ハルヒとの激しい夜を終えた次の日、俺たちはこれからの行動計画を宿屋で話し  
合っていた。ここでの目的の一つは、この大陸の南にあるロマリア国の王様が金  
の冠を盗まれたということで、それを俺たちは人情として取り返してやることに  
したのだ。もう一つはここから北にある、村人が全員眠った村の謎を解き、出来  
れば復活させること。我らがSOS団の得意分野みたいな事件だが、周辺の敵が  
強いので、これは後回しにすることになった。  
「…というわけで、金の冠を盗んだ『カンダタ』が逃げ込んだとされる西の塔の  
探索係と、新しい装備を買うための稼ぎ係に別れるわよ。」  
こんな感じで、六人もいると旅が効率化されるのが嬉しい。  
この日のクジの結果は、探索係がハルヒ、古泉、、長門。  
稼ぎ係が俺、朝比奈さん、鶴屋さんという組み合わせだ。  
鶴屋さんの実力が今ベールを脱ぐ。そんな感じだ。  
二手に別れたあと、俺たちは現在地であるカザーブ村周辺で、稼ぎを兼ねて鶴屋  
さんに剣の稽古を付けてもらうことにした。  
「えい!やあ!とう!」  
この可愛らしい声は朝比奈さんである。道具に精通しているためか、ある程度の  
武器は使えるらしい。  
「そうそう!みくるはなかなか筋がいいね!」  
鶴屋さんは終始こんな感じである。誉めて伸ばすと言うのだろうか。すごくいい  
先生だ。  
「うん、キョン君も強いね!でも、  
まだ荒削りだから鍛えればもっと伸びるよっ!」  
なんだか照れる。鶴屋さん、改善点とかはありますかね。  
「うーん、ちょっと力に頼きすぎかなっ。正しいフォームを覚えれば…」  
「つ、つつ鶴屋さん敵敵〜!」  
そう、俺たちは村の外で稽古をしている。当然化け物も出てくるのだ。  
「よし、じゃあ彷徨う鎧以外は頼んだよ!」  
彷徨う鎧というのはこの辺に出てくる強敵で、空っぽのフルアーマーである。  
空っぽのくせに生意気にも剣技を使ってくるのだ。痛恨の一撃で殺されかけたこ  
ともある。俺と朝比奈さんは二人してゾンビ犬とかでかい芋虫とかを次々と切り  
伏せていった。ほとんど俺がやったんだけどね。そして、何故彷徨う鎧を残すの  
かというと、  
 
「二人供、勇者先生のお手本をよっく見ておくんだよ!」  
と言って、彷徨う鎧を相手に「めがっさ難しい技」という名の超絶技巧剣技の数  
々をかけて俺の自尊心を悉く崩壊させるのである。流れるような動きに、俺はた  
だ見惚れることしか出来ない。あの夜抱いた時はあんなに細っこくて柔らかい体  
だったのに、どこからそんな力が  
「キョン君!あ、危ない!」  
俺は後ろから蠍(さそり)と蜂を適当に継ぎ接ぎしたような奴に背中を刺された。  
痛えな何しやがる!  
俺はそいつを振り払うと、そのツギハギに向かって銅の剣の一閃を食らわせた。  
「キョン君は鶴屋さんに見惚れすぎです!昨日の夜は涼宮さんとしたのに…」  
うげっ、やっぱバレてたか……くそ、あいつ声出しすぎなんだよ。  
……でもあんなひぃひぃ言わせたのは俺か。俺のせいか。  
「キョン君はソッチはうまいんだよねっ!学習能力がめがっさ高い証拠だよ!」  
鶴屋さん、こんな所まで誉めくていいです。  
「と、とにかく浮気はダメなんですからね!…あれ?」  
どうしました?朝比奈さん。  
「私たち、すごろく場まで来てたみたいですね。」  
すごろく場?そういやバカ殿さまで見たことがあるなそんなの  
そう言えばロマリアで何かの券拾いましたよね?  
「キョン君が言ってるのはこれかな?みくる、鑑定よろしくっ」  
そう、それだ。朝比奈さん、どうですか?  
「そうです!これがあれば一回プレイが出来ます!」  
どうします?息抜きに一回。俺はこういうのに運ないからパスしますね。  
「あ、それなら私にやらせてくれますか?」  
はは、いいですよ、朝比奈さんが楽しんでください。  
「うふ、ありがとう。いいこと考えちゃったの」  
へえ、どんな事ですか?  
「秘密です」  
朝比奈さんは唇の前に人差し指を立て、へたっぴなウィンクをした。  
……あぁ、これでルイーダの酒場の連中はおかしくなったのか。  
すごろくは人間がさいころを振って、マスごとにいろんな事が起こる、まさに俺  
がいつかバカ殿様で見た奴と同じだった。朝比奈さんは普通より一回り大きなさ  
いころをふって、止まったところで色々なリアクションをする。う〜ん。やっぱ  
り可愛い。そして羽根看板の家に行ったきり、数分間戻ってこなくなった。  
何かあったのか?  
 
