彼女は高校生の時からいつも一緒だった。
弁護士を目指して頑張っていた。「異議あり!!」ってのを
どうしてもやりたかったらしい。まったくあいつらしい。
俺は就職したばかりで、仕事をこなすのに精一杯だった。
お互い一人前になったら結婚しようと約束していた。
3年前の夏、「体調がすぐれない」と聞いた。
2ヶ月後、彼女はいなくなった。
それからの俺は、まったく前に進めなかった。
仕事は懸命にやったが、他にやることがないからだな。
彼女が死んだ9月末、今年も墓参りに行った。
3年間、季節ごとに行くことにしていた。
いつもの通りご両親にあいさつした時、言われた。
「キョン君、もう来なくていい」
「娘のために将来をムダにはしないで欲しい」
いい加減ふっきらなければとは思っていた。
ただ、それが正しいことなのか判断できなかった。
俺は今週末、最後の墓参りに行く。
手元にある手紙も写真も、全部ご両親に返すことにする。
当時と同じカッコいい俺になるため、15kg減量した。
前に進もうとしていることを、ご両親に伝えるためだ。
彼女に最後に何と言おうか、まだ考えている。
行きの電車までに思いつけばいいのだが。
帰りの電車で、ケータイに残った彼女のメモリーを消す。
これだけはもう決めている。