ロマリアの関所を抜けた俺達は、新しい大陸でポルトガという城に赴いた。
そこで待っていたのは胡椒好きの王さまで、謁見しにきた俺たちを捕まえて
小一時間くらい胡椒の素晴らしさを語りだし、しまいには
胡椒を持ってきてくれたら船と交換してやるというわらしべ長者もびっくりの
交換条件を出してきたので、胡椒なんぞに
国家予算を傾けるなんて粋狂な人間もいるもんだと思いながらも、
俺たちはそれを引き受けてやることにしたのである。
そういえば我がロマリア国の先代王も今はすっかりホームレス達のリーダー
的存在になってたっけ。ゴミを漁りながら「気ままなギャンブル暮らしもいいもんだよ」と言っていた
ときのあの生き生きとした目が忘れられない。
あいつもどうかしてる。
そんなことを延々と考えながら歩いていたら、日の暮れた頃には俺たちは胡椒の産地バハラタまで到着していた。
今日も早速宿屋で行動指針の会議。今日は珍しく長門が意見を出してきた。
「この近くにダーマ神殿がある。誰か私の転職を手伝ってほしい。」
平坦な声は、俺だけに皆とは別の喜びを告げた。
「転職?有希、僧侶になりたいの?」
「そうではない。賢者の悟りの書下巻を手に入れるために
ダーマ神殿近くの塔に入らなくてはならない。そのための護衛が必要。」
「賢者になるの!?凄いわ!これでうちのチームも無敵に一歩近づいたわね!」
ハルヒは大きな目をギラギラと輝かせる。
「おっ、賢者になるのかいっ?さすがは有希だねっ!」
「おや?変ですね。悟りの書の上巻はどうしたんですか?」
そうだ。俺もそれ気になったんだ。
「上巻は私がいつも持っている本。正確にはサンスクリット語の文法書、辞書、用例集を合わせたもの」
うげっ、異国語を覚えるとこからやるのかよ
「そう。翻訳版は近日発売するけれど値段が高すぎる。」
「そうなんですよ。家が3件くらい建っちゃうんです。
幾ら私でもそんなの値切れないし…」
なんで朝比奈さんまで知ってるんだろう。にしてもすごいお宝なんだな。
「とにかく、明日はチームを分ける必要があるわね!」
「あっ、でもさ、転職したらレベルが一からやりなおしだよねっ?」
そうなのか。今からレベル1はまずくないか?
「ダーマ神殿付近はメタルスライムの棲息地。転職後の
レベルを上げるのに最適。」
「へー!それなら明日はあたしダーマ神殿でめがっさレベルを
上げちゃおうかなっ!」
とまぁ、こんな感じで自然とチームは塔に行く長門、古泉、ハルヒ、朝比奈さん。
レベル上げの鶴屋さん、胡椒を貰う俺という風に分かれて、
今日はお開きになった。
現在は資金に余裕があるので、部屋は男女に別れて一人につき一ベッドである。
「それじゃ寝るけど、キョン、変な気起こすんじゃないわよ!」
大丈夫だ。夜のトレーニングはきちんとしたからな。
「それでは、明日に備えて寝ましょうか」
あぁ、お前と一緒の布団でないだけで今日はよく眠れそうだよ。
んじゃ、皆おやすみ。
……
…なんだ?嬌声が聞こえる。
『ああっ!タニア!凄い、凄い気持ちいいよ!』
『うふふ…まだ終わっちゃダメよ?』
『あぁ、タニア…ダメだ、出ちゃうよ…』
『分かったわ、そろそろ…きゃっ、グプタ!』
『ふふ、お返しだよ?』
『あっあっあっあっあっ…』
……眠れねえ。折角トレーニングしたのが全部無駄になったようだ。仕方ない…、一人でするか。
そして、俺は自分のを慰め始めた。
…
こんこん
突然ノックの音が聞こえてくる。誰だ?
「ご、ごめんなさい」
朝比奈さんだ。何やら困った顔をしている。一体どうしたんですか?
