その日は新月に近いような、細い細い三日月がよく見える夜だった  
急にまた、借りた本に挟まっていたしおりに導かれて俺は自転車を押して公園にやって来ていた  
肌を撫ぜる涼しげな風に虫の音も聞こえてくる、もう秋なのか……  
「少し遅くなった。待ったか?」  
俺は呼び出してくれた本人にそう聞いた  
「呼び出したのはこちら。私が待つのは当然」  
無表情の長門が、そう静かに返した  
 
「で、今日はどんな用だ?」  
「あなたに頼みがある」  
頼み? 長門が俺にか  
長門がこくりとうなずくのだから、二重に驚きだ  
俺なんかが頼まれることなんか、長門は普通にこなせそうなもんだが  
「わかった。俺は何をすればいい?」  
「そこで私のことを見てくれていればいい」  
……なんのこっちゃ?  
と思った瞬間、俺の心臓が飛び出るかと思った  
ていうか、もう口から勢い良く飛び出したかもしれない  
 
何せ、長門が俺の目の前で一枚一枚服を脱いで……俗に言うストリップを始めちまったんだからな  
「ま、待て長門っ! いきなり何をして―――!」  
「あなたは黙って見てて」  
そう凄んで言われると、俺は急に勢いを失う  
いや、ごく一部分はもの凄い勢いがついているんですけど  
おぼろげな月明かりの下、長門の白い肌が映える  
その儚げな美しさは、まるで芸術作品のようだが……これに匹敵するものを俺は知らない  
長門は何も恥じることなく、制服を脱ぎ、靴と靴下を脱ぎ……と、順々に脱いでいく  
下着も躊躇うことなく、肩口や足からするりと脱ぎ捨てる  
 
一糸纏わぬ、生まれたままの姿の長門がそこに立っていた  
薄いヘアーもわずかな膨らみとそこの突起物も、総てその目で確認することが出来る  
どこも手で隠そうとしない、実に堂々としていて逆に恥ずかしがっている俺が惨めに思えてくる程だ  
 
男子高生の俺としては非常に嬉しい光景だが、夜の公園という場所はまずい  
誰か他の人間が来たらどうする気だ、俺も長門も通報されて補導か逮捕されるぞ  
「大丈夫。あなた以外、ここには来れないようにしておいた」  
……ああ、そんなことも出来るんだよな  
なら、安心か……って違うだろ! 俺!!  
俺が打開策も思いつかず目のやり場に困っていると、その上長門はぶつぶつと何かを言い始めた  
「Santa Luna,Santa Stella,fammi crescere questa mammella.(サンタ・ルナ、サンタ・ステラ、ファミ・クレセレ・クエスタ・マムッメラ)」  
おい長門、どうしたというんだ  
いい加減服を着てくれ、どこの国の言葉だそれは  
現在俺の脳内では目のやり場には困ってるんだが、目を瞑るのも勿体無いって混乱し始めてる  
そして、下半身は正直にその勢いを衰えず硬直を維持し続けてる  
このままだと理性が吹き飛びかねん、目の保養を通り越して目の毒なんだ……わかってくれ……  
しかし長門は相変わらず無表情で、俺の事を見て………………ないな  
少し上目遣いで、俺じゃない……空を見上げている気がする  
 
 ……先程の言葉を9回繰り返すと、そこで止めてまた服を着始めた  
 ちょっと惜しい気もしたが……いやいや何を言ってる、俺  
 ようやく下半身の勢いも衰えだし、クールダウンしてきたんだ  
 あっ、こら、思い出してんじゃない俺  
 
……で、長門は結局何がしたかったんだ?  
「ナポリの風習。女性が胸を大きくするのに、月の豊饒の力を引き寄せる」  
どこから得た知識だ、それは  
あれか、昨日だか一昨日だかに読んでいた分厚い本か?  
えーと、題名は……『月世界大全』だったかな  
「その為には月光の下で衣服を総て脱ぎ、呪文を9回唱える必要がある」  
全身に月の光を浴びる為だけ全部に脱ぐっていうのか、どうかしてるぞナポリ市民  
ぶつぶつ言ってたのは呪文だったのか、あれ  
 「―――意味は、『聖なる月よ、聖なる星よ、私の胸を大きくしておくれ』」  
 そりゃまたそのまんまだな、ていうか仮にも聖なるって付けてるお月様やお星様にそんなこと頼むなよ  
 「胸の成長は月が大きくなるのと歩調を合わせるそう。だから、次の満月には少なくとも涼宮ハルヒと同じぐらいにはなれるはず」  
 そうなのか? そんなにうまくいくもんなのか?  
 「実験では90%の確率で成功している。大丈夫、きっとうまくいく」  
 ……まぁ長門がそう言うなら、そうなんだろう  
 にしても、俺がここに呼び出された意味がわからんのだが  
 「あなたは証人。今現在の私の胸の大きさと状態をしっかりを視認。そして、それが確実に大きくなっていくのを、日々……服の上からでもいい、確認してほしい」  
 そ、そうだったのか  
 って、俺である必然性が全く感じられないのだが  
 あ、そこで横目にそらすなコラ  
……うーん、まぁ……何というか……その、えらい自信があるんだな?  
 「…………」  
 すまん、俺が悪かった  
わかったから、もうそんなにらまんでくれ  
 「そう」  
 それだけ言って、長門は何事も無かったようにさっさと帰路についてしまった  
 ふぅ、まったくやれやれだ……  
 ……そういえば長門は、どうして胸を大きくしたかったんだろうか?  
 本人にその理由も真意も聞けぬまま、俺はしばらく月と長門の顔を見るたびに悶々とし、眠れぬ夜を過ごすこととなったのだった  
 
 
 「……で、その……どうなったんだ?」  
 あれから半月ばかり経ち、確か今夜は満月のはず  
ようやく落ち着いてきた話せるようになった俺が長門にそう聞くと、ほんのわずかだけ表情が揺らいだ  
 「……何の変化も見られない。おかしい」  
 ああ、つまり成功しない10%に含まれたってことか  
 嬉しいような悲しいような、ちょっと複雑な気分だ  
まぁ巨乳の長門も見てみたかったが、今のサイズでも充分イイと思うぞ  
 というか、その身体は初めからそういう規格でそれ以上のサイズにはならないんじゃないか?  
 もしかしたら、ナポリでやってこそ意味があるのかもしれんしな  
 「うかつ」  
 長門はそれだけ言って、さっさと足を速めて先に行ってしまった  
 ……で、結局何が長門をそうさせたんだろうか  
 まぁ、それを改めて聞いたら俺は間違いなく変態だ……  
 気を取り直して、俺もSOS団部室に向かうことにする  
 そろそろ巨乳でメイド服を着た朝比奈さんの、美味しいお茶の準備が整った頃だ  
 見目麗しゅう光景に、いつも・・・特に谷間とかについ目がいってしまうのは当然のことかもしれん  
 俺は軽い足取りで、部室へと足を進めるのだった  
 

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