日曜日。特に用事もないが朝からハイテンションな妹に文字通り叩き起こされた俺は居間で信じられない光景を目にした。
「何やってんだ長門?」
居間にはテレビの真正面に鎮座した長門がいた。目を悪くするぞ…
「…………テレビ」
テレビ?あぁ、テレビね。そういや長門の家にはテレビ無いもんな。見たい番組があっても見れない、それはとても辛いことだ。長門がそんな俗っぽい事に興味を示すのははなはだ意外ではあるが…
「………見る?」
「いや、遠慮するよ」
朝っぱらから濃度の濃い、原液のような少女アニメを見るのは少々キツイ物があるし。
「……そう」
なんて、寂しそうに言うもんだから父性愛溢れる俺が見過ごせるわけが無いのは自明の理だ。
「…と、思ったが気が変わった。俺も見るよ」
「………」
長門はどう贔屓目に見ても嬉しそうにして自分の隣りをペシペシ叩くのでそこに座ることにする。……テレビ近くね?
「……ずいぶんカオスなアニメだな……」
「………」
俺達が見ているアニメは猫耳メイドが目からビーム出したり、ウサ耳ウェイトレスがバズーカ撃ったり、納豆に混ぜられたりするそんなアニメだ。これを簡潔に表現するなら“カオス”としか…俺の乏しい語彙では表現不可能だ。
「パカパカパッパッパ〜ン」
朝っぱらから濃度の濃い原液のようなオタアニメを見させられてげんなりしていると突如隣りからファンファーレが鳴り響いた…?
「ユッキーはレベルが上がった!レベルが4になった!目からビームを覚えた!ユッキーはキョンのことがさらに好きになった!キョンもユッキーの事が好きになった!」
右手を天に掲げ、左手を腰にあてがい高らかに宣言する長門は可愛いと言えば可愛いのだが高校生としてその行為は不適切だと言う他ない。
「……………とりあえず座れ」
何かを期待するような視線を横っ面に浴びながらも俺は長門がどんどんアホの子になっていく事実に…また一つ懸案事項が増えた事にげんなりとする他なかったのであった。