「あ…あの、鶴屋さんたちが、おかしくなっちゃって…」
ああ、さっきのアレですか。…まずい、俺も途中だったから理性が
「そうです……。それで、キョン君ふぇぇぇぇ!」
俺は無意識に朝比奈さんを抱きしめていた。こんな自分が嫌だ。
「ちょ、ちょっとキョン君?キョン君もなの?」
す…すいません朝比奈さん。俺はやっとのことで手を離して後ろを向いた。
情けない話だが、朝比奈さんを見たらまた襲ってしまう。
「あ、あの……、キョン君、わたし、昨日のお礼がしたいから……今日だけですよ?」
昨日、ピラミッドの件ですか?それとも聖水…
へ?ちょっと朝比奈さん?朝比奈さんは俺のベッドまで歩いていった。
「ど……、どうぞ、座ってください」
ベッドにちょこんと座る朝比奈さんに飛び付かないように
細心の注意を払いながら、俺は自分のベッドに座る。
朝比奈さん、本当にいいんですか?
「はい、キョン君のその……おちんちんを、手でしますから……
下、脱いでください」
これは何て凄いサービスだと感動にうち震えながら、俺は下を脱ぐ。
「それじゃ、いきますね」
朝比奈さんは俺のモノをやさしく扱き始めた。……すごい、もうこのシチュエーションだけでダメだ。
「あの……、触ってもいいですよ」
ああっ…朝比奈さん…
俺は朝比奈さんを抱き寄せて、胸を掴む。
「ひゃっ!あ……、ちくびは、優しくしてください…」
くっ……たまんねぇ…!
今度は胸を優しく揉み解す。すごい柔らかい。
「あぁっ……キョンくん…キョンくんの体、凄い格好いい…」
あぁっ……その言葉は俺の弱点……!
「はぁ…んん…キョンくぅん…気持ちいいですかぁ…?」
やばい、手が、手が柔らかい……気持ちいい…
「うふ、いつでも……好きなときに、出していいですからね?」
朝比奈さんが扱くスピードを早める。それで俺の肉棒はギブアップを宣言した。
そのまま朝比奈さんは最後まで絞りだす。もう気持ち良すぎて
何が何だか分からない。
「うふ、気持ち良かったですか?それじゃ、お休みなさい」
俺が余韻に浸ってる間に、朝比奈さんはは手をべとべとにしたまま
部屋を出てしまった。
朝比奈さん…ありが
「キョン君…?お姉さんキョン君のおちんちんが欲しくなっちゃったよっ…」
えっ、鶴屋さ
「キョン!ちょっと手伝いなさ…って何でもう出してんのよ!空気読みなさいよ!」
「そっか〜、じゃあ古泉くんっ!出番だね!」
鶴屋さんは寝ている古泉に乗りながら上を脱ぎだした。
「うわっ、どうしたんですか?」
古泉がやっと起きた。すまんな、俺たちのせいで。
「古泉くんっ!一緒に寝よ?」
「い、いや僕は遠慮」
鶴屋さんは問答無用で古泉を襲いだす。
「キョン!よそ見してんじゃないわよ!当然もう一発出るわよね?」
その後俺達はさらにこの二人のムラムラも沈めることとなった。
翌日、それぞれ別れた後に俺はポルトガ王の手紙を持って胡椒の店を探した。
胡椒屋の看板を見つけて入ってみると、男三人がなにやら揉めている。
「おい、やめとけって。相手は盗賊団だぞ?」
ん?アホみたいな声がするぞ?
「そうだよ。ここは様子を見たほうがいいって」
これは…まさか
「ダメだ!タニアを助けるんだ!」
こいつはあれか。昨日のグプタとやらか。こいつのせいで昨日の夜は
……いろいろありがとう。
俺が怒りと感謝を同時に感じているうちに、グプタは走っていってしまった。
おっす、谷口。店の主人を探してるんだが。
「おっ、キョンじゃねえか、久しぶりだな。」
「キョン、さっきの走っていったのが胡椒屋の主人だよ」
マジか。あいつはどこに行った?
