西日が差し込んでくる校舎の最上階から校庭を見下ろしていた。  
 テニスコートとプールには下校時刻も間近に迫っているにも拘わらず長い影を忙しなく動かして熱心に部活に勤しむヤツらの姿がある。  
 相変わらずご苦労なこった。皮肉に思わず口の端が歪む。  
 顧問にうまい具合に担がれて額に汗水垂らして必死に自分を追い込んでるヤツらは正直失笑モノだぜ。  
 うちの学校のクラブ活動のレベルなんぞ多寡が知れている。せいぜい県大会でやっとこ入賞が関の山ってところだろう。  
 ここから大声でヤツらに教えてやりたいくらいだ。  
 そんな履歴書にもまともな書けないような糞にも等しい実績を残して何になるのか一度その落ち着きのない身体を休めて冷静に考えてみろ。オマエらの費やした時間は、実質的にゃ顧問の給料に上乗せされる小金に化けてるだけだ。ってな。  
 
「ぁ、ぁぁ、ぁん、んんっ」  
 
 学校は社会の縮図だと言われるが正にその通り。こうやって客観的に視ることができるようになって改めて実感したね。  
 身分制で下位層に位置する生徒は上位層の教師によって管理され、権利を制限されて隷属させられている。  
 やれ全国模試を受けに行けだの、やれ大会での記録を残せだの、一見自己研鑽のためと思い込ませて結局生徒は学校のメンツや教師の成果のために扱き使われているに過ぎない。  
 ただ、何にでも例外ってモンがあって生徒の中にも『特別』な存在がいる。そう、俺みたいにな。  
 俺は北高の生徒会長だ。  
 高校の生徒会長の分際で選民意識に耽って偉ぶってんじゃねぇってか。  
 まぁ、待てよ。プロフィールにゃ続きがあるんだ。ここ半年余りで色々あり過ぎたんでちょいと長くなるがな。  
 去年の選挙戦で当確候補を蹴落として当選を果たした。降って湧いたように組織ぐるみの談合請負と裏工作によってな。  
 この辺で察してもらえると思うが俺はワケアリの生徒会長だ。だから歴代の生徒会長とは性質も権限も根本からして異なる。  
 
 知ってたか? 俄かには信じ難いハナシだがこの学校には陰謀があるんだぜ?  
 学校がとある機関によって統制されていると言った方が分かり易いか。  
 その陰謀ってのがこれがまた笑えるくらいに予想の斜め上を行く内容なんだがそれはまぁ今は置いておくとしよう。  
 ハナシを元に戻すと、俺はそのとある機関によって祭り上げられた存在であり、生徒会長を演じる対価として機関の後ろ盾で少々の我侭くらいなら教師どもの妨害を受けずにまかり通っちまう。  
 とりあえずこの時点で、まぁ『特別』とはいかなくても少なくとも『特殊』だとは思わないか?  
 
「ぁぁ、ぃっ、ぃぃっ」  
 
 去年の夏休みも終わろうかとする時期に機関が俺に初めて接触してきたあの日のことを思い出す度に噴き出しそうになる。墓場まで何度でも楽しめる極上のネタだ。  
 あんときゃ思わず異世界に足を踏み入れちまったのかと自分を疑ったくらいに連中のオファーはイカレていた。  
   
 「長身で鋭角的な雰囲気を持つ人物像が我々の推薦する生徒会長として相応しいんです。従って容姿最優先で選ばせてもらいました。ああ、自己紹介が遅れましたね。一年の古泉一樹と申します」  
 
 突如眼前に現れたこましゃくれた一年のガキが微塵も人を納得させる要素のない奇天烈な内容を掲げて真顔で説得ときたもんだ。表情を顔に出さない俺もさぞかし間抜け面をしてたことだろう。咥えてたタバコがポロリと落ちたのがその証拠だ。  
 初めは頭の大切な神経が捻じ切れた連中による性質の悪い冗談かと思って取り合わなかった。当然だろ。ただあんまり何度もしつこく食い下がってくるもんで鬱陶しさのあまり、  
 
 「できるもんならやってみろよ。まずは推薦からな」  
 
 と口走っちまったのが歪の発端だ。成績は下の上、遅刻やバックレの常習犯といった俺の素行じゃまともに推薦も通らないとタカをくくっていたが機関の力を甘く見過ぎていた。  
 
 いや、それ以前にこの段階では機関そのものの存在を疑っていたか。  
 一週間後、校内の至る所に貼り出された候補者一覧の会長の蘭内に俺の名前が連なることとなって、俺はようやく機関とやらの存在を認め始めることになる。  
 
