一  
 
 クソ暑い夜だった。  
 ハルヒがハムスターのごとく生活用品を持ち込んでいたSOS団の部  
室だが、さすがに布団なんぞあるわけもなく、夜になっても全然気温の  
下がらない夏日、このクソ暑い部室で、俺は寝袋にくるまって寝るはめ  
になっていた。  
 当然のごとく、横になってから数分でそんなものは蹴りのけていた。  
今は床に敷いたシーツの上に、シャツ一枚で寝っころがっている。そん  
な状態で快適な眠りができるほど、俺は人間ができていない。  
 意識はぼんやりと、まどろみの中をさまよっていた。  
 どれほどたったのだろうか。  
 なんだか不愉快な夢を見た気がして、俺は寝返りを打った。  
 寝苦しい夜だが、真夜中まで続いた文化祭の準備のせいで、体はバキ  
バキに疲れてる。無理にでも寝ちまいたい。  
 再びまどろんでいると、ゆっくりと意識が泥に溶けていく。  
 思考が溶け、だんだんと現実感が失われていく。  
 あ、寝れる。  
 そう思った瞬間、ハルヒのにやけ面が思い浮かんだ。  
 心の中で声ならぬ声を叫んで、体をびくりとさせる。  
 ああ、くそ、思い出した。  
 不愉快な夢だった。  
 
 SOS団の部室で、なぜか俺は椅子にロープで縛りつけられ、死刑執  
行を待つ囚人のような面持ちで、ハルヒの熱帯的快晴と評すべき笑顔を  
見上げていたのだ。  
 部屋には二人きり。これから何が始まるのかとおののいている俺に、  
ハルヒはゆっくりと近づき、俺のシャツに手をかけた。夏服のボタンを  
ぷちぷちと外し、ついでにベルトも慣れた手つきで外していく。  
 これだけでも発狂物だが、ハルヒは、ズボンを膝までずり下ろした間  
抜けな格好になった俺の腰に、またがってきた。  
 トランクスを持ち上げる俺の物と、ハルヒの下着がこすれる感触、胸  
板にぶつかる二つのふくらみに、白いうなじから鼻孔をくすぐる柑橘系  
の香りは、まだ生々しく覚えている。  
 ハルヒはあごを俺の肩に乗せるような形で全身を押しつけてきていた  
から、どんな表情をしていたのかはわからない。知りたくもない。  
 くそったれ。俺は毒づいた。よりにもよってハルヒかよ。  
 もちろん生物である以上、性欲はどこまでもついてまわる難題ではあ  
るのだが、それならせめて朝比奈さんにして欲しかった。というかなん  
で俺はロープで縛られているんだ。そういう趣味でもあったのだろうか。  
 そんな感じで自己嫌悪の塊になっていても、体は正直だった。ハルヒ  
の柔らかい感触がまだ体に残っていて、下の方はギンギンになっていた。  
 まあハルヒも女だしな。と無理やり自分を納得させる。ハルヒだから  
元気になっている、というわけでは断じてない。  
 そんな風にいろいろ葛藤していると、眠気はすっかりどこかへ行って  
いた。俺はシーツの上でごろごろするのを諦めて、体を起こした。  
 暗い部室の様子が目に入る。  
 いつもは部室の中央にある机は、部屋の隅に寄せられている。隅っこ  
の方で、これまた力尽きたハルヒが、シーツの上で眠りこけていた。ハ  
ルヒの隣には、床から天井を埋めつくす、よくわからん創作物が鎮座し  
ていた。  
 テンションの上がりきったハルヒは、ここ数日、展示に使うとかいう  
その奇怪なオブジェの制作に夢中になっていた。それでも昨日まではちゃ  
んと家に帰っていたのだが、文化祭まであと少しとなり、ついに今日は  
無断の泊まり込みを決行したのだ。  
 付き合わされたのは俺。  
 朝比奈さんと長門はちゃんと家に帰っているのに、ハルヒは風呂にも  
入ってない。女の子がそれでいいのかと疑問がよぎるが、まあハルヒだ  
からな。  
 
「よっこらしょっと」  
 膝に手をついて立ち上がる。  
 近くに転がっていた上履きをはき、ハルヒを起こさないように足音を  
忍ばせ、部室の外に出た。  
 夜の校舎だ。  
 少しわくわくしていたことは認めよう。なんといっても、夜の学校と  
いうのは独特の雰囲気がある。特に文化祭の時期は。非日常的世界とい  
うやつだ。  
 青白い月の光が窓から差しこみ、足元を柔らかく照らしている。こつ  
こつと静かに響く自分の足音を聞きながら、俺はトイレに向かった。  
 努めて意識しないようにしていたが、さっきから下半身が異常に元気  
になっていた。疲れマラというやつだろうか。小用を足せば治まるだろ  
うと思っていたが、まったくそんなことはなかった。便器の前から離れ  
たあとも、チャックを閉めるのに苦労するほどだった。  
 妙にムラムラする。月の光のせいだろうか。  
 学校にバレるのを恐れて、電気も点けずに用を足したが、月明かりの  
おかげで特に困ることはなかった。見慣れた学校のはずだが、輪郭がお  
ぼろげにぼやけ、見知らぬ場所にいるような気がした。  
「うーむ……」  
 ズボンを突き上げている自分の物を眺めながら、腕組みをする。そう  
いえば、最近は文化祭の準備で、自分ですることもほとんどなかった。  
どうせしばらく眠れそうにないし、ちょっと始末しておくのも……  
 しかし、俺の秘蔵コレクションはここにない。オカズなしでやるって  
のも味気ない……  
 そのときふっと、ハルヒの白い足が脳裏をよぎった。部室から出てく  
るときに、ちらっと視界に映った。月光に照らされた肌が妙になまめか  
しく、慌てて視線をそらしたことを思いだした。  
 やはり今の自分はどうにかしているらしい。  
「……まあ、あいつも一応女だしな」  
 そうつぶやいて、俺はトイレを出た。  
 
