「困惑の蒼い球体」  
 
いつものごとく俺は部室のドアを開けた。  
そこにはこれまた、いつもの見慣れた長門の姿が──  
なかった。  
ハードカバーを手に持ち、視線をそれに落としているのはいつもと同じ。  
パイプ椅子に座っているのも同じ。  
しかし服装が違った。いつもの見慣れたセーラー服ではない。  
白の体操服に……青のブルマ。標準の体操着姿である。  
「あー、長門」  
俺の呼びかけに、つい、と長門が視線をあげる。ぱたりと本が閉じられた。  
「その格好は何だ?何かあったのか?」  
ハルヒが体操服で来たことは何度かある。めんどくさいとか、暑いとかそんな理由だったはずだ。  
しかし長門がそんな理由でこんな格好をしているわけがない。  
ハルヒや朝比奈さんならなにも気にすることはない。  
が、長門である。  
ベルレーヌの詞を繰り返すラジオ放送を聞いたドイツ兵の心境だ。こいつの変化は何かの予兆のように感じる。  
長門は俺の言葉にわずかにうなずく。  
「あなたに話がある」  
……悪い予感は的中したようだ。  
「古泉一樹から伝言」  
え?  
「『大規模な閉鎖空間が発生しました。今日はその処理のためそちらには行けません』とのこと」  
おい。  
「わたしがこの格好をしているのは閉鎖空間の発生原因に関係がある」  
発生原因というと……考えるまでもないな、ハルヒか。  
「そう。発端は半月ほど前」  
長門はそう前置きすると淡々と話し出した。  
 
その日部室には長門とハルヒの二人だけだった。  
俺は母親に用事を頼まれ部室には来ていない。古泉と朝比奈さんも同様に欠席。  
「ねえ有希」  
退屈そうにパソコンを操作していたハルヒが長門に呼びかける。  
「なに」  
視線を本から上げずに長門は答える。  
「あなた、好きな人はいないの?」  
退屈からの質問だったのだろう。ハルヒは長門にそう聞いた。  
「好き、と言う概念がわたしには良く分からない。でも」  
 
長門が本から視線を上げる。  
「なになに、誰か気になる人でも?」  
ハルヒが楽しそうに聞く。  
長門はうなずく。  
「それが恋愛感情かは分からない。けれど気になる人はいる」  
「へえ」  
ハルヒは少し驚いた風に長門を見返す。  
「あなたにもそんな人がいるのね」  
「あなたにはいない?」  
ハルヒは長門からの問いかけに、不意を突かれたような表情で黙り込む。  
「……気になる奴はいるわね」  
「──そう」  
長門は黙って視線を本に戻す。沈黙が空間を支配し、しばらく時が過ぎる。  
「ねえ、有希」  
「なに」  
「あなたセックスに興味はないの?」  
長門が視線をあげる。  
ハルヒは頬を赤らめ、怒った様な表情で長門を睨む。  
「ないことはない。でも興味に対する優先順位は低い」  
「好きな人とセックスしたいと思わない?」  
「肉体的な接触はあまり重要視していない」  
「へえ、好きな人と抱き合いたいとか思わないの?」  
「……その人がいてくれればそれでいい」  
「そう」  
ハルヒは立ち上がり長門の側に立つ。  
「ねえ、あなたは女の子は嫌い?」  
ハルヒは押し殺したような笑顔で長門を見つめる。  
「あなた可愛いわ。女の子同士でも気持ちよくなれるのよ?」  
ハルヒは長門の肩を掴み顔を寄せる。  
「いや?」  
「……あなたが望むならわたしはそれを受け入れる」  
「え?」  
ハルヒは面食らったように声を上げた。長門が音もなく立ち上がる。  
思わずハルヒは後ずさる。  
いたずらのつもりだったのだろう。  
ハルヒは長門がどんな反応をするか興味本位で迫ってみたのだ。  
しかし長門はそれを受け入れると答えてしまった。  
ハルヒの心の中で何かが外れた。  
 