「それが……彼女のタニアを誘拐されてな。その…」
何だよ、何笑ってんだよ。
「谷口は『覆面パンツ』ってワードがかなりツボだったみたいだよ」
あぁ、アホはいいから、またあの覆面パンツの仕業なのか?。
「っぶははははは!そう、恐らくふ、覆面パンツが資金調達に、覆面パンツが
金に困ってあっはっはっはっはっはっは!」
笑い事じゃねえだろ。助けに行かなきゃ。ついてきてくれないか?
「分かった。ちょっと仲魔呼んでくるから待ってろ」
漢字間違えてない?
「あのメタルスライムとかだよ。谷口はモンスターを仲魔って言うんだ。」
あぁ、あいつ強いんだよな「ホイミが効かないのが玉にキズだけどね。」
そもそも必要ないだろ。俺が代わりにベホイミされてやるから。
「そう言えばキョンは戦士なんだっけ。ベホイミのしがいがあるねぇ。」
…俺たちはこんなバカ話をしながらダルダルなムードでグプタ救出に向かった。
バハラタから少し森を歩いて、俺たちは覆面パンツの人さらい、カンダタのあじとに到着。
「キョン、お前は土地勘無いだろうから俺たちの後ろについてこい」
ああ、分かった。……って何だここ。無限ループ?
「違うよ。ここは俺たち子供の頃から遊んでるから慣れてるんだよね」
そうか。お前たち連れてきて良かったわ。
「それにしても妙だな。子分が出てこない」
「留守にしてはあまりにがらんとしてるよね。30人位いるわけだし」
…本当か?国木田。
「うん。待ち伏せしてるのかな?とにかく気を付けて。」
「おい…そろそろだぞ。」
谷口がドアを開けると、そこにはだだっ広い部屋があって、
そこにグプタとタニアが捕まっていた。
「あっ!谷口!国木田!」
「助けにきてくれたんですね!」
「おう、ちょっと待ってろ」
谷口が部屋の隅にあるレバーを引くと、牢屋の格子が開いた。
「じゃあ、早く帰ろうか」「ちょっと待ちな!」
帰りの道のドアから聞き覚えのある声がした。
「おい、まずくないか……?」
谷口の顔が引きつっている。
「とにかく二人に被害が来ないように戻さないと」
国木田が二人を戻した。
「ここを知られたからには生かしておけねぇなぁ……、
あと、裏切り者も処刑だ。」
お前が逃げたんだろという突っ込みも入れる余裕がない。
あいつら何人いるんだ?10人以上じゃないか?
「とりあえず複数攻撃用のモンスターを出す。巻き込まれないように注意しろよな」
谷口はノーマルなスライムを箱から出した。
「フン、そんなスライムで何が出来るってんだ。……お前ら、やっちまえ」
それを聞いた途端、カンダタ子分達は一斉にダッシュして来る。
「キョン!危ないから下がって!」
国木田の声に反応して俺が咄嗟に下がる。
刹那、スライムは燃え盛る火炎を吐いた。逃げ遅れた奴が……えぐい
「はーっはっはっは!スライム舐めんじゃねえぞ!覆面パンツ!」
谷口の発言に数人が吹いていたところを俺は見逃さなかった。
やっぱこいつらも覆面パンツはだめなのか。
そんなことを考えていたら、一人がこちらへ向かってきた。すかさず剣で応酬する。
「うわっ!やめろー!」
まずい国木田が複数にやられている。この戦いで僧侶を失うのはまずい。
俺たちはすぐに国木田を助けに行った。幸い相手は国木田に気をとられて
後ろがお留守だ。どの道雑魚だな。遠慮無く峰を打たせてもらう。
「あ、ありがとうキョン」
あぁ。とりあえず7人は減ったか。
『ベギラマ!』
突如俺たちは炎に包まれた。
ぐぁっ!相手には魔法使いがいるのか!よく見るとカンダタの後ろだ。
倒すのは難しいな。
「次ベギラマされたら危ないな。キョン、ベホイミの
詠唱終わるまで時間稼いでて」
よしきた。俺は盗賊団むけて飛び込んでいく。今回は剣がよく当たるな。
どうやら俺も強くなったらしい。
「くそ!てめえら何してやがる!」
カンダタが痺れを切らしてきた。斧の一撃。俺は間一髪で躱したが、
巻き込まれた奴の腕が飛んでいった。凄い破壊力だ。
「くっ!」
子分の剣を受けながら、カンダタの斧を盾で受ける。谷口、二人は無理だ!助けてくれ!
