「おはよう」  
 
俺が教室に入って席に着いてからしばらく、向こうで友人達と談笑していた  
女が向かってきてそう言ったので投げやりにこちらも同じ言葉を返した。  
こっちは毎朝毎朝坂を必死に登るだけで精神のゆとりが奪われるというのに  
何をどうやったらこんな朝っぱらからそんなにいい表情が出来るのやら。  
 
「あら、朝は一日が始まる大切な時間よ。今日がどんな日になるかって  
考えただけでもわくわくするわ。あなたもそういう風に考えたら?」  
 
そういうものですか。さすが優等生は違うね、全く。  
 
「拗ねちゃって。そうそう、今日のお昼は期待しててね。少し奮発したのよ」  
「へえ。そりゃ一日が楽しくなりそうな一言だ」  
 
別に付き合っているというわけではないが、俺は毎日弁当を作ってもらっている。  
世話好き女のお節介という天邪鬼な考えも出てくるが、正直言うと満更でもない。  
なんといっても美味いしな。  
 
「ふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」  
 
これはお世辞じゃなくて本音だ。それにしてもさすがはAAランクプラスに認定されてる  
だけあって全く嫌味のない笑顔だ。見てるこっちも自然と気分が・・・  
 
「う・・・?」  
 
瞬間、俺は脇腹に妙な痛みを覚えた。  
 
「どうかしたの?」  
 
腹を抑えた俺に不安な表情でそう聞いてきたが、違和感はすぐに消えたので何でもない  
と答え、それならいいのだけど。と、なお心配そうにしながら自分の席へ戻っていった。  
何故あいつの・・・朝倉の笑顔を見た瞬間に脇腹が?  
訳の分からぬまま、一時間目を告げるチャイムが鳴り響いた。  
 
続かない。  
 

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