「う〜ん、私にはさっぱりだよっ。それより面白そうだねこれ!あたしもやって  
みたいなっ!」  
そうですね。次すごろく券が手に入ったら鶴屋さん頑張ってみてください。  
「あれ?みくるが戻ってきたよっ?」  
すごろく場に目をやると、朝比奈さんが剣をふりふりしながら満面の笑みを浮か  
べていた。不用意にその顔を男に見せてはいけません。抱きしめたくなるじゃあ  
りませんか。  
その後朝比奈さんはすごろくを上がり、商品として鋼の剣と500ゴールドを手にしていた。途中のあれは、道具屋で鋼の剣を値切った結果らしい。  
「みくるー!偉いよっ!大好きっ!」  
鶴屋さんは朝比奈さんを抱き締めてなでなでしていた。すげー羨ましい。俺もど  
さくさで何かやろうとしたが、朝比奈さんに嫌われたら本当にへこむので、  
感謝の言葉で止めておいた。  
 
俺たちはそれからも最新武器:鋼の剣を実践投入してモンスターを狩りまくった。  
やばいよ強いよ鋼の剣。朝比奈さん本当ありがとう。そこに探索係が帰ってきた  
ので、今日はお開きにして宿で作戦会議をすることに。  
「いやぁ、もう少しでカンダタに見つかるところでしたよ。」  
「見つかったって私がブッ飛ばすだけだからよかったのに、  
古泉くん逃げちゃうんだもん!二度手間よ!」  
「カンダタは斧の名手。明日はあなたも行くことになるから、気を付けて。」  
その他には古泉が彷徨う鎧からちょろまかした大量の銅の剣と青銅の盾を売りま  
くって多少リッチになったことを報告しておく。古泉曰く、  
「動きが鈍いから、手元を弾けばおしまいなんですよね。」  
らしい。彷徨う鎧に一番強いのはこいつだったようだ。ピックポケット万歳であ  
る。人間には使うなよ。  
その夜、俺は初めて夜の稽古に参加した。俺のメニューは鶴屋さんから言われた  
フォーム作り。ハルヒは鶴屋さんから鉄の爪を使っての武器の受け方を教わって  
いた。あの人は何でも出来るな。さすがは勇者である。  
今日はゆっくり寝られた。だがしかし古泉と共同ベッドなのは何とかならないだ  
ろうか。今度交渉してみよう。  
次の日のメンバーは探索チームにハルヒ、俺、鶴屋さん、長門という、うちのバ  
トル専門家達の精鋭である。攻撃力は最高だ。何せ回復役がいないからな。  
稼ぎチームは古泉と朝比奈さん。この二人は後に金稼ぎコンビとしてうちのチー  
ムに伝説を残すことになる。  
 
