人間誰しも矛盾を抱えて生きている。その中でも涼宮ハルヒは突飛な試行回路を持ってい
るので当然矛盾点も多く抱えている。不思議に憧れつつも常識的な思考の持ち主であると
いうのがそのいい例だ。その中でも俺が今気にしているがテレビ番組についてだ。くだら
ないくだらないと普段から人一倍糾弾しているのにSOS団の誰よりも詳しく、迅速に情報を
手に入れてくる。今日だってそうだ。放課後部室に来るなり延々と自分の評価をしゃべっている。
うんざりしながら物思いにふけっていると、俺の考えを読んだかのように突っかかってきた。
「ちょっとキョン!聞いているの?せっかく偉大なる団長であるあたしが昨今のテレビ番組の腐敗
について貴重な意見を述べているというのに!」いつものようにカルトの教祖のような身勝手な理屈で
矛先がこちらに向けてくる。本格的にターゲットにされる前にハルヒの話に乗ることにした。
「ああ、すまない。ちょっと物思いにふけっていてな。それで何の話だ?」
「もう、ちゃんと聞いてなさいよ!今期始まったギャラクシーエンジェる〜んの話よ!」
「…なんだって?」
これは以外だ。ハルヒがアニメを見るタイプではないと勝手に思い込んでいたからな。
しかしよくよく考えればこれもありうる話だ。朝比奈さんに着せる衣装はどちらかと言えば
そっち向きだし、『朝比奈ミクルの冒険』のギミックもそれっぽいといえばそれっぽいといえる。
「まったくなっちゃいないわ!なんというか中途半端なのよね。ギャグとしてもシリアスとしても。
だから消化不良になるのよ。それにキャラが初期設定に固執している感じよ。前作ならば話を生かす
ために臨機応変に崩していたのに、初期設定に忠実であるために積極的に動かないの。それでまた
中途半端な印象を与えるのね。まったく前作とは比べ物にならないわ!」
「ずいぶんと辛口な意見だな。まだ5,6話なんだからこれからだろう。それに前作を美化しすぎではないか?」
「そんな悠長なこと言ってたらこのままずるずると続けていくわ。やっぱりクレームのメールとか
書いてはっきり伝えるべきなのよ!不特定多数の意見としてではなく一人の視聴者として。
…いや、意見は多いほうがいいわね…そうだみんなで個別に出すわよ!これはSOS団としてやるべきことだわ!」
…また思いつきでとんでもない事を言い出した。このまま放っておくとどんどんエスカレートして
大変な事になるだろう。だから話をすりかえることにした。
「待ってくれ、ハルヒ。そういえばちょっと前になるから前作の記憶があやふやになっているところが
あるんだ。だからその前にもう一度見直しておかないか?ほら、朝比奈さんや長門は第一シーズン
をみてないはずだしな」
「…そうね、キョンにしてはいい考えね。よし決めた!日曜日は予定変更して有希の家に集合よ!
有希もいいわね?」こっくりと無言でうなずく長門。すまない、厄介ごとを持ち込んで。
そして日曜日、長門の家にいくとそこには既にみんな集まっていた…珍奇な格好で。
ハルヒの提案で気分を高める為のコスプレだそうだ。ああ、そういえばGAは5人、SOS団も5人
なるほどね。わかる、わかる。だからハルヒはチャイナ服で朝比奈さんは花の髪飾り、長門はぬいぐるみを抱えているわけだ。
「それで、その手に持っている衣装とか軍帽とかハイヒールは何なんだ?」
「あんたのに決まってるじゃない、キョン」
とっさに古泉に助けを求めようとしたが、すでに古泉はつけ耳をぴこぴこ動かす変わり果てた姿だった。
その後、4人がかりで着替えさせられたりした事やテンションが上がってカラオケ大会をした事や実は
ロストテクノロジーで記憶と姿と声をかえられた本物だったりしたことは言うまでもない。
GAらしく当然のように投げっぱなしで終わる