「……」  
この光景は見覚えがある。  
俺はそう思って下駄箱の前で硬直していた。  
 
いつものように部室でうだうだやった後だ。帰ろうと玄関で上履きを脱いで下駄箱のふたを開けた。  
下駄箱の中。俺の靴の上に無造作に置かれたノートの切れ端。  
ただ違うのはそこに書かれた文字。あの時はきれいな女文字で書かれていた。今回は文字フォントのような明朝体。間違えようもない長門の字。  
そこには、  
 
『明日十二時、家に来てほしい』  
 
と、だけあった。  
あの時の悪夢が脳裏にハイビジョン映像のように鮮明によみがえった。夕日に照らされた朝倉の笑顔。異空間と化した教室での出来事。  
そしてあのねじれた時間の冬の校庭。脇腹に幻痛を感じる。冷たい金属が体内に侵入する違和感。痛みよりそっちの方が大きかったよな。痛みは後からくるんだ、あれ。  
しかし何で長門がこんなまねを?  
……考えるまでもないか、ハルヒに聞かれたくないことがあるんだろう。しかし、このノートの切れっ端は心臓に悪いのでやめてくれ。ほとんどトラウマだ。  
 
んで翌日。  
幸い今日はハルヒが用事があるとかでいつものパトロールはなかった。だからこそ長門も俺を呼び出したのだろう。  
ママチャリをこいでいつものように長門のマンションへ向かう。到着してこれもいつものようにインターホンのナンバーキーを押す。繋がった気配はするが声はしない。  
『……』  
「俺だ」  
『入って』  
これもまたテンプレートのような会話を交わす。ロックが解除され俺はエントランスに入った。今日は一人なので気楽だ。部屋の前まで来てベルを鳴らす。すぐに扉が開いた。  
「いらっしゃい。入って入って」  
明るい楽しそうな声。え、……長門?扉が開かれ、隠されていたその姿が見えた。  
 
実体化した悪夢がそこにいた。  
 
俺はその姿を見て、ああ血の気が引くというのはこういう感じなんだな、と頭の隅で考える。視覚情報で人を殺すことが可能なら俺が今見ているものは致死性の情報だ。俺の脇腹にナイフをぶち込み、あまつさええぐってくれた女。  
朝倉凉子が、ここにいた。  
「何、呆けてるの?早く入りなさいよ」  
 
 
朝倉は俺の腕を無造作につかむと室内に引きずり込んだ。俺の背に回り、扉に鍵をかける。 
その金属音が俺には銃殺隊が弾丸を銃に装填する音に聞こえた。がちゃり。  
「ほら、すわってすわって」  
俺は小学生がお楽しみ会で操る人形さながらの動きで、朝倉に背を押されこたつの前に強制的に座らされた。 
思考が全然追いつかん。妙に暑い。しかし暑さ以外の要因による汗が全身を覆っていた。  
「……何で貴様がここにいる」  
宇宙人の物まねのような声でやっと言葉を絞り出す。  
「ここにいたら、おかしい?」  
からかうような笑顔で朝倉は俺の質問を質問で返した。そら、おかしいだろうよ。  
「おまえは誰だ」  
朝倉は、ふんと鼻を鳴らして笑う。  
「その質問が一番状況に的確かもね」  
朝倉はこたつの対面にすわり俺を見る。相変わらず顔には笑みが張り付いている。 
俺は少しだけ懐かしさを感じた。あの春の教室。クラスの女子の中心で笑っていた美人のクラスメイト。  
「以前のわたしと今のわたしは記憶を共有していることをのぞけば別人。新しく作られたと言うのが正しいわね」  
何の感動もなく、朝倉は自分がここにいる状況を説明する。  
こいつの言うことを要約すれば、以前朝倉を派遣した奴らと別の勢力が『朝倉』という端末を再利用したと言うことらしい。 
当然そこには朝倉という個体が周辺に及ぼす影響を利用しようという思惑があるようだ。効果はあるな、実際俺なんかちびりそうだったし。  
だが、疑問が一つ。この朝倉にはあの時の記憶があるのか?あの改変された時間の中で俺を刺したあの時の記憶が。  
「どっちだと思う?」  
そう聞いてくるって事は記憶があるな。しかしあれは長門がバグったせいで構成された時間の……。ちょっと待て。大事なことを忘れているぞ。  
長門はどうした?  
「長門さん?キッチンにいるわよ」  
朝倉はキッチンに視線を向ける。そういや何かいいにおいがしているな。まるで気づかなかった。  
長門が居間に入ってくる。……エプロンをしてるぞ、おい。エプロンといっても飛行機を停めておく方じゃないぞ。 
料理をする時付けるアレだ。いつもの制服の上にエプロン。割と似合うな。  
「もうすぐできる。待ってて」  
できるって何が?  
「お昼ご飯。まだでしょ?」  
食ってない。いわれて俺は急に空腹を感ずる。が。それどころじゃねえって。  
「いいから食べていきなさいよ。せっかく長門さんが作ったんだから」  
長門の手料理。確かにそれはそそられるものがある。前に食ったのはレトルトのカレーだったしな。 
どんなもの作ったのやら。ん、もしかしておまえも手伝ったのか?  
「ええ。長門さん一人じゃロクな食事をしないから」  
……またあの時の記憶がよみがえる。そんな俺を見て朝倉はにやりと笑う。こいつ分かっててやってるな。  
「先にお風呂でも入ってきたら?」  
 