「こっちもヤバいんだって!応援寄越すから待ってろ!」
谷口も複数を相手にしている。あっちはあっちで大変そうだ。
国木田がベホイミを唱えて谷口を回復させた。すかさず次の詠唱に入る。
「よそ見してんなよ?」
子分の剣が足を擦った。危ない、自分の戦いに集中だ。
「メラ」
突如炎弾がカンダタに命中。カンダタが怯むその隙に俺は距離をとった。
そしてカンダタに襲い掛かる黒い塊。あれは……あの時のメタルスライムか!
「くそっ!何だこいつは!」
カンダタがメタルスライムに気をとられている隙に子分を一人撃破。
着々と数を減らしてきている。 『メラミ!』
大きな炎弾が飛んできた。目標は…谷口!まずい、谷口がやられた。くそ、あの魔法使いがいやらしいな。
「ふんっ!」
メタルスライムが戦わなくなったからか、カンダタが再びやってきた。斧の一撃
危ねえっ!腕が飛ばされる寸前だった!
「ピオリム!」
国木田の呪文の影響か、鎧が軽くなる。
「素早さを上げたから、あの魔法使いを!」
わかった。俺は魔法使いを目がけて走った。
『スカラ』
魔法使いが何やら詠唱した。俺は構わず切り掛かる。魔法使いは俺の一撃をローブでガードする。
身体ごと吹っ飛んだ魔法使いは見事に無傷。一体どうなってやがる、あの「スカラ」の影響か?
「キョン!カンダタにスカラをかけられたら勝てない!気を付けて!」
国木田はカンダタから逃げ回りながら叫ぶ。とりあえずどうすりゃいい。
「スカラを解くから、キョンはその隙に攻撃して!」
国木田はカンダタから逃げながら詠唱を始めた。器用だなお前は。
俺は再び逃げながらメラをする魔法使いを追い掛ける。
「行くよキョン!ルカニ!」
国木田が呪文を唱えた瞬間に、俺は剣を振り下ろした。魔法使いはそのまま変な倒れ方をする。やべ、やりすぎた。
「ぐああああっ!」
カンダタの斧が国木田の背中に入った。そのまま倒れる国木田。まずい!
「はぁ…はぁ…手間かけさせやがって。こっからは一対一だぜ?」
あぁ……。ちゃっちゃと終わらせるぞ。
俺は攻撃力を上げるために盾を捨て、構えに入った。
「あったわ!これが悟りの書ね?」
そう。
わたしたちは、ガルナの塔で悟りの書を見つけることに成功した。
「それじゃ早速転職に行きましょ!有希、ルーラはまだ出来るわね?」
待って。悟りの書を読むのに時間が必要。
「あっ…そうですね。どのくらいかかるんですか?」
おそらく20時間ほど。
「長いですね……それならば一度宿に戻って読んで長門さんに
悟りの書を読んでもらいますか。」
「そうね。ちゃっちゃと終わらせるのよ有希!」
わかった。
私はリレミトを唱え、ルーラで宿まで飛んだ。
「キョンはもう戻ってるかしら」
涼宮ハルヒは宿を出てキョンを探し始めた。
「ちょっと僕も休ませてもらいますよ。昨日は疲れました」
そう。
私は悟りの書を読みながら答えた。一体何があったのだろう。
「はは、何でもありませんよ。少し眠れなかっただけです」
そう。
キョンの奴何やってるのかしら?胡椒の店で油売ってたりして。
全く人が苦労して悟りの書を探してる最中に!まぁあたしは
楽しかったからいいけど……、あっ、鶴屋さん!
「ハルにゃん!キョンくんが大変だよ!」
えっ!キョンがどうしたの?
