小ネタ・非エロ  
 
涼宮ハルヒのせんじょうパーティー  
 
ハルヒは北○鮮船の臨検に挑む米軍の様な勢いでドアを開けた。  
ハルヒよそのドアはMILLスペック対応品じゃないんだ、もっとそっと開けないと  
ヒンジが飛ぶぞ  
 
手に持ったチラシをヒラヒラさせながら  
「クルージングよ、クルージング!」  
と叫んでいる。  
 
クルージング  
俺は反射的に古泉の顔を見た。  
よせそんな気色の悪いものに関わりたくない  
 
「なに馬鹿なこといってるのよ、そんな古い映画の事じゃなくて、船よ船!」  
解ったから耳元で怒鳴るのはやめろ、クルージングなんていう金持ちの道楽がどうして  
庶民の俺たちの処に来るんだ、一年近くちんたら船に乗ってるだけで数千万掛かって、  
更にパーティーだの何なのに衣装を取っ換えひっかえやってその衣装代やら宝飾品代  
やらで億単位の金が要るんだぞ  
 
別にQE2ndで世界一周をしようという訳じゃないのよ。  
「クルーザーで沖に出てパーティーするの!」  
クルーザーだと!QE2ndで世界一周する方が遙かに安いぞ、第一日本に限らず民間が  
持っているものじゃないだろう  
 
まあまあ、涼宮さんがクルーザーと言っいるのは大きめプレジャーボートの事ですよ、  
いくらなんでも  
本物のクルーザー(巡洋艦)な訳ないじゃないですか、セイルボートをヨットと呼ぶのと  
同じ感覚ですよ。  
 
帆架け舟をヨットと呼ぶ感覚が信じられん俺は、プレジャーボートはプレジャーボートで  
しかない無いと思うのだが…  
それよりもハッキリさせて置かなくてはならない事項がある。  
ハルヒよおまえの持っている「格安船上パーティー」のチラシをよく見ろ、その値段  
だったのは先週の金曜日までで、先週末からはその下の方に米粒の様な字で書いてある  
値段になっている、俺たちの小遣いでどうこう出来る金額じゃない。  
目を皿の様にしてチラシを見直す。  
「なによこれ詐欺じゃない!」  
俺もそう思うが、家族総出で勇んで出掛けて告げられた値段を聞いてすごすごと帰って  
屋台のラーメンを喰ったなんてそんな小っ恥ずかしい話が出来るかよ  
 
チラシに書かれた値段を確認したハルヒは、大きなため息をついて座り込んだ。  
テンションが上がっていた分落胆も大きかった様だ。  
古泉の携帯が鳴った。  
バイトと称して中座する古泉に付いて出た俺はあれかと訊くと古泉はあれですと答えた。  
「船上パーティーはこっちで何とかしますのでフォロー頼みます」  
気を付けて頑張ってきてくれ  
古泉を見送ると、部室に戻りまだぶつくさ言っているハルヒに、古泉が伝手を使って  
船上パーティーの用意をする旨告げた。  
「クルーザーでせんじょうパーティー」  
現金なもので、目をランランと輝かせて高らかに宣言したハルヒに一抹の不安を覚えつつ  
その日を迎えたのだった。  
 
週末になり、指定された時間の30分前に集合場所の桟橋に行くと  
「キョン!遅い、罰金」  
おまえなー、もっと他に言うことはないのか  
「本日ご用意した船はあちらです」  
古泉が指さした方向には、タイコンデロガ級のイージス巡洋艦が…ではなくその手前に  
係留されたプレジャーボートがあった。  
機関の故障で緊急入港したとかで単なる偶然だろうが、ハルヒならやりかねないだけに  
心臓に悪い  
 
