「三つあげて欲しいのね、涼宮さんの好きなタイプの条件を」  
 昼休み。一緒に食堂に来て食べていた阪中さんが突然聞いてきた。何よそれ。  
「えっと、心理テストなのよね、これは。それでね、涼宮さんはどんなタイプが好きかなって」  
 阪中さんにしては珍しくちょっと強気に聞いてくる。頬まで赤らめて、何がそんなにヒットしているのだろうか。  
 そんな心理テストなんて全く興味は無いけれど、阪中さんの話に付き合うこと自体は興味あるので付き合うことにした。  
 と言ってもあたしの好きなタイプ三つなんて考えるまでも無い。そんなの既にクラス中の人間が知ってる内容だ。  
 すなわち。  
 
「宇宙人、未来人、超能力者。以上」  
「……やっぱそれなのね、涼宮さんは」  
 もちろん。あたしはちょっとだけ胸を張って答える。まあ、最近は特殊な属性が無くっても面白いヤツはいるって  
思えるようにはなってきたけれど。例えばSOS団のメンバーとか、鶴屋さんたちや、目の前の阪中さんとかもそうだ。  
 あたしがそんな事を考えていると、阪中さんが心理テストの質問を続けてきた。  
 
「えっと、それじゃ涼宮さんの前に宇宙人で、未来人で、超能力者で、その他いっぱいの不思議な属性を持つ人が  
二人現れたとするのね。どっちも全く一緒なのね、持っている不思議な属性は。  
 でも選ばないといけないのね、涼宮さんはどっちの人か。その時どっちかを決める、四つ目の条件って何かな」  
 
 えっと、つまりあたしの好きな不思議属性を持つ人が二人いて、あたしはそれでもどっちかを選ばないといけないと。  
「そうなのね、恋人二人はダメなの」  
 何だかいつの間にか恋人選びになってるし。そんなのは番組の最後にするものよ。  
 そう思いながら二つの黒い影を頭に思い浮かべる。球と針金で作ったいかにも子供が書きそうな人間像だ。  
 四つ目の条件ねぇ……と考えていると、やがて影の片方がどっかで見たようなヤツの姿になっていく。  
 誰だろう、これ。ああ、でも他が同じなんだったら、あたしは確かにアンタの方を選──。  
 
 
「だあああぁっ! 消えろおっ!」  
「ひゃあっ!」  
 叫び声と共に頭の上に手を回してばたつかせ、うっすらと形どっていたシルエットを振り払う。  
 何事かと周りの生徒があたしの方を見て、騒いでいるのがあたしだと確認すると、その誰もがなぁんだといった表情で  
何事も無かったかのように自分の生活へ戻っていた。  
「ど、どうしたのね、涼宮さん!?」  
 生活に戻れない約一名が聞いてくる。あ、何でもない。何でもないわ。ちょっと予定外のハプニングが起こっただけよ。  
 学食のびっくりカツ丼と共に買ったパックジュースをすすりながら、あたしは自分の気持ちを落ち着かせていた。  
 
「そ、そうなのね、それならいいけど。……で、四つ目は、何かな」  
 えっと、そう、二人のうちより面白い人を選ぶわ。折角の属性もその人が面白くないんじゃ台無しでしょ。  
 あたしが試行錯誤の末にぱっと思いついたような素振りで回答をだすと、阪中さんは突然神妙な顔つきになって考え始めた。  
 
「面白い人……難しいのね、それはちょっと……」  
 あれ、どうしたの阪中さん。そんなJJにむすんでひらいてを歌わせる方法を模索中のような顔をして。  
 それで結局、これってどんな心理テストなのよ。  
「歌は歌えないのね、きっとJJには。えっと、このテストはね──」  
 
 阪中さんが言うにはこの心理テスト、実は最初の三つの項目は特に意味が無いという。  
 四つ目にあげた項目こそが「その人が一番重要と考えている好きなタイプ」なのだそうだ。  
 
 
 一番重要と考えている好きなタイプねぇ……って言う事は、つまり。  
「だあああぁっ! 消えろおっ!」  
「うひゃあっ!」  
 あたしはさっきの影を思い出しかけ、もう一度奇声をあげてその影を振り払った。  
 
 

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