「……本当に?」  
こくりと長門がうなずく。その表情に戸惑いやからかいといったハルヒが予想したものはまったく見えない。  
「……そう」  
ハルヒはゆっくりと長門の背に手を回し抱きしめる。顔が近づき唇が重なった。  
「ん」  
ハルヒの舌に長門の舌が絡む。ハルヒが予想した以上に長門は愛撫に積極的に答えた。  
その快感に抗うかのようにハルヒは長門の制服の下に指を這わす。  
ブラの下からささやかな長門の胸をもてあそぶ。  
長門がハルヒの中心に指を這わせた。  
「はっ……」  
ハルヒは声を上げ、唇が外れた。長門は正確に繊細にハルヒを刺激する。  
目を開けたハルヒの目に映る長門の顔。いつもと変わらぬ無表情。  
しかし、その頬に赤みが差している。  
長門もまた肉体の刺激に興奮していた。静かに。  
ハルヒは自分がされているのと同じように長門の中心を下着の上からなぞる。  
「ん……」  
長門が控えめな声をもらす。肉体の快感に感情が負ける。  
二人はその敏感な中心を同時に探り合う。  
 
部室の窓際で。  
 
立ったまま。  
 
グラウンドから運動部のかけ声が響く。  
ブラスバンドの音が遠い。  
上から押しつけるように二人は互いのクリトリスを刺激しあう。  
下着の中には指を入れない。恐れているかのように。  
自分の高まりに伴ってハルヒの指が早くなる。  
二人の下着はもう既に滴るほどに潤んでいる。指が動くと同時に響く、粘つく水音。  
「ああっ、有希……」  
「あなたも」  
二人は同時に達した。  
ハルヒは長門のスカートの中から手を抜く。指先に絡んだ透明な液体。  
同じものが長門の指の間で糸を引く。  
ハルヒは長門の体を引き寄せ、唇を合わせる。深く。  
 
「わたしの体は」  
長門が続ける。  
「人としての機能の大半を制御されている。しかし、今回涼宮ハルヒから当該行為の要求があった事により、性的な刺激に対する制御は解除された」  
どういう事だ?  
「現在のわたしは性的な刺激に対しては一般人と変わらない」  
それは……  
「クリトリスを中心とする外性器や乳首、いわゆる性感帯に対する刺激……」  
「あーわかったわかった、それ以上言わんでいい」  
変な気分になっちまうじゃねえか。いや、もうなってるが。  
あんな告白を長門の口から聞かされたんじゃな。長門には今の俺の状態はバレバレなんだろうなあ。とほほ。  
「で、何で閉鎖空間が発生したんだ?ハルヒの欲求不満が解消されれば問題ないんじゃないのか?」  
「彼女はわたしとの性行為を望んではいない」  
じゃ、何でおまえに……。  
「彼女が本当に性行為の対象として望んでいるのは」  
長門の目がいつもより冷ややかに見えるのは気のせいだろうか。  
 
「あなた」  
 
「推測するに、涼宮ハルヒはわたしとの行為に対して後ろめたさを持っている。わたしに行為を強制したことと、あなたの代償としてわたしを抱いた行為に対して」  
俺のせいか。  
「彼女はそれを自覚していない。わたしとの行為に快感を覚えてはいるが、それを行っている自分に対する嫌悪がある」  
………  
「そのため彼女の行為はエスカレートしつつある」  
え?  
「先日、彼女はわたしの性器の中に指を差し込んできた」  
をい。  
「最初は下着の外部からの圧迫、摩擦といった刺激を与え合うのが中心だったが、先日からは下着の中に手を差し込み、性器を直接指で刺激する様になってきている」  
ちょっと待て。  
「今度は何か器具を使うと言っていた」  
「まてまて」  
長門は言葉を止め、俺を見返す。相変わらずの黒い瞳。  
「俺はどうすればいいんだよ」  
長門の口から淡々と語られる事実は、溜まった高校生には刺激が強すぎる。  
ハルヒと長門、美少女キャラ二人のレズプレイだぞ?  
いったい俺は何をすればいいのか。  
 
