラゴンシールドは温度攻撃耐性を持っている。今回の鍵となるアイテム」  
こないだ買ってくれたやつか。  
「そう」  
長門がまた詠唱を再開する。とうとう一方の奴は剣を抜き、片方に切り掛かった。  
片方のやつはそれを軽々といなしている。  
長門の魔法が影響か、遠くにいる二人の声が届いてきた。  
『くそっ!止まれ!殺してやるっ!』  
『あはは、そんな振り方じゃ素人にも避けられるわよ』  
これは……俺と朝倉!?  
『お前がハルヒを殺していたとはな……』  
『そ。後ろからドスで一突き。腰の上を狙うのがポイントよ』  
『くそっ!』  
俺Bはがむしゃらに振り回しているだけで一向に当たらない。  
朝倉は笑いながらひらひらと剣を躱し、ときどき魔法でちくちく反撃している。  
くそ、完全に遊んでやがる  
「現在朝倉涼子は彼をいつでも殺せる状態。だから無闇に飛び込むのは危険。  
彼女は攻撃を仕掛けた後に隙が生じる。そこに飛び込んで」  
俺Bは身代わりか……仇はとってやるからな。  
「彼にはきちんと魔法反射をかける。あなたの素早さにも補正をかけた。  
躊躇わずに飛び込んで」  
お前は本当根回しがいいな。  
さすがは対有機生命体コン「そろそろ。気を引き締めて」  
長門に制された俺は剣を構えてその時を待つ。  
朝倉は距離をとって掌に炎の固まりを作った。それを、投げ  
「今」  
長門の言葉に脊髄反射して、俺は朝倉に飛び込んだ。  
投球フォームを終えたような格好の彼女に思いっきり剣を振り下ろ――  
そうとしたところで、彼女が視界から消えた。  
「後ろ」  
ぶりっこした声が聞こえた頃にはもう遅かった。俺は後ろから  
朝倉の一撃を受けて、そのまま前方にぶっとんだ。そこに待っていたのは  
朝倉から跳ね返した特大の炎弾。  
「くっ!」  
盾を構える。炎は食らわなかったものの、衝撃でまた体が吹っ飛んだ。  
急いでバランスをとって着地。辺りを見回す。  
「うああああ!」  
俺Bが、ふらふらになりながら朝倉に向かっている。  
まずい、あのままじゃ殺られる。  
俺が朝倉に切り掛かろうと構えたその時、  
長門と魔法を打ち合っていた朝倉は俺Bに駆け寄って、その身体を抱き締め、  
唇を奪った。刹那、俺Bの身体が燃え上がり、断末魔の叫びをあげて  
のたうち回った挙げ句、やがて動かなくなった。  
「うふふ、あなたのファーストキス、貰っちゃった……」  
朝倉は頬を染めて恥ずかしそうに微笑んでいる。ダメだ。おかしくなってる。  
 
自分の死亡動画。見てはいけないものを見てしまった気がする。  
俺は吐きそうになってその場にしゃがみこむと、長門が俺の傍までやって来た。  
「彼女に物理攻撃は効果が薄い。ここは私がメインになって戦う」  
無表情有機アンドロイドは、業務連絡が終えるとすぐに魔法の打ち合いに戻った。  
長門は俺でなくても分かるんじゃないかという程の怒りを見せているようだ。  
さっきまでの魔法の規模と詠唱速度が格段に違う。無駄打ちは止せよ。  
さっきから朝倉の炎弾と長門の氷柱がそのへんを行ったり来たりしている。  
……こうなるとあの灰色教室の再現だな。  
俺は長門の邪魔にならないように逃げ回ることしか出来ねえ。  
黒焦げになった俺を回収して、隅っこに退避しよう。  
俺は宇宙人二人が遠くで打ち合っているのを確認すると、  
消し炭みたいに焦げてしまった俺を拾った。  
「ぐあぁっ!」  
……!生きてたか!ちょっと運ぶぞ。我慢しろ。  
岩影に隠れて腰を下ろす。  
「ハルヒ、ごめんな、敵、討てなかった……」  
俺Bはうわごとみたいに呟いた。これから長門が討つんだ。ちょっと休んでろ。  
「なぁ、代わりにこれ、使って、くれないか……」  
剣を手渡された。確かこの剣は、宝剣“草薙”。  
「俺の、最高傑作だ。お前の、それよりは、軽くて、切れるはずだ。  
他にも、ビックリ機能、満載だから……」  
切れ切れに必死に解説してくれる俺B。わかった、もう喋らなくていい。  
ここで頼みを断るほど俺は野暮じゃない。使わせてもらうさ。  
「……ありがとう」  
言い終えた俺Bはそのまま目を閉じた。まだ呼吸はしているが、  
時間の問題だろう。あとは俺に任せて倒れてろ。あとで生き返らせてやるよ。  
『きて』  
頭の中に長門の声が響いた。すかさず長門のもとへ駆け寄る。  
長門と朝倉は、魔法での化かし合いに疲れたのだろうか、  
お互いに立ち止まって、まるで次の一撃でカタをつけるといったように  
長い呪文を高速で詠唱している。  
俺は隙ありと朝倉に切り掛かろうとするが、  
『彼女の半径5メートル以内に近づくとカウンター魔法を食う。じっとしてて。』  
また長門に止められた。一体俺はなぜ呼ばれたんだろう。  
『ここからは私の攻撃が意味をなさなくなる。  
今度はあなたが攻撃に参加してほしい』  
詠唱が終わった。朝倉は赤い光に、長門は白い光に包まれている。  
「「ドラゴラム!」」  
赤と白のまばゆい光がほとばしり、俺は思わず目をつぶった。  
 