 「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、んっ……、ゃぁっ、もっと」  
 
 それからは雲の上を歩くような現実味の乏しい展開がトントン拍子に進んだ。面白半分暇つぶし半分にヤツらに付き合ううちに、見事に古泉の口車に乗せられていったってワケだ。  
 成績の改竄、風評の操作、選挙活動にためのイメージ作り、演説原稿の作成、票の買い取り等々、機関の暗躍はあらゆるところに及び、俺は選挙ごっこをやってるだけで気づけば当選を果たして本当に生徒会長の座に就いていた。  
 いざ当選してマジに生徒会長をやるなんて勘弁被りたかったが、機関は生徒会長としての面倒な事務処理や雑務は全て代行し、大学推薦時の内申を保障するという餌で最終的に俺をまるめこんだ。  
 小さい人間だと思うか?  
 俺は本気でワルになるつもりはないがまともに勉学や部活動に励むつもりもない半端モンの不良だ。分相応ったヤツだ。  
 半端モンにとって楽に内申を稼げるに越したことはない。ちょうど年金みたいなもんだ。  
 その上職権乱用もある程度までは黙認されるっていうおまけまでついてきた。  
 ここまでくれば蹴る方がどうかしてるだろ?  
 真面目に人の上に立つなんて柄じゃねぇ。だが、自分の思うように学校ごと操れるとすれば悪くない。  
 毒にも薬にもならんような存在価値の無い前生徒会の活動内容にもうんざりしてたとこだ。ちょうどいい。  
 就任早々に乗り気になった俺は、副会長以下の役員をすべて俺の息がかかった人間で固めた。  
 以上の経緯を経て北高第三十六代生徒会は前代未聞の悪童(ワルガキ)による悪徳傀儡集団となったってワケだ。  
 楽して面白おかしく勝手気儘に生きるのが俺のモットーだ。お誂え向きだろ?  
 
 「ぁうっ」  
 
 パァンッと乾いた音が暮れなずむ生徒会室に響き渡る。ったく、ちょっと動いてやったからって調子に乗って休んでるんじゃねぇよ。  
 
 視線の下で揺れる小ぶりな白い尻を平手打ちすると、弾かれたように蜜壷が収斂して息子を締め付けてきやがった。  
 
 「だ、だって、おく……、奥がィィのにぃ」  
 
 背中越しに振り返った顔は涙目に潤んで羞恥と快感で桜色に染まっていた。いつもの清楚に澄まして書記を務める喜緑江美里の影などどこにもない。そこには完全に行為に没頭した雌の表情だけがあった。  
 顔を上げるな、下から見えるだろうが。  
 
 「やんっ」  
 
 違和感のないように上半身の動きを最小限に留めてウェーブの掛かった柔らかい頭髪を少し乱暴に押さえ込んだ。それだけで悦ぶように膣内が蠢く。  
 さっきの平手打ちの反応といい、やっぱり正真正銘の真性のマゾだなオマエは。  
 
 「やぁ……、い、言わないで」  
 
 カァッと頬に差した朱の濃さを増しながらも、俺の言葉などお構いなしに喜緑は快感を貪るように自分で腰を前後に揺らし始める行為に没頭する。  
 
 「あ、ああんっ、き、きもち、いいっ」  
 
 水曜日と金曜日、週に二回の生徒会活動は喜緑江美里との性行為によって締められる。ここ数ヶ月の恒例行事だった。  
 生徒会就任後、俺が手始めに行ったことはとりあえず好みの女子生徒犯すことだった。  
 職権乱用の基本ってヤツだ。  
 今までせいぜい遠くから眺めて視姦し、妄想の中で裸に剥いて自慰行為のオカズにするのが精一杯だった女を問答無用で好きなようにできるんだぜ?  
 理性の箍が外れたように本能の赴くまま食い散らかしまくった。  
 喜緑との今の関係の構築はコイツが俺の毒牙にかかったが馴れ初めになる。人生なにがきっかけになるか分からんモンだぜ。  
 