?  
「お・ふ・ろ。さっぱりしてきてから食事にすればいいわ。ちょうどいい湯加減よ」  
唐突になんだ?その隙に飯に毒を盛るつもりじゃなかろうな。  
「あなたを殺すならもっと効率のいい方法をとるわよ。そんなめんどくさい事するもんですか」  
効率のいい方法、ね。俺はそのその言葉にひやりとしたものを感じる。朝倉は相変わらず笑顔。 
……まあいい。とりあえず入れというなら風呂でもガス室でも入るさ。  
 
長門の部屋の風呂はマンションにしては広かった。洗い場も湯船もかなり余裕がある。 
俺は湯船の中で足を伸ばして顔をこする。  
「極楽極楽」  
じじくさいって?まあいいじゃないか。と、その時。衣擦れの音がして脱衣所に影が差した。長門?  
「湯加減はどうかしら」  
朝倉キター!俺は湯船の中から鍋に投入された伊勢エビもかくやという勢いで飛び出した。 
桶を持って股間をカバーするのが精一杯。って、落ち着け俺…… あ゛?  
そこには『全裸』の朝倉がタオルを手にして立っていた。  
「何やってんのよ。ほら背中流してあげるからすわって」  
「ちち、ちょっとまて!何のまねだ、それは!」  
「あら、サービス満点だと思うけど?」  
朝倉は腰に手を当てて胸を張る。形のいい胸が揺れた。 
朝比奈さんほどではないがボリュームは十分だ。うむ、いい形……ってそんな余裕ねー!  
「ほらすわって」  
と、朝倉はいすを床に置く。かん、と音を立てて床に置かれたそのいすには前後に伸びるくぼみがあった。  
スケベいすキター!ってどっから出したそれー!  
かっくん、と肩を押されて、俺強制的にスケベいすに着席。朝倉はボディソープを泡立てる。 
スポンジに泡をとり、俺の体に塗りつけた。後ろから手を回し慣れた手つきで俺の全身をこする。どこで覚えたそんなテク。  
「う……」  
背中に柔らかな二つのものが当たった。首筋に朝倉の吐息が掛かる。  
「どう、気持ちいい?」  
そりゃいいですともさ。と、いきなりいすの下から手が差し込まれ股間のものがつかまれた。 
わあ、なるほどスケベいすってこう使うのかあ。て、違う! 
しかし動揺する間もなく俺の根本に柔らかな指が這い回り、先端をこすりあげた。  
「んふ、おおきい」  
かすれたような朝倉の声が耳元にかかる。すでに、もうたまらん状態になっていた俺はあっという間に 
フルスケールに展開されてしまった。男って悲しいなあ。  
「はい、じゃ今度は寝て」  
「あ゛?」  
「ね・て」  
朝倉はぽんぽんと床を叩く。床には薄いウレタンのマットがひかれているから冷たくはない。 
抵抗むなしく俺はまな板の鯉状態で床に寝かされた。朝倉が覆い被さってくる。  
「泡踊りって言うのよね、これ」  
 