「とりあえず」  
長門は俺の手を引きロッカーの戸を開けた。  
「ここに」  
まさか……  
「入って」  
有無を言わさぬ長門の口調に、俺は鞄を抱えて狭いロッカーの中に入る。  
朝比奈さんと一緒に入って以来だなあ。一人だからあの時よりはマシだが。  
ぱたんと扉が閉じられた。  
長門が椅子に戻る気配がする。何が起こるんだ?  
……何となく分かるような気はするがな。  
 
ロッカーのスリットから床が見えている。  
射し込む日差しがはっきりと矩形の光を床に浮かび上がらせていた。  
扉の開く音がした。音を立てないように入り口に目をやる。  
ハルヒだった。  
白い体操服と青いブルマは長門と同じ。  
何か思い詰めたようなに表情でハルヒは室内を見回すと口を開いた。  
「有希だけ?他の人は?」  
「古泉一樹はアルバイトで休むと伝言があった」  
「ふうん、みくるちゃんも休むって言ってたわね。キョンは?」  
長門が首を振る。  
「そっか、今日は二人だけね」  
長門がうなずく。  
ハルヒは後ろ手に扉を閉めると鍵をかけた。金属音が室内に響く。  
長門が無言で立ち上がり、丸めてあったゴザを広げる。宝探しの時に使ったやつだ。  
ハルヒも団長席の机をずらしてスペースを作る。長門がそこにゴザを敷いた。  
おい、この状態だと俺のいるロッカーの真正面に二人が……。  
ハルヒは自分の鞄の中から何かを取り出す。丸い球体から伸びる細い電線と電池ボックス。  
ローターだ。器具とはこれか。  
「有希、脱いで」  
ブルマで横座りしたハルヒがゴザの上で長門を誘う。  
長門がロッカーに背を向けたままブルマを下げる。白い尻が日に照らされまぶしい。  
「早く」  
まだ全部脱ぎ終わらないうちにハルヒが長門の手を引いた。すとんと倒れるように長門はハルヒの横に並ぶ。  
ハルヒが長門の顔を引き寄せる。ゆっくりと二人の顔が重なった。舌の絡み合う音。  
キスを続けたまま長門がハルヒのブルマに手を這わせる。  
「……ん」  
 