*  
とこんな感じで……長すぎてフラッシュバックとも言えないような  
回想シーンが終わり、朝倉は八本首のおどろおどろしい巨大な竜、  
長門は馬くらいのサイズの、純白の美しい翼竜へと姿を変えていた。  
「なぜあなたが二人いるのかは知らないけど、  
私の復讐の邪魔をするなら死んでもらうわ」  
「背中に乗って。ブレスが来る」  
長門の背中には、人ひとり乗れそうなスペースがあった。そこに飛び乗る。  
長門はすぐに飛び立った。さっきの俺の立ち位置に麻痺効果を持つやけつく息。  
「ドラゴンに弱点以外の温度攻撃は通用しない。  
固い鱗を持つため打撃に対しては最高の防御力を誇る」  
長門はブレスを避けながら解説を始めた。  
魔法も打撃も効かないんじゃ打つ手がないじゃないか。  
「竜のうろこ……すなわち竜鱗は、本来鉄製の武器で破壊することは不可能。  
しかし武器に竜殺しの呪いをかけることによって、竜鱗破壊機能を付加することが出来る。  
そのような剣は総じてドラゴンスレイヤーと呼ばれる」  
つまりは、そのドラゴンなんとかがあればいいんだな?  
「そう。宝剣“草薙”は最高級のドラゴンスレイヤー。  
それを使って、朝倉涼子を攻撃してほしい」  
なるほど、ビックリ機能ね……。よし、大体わかったから、攻撃を始めようぜ。  
「そう」  
長門は、臆することなく八本首の中に突っ込んでいった。  
一番左端の首――ここから首1と名付けようか――の根元までやってきたので、  
そこで草薙の剣を突き立ててみる。果物を切るようにスパっと行けたので、  
コイツ本当に固いのかと思って鋼の剣で思いっきり殴ってみたら、  
まったく歯が立たなかった。眠りを誘う甘い息が来たので退避。  
「一般的に武器は筋力でもって切るけれど、ドラゴンスレイヤーは呪いの力で切る。」  
なるほど、よくわかった。  
 