「胡椒屋さんが誘拐されて、それを助けにカンダタのあじとに……」
またカンダタなの?やっぱりあの時とっ捕まえておくべきだったわね!
「あの時は仕方なかったよっ。キョンくん止められなかったし」
そ……それはそうね。もう…、キョンは早とちりなんだから!
「ふっふっふっ、ハルにゃん?赤くなってるよっ」
そ、そんなことないわよ!それより早く行くわよ!
あたし達はカンダタのアジトまで急いだ。
「キョン君大丈夫かなぁ…」
アジトの中には沢山の盗賊がいて、あたしたちに襲い掛かってきた。
いくら雑魚でもこの量を一人じゃきついわよ?
「それにしてもここは入り組んでるね……どこだか分からないよっ」
そうね。次襲ってきた奴に道案内させましょ!
すぐに次の盗賊が来る。あたしと鶴屋さんの表情に何かを感じたのか、
すぐに逃げようとする。
でももう遅いわ。
「はあっ!」
俺はさっきからずっとカンダタと打ち合っている。
カンダタの実力は以前と変わらず、俺は強くなっている。
ピラミッドでの一件が相当でかい。ハルヒに感謝だな。
「くそっ!何なんだお前は!」
カンダタもそれに気付いているようだ。武器に焦りが出ている。
「なぁ……、お前も、俺と一緒に盗賊 や ら な い か ?
お前にはナンバー2の椅子を用意するぜ?」
だが断る。俺はもとの世界に戻りたい。覆面パンツの配下になる気もない。
「へへ……、いい女も用意してやるからよ?お前も戦士ならわかるだろ?」
だが断る。ハルヒも勇者様も手に掛けた俺には通用しない口説き文句だ。
俺は腕に力をこめて切り掛かる。目的は……武器破壊!
「うっ!」 武器は壊れなかったが、代わりに斧はカンダタの手を離れる。よし、もう積んだ。
「ま、待て!もう一度考え直せ!」
待たない。今度こそお前は牢屋行きだ。
俺は気合いを溜めるべく大きく息をを吸い込んだ。
「へへ……そうかよ。じゃあお前の道はこっちだ!」
カンダタが合図を出すと、俺が出てきたドアとは違う鉄格子が開いて、
そこから覆面パンツが5人出てきた。それぞれに
鉄の棍棒、鋸刀、鞭、爪、無手である。
「お前は強いから惜しかったんだけどなぁ……嫌なら仕方ない。
こいつらはウチの戦闘部隊だ。あの雑魚どもとは違うぜぇ?やれっ!」
指示が出る。すぐに、無手の奴が詠唱に入った。
四人が突っ込んでくる。もう相手の命を構っていられない!
俺は逃げながら打つことにした。幸い素早さには魔法修正がかかっている。
さすがにこいつら全員相手にするのはキツイ。
「メラミ!」
大きな炎弾が飛んでくる。俺は鋸刀を盾にした。それを食らってよろめく
鋸刀の腕を飛ばす。一丁上がり。
「あ、あんたよくも!」
爪が逆上して襲い掛かって来た。うげっ、こいつは…
爪が頬を擦る。もう少しで首にいくところだった。危ない。
よし、反撃開始!
「マヌーサ!」
突如覆面パンツが30人位になった。何だこれは!
剣を振る。
5、6人に当たったはずなのに、そいつらはびくともしない。
5つの棍棒が襲い掛かってくる。脇腹にヒット。
「ぐはっ!」
まずい、倒れてしまった。そのまま殴る蹴るのリンチを受ける。
「ねぇ……そろそろいいんじゃない?」
うっ
「ふふふ……坊やなかなかいい男ね」
やっぱりこいつら
「お尻の穴は初めてでしょ?優しくしてあ・げ・る・(はぁと)」
ヘンタイだ!