盗賊カンダタのあじとである『シャンパーニの塔』は、昨日の作戦会議中に古泉  
が作った簡易地図のお陰でさくさく進んだ。長門は適度に呪文を使っている。カ  
ンダタ達とやりあうことになったときまである程度温存するそうだ。攻撃は俺た  
ちに任せて、毒針を振るうのがメインである。  
しかしサクサク進む。敵の数は結構な量なのに、ハルヒと鶴屋さんのコンビネー  
ションがすごい。例えその二人を逃れてもそいつの行き着く先は鋼の剣を手にし  
た俺である。なんかスカッとする。ハルヒも俺と同じ思いなのだろうか、  
「こらっ、キョン!ニヤニヤしてんじゃないわよ!」  
と微笑を浮かべながら言っている。この状況を楽しんでいるのがもろバレである。  
「ここからは盗賊のアジト。気を引き締めて。」  
そんな雰囲気を長門が制した。相当ヤバい奴らなのか。  
「ここで全滅したシークエンスは二回。全滅しても朝比奈みくると古泉は生きて  
いるからループは免れるが、あまり全滅はしないほうがいい。」  
長門が小声で言った。このメンバーで死ぬのか。相手は強そうだな。  
「人間同士だと人の数が勝負を決めることが多いんだよっ。それに今回は盗賊…  
…、負けたら、覚悟しといてね。」  
鶴屋さんが初めて真剣になった。分かってますよ、全力を出します。  
扉を開けた。咄嗟に子分が逃げ出す。ん?あいつらどこかで……  
「こらっ、ちょっと待ちなさい!」  
おいハルヒ、独断専行はよせ。  
「私たちも行く。急いで」  
「キョン君?盗賊は素早いから力任せはだめだよっ?ハルにゃんをいぢめたとき  
を思い出してっ」  
「ちょっ、鶴屋さん!」  
こんな時に勘弁して下さいよ。ほら、ハルヒも赤くなるな。  
階段を上がった先には盗賊団がいた。やっぱりあいつらだ。  
「こらっ、無駄な抵抗はやめておとなしく自首しなさい!」  
ハルヒはお得意の飛び蹴りをかます。そのまま落し穴に落ちてしまった。  
お前がおとなしくしなさい。  
「まずいね、逃げてくよっ」  
おーい!ハルヒ急げ!  
「分かってるわよ!うかつだったわ!」  
俺たちは先にカンダタ達を追って下の階に飛び降りた。  
「こらっ、ちょっと待って!金の冠は返してもらうよっ」  
「けーっ!俺が簡単に返すと思うか?、逃がしてくれねぇんなら容赦しねぇぞ?」  
 
これがカンダタか。なんだか陽気な奴だな。覆面パンツなのに。そしてその子分、  
「まぁ女に手を挙げるのは気が引けるんだけどな」  
「しょうがないよ。追っ手みたいだしさ。」  
谷口と国木田である。何だってこんな覆面パンツの子分なんだ?谷口は分かるが  
国木田は秀才だったはずだ。  
「おりゃーっ!」  
上からのハルヒのフライングブロー。しかしカンダタは身を躱した!  
っていうかおいっ!囲まれてるだろ!  
俺と鶴屋さんはとっさに相手に飛び掛かった。すぐにカンダタの斧を俺が受けと  
め、鶴屋さんが空いた胴に強烈な一撃。カンダタは吹っ飛びはしなかったが、そ  
の場で倒れた。何だ、案外あっさりなのね。  
「うおおっ!」  
と思ったらカンダタの一撃。重い。剣で受けとめたら鎧を着ている俺が浮いた。  
まずいぞこいつ、すげぇタフだ。  
「ここはあたしに任せてっ!」  
鶴屋さんがカンダタに応戦する。おいおい、互角だぞ。  
俺はとりあえず谷口から相手にすることにした。ハルヒは国木田をよろしく!  
「えっ、なんで僕を知ってるの?」  
うるせえ、話は牢屋で聞いてやる。俺は国木田にそんな一瞥をくれてやると、  
谷口に向かって行った。  
おい谷口。アホに免じて峰打ちにしといてやるから、おとなしく気絶しとけ。  
「お前、何で俺を知ってるんだ?俺も有名になったのか?」  
俺はその質問には答えずに、剣を振りかざす。避けられた。  
「はっ!」  
谷口の武器は鞭だった。谷口の癖にちょこざいな。盾で受ける。顔に当たったら  
痛そうだなありゃ。  
「俺は直接は打ち合わない質なんだ。こいつの相手でもしてろ!」  
一気に後ろに下がった谷口が出したのは、いつぞやのアリアハン大陸のプリン。それの液体金属バージョンだった。  
「お前みたいな重戦士にはこいつは天敵だぜ!」  
ふん、プリンはプリンだ。その脆弱さは痛いほど分かっている。ほれ一丁あが――……らない。  
素早い。くそ、盗賊団なんて相性悪すぎだろ。  
黒プリンが飛んできた。まあ動きが軽い分打撃は―――ぐあっ!?  
何だこいつは!鉄球をぶつけられたみたいな衝撃だ!まずいな。まずいよね。  
谷口だと思って舐めていた。マジでやらねばやられる。  
向うでは国木田とカンダタのタッグ、ハルヒと鶴屋さんのタッグでやりあってい  
た。向うに分がある。国木田、明らかに回復呪文唱えてるし。魔物使いと僧侶か。  
さて、どう崩す。  
 