*  
真っすぐ向かった先には儀式用の祭壇があって、そこに数人の男がいた。  
みくるちゃんはそこで今にも剣を突き立てられる寸前だった。  
「ひょえええ〜!」  
なんて言ってる。かわいい。  
とりあえず足下にある石を剣を持ってる奴に投げ付けた。  
手にヒット。当たった奴は剣を取り落としてうずくまってる。  
そいつにいつもより威力10倍の飛び蹴りをくれてやると、  
他のやつらは全員逃げ出してしまった。まあいいわ、みくるちゃん救出が先よ。  
「うぇぇぇ〜……涼宮さぁん……」  
とあたしの体にすがりつくみくるちゃんを見てると、  
ついいじりたくなっちゃうのよね。あたしはみくるちゃんの  
大きくてぷりぷりしたおっぱいを丁寧に揉んであげた。  
「あふ……はぅぅ、す、涼宮さんが望むなら、この身体、さしあげましゅ……」  
あっ!やりすぎてみくるちゃんが勘違いを起こしちゃったわ。  
恍惚の表情で太ももをすりすりさせてる。  
誤解よみくるちゃん。助けに来たの! 「ふぇっ!?あっ、ありがとうございます!」  
みくるちゃんはエロモードから解放されて素に戻った。怪我は無いみたいね。  
自分で歩けるみたいだし、歩いて脱出するわよ!  
「あの、わたし……さらわれたときに、やまたのおろちの真相を  
朝倉さんから聞いてしまったんです」  
みくるちゃんは帰りの道中にそう告げた。是非聞かせてほしいわ。  
「朝倉さんは小さい頃、ずいぶんいじめられていたんです」  
それとやまたのおろちにどんな関係があるわけ?  
「後々分かります。朝倉さんが最初に持っていた力は、炎を自在に操る  
“パイロキネシス”というもので、みんなから危険人物扱いされていました。  
でもそんな中、普通に接してくれたのがキョンくんと涼宮さんだったそうです。  
涼宮さんはもともと神様だったし、キョンくんはそんな  
涼宮さんの友達でしたから、不思議には慣れっこだったんですね」  
ふむふむ、あいつもいいとこあるじゃない。  
「朝倉さんもキョンくんのお陰でだんだんと変わっていって、  
最後には皆の人気者になっていました。元々すごく可愛い子だったから、  
男の子にも人気で……でも、彼女はずっとキョンくんが好きだったそうです」  
でも、キョンはこの国のあたしと結婚……  
「そうです。それで思い詰めておかしくなってしまった彼女は  
やまたのおろちに化けて……ゆくゆくはキョンくんと親しい女の人を  
全て殺すつもりだったそうです。」  
 
……何だか救えない話ね。やまたのおろちをやっつけても、  
それじゃすっきりしないわ。  
「それもこれも、すべてキョンくんが鈍感なのがいけないんです!」  
朝比奈さんはめずらしくぷりぷりと怒っていた。  
怒った顔も抱き締めたくなるくらい可愛いって……損よね。  
出口が見えてきた。みくるちゃんを送ったら、  
あたしもキョンを手伝いにいかなくちゃ。  
*  
俺と長門は順調におろちと渡り合っていた。首ごとに吐いてくるブレスが  
違うので、首をとばすごとに戦いが楽になる。  
「攻撃のブレスを吐く首はあと一つだけ」  
どうやら勝ちパターンらしい。  
俺は灼熱の炎を盾で受け流しながら、首その5を切り飛ばした。あと3本。  
しかもその3本は「甘い息」「毒の息」「やけつく息」だけだ。いける!  
「「マホトラ!」」「「マホトラ!」」「「マホトラ!」」  
三つの首が呪文を唱えてきた。山彦で効果は二倍になる。対象は……長門!?  
「緊急事態」  
長門がぽつりと呟く。何が起こった?  
「MPを吸い取られた。ドラゴラムが解ける」  
白い光を放って長門の姿が元に戻る。空中にいた俺たちは投げ出されて分離、  
そのままおろちにくわえられた。  
「ぐあああっ!」  
身体からみりみりと音がする。あばらが折れてむちゃくちゃ痛い。  
そのあと俺は地面に勢いを付けて投げ出され、  
追加攻撃として長門をぶつけられた。  
「ベホマラー」  
呪文で身体の傷が消えた。長門を抱えておろちの首が届く範囲から逃げる。  
長門……これは勝ちパターンから遠ざかったのか?  
「負けパターン。ジリ貧でMP切れが今後の主な展開と予想される」  
「「メラゾーマ!」」「「ベキラゴン!」」「「イオナズン!」」  
 
「「マホカンタ」」  
間一髪で魔法を跳ね返した。しかしこれで回復魔法も使えない。  
「回復の手段も潰えた。あとはゆっくりと死を待つだけ」  
長門はその場でへたりこんでしまった。俺も大の字に倒れたい気分だったが、  
俺が諦めてしまったらダメだと思い立って剣を構え直し、再度突撃。  
「メラミ!」  
挨拶代わりの炎弾。難なく盾で躱す。  
顔が近づいてくる。剣を振ることによって退かせた。  
首6の根元まで到着。これも刎ねった。あと二つ!  
甘い息が来たので急いでバックステップしたところにおろちの口があって、  
また食われてしまった。 今度はすぐに地面に投げ出される。  
 