近寄ると例によって多丸兄弟がホスト、新川さん・森さんが世話係として配置に付いている。  
ハルヒを先頭に、巷で言うところの大型クルーザーに分類される船に乗り込む。  
そこそこ船体が大きいので目立たないが、普通のプレジャーボートなら水上の見張りレーダー  
と船舶無線のアンテナがちょこっと付いているだけのはずが、マストに載っているアンテナの  
類が大きく数も多いそう思って観てみると、ベンチや船具入に偽装されているが本来の目的は  
違う様である。  
 
おい古泉、この船は…  
古泉は皆まで言わなくても良い言わんばかりに俺の言葉を遮り、  
「バレましたか、一応機関に所属する船ですからそれなりの装備はしています」  
「しかし、今日はそっちの方のシステムは切ってありますし、起動するにはパスワードやら  
生体認証が必要ですから心配はありませんよ」  
ほんとに大丈夫か?、相手はおまえたち機関が信仰する神、涼宮ハルヒ様だぞ  
 
キャビンに荷物を置き多丸兄弟に船内を案内してもらう、その間に船は桟橋を離れ一路沖に  
向かった。  
早速ハルヒはブリッジに上がり新川さんにもっとスピードは出ないのかと訊いていた。  
「航路内のため一般の船舶や漁船に合わせた速度で航行しています、もっと沖に出れば  
スピードを上げることが出来ますよ」  
「ねえ、これは何?」  
「それは、レーダーの表示器です、茶色く見えているところが陸地で青白く光っている  
のが船です」  
「そのモードでは見難いでしょうから、ナビゲーションモードに切り換えます」  
新川さんが操作をすると普段見慣れたカーナビと同じ表示になり、他の船を表す光点は  
船の形になった  
「こうすれば、地図・海図と照合しやすいですし、他の船の動きも判ります」  
ピー、電子音が鳴り、女性の合成音声で右からの船が手前を横切ろうとしている旨警告した。  
新川さんは減速し先に行かせた。  
「どうして、先に行かせたの?、左方優先でこっちが先に行けるんじゃないの?」  
前を横切られたのが何となく面白くない様子のハルヒが訊く  
「左方優先なのは陸上です、海上交通では右方優先になります、ちなみに陸上でも左方  
優先なのは日本とイギリス連邦だけです、何故だか判りますか?」  
ハルヒは少し考えると  
「わかった、右方優先なのは右側通行だからよ、船は世界中何処でも行けてしまえるから  
万国共通じゃないと駄目なんだ」  
「正解ですよ、船舶免許の試験には必ず出ますから覚えておいてくださいね」  
 
多丸兄弟と当たり障りのない世間話をしていると、森さんがお茶の用意を持ってデッキに  
上がってきた。  
「お昼にはまだ間がありますので少しつまむものを用意しました」  
極上のクィーンマリーと一緒にいただくサンドイッチは絶品であった。  
乗船する際、紅茶・コーヒーの好みを訊かれたのはこのためだったのかと、思いに浸って  
いると、きつい香料のにおいが漂ってきた、誰だアールグレイをホットで飲んでる馬鹿は  
と振り返ると、ハルヒであった、アールグレイはアイスティー用に屑葉に香料を混ぜて  
作るの知らないのか?  
「えーそうなんですか」  
朝比奈さんも同じものを飲んでいた、良いんですよ本人が美味しいと思うのが一番なんです  
から…  
 
長門はと言うと相変わらず本を片手にしていたが飲んでいるものは、ロシアンティーと呼ぶ  
のが憚れる様な代物であった。  
長門よ美味いか?  
「ユニーク」  
そりゃ、ジャムの中に紅茶を注いだとしか表現のしようのないロシアンティー擬きは  
ユニークな味だろうて  
 
お茶の時間がすむと、ブリッジに上がったハルヒは速度を上げられる海域に出たというので、  
「最大せんそく」  
と叫んでいた。  
「アイ・マム」  
愚直にも新川さんは返事をするとスロットルのノッチを上げた、するとクルーザーは途端  
某国の不審船顔負けのスピードで疾走しだした。  
流石に十分もすると飽きたのと速いだけに揺れも大きく足下がおぼつかなくなり元の速度に  
戻すよう頼んでいた。  
「両舷半速」  
新川さんは指差呼称しながらスロットルを操作している。  
 