「ギャッハッハッハ!どうだ?いい女達だろう?」
くそ、こいつもコッチだったのか。あまりにも女っ気が無さすぎると
こうなるのか。以後気を付けよう。……その前に以後があるかどうかが問題だ。
覆面パンツ達は俺をうつぶせにさせると、下を脱がせ始めた。
「大丈夫。お姉さんたち優しくしてあげるから、ね?」
くそ、体が動かない。こんな奴らに俺はケツを捧げるのか。
覆面パンツがごつごつした手で俺の一物を扱き始める。
何だか悲しくなってきた。
うう……朝比奈さんの柔らかくて優しい手が懐かしい。
「緊張してるの……?ふふ、可愛いわね。お姉さん頑張って気持ちよ」
「ここねっ!牢屋がある部屋は!」
「ひぇっ!キョン君!浮気なのかなっ?」
非常に誤解を招く場面でハルヒが入ってきた。鶴屋さんも。
「た、助けてくれ!」
もう何でもいい。この状況から抜け出したかった俺は、とにかく叫んだ。
「キョン君!?言い訳は後で聞くからね?」
誤解です。それだけです。
「キョン……アンタって奴は!」
ハルヒは八つ当りをするかのように覆面パンツの群れに飛び込み、
股間に蹴りをかます。
どうすっかなー。
「キョン君!複数相手の戦法は今度教えるからね!」
鶴屋さんも加勢する。3対2なのに完全にこっちが押している。
「マヌーサ!」
残りの一人がまたこの呪文を唱えた。まずいぞ!
「あれ?カンダタみたいなのがいっぱい?」
「これは幻影だよっ、ハルにゃん、下がって!」
ハルヒが下がると、鶴屋さんは詠唱に入った。
「あたしにはそんな魔法効かないからねっ!」
鶴屋さんは子分達の間に飛び込むと、そいつらの胸の辺りに両手を当てた。
特に力を込めたわけでもないその一撃で、子分たちは吹っ飛んで倒れ、
泡を吐いている。
一撃かよ……強すぎるぜ勇者様。
「後は俺だけかよ……だかな、俺はお前とは相性いいんだぜ?」
カンダタが再び斧を構える。
そうだ。カンダタは鶴屋さんが苦手とするタイプらしいのだ。
俺はカンダタみたいなのが得意だから互角に打ち合えているだけなのである。
「キミは苦手だからあんまり剣ではやりたくないんだ。ごめんね?」
鶴屋さんは右手の掌を上にかざして詠唱する。
「けっ!なんだその呪文は、まるでデタラメじゃねえか!」
今まで聞いたことのない呪文らしい。カンダタはそのまま切り掛かるが、
当然鶴屋さんに当たるはずがない。
「……よし、出来たっ。これはデタラメじゃなくて、れっきとした魔法だよ。
…ハルにゃん!キョン君を安全な場所へ!」
「わかった!」
マヌーサの解けたハルヒは俺を入り口の所まで連れていってくれた。
「もう…なに出してんのよ。緊張感のない奴ね」
仕方ないだろ。無理矢理されたんだ。
「分かってるわよ。アンタがそっちのはず無いじゃない」
分かってくれて嬉しいよ。いや本当
「よし、準備は完了だね?いくよカンダタ!」
『ライデイン!』
鶴屋さんが腕を振り下ろすと、無数の雷がカンダタの周囲に落ちる。
すごい威力だ。カンダタが黒焦げになっている。
「あれは……勇者の証」
ハルヒが呟く。なにそれ?