「スクルト」  
突如感情のない声が聞こえてくる。また黒プリンの一撃。威力は同等に見えたが、  
今度は多少軽くなった。  
「ヒャド」  
これは長門の声だ。俺の後ろから聞こえてくる。谷口目がけて氷の刄が飛んでいった。ヒット。  
俺はその間も液体金属と打ち合っているが、一向に当たらない。  
「まずいわね…、ベホイミは反則でしょ!」  
「このままじゃジリ貧だねっ……、薬草、持つかなぁ」  
あっちもきついようだ。攻撃しかないうちの弱点は持久戦である。  
「あなたは国木田を倒して」  
長門が前に出てきた。おい、いいのか出てきて。  
「平気。メタルスライムには私の毒針のほうが有利。あなたは国木田を」  
わかった、信じるぞ長門。俺は国木田の所へ走る。  
「わわわーっ!」  
あいつもハルヒに追われてこっちに向かっている。動きの鈍い俺には好都合だ。  
方向を変えようとした国木田に峰でのなぎ払いをおみまいする。今日初ヒット!  
「こらーっ!さっさと沈みなさい!」  
後ろからはハルヒの飛び蹴り。これで相手の補給は無くなった。  
「あんたは鶴屋さんの所へ行って!あたしはあのアホみたいなやつをやるわ!」  
ほう……、分かるのか。只者ではないなハルヒ。一瞬そう思いつつ俺はカンダタ  
の方へ向かった。鶴屋さん、加勢します。  
「良かった!キョン君ちょっと代わってて…!」  
鶴屋さんは後ろに引くと、初めて肩で息をした。そりゃそうだ。開始からずっとこの覆面パンツにヒットアンドアゥェイをしていたのだ。  
鶴屋さんにここまでさせる相手か…少々恐いな。変態のくせに。  
「おい、あの威勢のいい女、俺が勝ったらくれよな?」  
ハルヒか。やらねえぞ。その前に俺は負けねえ。  
「おおおっ!」  
全力で切り掛かる。相手は斧で受けとめてきた。  
こいつは素早さとは無縁らしい。いける!  
 
危なかった。キョン君が少し遅かったら首をもっていかれてたよっ、カンダタは  
キョンくんに任せて、私は私のできることをしなくちゃね!とりあえず国木田く  
んとやらをふん縛りますか。回復はやっかいだからねっ。おっ、ハルにゃんがん  
ばってるなぁ。谷口くんの鞭を鉄の爪で…そうそうハルにゃんそれ!  
「――はっ!」  
ハルにゃんはそのまま谷口くんを引き寄せて鳩尾に一撃。気絶させたね。  
あの子も縛りに行こう。  
 
うかつ。  
メタルスライムに毒針が当たらない。人に鍛えられているからだろうか、はぐれ  
メタルよりも素早く、力も強い。  
 
私の体力は職業修正による大幅な減少があるた  
め、このままではやられてしまう。  
……?  
谷口が気絶した途端、戦意が無くなった。主人のもとへ帰っていく。  
「あっ、メタルスライムじゃない!経験値よ!経験値!」  
待って。そのメタルスライムはもう戦わない。それを倒しても経験値は入らない。  
「そうなの?しかしなんでこいつメタルスライムを飼っちゃうわけ?  
やっぱアホね!」  
私にはわからない。何故メタルスライムが人を信頼したのだろう。  
これは今までの魔物使いの中でも例が無いこと。  
彼には何かがあるはず。彼は恐らく只のアホではない。凄いアホなのでは。  
 
……彼を助けなくては。私はカンダタの方を向いて、詠唱を始めた。  
 
こいつやたら強いな。朝比奈さんのくれた鋼の剣が無かったら、死ぬのは時間の  
問題だったのかも。しかし今は相手が押してるが、まともに切り合えてはいる。  
人数はこっちが上だ。俺がここで踏ん張ればあとはみんなでこいつをやれる。  
「イオ」  
突如カンダタを中心に爆発が起きた。サンキュー長門!俺はこのチャンスを存分  
に活かすべく、腕に三割増しの力を籠めてカンダタに切り掛かった。  
斧破壊。よし、着実に詰んできたな。  
「キョン、こっちは終わったわ!」  
ハルヒ、こっちも片付きそうだ。あとはハルヒの飛び蹴りで――ん?  
ハルヒの足を掴んだカンダタは、そのまま塔の壁に投げ飛ばし、折れた斧を追撃  
して投げた。長門の放った炎弾によって軌道を変えられたそれは、ハルヒの頬を  
かすめる。そのまま行ってたら脳味噌ぶちまけてたぞ……サンキュー長門。  
 