     二  
 
 開けっ放しになっていた部室の扉をくぐり、ハルヒの方を見る。  
 シーツの上で、左肩を下に、横向きになって寝息を立てていた。スカ  
ートから伸びる太股が白い。膝を軽く曲げていて、下着が見えるか見え  
ないか絶妙なところだ。  
 ちょっとだけ寝ているところを見てから、と思っていたが、ハルヒの  
寝姿を見た俺の足は勝手に前に進んでいた。  
 慎重に足音を殺して近づく。シーツの前で上履きを脱ぎ、ハルヒの後  
ろ五十センチぐらいまで近づいた。膝を落とし、ハルヒの上に屈みこむ。  
 すー、すー、という静かな寝息が聞こえた。上から見える横顔は、恐  
ろしく整っている。頬にかかる乱れた黒い髪が、妙な艶かしさを感じさ  
せた。  
 若干のやましさを覚えながら、恐る恐るハルヒのスカートをめくって  
みた。たぶんこのぐらいでは起きないだろう。ハルヒもこの数日、ろく  
に寝ないで働いていたのだ。今は精根つきて爆睡中というわけだ。  
 スカートがたくし上げられて、目に入ったのは飾り気のない白い下着  
だった。薄い素材なのか、少し肌色が透けている。重ねられた白い太股  
が目にまぶしい。  
 普段の唯我独尊ぶりからは想像もできない、無防備な寝姿だった。こ  
うして見ると、ごく普通の女の子にしか見えない。  
 そう意識すると、急に我慢ができなくなった。  
「ハルヒー……? 寝てるよな? 起きるなら今のうちだぞ」  
 少し大きめの声で聞いてみた。寝息のリズムはまったく変わらない。  
 痺れたような思考のまま、寝ているハルヒの背中に張りつくように、  
自分も横に寝転がった。目の前十センチのところに、ハルヒの乱れた髪  
がある。いい匂いがした。  
 ズボンのチャックを下げ、トランクスからブツを取り出す。外気の解  
放感があった。  
 
 すぐそばにハルヒの下着があると思うと、どんどん硬くなっていくの  
がわかった。反り返ったそれが、下着に包まれたハルヒの股間に当たっ  
た。上等な生地らしく、竿にサラサラした感触があった。少し揺すって  
みると、むず痒いような快感が走った。  
 どうせ起きないだろうと半ば開きなおって、右手でハルヒの体を引き  
寄せた。ペニスがハルヒの太股に挟まれる形になり、むっちりした肉に  
包まれて、なんともいえない感触になった。素股の体勢だ。  
 ハルヒは相変わらず、静かな寝息を立てている。よほど疲れているら  
しい。  
 横向きなので前後運動はやり辛かったが、異常すぎる状況に、小刻み  
な動きでも十分な快感があった。筋肉の一つも感じられない柔らかい内  
股の間を、亀頭が割り開いていく。引き戻すときには、カリ首をやんわ  
りと圧迫する。サラサラした肌が心地よい。  
 何回も擦りつけていると、先走りがハルヒの下着を汚し始めた。ペニ  
スを挟む太股にも、粘液で濡れた白いすじがつく。摩擦でこもった熱が  
ペニスに移り、破裂しそうなほど膨張していた。太股から引き抜き、股  
間にぐにぐにと亀頭を押しつけると、薄い生地を通して、ぴっちり閉じ  
たハルヒの秘部の感触が感じられた。  
 横になったまま、右手をハルヒの胸にやる。  
 くたっと折り重なっていたハルヒの両腕を上にあげて、制服の上から  
ゆっくりと膨らみに手をやった。制服の下に少し硬いブラの感触があり、  
さらにその下の弾力が返ってくる。こうしてみると、ハルヒの胸は意外  
と大きかった。右手を少しはみ出すぐらいはある。  
 制服の中に手を入れると、肌は汗で少し湿っていた。へその上から撫  
でるようにして、上にのぼっていく。  
 胸の下の薄い肋骨を指に感じたあと、ブラにぶつかった。ブラの下に  
指をもぐりこませると、なんとも言えない柔らかい感触があった。乳首  
を探り当てたかったが、さすがにブラを外すわけにもいかない。  
 指を戻し、ブラの上から右胸をゆっくりと揉みしだく。やはり大きい。  
着痩せするタイプなのだろうか。  
 右手を制服から抜き取り、ハルヒの腰にやった。下着に指を引っかけ、  
ぎりぎり股間がむき出しになるぐらいにおろした。下着はくしゃっと丸  
まって、太股に絡みつくただの布切れになる。  
 ペニスを一度抜き取り、露になった股間と、太股に挟まれた空間に突  
き入れた。  
 まず感じたのは熱さだった。直接触れるハルヒの肉が、カリや亀頭と  
擦れていく。暴発寸前の快感を耐えながら、竿の部分でハルヒの感触を  
味わった。  
 しばらくそうしていると、明らかに滑りがよくなってきた。ぬちゃ、  
にちゃ、と静かな部室に粘着質の音が響く。  
「んっ……!」  
 寝ているはずのハルヒから、小さな声がこぼれた。  
 一気に血の気が引いた。  
 思考が急速に覚めていく。  
 部室は痛いぐらいに静まり返っていた。  
 いつからハルヒの寝息が聞こえなくなったのか……  
 十秒ぐらいの沈黙のあと、恐る恐る、声をかけた。  
「ハルヒ?」  
 返事はない。  
「ハルヒ? 起きてるのか?」  
 ハルヒは答えない。  
 耳を澄ませていると、すー、すー、という寝息の音だけが、耳に戻っ  
てきた。  
「寝言……か?」  
 夢の中で感じていたのかもしれない。  
 しかし、さすがに調子に乗りすぎたと思った。  
 さっさと終わらせようと、再び前後に擦り始めると、  
「……ぅ……く……」  
 ハルヒのかすかな喘ぎ声が聞こえた。  
 
