「なんで私がこんなことを…」  
とミニスカサンタ姿で文句を言ってるのは朝倉である。  
SOS団でやる予定だった風船配りのバイトの人数が足りないことがわかり、  
俺が連れてきたのが谷口と国木田、朝比奈は鶴屋さん。  
古泉は誰も連れてくるなという俺の命令に従ってくれたらしく、  
長門が連れてきたのが……朝倉ってわけだ。  
 
「ねぇ、あたしと二人っきりになれて嬉しい?」  
「わけねぇだろ」  
「おっかないトナカイね。子供に聞こえたらどうするの。」  
「聞いちゃいねぇさ」  
クリスマスの人混みの中、朝倉と二人で黙々と風船を配る。  
 
「もうなくなっちゃったわね。」  
「早いな…おーい!谷口ー!国木田ー!」  
遠くにいる風船補充係にサインを送る…ん?何言ってんだあいつら。  
「もう私達の分は終わったって言ってるわ」  
さすが宇宙人。  
 
「着替えて先に二人で帰っちゃいましょ。」  
「………二人で、か…」  
 
 
更衣室に行く途中に他の組の様子を見る。  
 
 
長門トナカイと古泉サンタは…  
「もう終わったんですか?」  
「ああ…あいつのサンタが好評でな。」  
自分を指差す子供に手を振っている朝倉に目線をやる。  
「……あなたも肝の座った人ですね。二度も  
 殺されかけた相手をもう信用しているなんて」  
「あいつを信用してるわけじゃない。あいつはもう俺に危害を  
 加えることだけはしない、と言ってる長門を信用してるんだ。」  
「変わりませんよ……気をつけて下さい。"危害"と  
 見なされることをしない以外は前と同じなんですから。」  
「………」  
 
「僕が代わってもよかったんですけどね。長門さんもその方が  
 いいでしょうし…朝倉涼子には聞きたいこともありますし。」  
「そう易々と口を割るかね。」  
「さあ。」  
立ち去る時に角の生えたフードをかぶった長門と目があったが…すぐに見えなくなった。  
 
次はトリプルサンタ。やたら忙しそうなのでハルヒだけ捕まえて報告。  
 
「まだ終わらないのか?」  
「みくるちゃんが可愛いからってたくさん風船  
 押し付けられたのよ。って…あんた達もう終わったの?」  
「ああ。ついさっき……ぬぉっ!?」  
答えようとした俺の腕に朝倉が突然飛び付いてくる。  
「そ。早いでしょ。あたしとキョンくんがお似合いだったのかしら?」  
朝倉は上目使いで俺に微笑んだ後、ハルヒを一瞥。  
「………あっそ」  
まだ朝倉とは仲が悪いらしい。一方的にだが。  
「先に帰ってるからな。」  
「………」  
朝比奈さんと鶴屋さんにも手を振ってその場を去る。  
 
「…何の真似だ、さっきのは。」  
「涼宮さんの反応が見たかったの。いまいちだったかな?」  
「仕事か。」  
「あら、あなたの反応も見てたのよ?あなたは予想通りってトコ。」  
「…それも仕事か?」  
「どっちだと思う?」  
「………知るかよ」  
「ふふっ…」  
 
更衣室到着。男女に別れていてどちらも数十個の個室がある。  
男の方を覗き見ると…誰もいない。  
「誰もいないね。」  
女の方もか。  
 
「………私思ったんだけど…さっき涼宮さんから大した反応が  
 得られなかったのって、キョンくんが普段私に気が無さすぎるからだと思うの。」  
「………は?」  
「そうよ。きっとそうだわ。この理由ならあなたに  
 ちょっかい出しても大丈夫よね……ほら、いいって!」  
…話が見えないがこいつは俺に何かするつもりらしい。  
 
長門の話だとこいつはもう俺に危害を加えられないらしいが…万が一ってこともある。  
五感を研ぎ澄まし、微笑んでいる敵に対して微塵の隙も許さない。  
……緊迫。  
 
「悪いようにはしないからっ♪」  
満面の笑みで抱きつかれる。……ん?…しまった。動けない。  
 
巧みな罠にまんまとしてやられた。  
あっけなく捕えられてズルズルと女子更衣室に引きずられていく俺。  
柔らかい腕はビクともしない。これは愛の抱擁などではなく、  
どちらかといえばジーグブリーカー方面の技である。  
 
ズルズル…ガチャッバタン。  
「思い出に残ることをしなきゃね?」  
「………離せっての。」  
「そうね…」  
 
チュッ  
「ん゙!?」  
「んふ♪」  
「ん゙ん゙ーー!―――ぷはっ!」  
「キスってこうするのよね?」  
「て……め………何を…」  
体がずり落ちる。力が…入らない。何か…飲まされたのか?…  
「何をするかはしながら考えることにするわ…んっ…」  
壁を背に力なく座り込む俺に合わせて朝倉もしゃがむ。  
だらりと地面に伸びた俺の足をまたぐ朝倉の尻に勃起した俺の物が当たり…  
「…ふふっ。イヤじゃないみたいね。」  
 
唇で感じる朝倉の唇の感触…舌で感じる朝倉の舌の感触…  
ズボンごしに伝わる朝倉の尻の感触…  
その全てが俺に快楽しかもたらさない。それが恐ろしい。  
この快楽を受け入れてしまったら…俺は…  
「さあ…私を受け入れて。」  
助けてくれ……長門……ハルヒ……  
 
「そこまで」  
「…あら…」  
朝倉の動きが止まる。  
「何か用?長門さん。」  
 
「これはちゃんと許可も取ってるのよ?」  
「私が許可しない」  
「ふーん…私とキョンくんが仲良くしてるのが気に入らないのかしら。」  
と言ってぬいぐるみを扱うように俺を抱き寄せる。  
「……あなたがまた異常動作を起こさないとは限らない。」  
「あなたもでしょ。」  
「私に従うべき」  
…空気が凍る。  
 
「わかったわよ…まあいいけど。目的は達成したし。  
 私の気持ち伝わったでしょう、キョンくん?」  
帰るつもりなのかブーツを脱ぎ着替えを手に取っている。  
「………何が気持ちだ。仕事だろ」  
「理由をつけてキョンくんともっと親密になりたかったのよ。」  
「黙れ宇宙人」  
力の入らない体でうなだれたまま答える。  
「そう…こんなになってるくせに。」  
「…ぐ……」  
赤いスカートから伸びた白い足で股間をつつく朝倉。  
情けないほどに膨張したそれは突然の刺激にビクンビクンと反応する。  
 
「続きはまた今度ね。」  
「させるかよ」  
「もう、恥ずかしがり屋なんだから。じゃあね。」  
いつの間にか着替えを終えていた朝倉は  
普段通りの笑みを浮かべてその場から去って行った。  
「…いつも悪いな。」  
「………続き」  
「…え?」  
「したい?」  
 
<終わり>  

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