いった〜……。私の蹴りが受けとめられるなんて、あいつ強すぎよ!斧が飛んで  
きたのはびびったけど、幸い大した怪我にはならなかったみたい。  
……キョン、なんでそんなに必死なの?相手はもう謝ってるよ?ちょっと、そんな攻撃したら死んじゃうじゃない!ちょっと!カンダタももう土下座してるわよ!聞いて――  
「キョン君!落ち着いて!」  
 
鶴屋さんに武器が弾かれる音で正気に戻った。どうやら逆上してたらしい。カン  
ダタが土下座してるのにも気付かなかった。  
カンダタは鶴屋さんにお礼を言うと金の冠を置いて一目散に逃げてしまった。  
谷口と国木田は?  
「キョン君……、ハルにゃんへの想いはわかるけど、人殺しはダメだよ?」  
……ごめんなさい鶴屋さん。人殺しがいけないのだけは認めます。  
 
「バカキョン!あんなへっぽこ攻撃であたしが死ぬわけないじゃない!有希のス  
クルト忘れたの?」  
あっ、あれって、物理攻撃を和らげる呪文だったのか。  
「そう。叩きつけられた時点での涼宮ハルヒは無傷。」  
「キョンくんはハルにゃんが傷つけられたからついつい逆上しちゃったんだよ。  
そんなキョンくんを許してあげてねっ?」  
いやいやいや鶴屋さん、何ですかその説明的口調は。そんなんじゃなくて  
俺はそのつまり  
「…そうなのキョン?な、なら許してやらなくも無いわね!」  
頬を染めるな。それは勘違いだ。  
「……ツンデレ」  
うっさい。谷口と国木田連れて、もう帰るぞ。  
「キョン君の知り合い?キョン君もカンダタ子分だったの?」  
あんな覆面パンツの子分になるくらいだったら死にますよ俺は。  
詳しくは説明できないんですが、こいつらが悪人でないのは俺が保障します。  
 
 
その後、宿に帰って谷口と国木田を明日一日だけ雇うことにした。こいつらもや  
はり覆面パンツよりは麗しの勇者様の方がいいようで、すんなり仲間に入ってく  
れた。今日の夜のトレーニングは古泉がすごろくで取ってきた  
ブーメランでの遊びとなった。  
「なんで?なんで戻ってくるの?面白い!」  
ハルヒと鶴屋さんはこのアボリジニの狩猟兵器がツボに入ってしまったのか、ず  
っとゲラゲラ笑っている。俺はハルヒが死んだら、やっぱりアボリジニの聖地で  
愛とか叫んだりするのだろうか。……いや、どうせ教会で生き返るのか。なに興  
奮してたんだ俺。  
次の日、ロマリア王に金の冠を渡した後、谷口、国木田、古泉、朝比奈さんの一  
日限定洞窟探索専門ユニット『スペランカーズ』は、眠り村の謎を解きに村の西  
にある洞窟へ探索に行った。名前に弱々しさを感じるのは気のせいだ。  
ところであのメタルスライムが何で谷口に懐いているかというと、  
国木田によれば、  
「メタルスライムを倒して復活させてを繰り返せば強くなるのに谷口はそれに気  
付いてないんだ」らしい。要するにあいつがアホだからだ。  
長門に言わせると、  
「あのメタルスライムは物理攻撃回避率99・9パーセント、そして全ての魔法干渉を  
受けない」  
らしい。ようするに無敵。それにも谷口は気付いてないんだと。アホだ。  
鶴屋さんと長門は次の町アッサラームへ向かった。なんでも二人供、一度行った  
町に飛んでいける魔法『ルーラ』を覚えたらしいから、後で迎えにきてくれるそ  
うだ。これで旅がより効率化する。  
 
そして我がチームの攻撃力、俺とハルヒはというと……  
 
「…キョン」  
何だ。  
「あたしロードワークしてくるからあんた政治やってて」  
やなこった。  
「あ〜も〜王妃なんてつまんない!こんな生活絶対狂ってるわ!」  
俺たちは現在ロマリア国を治める王と王妃になっている。  
王族の血に俺みたいなパンピーの血が混じっていいのだろうか?前の王さまは格  
闘場で負けすぎて一日にして浮浪者になっていた。何かが狂っている。俺も体を  
動かさねばと兵士長に剣の稽古を頼んだら、王さまに剣を向けることはできませ  
んだと。こいつも狂ってる。俺昨日までパンピーだよ?あぁ…体動かしてぇ…  
 