全身をボディローションの泡まみれにした朝倉が体をこすりつけてくる。 
長い髪にも泡が絡むが気にする様子はない。腿を挟むようにして体を動かす。この微かにざらつく感覚は……あれしかないよな。  
「じゃ、今度は逆」  
朝倉の体が逆を向いた。つまり頭が俺の下半身に両足が俺の頭の横。 
当然目の前には。朝倉は膝を曲げて俺の上を動く。……こんなんなってたのか。結構複雑な。初めて見る女性のナニに俺混乱。  
「あら」  
俺の視線に気付いた朝倉は起き上がってこちらを向く。体を戻して俺の腹にまたがった格好になる。軽いな、こいつ。  
「もっとよく見たい?」  
朝倉は俺の胸に手を置いて挑戦的な笑みを浮かべる。俺無言。はい見たいですとは言えねえじゃんかよ。  
「まあ、いいわ。はいサービス」  
朝倉は腰をずらすと膝を立てて俺の胸の上で大きく足を広げた。普段は隠されているそこが露わになった。  
「ここが外陰唇でここがクリトリス」  
朝倉は俺の胸の上で指でそこを押し広げ、しかも解説までしてくれた。……死にそう。 
朝倉の陰毛はごく薄く、かすかに生えている程度だ。そのせいでよけい奥がはっきり見える。  
「ここが尿道ね。そっちの方が好きかしら」  
「それだけはかんべんしてくれ」  
やっとの事で俺はそれだけ言った。顔の真ん前でそれは、刺されるより怖い。ふふ、と朝倉は笑う。  
「じゃ本番いきましょうか。長門さん」  
え゛?ながと?  
かた、と控えめな音がして風呂の扉が開く。  
「やっぱり、長門さんが先よね」  
そこにはこれまた全裸の長門が!おおおおおおお長門おまェェェェェェ!!  
長門は想像通りのスリムな体型だった。しかし決して貧弱ではなく、むしろ思っていた以上に女っぽかった。  
胸は確かに豊かとは言い難いが、全身が柔らかな曲線で形ずくられている。 
細い手足がきれいに伸び、背から腰にかけてのラインがなめらかに繋がる。庇護欲をそそられる体型だ。  
「すまない」  
何故か長門が謝る。どういう事だ?  
長門は横になったままの俺の横に座り込む。表情はいつもの長門。 
しかし一年にわたって培った俺の長門観察眼は微かに差した首筋の赤みと僅かに開いた唇からこいつがとても緊張していることに気づいた。  
「じゃあ長門さん」  
朝倉と長門が俺の両脇にしゃがむ。両側から俺のナニに二人の顔が近づいた。これはまさかと思ったら。  
「んっ」  
いきなり先端から長門が俺をくわえた。朝倉は裏筋から舌を這わせる。うわあ……。 
長門はとても丁寧というか優しいというかおずおずといった感じで舌を這わせる。だが、舌の動きは巧妙で俺は瞬く間に我慢できなくなる。  
「ちょ、長門もうだめだ……」  
「あらもう?」  
朝倉があきれたように声を出す。しかし長門はむしろ大きく俺をくわえ込んだ。刺激が強くなる。  
「う、長門すまん!」  
 