ハルヒはと言うと多丸さんにCDCは何処にあるのか訊いていた。  
ハルヒよ、民間の船にCDC(戦闘指揮センター)が在る訳無いだろう  
「古泉君は在るって言ってたわよ」  
なに!?、古泉の方を見ると  
「この船にはCDCが在ると確かにいいましたよ、コンパクト・ディスク・キャビネットがね」  
そんなややこしい名前で呼ぶな!  
「荷物を置いた部屋の隣の部屋にありますから元の場所にさえ返してもらえれば自由に使っ  
てくださって結構ですよ」  
多丸さんの言葉に礼を言ったハルヒはキャビンに降りていった。  
しばらくすると、電子音が鳴り船内各所から機械が動き出す聞こえ始めた。  
新川さんがあわてた様子で  
「戦闘用AIが起動している、対空レーダーもだ、CIWSが待機モードに入ったぞ」  
「CDCだ、誰かがCDCに入ってコンソールを立ち上げたんだ」  
俺と古泉はキャビンに走った、古泉よハルヒをなめてたんじゃないのか?、あいつなら  
こういう事平気でやらかすと、判っていただろうに…  
「いやー全くです、弁解のしようがありません」  
俺たちがCDCに入るとハルヒは無邪気にも  
「このゲーム、コンピ研の奴よりよっぽど面白そうよ」  
といいながらコンソールをいじくり倒していた。  
「敵発見!、攻撃」  
ハルヒが叫ぶと、呆然と立ちつくす俺たちの横の壁の中から圧縮空気でキャニスターが打ち  
上げられる音がしたかと思うとロケットモーターに点火する音と衝撃が襲ってきた。  
「高速飛翔体接近!、CIWS射撃開始」  
合成音声が告げるとキュイーン、ブォーゥォーン、カキューューン、カランカランカランと  
一連の音が船体を響かせた。  
「ハルヒ、そいつはゲームじゃない、コンソールから離れろ」  
俺のただならぬ剣幕にハルヒがひるんだ、その隙に古泉が当て身を喰らわし、新川さん・  
森さんがコンソールに取りついて制御を取り戻すと間一髪旅客機に当たる前に対空ミサイルを  
自爆させた。  
 
外に出てみるとファランクスの攻撃を受けた海鳥の死骸がミンチとなって船体に降り  
注いでいた。  
「ふぇーん」  
声がした方を見ると朝比奈さんが海鳥ミンチを頭からかぶり卒倒するところだった。  
長門は気を失った朝比奈さんを横にすると、頭の上にわらじを載せた。  
長門よ、いつもそんなもの持ち歩いているのか?  
 
気絶した朝比奈さんをキャビンに入れ森さんに着替えを頼むと、俺たちは多丸兄弟の協力の下、  
ミンチを清掃した後、長門を拝み倒し、レーダーのエコーだけを日本海に向かって走らせてもらい、  
不審船の幻影を追うことになる海自と海保の皆様に心の中で謝っておいた。  
 
ハルヒと朝比奈さんは、香り付けに紅茶に落としたブランデーの量が多かったのと軽い  
熱中症で倒れたことにして、口裏を合わせることにした。  
「うっうーん」  
気が付いたか?、頭は痛くないか?  
「キョン!、キャビンにあった、やったらリアルなテレビゲームは?」  
大丈夫か?、そんなものある訳無いだろう、大方夢でも見たんじゃないのか?  
「夢!?、そうかもしれないわね、夕べ目が冴えて眠れなかったから、乗組員が全員女性の  
護衛艦のアニメ観てて一寸寝不足気味だったのは事実ね」  
やれやれ、アニメかよ  
 
 
涼宮ハルヒの戦場パーティー  
 
糸冬  

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