長門の指がハルヒの中心をブルマの上から刺激する。  
ハルヒは自分でブルマをずり降ろす。  
長門はハルヒの片足を自分の足で押さえ込み、大きく開かせた。まる見えになったハルヒの中心に長門の指がうねるように滑り込む。  
「ああっ!」  
たまらずハルヒが声を上げる。  
長門の指は的確にハルヒのクリトリスを刺激。  
二人の舌の絡み合う音と指の動きが立てる粘つく水音。  
しんとした室内にそれだけが響く。  
運動部のランニングの掛け声が窓から流れ込んでくる。  
風がカーテンを揺らす。  
「ね、これ使って……」  
ハルヒがローターを長門に手渡す。  
長門はハルヒの下半身に横から覆い被さった。大きく足を開かせてハルヒのクリトリスにローターをあてがう。  
「ん……」  
次なる刺激を期待してかハルヒは目を閉じ口を結ぶ。  
長門はコードを口に咥えスイッチに指をかけ、ロッカーに向かって視線を上げた。目が合う。  
……長門、おまえわざとこっちに見えるようにやってないか?  
スイッチ・オン。  
「ひっ!」  
ハルヒが悲鳴を上げ、のけぞる。くぐもった振動音に粘つく水音が混じる。  
ハルヒの薄い茂みに長門はローターを潜り込ませ、引き上げるように往復しクリトリスをこすり上げた。  
「あ、あ、だめ強すぎるわ……」  
流れ出る透明な液体がゴザに滴る。  
ハルヒは刺激から逃れようとするかの様に足を閉じようとするが、長門は腿に手をかけてそれを許さない。  
ローターをハルヒの中に沈め、クリトリスを唇で挟み舌を使う。  
「……んんっ!」  
強い刺激にハルヒは声も出せず、ゴザの上で体を捻る。  
長門の指、舌、さらにはローターの刺激にハルヒは高ぶってゆく。  
「……駄目……」  
長門が包皮を剥いたハルヒの敏感なそこにそっと歯をあて引き上げるようにこすった。同時に舌でその先端を刺激。  
「……!」  
ハルヒは声も出せず体を大きくのけ反らせる。透明な液体がゴザの上にぱたぱたと落ちた。  
……あれはいわゆる潮吹きなのだろうか。  
ハルヒの中からローターが流れ出る。長門がローターのスイッチを切り、室内に静けさが戻った。  
ハルヒの荒い息が響く。  
「有希……」  
長門はハルヒの声に体を起こす。ハルヒはそのまま長門を引き寄せ、唇を合わせる。  
二人の体が重なる。静かに。  
 
二人はしばらくそうしていたが、長門が音も無く立ち上がり服装を直す。  
「……どうしたの、有希?」  
まだ余韻に酔っているかの様なハルヒの声。ブルマも下着も足に引っかけたままだ。  
「あなたは」  
長門がハルヒを見下ろして語りかける。  
「わたしとの行為を本当に望んでいる?」  
「え?」  
唐突な長門の問いに戸惑うハルヒ。  
「わたしがあなたの要求に応えるのはたやすい。わたし自身もこの行為に対し、肉体的快感を覚えている」  
長門おまえ何を?  
「でも、あなたは本当に私との行為を望んでいる?」  
「………」  
「わたしが見るところ、あなたに同性愛的な傾向は少ない。あなたは私に好意を持ってくれていると思う」  
ハルヒは無言で長門を見つめている。  
「わたしもあなたに好意を持っている。でも性的な接触に対する欲求は少ない」  
長門の声はあくまで静かだ。  
「あなたは女性よりも男性との行為を望んでいない?」  
「でも」  
ハルヒが長門の質問に声を上げる。  
「でも、誰とそういうことをすればいいというの?そんな人は」  
「本当にいない?好意を抱いた男性は?」  
ハルヒの声を長門が遮る。  
「わたしがあなたを観察して得た答えは」  
長門が後ろに下がる。  
無造作にロッカーの扉を開ける。  
「うわっ!」  
限界までロッカーの細いのぞき窓に顔を近づけていた俺は、体勢を直すまでもなく外へと転がり出る。  
「痛てえ……」  
前のめりに倒れる俺。うつぶせの体勢から上半身を起こすとゴザの端が目に入った。  
そのまま視線を上げた俺の目の前にあったものは。  
「………」  
ハルヒの両足。  
下着ごと足首まで下げられたブルマ。  
白い太腿、その付け根のしずくに濡れた薄い茂み。  
驚愕に口をわずかに開いたハルヒの顔。  
「よ、よお」  
馬鹿な挨拶をする俺。  
「後はあなたと彼の問題」  
 
淡々とした長門の声。ハルヒは顔色を蒼白にして何かを言おうとするが声が出ない。  
「涼宮ハルヒ」  
長門がハルヒを呼ぶ。ぎこちなく長門に視線を向けるハルヒ。  
「逃げては駄目」  
長門にしては強い口調のように思えたのは気のせいだろうか?  
長門はブルマ姿のまま鞄を持つと、部室を出て行った。  
扉が閉まる。鍵のかかる音。  
 