俺は凄まじい快感とともに射精した。腰全体が脈打つ。下半身自体から放出する感覚。  
長門はそのすべてを口で受け止めた。あふれた白い粘液が口の脇からあごを伝う。 
いつもは清楚な長門の顔が上気している。長門は中に残った精液を吸い込むように飲み込んだ。細い喉が上下してそれを嚥下する。  
罪悪感。それとともに清浄なものを汚したという背徳感に俺はとんでもなく興奮していた。  
「もう少し我慢なさいよ。あら、でも問題ないわね、堅いまま」  
朝倉は弄ぶように先端を刺激。一度ぐらいの射精では全く変化がない。溜まった童貞高校生をなめんなよ。  
「何、いばってんのよ。じゃ長門さんこっち」  
長門がふらりと立ち上がって俺にまたがる。朝倉の女らしい体とは違った線の細い体型。 
かよわいといった表現がぴったりだ。しかしこの体勢は。  
長門が俺をつかんだ。そっと。そして探るように入り口にあてがう。  
「ごめんなさい」  
長門は俺を見つめて小さな声でそういった。え?  
次の瞬間長門は腰をぐっと落とす。うわ……。 
何か微かな抵抗を感じながら俺は長門の中に入り込んだ。熱い。しびれるような締め付け。  
「んんっ!」  
長門は俺をすべて飲み込んだまま、体を止めて息を荒くしている。  
「おめでとう長門さん。初めては彼にあげたかったんでしょ?」  
え?長門おまえ……。すると今の中の抵抗感は……。  
「わかっているでしょ?わからないはずはないわよね? 
あなたはあの校庭で思い知ったはずよ、長門さんの気持ちをね」  
言葉はきつかったが朝倉の声は優しかった。俺の横に寝そべり、上半身を押しつけ耳元でささやく。 
吐息が耳朶をくすぐる。しかしおまえがそれを言うか。  
「長門さんはね、こんな娘だからわたしが代わりに言ってあげるの。 
だってわたしは本来、有希の影だもの。表と裏。陰と陽。二つで一つ」  
そういやこいつらはもともと同じ奴らに作られたんだったっけ。とのんきに考えていたら長門が体を動かした。うわ!  
「あああっ!」  
長門が声を上げる。膝を曲げて腰を動かす。締め付けがきつい。中がこすれる感覚に俺はあっという間に我慢できなくなる。  
「さあ、有希の中に出してあげて。思いっきり」  
朝倉は胸を俺の腕に押しつけ、耳たぶに舌を這わす。もうだめだ。  
「いく……?」  
俺の上の長門が俺を見つめる。上気した泣きそうな顔。ああ、こいつもこんな顔するんだな、そう思うととても長門が愛おしくなった。  
「ああ、いくぞ」  
俺は長門の細い腰に手を回し、下から突き上げる。  
「ああっ?きゃ!?」  
不意打ちに驚いた長門は小さな叫び声を上げる。かわいい悲鳴。ひりひりするような中の刺激。  
俺は思いっきり長門の中に放出する。その瞬間俺は長門の腰を引き寄せ、奥へ叩きつけるように射精した。 
同時に長門の中がきゅっと締まる。奥がうねる。  
「……!」  
長門はのけぞり、こらえるように両手を握りしめ、俺の上に崩れ落ちてきた。  
あまりの愛おしさに俺は長門の背に手を回して抱きしめる。 
長門はけいれんするように体をひくつかせ、荒い息を吐いている。俺は長門の顔をこちらに向かせてキス。 
舌を絡ませお互いをいつまでもむさぼった。  
 