 少し体を起こすと、ハルヒの右手がぎゅっと自分の左腕を握りしめて  
いるのが見えた。寝息は乱れ、股間の肉をえぐられるたびに、熱い息を  
吐き出していた。  
 こいつは起きてる。  
 ぼんやりとした頭で考えながら、今度は腰の動きは止めなかった。  
 制服の下に手を潜りこませ、ブラを強引にたくし上げる。あふれた右  
胸を揉みしだきながら、硬くなった乳首を人指し指と中指でこりこりと  
転がした。  
「ゃ……んっ!」  
 聞いたことのないような甘い声だった。ぴりぴりと脳髄のあたりを痺  
れさせる、劣情を誘う声だ。  
 腰の動きももう容赦はなくなっていた。溢れ出た愛液で結合部はぐちゃ  
ぐちゃに乱れていた。挿入されてはいないが、もはやどこまでが自分で、  
どこまでがハルヒなのかもわからなかった。ただ快感だけがあった。  
 前後するたびにペニスがハルヒの秘部をえぐり、竿が擦られる。漏れ  
聞こえるハルヒの声を聞きながら、その体をむさぼった。  
 腰を叩きつけるうちに、上下に重なって、ハルヒにのしかかるような  
姿勢になっていた。腰に当たるむっちりした尻の肉と、両側から挟み込  
む太股の感触が、ペニスを限界に近づけていく。汗があごを伝い、ぽと  
ぽとと落ちた。  
 左腕をハルヒの下にまわし、ぎゅっと抱きしめる。  
 ハルヒのうなじに顔をうずめ、首を舐めあげた。汗の味がした。右手  
に埋もれた柔らかい胸の感触を感じながら、ひときわ強く腰を突き入れ  
た。  
「やぁっ!」  
 腕の中のハルヒの体が、びくりと痙攣した。太股がぎゅっとペニスを  
挟む。ハルヒの右手が、ぎゅっとシーツを握りしめるのが見えた。  
 強烈な締めつけに、こちらも限界を越えた。  
 何かが腰を駆け上がり、脳髄に白いスパークが走った。焼けつくよう  
な快感の中、ドクッ、ドクッと、音まで聞こえそうな脈動を感じながら、  
ハルヒの股間に精液を放出していた。亀頭は半ばハルヒの肉に埋もれて、  
ビュルビュルと精液を放つ間も、唇でくわえられているような感覚があっ  
た。その圧迫感に絞り出されるように、いつまでも射精の快感は続いた。  
 終わったあとも、腕の中にハルヒの体を感じながら、しばらく余韻に  
じっとしていた。  
 
     三  
 
 重なっていたハルヒの体から、ゆっくり力が抜けていくのがわかった。  
 そのまま下手くそな寝息を立て始めたので、俺もとりあえず後始末を  
することにした。  
 ティッシュで軽くぬぐい、両腕でハルヒを持ち上げて俺のシーツに移  
した。汚れたシーツはトイレで洗った。  
 終わったころには、俺も疲労でくたくただった。汗だくの体が気持ち  
悪かったが、ハルヒの横に転がり、あっと言う間に眠りについた。  
 翌日。  
 ハルヒはいつも通りにいつも通りのハルヒだった。どうやら、あれは  
無かった事にするつもりらしい。  
 今夜も泊まり込みだって仁王立ちで言われたけどな。  
 
(終)  
 

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