「……見てたのよ?」  
「え?」  
「いつから見てたのよ!」  
涙目で俺を睨むハルヒ。  
「……最初から」  
「死にたいわ……」  
おい。  
「アンタなんかに見られるなんて!」  
そういわれてもな。  
「……なぜ長門と?」  
「………」  
ハルヒは視線を落としたままだ。  
「他に相手を見つけろよ」  
俺が話の接ぎ穂に困って適当な言葉を口にしたとき、いきなりネクタイが引っ張られた。  
「何をしやが……!」  
引き上げられた目の前にハルヒの顔。  
涙のにじんだ悔しそうな顔。  
「そんなに言うならアンタが相手しなさいよっ!」  
紅潮し、泣き出しそうな表情でハルヒは叫ぶ。  
「あたしだってね、何で有希とこんな事になったのかわかんないわよ!やめようと何度も考えたわ!」  
俺のネクタイを引きつけたまま、ハルヒは横に視線を落とす。  
「でも、やめられないんだもの……有希はいいって言ってくれたわ、でも」  
手が震えている。  
「有希は本気じゃないわ。あたしに付き合ってくれただけ。わかっているのよ、あたしだってそうだわ……だから」  
ふっ、と力が抜けた。代わりにネクタイが緩められ、シャツのボタンが外される。  
「責任取りなさいよ……」  
声が小さくなる。  
「俺でいいのか?」  
いちおう聞いてみる。  
 
ハルヒは俺と視線を合わせようとはしなかった。  
「………」  
返答はない。ワイシャツを脱がせる手が止まらないのを肯定の意志と俺は受け取る事にする。  
自分で下着を脱ぎ、ハルヒに手を伸ばす。  
体操服をずり上げるとノーブラのハルヒの胸。  
俺はその先端に舌を這わせる。  
「んっ……」  
微かに堪えるようなハルヒの声。  
股間に手のひらを当てる。長門との行為で潤ったそこはまだ熱かった。  
中指を沈める。  
敏感な突起。その下に指が沈む。  
ハルヒが俺の背に腕を回し、引きつける。荒い息が耳朶を打つ。  
必死に声を出すまいと耐えているようだ。  
俺はハルヒの乳首を吸いながら指で中心をまさぐる。  
体をひねるハルヒ。顔を上げると唇を強く結んで、耐える表情。  
いつもの強気なハルヒの表情とは違うそれは新鮮で……かわいかった。  
しかしその俺の感慨はあっという間に破られた。  
「やっぱりこれじゃ駄目よ!」  
突然ハルヒが体を起こす。お前は何を言っている?  
「あんたが下になりなさい!」  
は?  
「ほら、早く!」  
ハルヒは俺を仰向けにさせると、上に跨った。足ににブルマが引っかかったままだ。  
俺の股間のものをぐい、と乱暴に握る。  
「おい、ちょっと待て、痛いって!」  
「我慢しなさいよ。何よこれ……思ったより大きいわね」  
ハルヒが膝を付いて俺の先端で自分の中心を探る。  
ぬるぬるとした感触が俺の敏感な部分を刺激。……これは気持ちいいかも。  
ハルヒは先端で自分のクリトリスを刺激する。  
「んんっ……」  
ころころとした滑らかな感触が俺を刺激する。ヤバイ、気持ちいい。  
ハルヒは目を閉じたまま、一心に俺で自分を刺激している。  
俺は手を伸ばして体操服の下に手を入れ、ハルヒの両胸を持ち上げた。  
ふわふわとした感触の先端に硬く盛り上がった乳首。俺はそれを指でつまみ、こする。  
「あっ」  
ハルヒはあごを引きその刺激に微かに声を出した。ハルヒの手の動きが速くなって……止まった。  
「……挿れるわよ」  
目を開いてハルヒは俺を見つめ、宣言するように言った。  
 
