ここは、とあるマンションの一室。その部屋は、がらんとしていてまったく飾り気がありません。部
屋の真ん中に、はだかの炬燵机がひとつあるだけ。
それでも、この部屋の主はこの部屋が好きでした。
その主というのは、ひとことで言えば、宇宙人の女の子です。
宇宙人で、しかもロボットみたいな人です。人間特有の、感情、というものがよく理解できません。
だから、我が家が一番落ち着く、という、他の人がたまに言うそんな感覚は、よくわかりませんでし
た。
でも、自分には帰るところがあるというその確かな事実が、幾分かの安心をもたらしているのもま
た事実です。もっとも、安心という概念も彼女はよくわかっていないのですが。
さて、そんなマンションの部屋に、宇宙人さんは人間の男の子を連れてきました。
男の子は、自分が連れてこられた理由がよくわからないようです。
「なあ長門、なんで俺、呼ばれたんだ? まあイヤじゃないが……」
さっきから、何度もこう質問しています。しかし、対する宇宙人さんは、答えようとしませんでした。
男の子は、答えてくれない宇宙人さんにちょっと呆れ、そのままごろんと横になってしまいました。
そんな彼の様子をみた宇宙人さん、やっと口を開きました。
「今、どんな気分?」
「ん? ああ……。……ヒマ、だな」
すると、宇宙人さんは、こういいました。
「私も、暇だったから……」
そう言って、彼に並んで横になりました。
そのままふたりは、
「なあながとー。ひまなんだけどもー」
「そう」
そんなやりとりを、会話の内容とは裏腹に居心地のよさそうなふにゃふにゃした声で繰り返しながら、
ごろごろと日曜日を丸一日つぶしたのでした。