金曜の放課後、俺はいつもようにSOS団の部室にいた。  
日も落ちかけた頃、ハルヒ、朝比奈さん、古泉が帰り  
部室は俺と長門の二人だけになっていた。  
帰り支度をする俺に長門が珍しく自分から話し掛けてくる。  
「私の家に来て」  
長門の家に押しかけていった事は何度もあるが、誘われたのは初めて会った時以来だった。  
断る理由は無く、とりあえずついて行く。  
長門家の客間で、出されたお茶を飲みながらたずねる。  
「またハルヒがらみの何かか?」  
「そうじゃない」  
相変わらず簡潔に答える奴だ。  
「少しずつではあるが私の中にエラーデータが蓄積してきており、  
そのせいか時折、非常に不安定な状態に陥る。しかしあなたといる時は安定する。」  
「他のSOS団のメンバーじゃなく俺だけ?」  
黙って頷く長門  
「なぜ俺だけなんだ?」  
「解らない。」  
長門に解らない事が俺にわかるはずが無い。  
「で、具体的に俺は何をすればいいんだ?」  
「できるだけ長く私といて欲しい。」  
「・・・それは泊まっていけという事か?」  
長門は小さく頷いた。  
 
長門が用意してくれた夕食(相変わらずレトルトオンリー)をとり、  
とりあえず家に連絡をいれる。本当の事は言えないので、谷口の家に泊まると電話に出た妹に伝える。  
見ると長門が布団を敷いてくれている。まずい。変な気をおこしそうだ。  
不意に携帯が鳴り、意味も無くドキッとする。古泉からだった。  
「こんばんわ。ひょっとしてお楽しみの最中でしたか?」  
電話を切りたい衝動を抑えながら答える。  
「お前の仕事はハルヒを見張る事だろ。俺らの事まで見張らんでいい。」  
「若い男女がひとつ屋根の下・・・失礼。冗談はさておき、あなた方が何をしていても  
我々は一向に構いませんが、くれぐれも涼宮さんには感づかれないようにお願いしますね。」  
余計なお世話だと言いつつ電話を切る。  
長門を変に意識してしまうので、とっとと寝ることにした。  
持っていたジャージに着替えて布団に潜り込む。  
ふと、気配を感じ、目を開けると枕元に寝間着姿の長門が立っていた。  
 
何と長門は俺の布団に潜り込み、俺の体にしがみついてきた。  
必死で平静を装うが、心臓はとてつもなく速く鼓動を打っている。  
そのとき、またも携帯が鳴った。ハルヒからだった。  
 
ハルヒは開口一番言った。  
「今どこに居る?」  
別の意味で心臓がバクバク言っている。  
「べ、別に、家に居るよ。」  
「そう、じゃ妹さん出して。」  
まさかバレてるのか?いや、そんなはずは無い。自分に言い聞かせた。  
「もう寝てるけど・・・」  
「うそでしょ?あんたの携帯、話し中だったから家にかけたら谷口ん家に泊まるって妹さんが。」  
お前はどうしてそう短気なんだ。話し中だったら少し待ってからかけ直せ。  
「そうなんだ。実は谷口の家に・・・」  
「谷口に電話したら知らないって。」  
万事休す。切り返すアドリブが思い浮かばん。ここで俺は最大のミスを犯した。  
つい助けを求めるような目で長門を見てしまった。  
俺は困るとネコ型ロボットよろしく、長門に頼る癖がついてしまっているようだ。  
長門は俺の手から携帯をもぎ取って言った。  
「私の家に二人で居る。だから心配いらない。」  
相変わらず言っていることが微妙にズレている。  
そんなことを頭の片隅で思いながら、慌てて携帯を取り返す。  
「・・・今のまさか有希?」  
「い・・・いや違うんだ。ええと、その」  
電話が切れた。  
 
とりあえず、古泉に電話して事情を説明。機関の力で何とかしてくれ。  
そうこうしているうちに、長門の部屋のインターフォンが鳴る。  
誰が来たかは出なくても判る。  
部屋に乗り込んできたハルヒは肩で息をしていた。  
無言で俺を殴り倒すハルヒ。目には涙をためている。  
「有希ッ!このバカに変な事されなかった?どうせ強引に上がりこんできたんでしょう。」  
「大丈夫。それに誘ったのは私。」  
頼むから誤解を招くような発言は避けてくれ・・・  
痛みに耐えながらそう願っていた。  
 
その時玄関から誰かが入ってくる。古泉と朝比奈さんだった。  
古泉は手にハンディカメラを持ち、ハルヒを写している。  
呆然とするハルヒに古泉は例のスマイルでこう言った。   
「実はこれSOS団が企画したドッキリなんです。」  
あとは舌先三寸、有る事無い事言ってハルヒを丸め込んでしまった。  
ハルヒは「団長を騙すなんて信じられない!あんたら全員罰ゲームよ!」  
と叫んで帰っていった。  
悔しいが古泉に礼を言う。  
「朝比奈さんにも言って下さい。寝ていたところを無理やり起こしてしまいましたし。」  
朝比奈さんは気にしないで下さいとのジェスチャー  
「しかし、助けてもらっておいて何だが、ドッキリって強引過ぎやしないか?」  
「いざとなれば、例の最終手段をお願いするつもりでした。」  
 
                            終  
 
 
 

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