…二度も出してしまった。  
長門はしばらく俺の上で繋がったまま余韻を惜しむかの様にしていたが、体を離して出て行った。食事の支度が残っていると言って。  
「照れてるのよ」  
朝倉が俺のナニを洗いつつ言う。そりゃわかるが何でおまえはまだここにいる?  
「あら、あたしはまだしてもらってないわよ」  
なんでせにゃならん。  
「ふふふ、ここは正直だぜ」  
朝倉は俺の股間に手を伸ばす。スデニカイフクシテイタ。  
「いやなの?」  
いやじゃねえ、しかし……。  
「有希のことを考えているんでしょう?彼女は納得しているからいいのよ。変に義理堅いのよね、あなた」  
朝倉は俺の股間を弄びながら体を押しつけてくる。立ち上がって俺の背におぶさるようにのしかかってきた。  
「わたしが復活したのはこのためなのよ」  
それはどういう事だ?と、質問を発しようとした時朝倉が俺の手を取った。 
指を伸ばさせて自分の股間に導く。中指が熱いものの中に突き入れられた。  
「……んんっ!」  
ゆっくりと中をかき回すように俺の指を動かす。狭い。腕ごと上下に動かし親指でクリトリスを刺激する。 
何度か指を変えた後、朝倉は俺の手をゆっくりと股間から引き離した。指先から粘液が糸を引く。  
「じゃ、わたしは後ろからお願い」  
朝倉は湯船に手をついて尻を突き出す。……なんか好いように流されているな俺。 
でもこんなもん見せられちゃ。谷口いうところのAAランクプラスの美少女が全裸で尻こっちに向けて『お願い』て。  
「は・や・く」  
朝倉に促されて俺はゆっくりと中に進入する。少し入ったところで長門と同じ様に抵抗感がある。こいつらもしかして。  
「おまえ処女なのか?」  
「挿れながらいう台詞じゃないわね」  
息を弾ませ朝倉は答える。ごもっとも。  
「そうよ。有希もわたしも。当たり前じゃない、わたし達は作られて三年の間ただ待機してたんだから。誰とつきあうっていうの?」  
朝倉はそういいながら中に入った俺をぎゅっと締め付けた。うわ。  
「泡踊り知ってる処女って何だよ」  
「私たちはこう見えても『万能選手』なのよ。二人ともね」  
どっかで聞いた台詞。ソープのテクも瞬時に会得かい。  
「もっと激しくして」  
俺は腰の動きを強める。長門の中とはまた違った締め付け。長門よりソフトだが動きは複雑のような。どっちにしてもすげえ気持ちいい。  
「くうっ!」  
俺の動きが激しくなるにつれ、朝倉の反応も大きくなった。俺は少しサディスティックな気持ちになる。  
何せこいつには二度殺されかかっているからな。二度目なんぞクリティカルヒットだったし。今度は俺がきっついのを刺して、イヤイヤ挿してやる。  
「もう少し尻を突き出せ」  
俺の言葉に朝倉は素直に従う。俺は朝倉の豊かな胸をつかみ、強く腰を叩きつける。  
 
「あああっ!強すぎるわよ……」  
朝倉の声は途中で途切れる。乱暴に腰を前後に動かす。刺激が大きくなり俺はあっという間に限界が来た。  
「よしいくぞ」  
俺は腰を強く朝倉の尻に叩きつける。胸と腰を引き寄せ、後ろから抱きしめる。三度目の放出。  
「んんんんっ!」  
朝倉の中が複雑に動き、俺を締め上げた。腰をひくつかせながら、俺は朝倉の中に出した。  
 
俺はこたつの前に座っている。腰にタオルを巻いただけの姿で。部屋の中の温度が妙に高いと思ったらこのためか。  
「そのままでいいから、すわってすわって」  
と服を着る間もなくすわらされた。体だけは念入りに拭いてくれたが。念入りすぎるくらいにな。舌まで使って。  
こたつ机の上に並べられたのはオーソドックスな和食だった。ご飯に味噌汁、焼き魚。根菜の煮物とおひたし。意外というか何というか。  
「おいしい?」  
横に座った長門が聞く。ああうまいよ。お世辞抜きにな。て言うかおまえの作ったものなら何だってうまい。  
「よかった」  
……だが、その格好は何だ?  
「いいでしょう?男のロマンだって言うじゃない」  
俺は朝倉と長門の間に挟まれていた。食いにくいったら。しかし問題はそこじゃなく二人の格好だ。  
『裸エプロン』  
人類史上、類を見ない破壊力を持った格好で二人が座っている。 
しかも飯をよそってくれるわ魚の骨を取ってくれるわ、至れり尽くせりである。 
そのたびにエプロンの隙間から胸がちらつくわ、醤油を取りに行った長門の後ろ姿に硬直(どこが?)するわだが。  
飯を食い終わり長門がお茶を入れてくれた。ほうじ茶。初めてここに来たときのことを思い出す。  
長門が食器を台所に下げに行った。ぼーっとそれを眺めていると不意打ちが来た。 
ナニが急に柔らかで暖かいものに包まれた。視線を下げると朝倉が俺をしゃぶっている。  
「いきなりかい」  
「気持ちいいでしょ?」  
髪を掻き上げて朝倉が言った。あっという間に俺は臨戦態勢に復帰。 
百里にスクランブル待機しているF15ですらこの速度にはかなうまい。  
「じゃ第二回戦」  
朝倉は腰のタオルをはぎ取ると俺の手を引いて台所に連れて行く。 
そこには裸エプロンのまま洗い物をする長門。朝倉は後ろから長門の胸に手を回す。  
「あっ……」  
長門が声を上げる。朝倉は胸を愛撫しながら耳に舌を這わせる。片方の手が股間に伸びた。 
俺はなすすべもなくそれを見つめる。長門は愛撫されながらも律儀に洗い物を続ける。……何故そんなにがんばる。  
「準備完了。はいどうぞ」  
朝倉が俺を手招きする。洗い物を続ける長門の両足を開かせ、後ろから腰を持ち上げるようにする。  
「長門」  
俺の声に長門は体をびくりとふるわせるが手は止まらない。俺は長門の耳を優しく噛む。 
エプロンの下に手を回す。すでにそこは熱く濡れている。俺はゆっくりと進入する。さっきあったはずの抵抗は弱くなっている。  
「はああっ……」  
 