「本当に知らないの?あれは勇者にしか出来ない特殊な魔法よ。
神の怒りを顕現させるの。」
ほう。ついに鶴屋さんも本格的に勇者になったということか。
「…ふぅ、終わったね。胡椒屋さんはどうなったのかなっ?」
あぁ、牢屋のなか……
「…うっ」
ハルヒが吐きそうになっている。無理もない。グプタとタニアは生身で
「ベギラマ」と「ライデイン」を受けたのだ。見事なまでの丸焼きである。
「……あちゃ〜。バトルでの死亡だから教会に行けば生き返せるけど、
今後は気を付けなきゃねっ」
その後教会で死んでしまった奴らを生き返らせて胡椒を貰った。
グプタとタニアはライデインを受ける前にすでにベギラマで
丸焦げだったらしい。ライデインを食らった証拠を隠滅できて何よりだ。
カンダタは現在我がロマリア国の監視下にある。近いうちに裁判がなされるが
肝心の被害者がホームレスで、すっかり貴金属類に興味のない
人間になってしまったので罪は軽くなりそうだ。
今度帰ったらカジノでも作ってやろうと思う。
宿でもう一休みした次の日、晴れて長門は賢者に転職することになった。
ダーマ神殿神官の長ったらしい説教を聞くこと一時間。
「……では、再びレベル1に戻ることになるが、よいな?」
「……はい」
正直早くしてほしい。もっとちゃっちゃと出来ないもんかね。
「こらキョン!しゃきっとしなさい!」
分かったよ。俺は姿勢を正した。
「では最後は口述試験だ。長門有希、悟りの書にお前は何を感じた?答えよ」
「……ユニーク」
長門は心底どうでもよさそうに答える。
「いや、どの部分が」
「全体的に」
恐らくあいつも飽きたのだろう。
「あ…あいわかった。では神よ!長門有希に新たな人生を与えたまえ!」
神官もこれでいいのか?長門はまばゆい光に包まれだした。
身にまとうローブが消えていく。
「キョンくん!みちゃダメ!」
長門が完全に裸になったとろで朝比奈さんに目隠しをされる。
「あ…ああっ」
朝比奈さん、そんな声だされると気になります。
「あっ…ごめんなさい、もう終わりましたよ。」
朝比奈さんが手を離すと、そこには鶴屋さんのようにサークレットをして、
前のローブ姿に比べると多少露出度の高くなった長門がいた。
「有希、おめでとう!」
「これでうちにも念願のホイミね!」
ハルヒと鶴屋さんがが長門に抱きつく。
「すごいです長門さん……あの本私にも読めなかったのに」
いや、普通は読めませんよあんなの。
「しかし悟りの書の意味は何だったんでしょうね。」
それは誰にもわからん。
「よし、次は胡椒をポルトガまで運ぶわよ!」
長門が賢者になり、次は船というのでハルヒは絶好調である。
「……先に行ってて欲しい。彼に話がある。」
長門は瞬きもせずに俺を注視する。
「へ?わかったわ。それじゃ待ってるからね!」
「長くなるからポルトガで宿泊してほしい。」
「あっ、キョン君!浮気はダメダメだよ?」
「え……長門さんもキョン君を…」
「ふふ、あなたも罪な男ですね。それではまた。」
「ちょっとキョン!有希に手出したらただじゃおかないわよ!」
鶴屋さんはルーラを唱えた。皆が誤解を残したまま去っていく。
……どうすんだ長門。
「……私の記憶がある程度戻った。宿に着いたら出来る限りを話す。
その前に私のレベル上げをしてほしい。」
長門はこの世の全ての魔法が使えるようになったらしく、「メラゾーマ」
やら「パルプンテ」やらの高等魔法をレベル上げ途中に色々かましてくれた。
宿に到着するころにはすっかり日も暮れていて、俺は谷口と国木田に
軽い挨拶をしてすぐ宿屋に直行した。
とりあえず、今回の世界改変の原因を知りたい。
すると長門は、意外な犯人を口にする。
「今回の改変は情報統合思念体の判断。理由は、涼宮ハルヒの五月病対策」
ハルヒのそれはそんなにヤバいのか?
「わからない。けれど非常に危険である可能性は高い。
去年はあなたが抑えてくれたから助かった」
そういえば世界が滅びる一歩手前まで行ったんだよな。
「そう。そしてまた閉鎖空間が起きたら以前のようにうまく行く保障はない。」
どうして。
「あなたがそれを拒否するような素振りを見せていた。
もうあなたは閉鎖空間が発生しても涼宮ハルヒにキスをしないのではないかと
情報統合思念体は考え始めた。そして彼女に退屈を与えないように
情報統合思念体が期限付きで世界を改変した。それが今の状態」
なんだそりゃ。俺だって世界が危機になればそれなりに動くぞ。
今はもうキスに抵抗もないしな。
「わかった。それは報告しておく。でも今世界を戻してしまうと
今度は前にも言ったように、夏休みがまた繰り返されることになる。」
ああ、五月のフラストレーションが夏に爆発するんだっけか。
「そう。エンドレスエイトを解決する方法は未だわかっていない。
去年の例は奇跡だった。」
じゃあ、こっちをクリアしたほうがいいんだな?