落下点からすると今度は岩に突き刺さるか溶岩にダイブか……  
「ブロー……」  
とか考えていたら、落下寸前にトスのように身体がふわっと浮いて、  
また空中に投げ上げられた。  
「インパクト!!」  
次の瞬間背中を思いっきり殴られ、俺は空中で強制的に方向転換させられた。  
その方向は……やまたのおろち!  
「うわああああ!!」  
俺は咄嗟の判断で剣を前に突き立てると、  
首7にダーツみたいに刺さって、そのまま突き抜けてしまった。  
あと一つ……いてて。  
*  
「キョン!これがやまたのおろちね!」  
俺をバレーボールのスパイクよろしく打ち飛ばした女は、  
サンタさんを見た子供のように目をきらきらさせていた。  
「グオオオオォォ!」  
ハルヒと目を合わせたおろちが突如激しく暴れだす。  
「メラゾーマ!」  
ハルヒに向かって特大の炎弾。俺はすかさずハルヒに飛び付いて、  
俺にかかっているマホカンタで炎を弾き返した。  
「キョン、あ、ありがと……」  
押し倒した格好に困惑するハルヒ。えぇい、頬を染めるな。  
こっちが恥ずかしくなるだろ。  
「そ、それよりも、キョン、その剣を貸しなさい!」  
何か考えがあるのか?  
「まぁ見てなさいって。こんなふざけた戦い、すぐに終わらせてやるわ」  
ハルヒは得意そうにそう言うと、俺から宝剣“草薙”を取り上げて、  
おろちに向かって走った。  
おろちがハルヒに噛み付きにかかる。  
それをハルヒは跳躍して躱すと、おろちの頭にのっかった。さすがに武闘家。  
素早い。  
「どりゃー!」  
そして脳天に峰の一撃。やまたのおろちは最後の首をくたっとさせると、  
たちまち赤い光を発して、朝倉涼子の形を取りはじめた。  
「ふぅ……やっぱり気絶させるのが正解だったみたいね」  
勝利だな。止めは刺さないのか?  
「刺さないわ。これから長い長い説得をするのよ。ジパングのキョンはどこ?」  
あいつは隅っこの岩影で倒れてるはず。  
バトルでの死亡だから生き返す必要があるけどな。  
*  
その後、朝倉に厳重な魔法封印をかけてジパングに連れ帰った。  
やまたのおろちの真相に村人は驚いていたが、二言目は  
「まぁ誰にだって間違いはあるよな」  
「キョンの優柔不断が悪い」  
「朝倉さん可愛いー」  
の3通りで、誰も朝倉を責める奴がいなかったのが印象的だ。  
というか何で俺が怒られてるんだろう。  
そもそもの間違いの始まりは俺Bが朝倉の気持ちに  
全く気付いていなかったことらしい。  
 