 断っておくが俺は決してガキ臭いのは趣味じゃなかった。過去形なのがまたミソなんだが、とにかくあの時犯したのも偶然二人で残ってた時に単に俺が溜まってたからだったことは確かだ、と一応自己弁護しておくことにする。  
 それまでも当然生徒会一員としての面識はあったが、喜緑はいささか幼さの残る外見とは裏腹に落ち着いた清純派で面白みの無さそうな女といった認識でしかなかった。  
 全体的に見れば、まぁ、美少女と呼んでも差し障りの無い程度に整っていることは確かだが。  
 しかし例によってこの俺の気まぐれが更なる歪を引き起こすこととなる。  
 強引に襲ったはいいが、このシチュエーションがコイツの真性Mの本性を覚醒させる引き金になっちまった。そして、お返しとばかりにコイツは俺にガキ臭い女を弄ぶ特殊な性癖を刷り込んでくれやがった。  
 端的に言えば身体の相性が良かったことになるが、それ以来処女の癖に俺の息子が気に入った喜緑は俺の性奴隷となり、俺は喜緑に溺れていった。  
 ここまでは、……まぁ一万歩譲って現実にあってもおかしくないギリギリの範疇だろう。  
 ただコイツは更にブッ飛んだ裏の顔を持っていやがったのさ。  
 っと、ハナシの途中だが先にフィニッシュといこうか。  
 最近じゃすっかりこなれて絶妙の膣圧と腰の動きで俺を愉しませることを覚えてきた。  
 少し癪だがこのままじゃ息子のコントロールもままならん。  
 俺は手早くブラインドを降ろして生徒会室を外部から視覚的に遮断すると、喜緑の細い腰を掴んで本腰を入れてピストンを開始した。  
 
 パンッパンッパンッパンッ  
 
 「あっ、ああっ、ふっ、いっ、いいのっ、激しくっ、してぇ」  
 
 小ぶりな臀部にリズミカルに腰を打ち付けると、喜緑の声のトーンが引き上げて、髪を振り乱して悦んだ。  
 突き上げる度に俺の息子の頭が子宮口をコツコツとノックする。ストロークを長くするよりも小刻みに深くするのがコイツのツボだ。  
 
 くちゅ、くちっ、くちゅくちゅ  
 
 快感に応えて分泌が促進されたのか、蜜壷は粘性の高い愛液でトロトロだった。力に任せて雑に腰を打ち付けると溢れ出して割れ目から少量の雫が跳ね飛ぶ。  
 
 アソコから大量の涎垂らしてヨガってんじゃねぇよ。おら、いつものヤツで俺を悦ばせろ。  
   
 「ああっ、あんっ、は、はいっ、……んんっ」  
 
 耳元で囁いてやると、喜緑は羞恥心からみるみるうちに耳からうなじにかけて朱に染め、一拍おいてから力み始めた。眼下の菊座が窄まり、今までどこに隠れてたんだと疑うくらいの夥しい襞が膣内で暴れる俺の息子を這い回る。  
 クッ、あいかわらずすげぇ名器(モン)もってやがる。  
 いわゆるミミズ千匹ってヤツだ。これをやらせると病み付きになりそうな快感が得られるのはいいんだが、その代わりに一気にこっちの余裕がなくなっちまう。  
 息子から精液が搾り取られているような錯覚に急激に射精感が高まる。  
 俺はラストとばかりにペースを引き上げた。  
   
 パンパンパンパンパンパンッ!  
 
 「あ、あ、あ、あっ、ああっ、ダメッ、ダメェ」  
 
 熱くて狭い蜜壷の中で息子が翻弄される。膣内は激しいピストンでめちゃくちゃに攪拌されてもうデロデロになっていた。  
 充血したワレメと肥大したクリトリス、息子に泡立って纏わり付いた愛液が網膜に飛び込んでくると異常に昂ぶる。  
 だめだっ、もう射精るっ。  
 快感がピークに達し、終わりが近いことを悟りながらも俺は身体を揺らしながら睾丸から熱い塊がせり上がってくる感覚に酔いしれた。  
 
 「イク、わ、わたしイクイクのぉっ、イクイクイクイク―――ッ!」  
 
 くっ!  
 
 喜緑のその言葉を待って堰が切れたたように射精が始まった。  
 
 ビュルビュルル、ビュクッ、ビュクッ!  
 
 「やああああぁぁぁぁ――――――――――――!」  
 
 俺はやっとの思いで最後の一突きとばかりに腰を打ちつけ、最奥にスペルマをブチ撒けた。膣内の襞のうねりに連動するように精液が断続的に吐き出される。  
 
 ビュクン、ビュクン  
 
 「……ああっ、っつぅ……」  
 
 毎度のことだが、他の女とするときの二倍くらい射精してるんじゃないか。  
 そんな錯覚に陥るくらいの精液が子宮口を叩きつけ続けた。  
 膣内がわななく様に痙攣すると喜緑は糸が切れた人形のように脱力し、ずるずると壁際に伏せこむ。  
 っと、あぶねぇ。床にカオから落ちるところじゃねぇか。  
 俺は咄嗟に喜緑の背後から奥襟を掴むと、上半身を床にゆっくり横たえた。  
 ったく、こっちもいっぱいいっぱいだってのに面倒をかけさせやがる。  
 
