「…」
「…」
今このSOS団部室こと文芸部室には2人の人間……いや、1人の人間と1人の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイスしかいない。
もちろん人間の方は俺、キョンのことであり、対有機以下略の方は長門有希のことだ。
そう、長門有希のはずなんだが……。
「…」
テーブルから少し離れた位置で本を読む姿は変わらない。いや、いつもと違うことが1つだけある。
長門の髪型だ。
ハルヒとさほど変わらない長さの髪を無理やり両側でしばっている。
長門よ、それはツインテールなのか? いつぞやのハルヒのちょんまげポニーテールの影響でも受けたのか? というより、何故突然髪型を変えたんだ?
「なあ、長門……」
「…」
俺がどうやって髪型の事について聞こうかと迷っていると、長門は突然読んでいた本を閉じて立ち上がり、お茶を入れ始めた。
本の表紙には何やら「つよきす」と題名らしきものが書いてあったが、俺は知らないタイトルだった。まあ、長門が俺の知っている本を読んでいた事なんて一度もないんだが。
そうして俺が本に気を取られていたうちに長門はお茶を入れ終わり、俺の目の前まで持ってくると、ゴトリとやや乱暴に俺の前にそのお茶を置いた。そして
「さっさと飲んで」
と言い放った。
何だ? 俺は何か知らぬ間に長門を怒らせるようなことをしたのだろうか?
もしかしてあれか? 実はちょっと自信があったその髪型を俺が褒めなかったのが気に食わなかったのか?
「早く」
「お、おう」
とにかく今は考えても仕方なかったので、長門の言うとおり出されたお茶を飲む事にした。
お茶は毒やら何やらが入っているわけでもなく、少し熱いぐらいで普通においしかった。
「…」
お茶を飲み干した俺を無言で見つめる長門。
「う、うまかったよ。サンキュー……」
とりあえずお茶の礼をする俺。
「……」
その言葉を聞いた瞬間、長門はやや早足で自分の定位置に戻る。
そして再び本を開き、全く表情を変えず視線は本にやったまま一言。
「べ、別にあなたのために入れたわけじゃない」
……意味わかんねぇよ。