「あいつは俺のことが好きだって一言も言ってなかったじゃないか」  
と言った俺Bは村人全員から鈍感鈍感言われていた。可愛相な俺B。  
 
朝倉は村長の後継者を残して村を出るそうだ。  
「行かないで」と皆に言われていたが、やはり居辛くなったのだろう。  
その後、俺Bと朝倉が和解して一見落着。後継者は明日発表とのこと。  
とにかくおろちに勝ててよかった。やっと休める……  
*  
夜は宿屋で「朝比奈さんおかえりなさいパーティー」が催されていたが、  
疲労困憊でとても出る気になれず、朝比奈さんが明けておいてくれた  
一番いい部屋でさっさと布団に潜り込んでいた。  
ハルヒも長門も別の部屋だから、今日はゆっくり休める。  
……と思ったら  
「入っていい?」  
お客さんだ。  
「改めてご挨拶をしなくちゃと思ってね」  
朝倉はまず俺の布団に入り、俺の右腕を伸ばすとそこに頭を置いた。  
「涼宮さんと相談して、わたしも移民の町に行くことにしたの」  
洞窟で見たときのような殺気は感じられないが、やはりこいつは苦手だ。  
甘える相手間違えてるぞ。  
「いいえ、こっちであってるわ。  
あっちのキョン君は涼宮さんが忘れられないみたいだし。」  
他を当たれよ。お前この村で大人気じゃないか。  
「例えどんなにいい男でも、昔わたしのことをいじめてた人間なんて願い下げよ」  
一人くらいいなかったのか?お前をいじめなかった奴は。  
「あなただけだった。わたしの力を見て  
「恐い」とも「来るな」とも言わなかったのは」  
朝倉は涙声になってきた。こんなしおらしいこいつを見るのは初めてだな。  
「「デタラメだな」って、笑ってくれたの。あなただけが……」  
本格的に泣きだした朝倉を、俺は抱き締めてやることにした。  
腕の中でしゃくりあげて泣く朝倉の頭を撫でてやるなんて、  
灰色教室で殺されかけたときの俺には考えられなかった行動だろう。  
こんな時にもあのエロ感覚はこみあげてくるが、  
今のコイツを劣情で抱くのは失礼な気がしたので、  
きつーく抱き締めることで自分を抑えた。  
「キョンくんってツンデレだよね」  
しばらくして泣き止んだ朝倉は、俺の胸に顔を埋めてぽつりと呟く。  
いきなり何だ?  
「……うふ、ついにわたしにもツンツンしてくれる日が来たのね」  
いやこれはツンデレではなくて本心だ。それと俺はいつでも素直だぞ。  
「おっきくなってるよ」  
朝倉は俺の充血した愚息に手を這わせて、上目遣いで俺を見た。  
思わず腰を引っ込める。  
 
「わたしでおっきしちゃったの?  
わたしキョンくんにだったら、めちゃくちゃに犯されてもいいよ」  
朝倉はふふ、と笑って布団から出ると、服を一枚ずつ脱ぎはじめた。  
朝倉の体は白い肌に黄金比みたいなスタイルで、  
ヘアは薄く、乳首は赤に近いピンク色。いいね。  
谷口には絶対に見せたくない。これがAA+の底力か。  
スマン谷口、俺が間違っていた。  
「じゃ、寝る前にスッキリしちゃおう?」  
両腕を広げて俺を迎え入れるポーズをとる。  
朝倉の挑発にあっさり乗ってしまった俺は、急いで服を脱ぐと  
 
先に布団に入って待っていた朝倉にルパンダイブした。  
まずはキス。こじ開けるようにして舌を入れ、口内から犯す。  
「ん、んっ、んふぅ……」ぬろぬろとした感触が興奮を煽る。  
朝倉はぴくりとも動かずに、俺の舌を受け入れていた。  
もしかして……初めて?  
「うん、だって結婚してないし」  
朝倉の頬には朱が注している。婚前交渉はあまりしないのが常識なんだよな。  
この世界に長く居すぎて俺の常識は崩壊しかけていたらしい。危ない危ない。  
キスを終え、他の部分も愛撫してやることにした。  
耳を舐めしゃぶり、  
「ひゃん!」  
首筋にキスを浴びせ、  
「あ……ああ……」  
乳首をねぶり回す。  
「ああーっ!」  
感度が非常にいいようだ。ちょっと優し目にしないといけないな。  
「もっと、いろんなとこ……」  
と言いながら  
切ない表情で俺を見つめる朝倉を、一瞬可愛いと思ってしまったのは内緒だ。  
もう我慢できねえ。とっとと足を開かせて、その間に侵入する。  
「ああっ!」  
朝倉は苦痛に顔を歪めたが、抜かないで欲しいと言われたので、  
ゆっくり動かすことにした。  
膣がぎゅっと締め付けてくる。何だか自主的に蠢いて、  
俺の暴発を促している気がする。  
「もっと、早く動いていいよ」  
冗談じゃない。下手に早めたら二日分が出てしまう、というか、いきそうだ。  
俺は危険を感じて肉棒を抜こうとした。  
予感は的中。引き抜く途中で急に気持ち良くなってしまい、  
少し中に出してしまった。  
「超能力ってすごいでしょ?」  
やはり俺の射精を操作していたのか。あやしいと思ってたんだ。  
「入れた瞬間に出すことも出来たんだけど、それじゃ不自然かなと思ってね」  
恐ろしげなことをニコニコ顔で解説する朝倉の顔をぼーっと眺めながら、  
俺は暫く余韻に浸っていた。  
 
