「漆器に限らず、生産物には価値を決める為の何かしらの指標が必要。  
 食物なら生産地、生産環境、生産者。美術品なら作者、保存状態、希少価値。  
 そして、そういった第三者の視点で見た ”価値” を、そのものの価値とする人もいる  
 主観ではなく、客観的な評価を重視するのも一つの手段」  
「…それが、俺がお前の部屋に呼び出されたことと何の関係があるんだ?」  
「情報総合思念体は私に対して、第三者の評価を求めてきた。インタフェース間での相互評価では  
 限界がある。無関係な人間の評価が必要。情報総合思念体に関係が無く、私を一番知っているのは、  
 あなた」  
 
 このヒューマノイドなんちゃらにも、上司の査定というものがあるらしい。世知辛い世の中になったもんだ。  
現場は現場のやり方というのがあるだろうに。評価が悪いと給料が下がったりするのだろうか。  
 しかし俺の主観を差し引いても、この地球なんて辺境に出張してきているこいつは、間違いなく  
給料以上の頑張りを見せてくれている。俺が上司なら全部に十点満点をつけてやるね。  
「わかった、任せろ。お前がもっといい評価を貰える様にお前の上司に訴えてやる」  
 それで、評価ってのはどうすればいいんだ? 記入用紙があるのか? それともマークシートか?  
「地球上の知的生命体からの信頼度がそのまま評価となる。活動には信頼が最も重要。  
 一定時間、この部屋内のログをとる。あなたはじっとしているだけでいい」  
 信頼か。長門にやれって言われれば、空だって飛ぼうとするし、湖の水だって飲み干そうとするさ。  
フォローがあると信じているからこそできることだがな。  
 
 …ってナガトサン? 何故にそんな薄着に? というか現在進行形でクロスアウト中?  
「色、艶、手触り、使用感は実際手に取ってみないと分からない。隅々まで知ることが不可欠。  
 また、見たり触ったりしているとき、満足感と充足感を得られるものが本物」  
 それは芸術品の話だ! 信頼はどこへいった!? しかもこれ記録取られるんだろ!  
「私があなたに何かをしたとき、不安や嫌悪を感じなければ信頼している証拠。  
 併せて、満足感や充足感を得られるように努力する。…嫌?」  
 そんな上目遣いで見られたら、嫌なんて絶対言える訳ないだろうに。  
 一糸纏わぬ姿となり、肌を摺り寄せてくる妙に饒舌な宇宙人を相手に  
俺はこの上ない満足感と充足感を味わったのであった。  
 

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