 はあっ、はあっ、はあっ。  
 
 完全に上がった息を整えようと喘ぐが、喉もと過ぎればなんとやら、失神した喜緑を尻目に程なくして平静に戻った。  
 手早く着衣の乱れを直し息子にご退場を願い、もののついでにめくれ上がった喜緑のスカートを無造作に直した。  
 あとは……、喜緑の片足に下着が引っかかったままだ。抜き取って手に取るとグショグショだ。  
 挿れる前にパンティーの上から散々いじくり倒して焦らしまくったからな。  
 その辺に転がってたコンビニの空き袋に突っ込んでから喜緑の鞄にねじ込んでやる。  
 
 最低限の体裁を繕ってから俺は一息つくために、タバコに火を灯した。  
 カーテンを少し開けて外を見るといつのまにか西日が引いて闇が迫っている。日は大きく傾き、ここからはもう確認することはできない。  
 程なくして下校の時刻だが、タバコを三本くらい吸い切るくらいの余裕はある。焦ることはない、もう少しゆっくりしていこうじゃねぇか。  
 俺は机に浅く腰掛けて煙を深く吸い込んで気分を落ち着けた。  
 さて、中断してたハナシに戻ろうか。  
 どこまで話したっけか、一度頭の中を真っ白にリセットしたせいで記憶があいまいになってるが、喜緑の間抜けな寝顔を見て思い出した。  
 そうそう、コイツの正体のハナシだったな。  
 正体なんてまたまた大仰な過大表現だと思うだろ?  
 だが、気まぐれで犯した女生徒が実は宇宙人だったらどうだ。これ以上とないくらいにハマるとは思わねぇか。  
 情報統合思念体。  
 宇宙には人類とは違って実体を持たずに知的活動を行うそんな名称の存在がある、らしい。  
 喜緑はそんな概念的な存在の対人コミュニケーション用ヒューマノイド。つまり最も分かりやすく言えば宇宙人ってことだ。  
 俺の女になってからコイツがこれを明かしたとき、新興宗教の色恋勧誘に引っ掛かったちまったのかと凹みかけたが、ものの数分で俺は喜緑の存在を認めざるを得なくなる。  
 目の前にあった机を飴細工のようにお馴染みの黄色い熊のぬいぐるみに変え、無邪気に抱きしめてみせたんだからな。  
 テレビの向こう側のハナシならいざ知らず、こんな現象は現代科学では到底説明できそうにない。  
 通常ならそんなことが目の前で起ころうものならパニックになるのが普通なんだろうが、その時の俺は自分でも驚くほど事態を冷静に飲み込んでいた。  
 機関の登場がうまい具合に緩衝材になっていた。  
 常軌を逸した組織が学校に介入してる時点で俺の住む現実世界はすでに狂ってたのさ。そう理解っつーか、観念するとなんとなく冷静を保つことができた。  
 針の進む速度が狂った時計がさらにおかしくなったとしてもなんら実害はないだろ。それと似たようなモンだ。  
 
 一本目のタバコをもみ消すと、すぐに二本目を咥えて紫煙を燻らせる。  
 以上が無限の能力を持つ喜緑江美里は俺の配下となった顛末だ。俺が望むことはなんでも喜緑が叶える。  
 現に俺の失脚を目する前生徒会残党の隠密活動を喜緑の不思議な情報収集によって全部筒抜けにして完全に潰してやった。好き勝手豪遊して使い込んだ予算も喜緑に補填させている。一体どっから金を引っ張ってきてるのかは知らんがな。  
 要するに、だ。喜緑を従えるまでは俺は所詮機関の操り人形でしかなかく、当然興じる戯れにも限界があると古泉に釘を刺されていたワケだが、今となってはそのリミッターは完全に取り払われた。  
 俺のバックには万能の宇宙人がついている。その気になれば世界を掌握することだってできるかもしれないくらい『別格』の存在となり得たってことだ。  
 『特殊』にして『別格』、たらたらと長くなっちまったが、これが俺が『特別』たる所以だ。  
 女とヤって道が切り拓かれるなんてまるで井原西鶴の好色一代男のような展開だろ?  
 正直大歓迎だね。それというのも俺には次のターゲットがある。  
 涼宮ハルヒ。  
 学校で文芸部を乗っ取ってSOS団なるワケの分からん活動をやってる変人女。  
 同時に機関と情報統合思念体の共通注目人物でもある。  
 つまりはここ半年余り俺の周りで起こった歪みはコイツが起点となっているってことだ。  
 こんな小娘一人に振り回されてるなんて馬鹿馬鹿しいハナシだがな。  
 生徒会長の人物像を涼宮の趣向に合わせるために機関は莫大な金と労力を割いて俺を擁立し、この女の動向を見守るためにわざわざ宇宙の彼方から派遣の宇宙人がやってきている。  
 これだけであながちこの女の存在がタダモノなんじゃないことくらいは分かる。  
 だが俺が興味あるのはそんな水面下で繰り広げられる謀略やSFのストーリーなんかじゃない。俺の興味は涼宮ハルヒ自身にある。  
 つい一時間ほど前にヤツは生徒会室のドアを蹴破って乗り込んできやがった。  
 間接的ではあるが呼び出したのはこの俺だがな。  
 そこで初めて顔を付き合わせたときの眩暈すら覚えるような衝撃が脳裏に浮かんでくる。  
 後数年して化粧を覚えて洒落っ気が出てくれば間違いなく掛け値なしの美人になるんだろうが、今はまさにその発展途上で垢抜けない乳臭さがプンプンしてやがる。  
 