進入するにつれ長門の吐息が荒くなった。すでに手は止まっている。しかし茶碗は持ったまま。  
「長門……」  
長門のささやかなふくらみを愛撫しながら俺は動く。止まらない。  
「あっあっあ……」  
俺は大きく突き挿れた。長門の小さな体が宙に浮く。  
「あああっ!」  
長門の手から茶碗が洗い場に落ちた。  
 
「今日の本当の目的は何だったんだ?」  
俺は帰り際に長門に尋ねた。長門もういつもの制服姿に戻っている。  
「調査」  
調査?何の?地球人の性生活か?  
「あなたの」  
俺?  
「あなたが何故涼宮ハルヒの側にいるのか謎。そこで刺激を与えて様子を見ることにした」  
「おまえの親玉か?」  
長門がは首を振る。直接の上司ではないという。思索派とも言うべき一派がハルヒに影響を与えない範囲で 
最も強い刺激を俺に与えてみようと行動を起こしたらしい。  
生死に関わる刺激は最初の朝倉の襲撃時に観測されている。それに匹敵する刺激は何か?  
今度は『性的な刺激』を与えてみようと奴らは考えたそうだ。そこで朝倉が再生され送り込まれた。 
長門の親玉も観測には同意した。しかし長門はそれをよしとしなかった。それくらいなら私が。  
なぜって?それを俺に言わせるのか?畜生。これは俺自身に対する声だ。 
長門が何故あんな事をしたか。それに気づかなかった俺の馬鹿さ加減にな。  
「すまん」  
俺の言葉に長門はぱちりと瞬きして目を伏せた。  
「あやまらないで」  
か細い声。  
「あやまらないで」  
俺は長門を抱きしめた。強く。  
 
「最後に一つ聞きたいんだが」  
俺は一緒に部屋を出た朝倉に尋ねた。  
「なにかしら?」  
「おまえら妊娠しないの?」  
朝倉は少し驚いたような顔をした。そして、  
「さあ、どうかしら」  
すさまじく邪悪な笑みを浮かべた。  
「一月もすればわかるわよ。有希があなたの所に行ってささやくの『生理がこない』ってね」  
俺の腹の中に鉛のようなものがずしんと落ちた気がした。  
「私はまたあなたと同じクラスに戻ると思うわ。よろしくね」  
「……またくるのか」  
俺はどつぼに嵌ったのかもしれん。もしこのことがハルヒにしれたら。  
「じゃあまたね」  
朝倉は玄関を出て歩いていった。こいつはまたこのマンションに戻ってきているらしい。 
この先のことを考えて俺はめまいがした。  
まあいい。今日のことを思い出すだけで三杯はお変わりができる。 
先のことはそのときになってから考えよう。(これを現実逃避という。よい子はまねしないように)  
俺は上を向いてつぶやいた。  
「やれやれ」  
 
 
 

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