「それを推奨する。これで報告することは全部。」
その後、トレーニングを終えて、寝る時間になる。
「それじゃ、明日から船旅だな。そろそろ寝るか。」
長門は本を閉じた。悟りの書好きなのか?
「わりと」
そう言ってベッドに入ったまま動かなくなってしまった。……俺も寝よ。
……
…
『タニア!愛してるよタニア!』
『もう、グプタはおっぱいばっかり。子供みたいね』
『んー!んー!』
『ふふ、慌てなくていいのよ……』
……またか。
『そーれぱふぱふ、ぱふぱふ!』
『うぷぷぷぷ』
『うふふ、気持ちいい?』
『ぱい。ぴぽぴぴーぺぷ』
……誰だデリヘル呼んだの。谷口だな?
俺がまたげんなりしていると、突然とんとん肩を叩かれる。振り向くと、
「私は人間との間で子供を作る能力はない。中で出しても平気。」
長門がスタンバイしていた。そこで俺の理性は途切れている。な、ながとー!
「……わ、わたしに性感はない」
うそこけ。なんだこの乳首は
「それは、私が人間に似せて作られたから…そうなって…ああぁ」
俺はいま長門の乳首の周りを焦らすように舐めている。
「故に私に性感帯などは…ひゃああん!」
俺は未だ尚性感の存在を否定する長門の乳首をしゃぶってやり、
さらに下にも手をやる。
「あっ、ああぁっ、こっ、この声はそうじゃなくて、ああっ!
何か別の理由があって」
頑なに否定する長門に、俺はつい意地になって自分の性技の全てを
ぶつけてしまった。
「あっ、ああっ、いい、いいっ、あああああ〜!!」
数時間後。
「……」
長門、ごめん
「……けだもの」
悪かったって。
「……」
長門は俺の腕を抱いたまま離さない。とろんとした眼で俺を見つめている。
もう寝ようぜ。
「あと一回」
だからもう遅いって。
「私をこんなにしたのはあなた」
……これで最後だからな?
こくりと頷く長門。俺はまた再び愛撫を始める。
次の日、俺たちはポルトガ組と合流した。そこで俺にとって衝撃の事件が起こる。
「あの……私パーティーから離れることになりました」
朝比奈さんがチームを抜けるというのだ。一体どうして!?
「みくる 私と 村 つくる」
見るとミスターポポみたいな口調のおじさんが会議に参加している。
誰だこのネイティブアメリカンは。
「町を作るのに有能な商人を探して旅をしていたようです。
そこで朝比奈さんに白刃の矢がたったというわけです」
何だと?おいハルヒ、リーダーとしていいのか?
「みくるは惜しいけど二度と会えなくなるわけじゃないし、
それにおっさんによれば、みくるじゃなきゃ手に入れられない
アイテムがあるらしいの。」
何だ?必需品なのか?
「う〜ん。そのじいさんの言うには魔王バラモスの城は空からしか
アクセスできないらしくて、空を飛ぶために必要な『イエローオーブ』
は、人の手に渡り続けてるんだってさっ。
みくるじゃなきゃそれを買い取ることは出来ないんだって。
……キョン君、わかってくれるかなっ?」
ほう。それを朝比奈さんゲットの口実にしたわけか。許せんな。
「キョン!わがまま言うんじゃないの!これからはその
『オーブ』探しに世界中かけずり廻るんだからね!」
「それに私じゃもう戦闘の約に立たないし……ごめんねキョンくん」
そうですか……朝比奈さんがそう言うなら仕方ありませんね。
なら早いとこそのオーブとやらを見つけちまおうぜ。
「そう!その意気だよキョン君!」
「それじゃ、さっそく『未来(みくる)の町』予定地目指して出発ね!」
そんなこんなで俺たちは、船に付属していた世界地図を片手に、
世界中を旅することになる。
第一部 完