 俺の真ん中やや低めの新ストライクゾーンを射抜く絶好球だ。  
 そのあどけなさの抜け切らない外見に似合わず力強さと生命力で満ち溢れた双眸を引っさげて、怯みや怖気など微塵も感じさせない尊大な態度で真っ向から俺に挑んできやがった。  
 ここだけのハナシ涼宮の面構えを見てるだけで勃起しそうだった。  
 あんとき俺は何食わぬ顔をしてたが、気を逸らして息子を宥めるのにいっぱいいっぱいだったんだぜ?  
 強気で澄ました女の面の皮一枚下を剥いでやりたいと思ったことはないか?  
 サドっ気のあるヤツなら理解できるはずだ。  
 自由を奪って陵辱し、尊厳を踏みにじってめちゃくちゃに弄んでやったら一体あの自信満面の表情がどう歪むのか。  
 まだ見ぬ涼宮の屈辱に塗れて泣き腫らした顔や快感に溺れて淫欲に呆けた顔を想像するとそれだけで武者震いがする。背筋がゾクゾクした。  
 俺にとって涼宮ハルヒはガキっぽくてサドっ気をそそる最高の獲物だ。  
 滾る気持ちを煙で落ち着けようとして我にかえる。  
 タバコはとうに燃え尽きて朽ち、いつの間にか下校を知らせるフレデリック・ショパンの別れの曲の旋律が漂っていた。  
 ふっ、少し妄想が過ぎたようだな。  
 俺は腰を上げると、窓際でまどろんだままの喜緑に歩み寄る。  
 おら、いい加減起きろ。鍵閉めて閉じ込めるぞ。  
 靴のつま先で喜緑のわき腹をつつくと、寝ぼけ眼をこすって喜緑が身を起こす。  
 
 「ん、ん〜……」  
 
 全く人間臭い宇宙人もいたもんだ。  
 
 「さっきのハナシ、忘れてないだろうな。一週間以内に仕掛けるぞ」  
 
 ぐずぐず留まっている時間はない。俺は喜緑の手をとって引き上げようとする。  
 
 「……ふふっ、ちゃんと分かっていますよ。会長」  
 
 さっきの蕩ける様な淫らな姿はどこへやら、書記の顔に戻った喜緑はコスモスのような可憐な笑みを湛えて応える。  
 そう、コイツとなら俺は何だってできる。  
 不老不死と巨万の富も望めば手に入るんだろう。だが、なんでも出来るのになにも変わらない安定を手に入れるのは莫迦のやることだ。好きなものを好きなように変えてやりゃあいい。  
 人間だけで構成されている機関なんぞ最早恐れる以前の鼻クソみたいな存在だ。  
 さっきの長門という女生徒も喜緑と同じ宇宙人だそうだが、喜緑が付いていれば互角にやり合える。  
 涼宮ハルヒに手を出して世界がどうなるかなんて俺の知ったこっちゃない。どうにかなるんならどうとでもなればいい。  
 興味の対象はただの一点だけ。  
 
 俺は涼宮ハルヒを蹂躙する。  
 
 日の光の失われかけた昏い生徒会室で、喜緑と二人視線を交わして立ち尽くす。  
 別れの曲後半部の激情に荒れ狂うピアノの旋律がやかましいくらいに響き渡っていた。  
 

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