視線を下に向けて慎重に位置を探る。熱い感触が先端を包んだ。  
「あっ!」  
一気にハルヒは腰を落とす。  
全体が熱いものに包まれた。想像以上にハルヒの中は熱い。  
肩で息をつくハルヒ。  
「おい、大丈夫か?」  
「平気よ、このくらい」  
うつむいていたハルヒが顔を上げ、髪を掻き上げた。だがその額に薄くにじむ汗と紅潮した顔はその言葉を否定している。  
「動くわよ」  
きつい締め付けがずるりと動く。  
「う……」  
思わず声が出た。引きつれるような感触がたまらない。あんまり持たないな、こりゃ。  
ハルヒは俺の胸に手をつき、腰だけを動かす。  
表情は快感と言うよりは何かに耐えているようにしか見えない表情。  
俺は股間に手を伸ばし、結合部をまさぐる。ハルヒのクリトリスを刺激。  
「ああああっ!」  
とたんにハルヒはのけ反って声を出す。  
俺はそのまま、下からハルヒの尻を持ち上げて、腰を突き上げる。  
「あ、や、ちょっと、だめぇ……」  
消え入りそうなハルヒの声に俺は我慢の限界をあっという間に突破した。  
「ハルヒ、出すぞ」  
抜こうとした俺の腰にハルヒは体を押しつけた。  
「駄目、中で出して」  
俺の顔を両手で掴み、不敵な笑顔でハルヒはそう宣言する。  
「おい、ちょっと待て」  
あわてる俺。おい、中で出しちまうぞ。  
最後の瞬間ハルヒは自ら腰を落として深く突き刺した。  
「あっ……」  
「うっ……」  
俺達は同時に達した。俺から放出された物が、ハルヒの中にじわりと暖かかく拡がる。  
ハルヒは背を反らせ、口を結んで腰を強く押しつける。  
堪えていた俺の放出は止まらない。幾度も幾度もびくびくと痙攣するかの様に放出する。  
ハルヒは体を離そうとはせず、むしろ強く押しつけてくる。俺は快楽の放出を続け、ハルヒの中もまたそれを貪るかのように俺を締め上げた。  
俺は荒い息をついているハルヒを引き寄せ、唇を合わせた。  
お互いの舌を絡ませる。  
いつまでも。  
 
 
ハルヒの「先に帰って」の言葉に押され俺は先に部室を出た。  
やはりハルヒでも気まずかったんだろうか。  
俺もいまいちどんな態度で接したもんだか、少し困っている。  
夕日の射し込む玄関で俺は靴を履き替えると、周囲に視線を投げる。  
「長門、いるのか?」  
何となくそんな気がして俺はつぶやく。  
下駄箱の陰から小柄な人影が音もなく現れた。さっきと同じ青いブルマ姿のままだ。  
「これでよかったのか?」  
長門は小さくうなずく。  
「閉鎖空間の拡大は収まった」  
だがな、これからどうしたものか。  
「それはあなたと涼宮ハルヒの問題」  
いや、そうなんだけど。  
俺はふと、浮かんだ疑問を口にする。  
「なあ、長門」  
「なに」  
「お前はこれでいいのか?」  
卑怯な質問だったかも知れない。  
俺はハルヒも長門も好きだ。だが恋愛感情としてみたとき、どちらを選ぶのか。  
それを回答しないまま長門にのみ答えを問う。  
「わたしは性的接触はあまり重要視していない」  
まあ、そんな気はしていたが。  
長門は音もなく俺の目の前に立つ。背に夕日を浴びて長門の顔に影がかかる。  
「でも」  
小さな人影が俺を見上げる。  
「行為を望むならその対象は」  
俺は長門の小さな姿に気圧される。  
 
「あなた」  
 
長門はくるりと俺に背を向けると玄関を出てゆく。  
青いブルマ姿がオレンジ入れに照らされている。  
俺は丸い長門の尻を見ながらただ困惑していた。  
 

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