*  
翌日、いよいよ朝倉を連れてジパングを離れることとなり、  
村人はやまたのおろちのことなどすっかり忘れて朝倉との別れを惜しんでいた。  
長門が言うにはやまたのおろちを倒さずにジパングを出たのは  
今回が初めてのことらしい。  
 
「ここを出る前に、新しいこの国の長を紹介しないとね」  
朝倉はドラゴラムを発動させた時のように、  
手で印を結びながら呪文を唱えだした。  
「私の能力は『炎を自在に操る』ことだから、こういう反則技も使えるのよね」  
詠唱が終わった。しかし周りには静けさだけが漂い、何が起こる気配もない。  
「キョン!上!」  
ハルヒの指差す先には、炎を身に纏う大きな鳥が飛んでいた。  
「あれは『転生の炎』!?朝倉、こんな召喚魔法まで使えたのか」  
俺の隣にいる俺Bが、ぽつりと呟く。  
長門は「信じられない」といった感じで空を優雅に舞う焼き鳥を見ている。  
何だ、俺にはさっぱり分からないぞ。 「呪文で人間を復活させるには、条件として本人の遺体が必要。  
だから遺体が消えてなくなったり、長い時間を経て著しく損傷したりしてしまうと、  
その人を復活させることはできなくなる。」  
それとあの火の鳥に何の関係があるんだ。  
「あの火の鳥は生命の神。何もないところから命を創造することが可能」  
火の鳥は、羽を一枚ひらひらと落とすと、そのまま何処へと飛び去ってしまった。  
羽は地面に落ちると、きらきらと輝いて、やがてその光は人の形をとり……  
表れたのは、俺が死ぬまで忘れようのない女の、異世界同意体というやつだった。  
「あれ、何であたし地面に立ってるの?」  
涼宮ハルヒBは肉体を蘇らせただけのようで、何も身につけていない。  
こいつの裸身ははっきり言って目に毒だ。村人達も言葉を失って  
その身体に見入っている。こらよせ。そんなに見たら減るだろうが。  
「ハルヒっ!」  
俺のすぐ隣にいた俺BがハルヒBに飛び付いた。壮大な歓声とブーイングの嵐。  
しかし二人はそんな音がまるで聞こえないかのように見つめ合っていた。  
うん。めでたしめでたし。  
絵的には認めないけどな。  
「キョンくん、涼宮さんとお幸せに……」  
朝倉は目に涙を浮かべてその光景を眺めていた。  
ハルヒを殺してまで俺Bを追い掛けていたこいつが  
こんな計らいをしたってことは、もうやまたのおろちも現れることはないだろう。  
朝倉もこれで俺Bとも真に和解できたようで何よりだ。  
 
俺Bは目を真っ赤にしてハルヒBを抱きしめている。「ハルヒ……よかった……」  
「キョン……あんた二日前にあの子とエッチしたでしょ」  
ハルヒBはハルヒを指差して場の空気が凍り付くようなことをのたまわった。  
あの……ハルヒ?  
「え、あ、いや、その……」  
歯切れが悪い。  
いつまでも帰ってこないと思ったら、そんなことやってたのか。  
「ついカッとなって」  
ムラっと来ての間違いだろ。  
「これから数秒後にこの場所は確実に修羅場に変わる。  
逃げられるうちに脱出するから捕まって」  
長門はハルヒの腕を掴んでルーラを唱えた!  
「ちょ、待ってよ有希!」  
ハルヒが俺の服の背中の部分を掴んで、  
「うわっ!いきなり何をする!」  
「あっ、キョンくん!?」  
俺は朝倉を後ろから抱き締める形で捕まえた。  
 
上空から見ると俺BはハルヒBからマウントポジションを取られて  
どかんどかん殴られている。頑張れ俺B、負けるな俺B。  
 
「キョン、あんた涼子にくっつき過ぎじゃないの?」  
気のせいだ。これ以上離れたら落ちる。  
「キョンくん……ダメよ、二人が見てるじゃない」  
朝倉はしらじらしく頬を染めている。あの、朝倉?  
「キョーン……」  
ハルヒ、誤解だからその恐ボイスを出さないでくれ。  
「……」  
長門の無表情が恐い。  
俺はみくるタウンに着くまでこの修羅場に耐え続けることとなった。  
 

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