その日の夜。長門はまだアッサラームに着いていないのか、迎えがこない。  
「なんでベッドか一つしかないの?私たちロマリア治めてるのよ?やっぱり狂っ  
てるわ!」  
夫婦の寝室にはハルヒの言うとおり、妙にピンクなベッドひとつだけだった。  
それに二人で腰掛ける。  
今日いきなりその辺から拾ってきた奴に王位を与えて、  
その上世継ぎを作れってか。やっぱ狂ってやがる。  
「はぁ…はやく有希来てくれないかなぁ」  
ハルヒが文句をたれる。着飾られたその横顔は、口さえなきゃ誰もが振り向くよ  
うないい女だった。それは認めよう。ただそれ以外は認めない。あの時だって仲  
間をやられそうになったから逆上したたけだ。あくまで仲間だ。  
……まずい。ハルヒに対する妙な感情が沸いてくる。  
これは恋愛感情じゃない。例の劣情だ。ムラムラしているだけだ。  
 
…なぁ、ハルヒ  
「何よ?」  
『早く世継ぎ作れよ』という全国民からの無言のプレッシャーを感じないか?。  
「……駄目よ?私たちの旅は続くんだからね?」  
大丈夫だから、外に出すから  
「ちょ、ちょっとやめなさいよ、駄目だってんー!んんー!」  
キスで黙らせた。悪いなハルヒ。これは発作だ。  
「ちょっと……、駄目だってばぁ…。」  
そうだね。プロテインだね。  
ハルヒもその気になったようだ。こいつもずっと部屋にこもりっきりだったからな。というわけで脱がす。「バカキョン、エロキョン」  
何とでも言ってくれ。俺は服を脱がし終えると、ハルヒにむしゃぶりつた。  
「…キョン、ど、どうしたの?」  
何だ。  
「今日のアンタ、何だか凄く…あんっ、優しい」  
気のせいだ。テクが上達したんだ。  
「あっ、あぁっ…そんな風に責められたら、あたし…」  
凄い濡れてるな。そろそろいいか?  
 
頷くハルヒを見てから、俺はハルヒの中に自身の欲望を入れた。  
「あっ、あっ、あっ、あ……」  
腰を打ち付ける度に聞こえる声に興奮しながら、俺は犬のように行為に耽る。  
「やっぱり、あっ、優しい、あぁっ」  
うるさい。お前はただ快楽を享受していればいいんだ。  
「あっ、そろそろ、いきそう、」  
わかった。外に出すからな、安心しろ。……って隣に誰かいる!  
「迎えにきた」  
 
長門がいた。  
気配を感じなかったが?  
「消え去り草。アッサラームで売っていた。」  
いつから見ていた?  
「…そうだね。プロテインだね。」  
……ちょっと一発出すまで後ろ向いて待っててくれないか?  
「時間がない。でも出さなくても大丈夫、ついてきて。」  
俺は今軽装で、背中に長門をおぶって走っている。  
長門がルーラを唱えてくれないからだ。  
MP切れ?うそこけ。  
「体にたまったフラストレーションを解消するのは精行為だけではない」  
らしい。さっきまで運動したいって喚いてたのは俺だっけ。皮肉なもんだ。  
「ほら、ちゃっちゃと走る!夜が明けちゃうわよ?」  
こっちは俺の装備を持って走っているハルヒ。何とも清々しい表情で走っている。  
「やっぱ外の空気はいいわー!あんな部屋に引きこもって死ぬまでスケジュール  
が組まれてるなんて、絶対嫌!」  
うげっ、王さまって地獄だな。大体知ってるけど。  
「キョン、魔物が来たわ。逃げるわよ!」  
俺はさらにスピードを上げる。まずい振り切れない。  
「イオ」  
後ろで爆発が起きた。おい、なんで魔法使えるんだ。  
「今ので最後」  
本当か?  
「今度はほかの魔物の群れよ!」  
「イオ」  
魔物の群れに爆発が起こる  
お  
「気のせい」  
……  
その後ぎりぎりでアッサラームに着いた俺たちは、風呂に入るのも忘れてそのま  
まベッドに倒れこんだ。  
翌日、あんなに運動したのに体力は全快。俺たちは久しぶりに6人で歩いてイシ  
スを目指した。目標はピラミッドの魔法の鍵。まだ俺たちの旅は続きそうだ。  
 
 
 

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