「おはよう、鈴木」
俺はいつもの様に隣りの席の鈴木に声を掛けた。
「おはよう、榊君。相も変わらずの美声ですなぁ」
鈴木はいつもの様に明るく挨拶を返してくれたが、
その美声の下りは何とかしてくれ。
「また朝一から眼鏡をずらす様な事を…」
褒められるのは嫌ではないが多少恥ずかしいんだ。
「本当に、素敵だよ。」
鈴木は一拍置いてそう答えた、なんだか顔が少し赤く見えるんだが?
「なぁ、鈴木?」
「なに、榊君?」
俺は鈴木に聞いた。
「風邪引いたのか?顔が赤いぞ」
「はぁ?」
「ほら、谷口とか風邪引いてる様だし」
今回の風邪菌は強力だと思いつつ、マスクをしている谷口に指を向ける。
「い、いや、風邪では無いと思うんだけど」
鈴木は素頓狂な声をあげる。
ふむ、自覚症状は無しか。これが一番危ないんだ。
「後で熱が出ても遅いぞ、頭だしてみろ」
手のひらを鈴木の額に付け、熱を計って見る。
「ふむ、熱は無い様だ。…だがさっきより顔が赤い、微熱かもしれん」
「…榊君のせいだよ」
鈴木は更に顔を赤くしてそう呟いた。
はて、俺に移されたと言う事か?
「俺はここ一週間風邪を引いてはいないぞ」
「…もういいよ」
鈴木は少し目を潤ませていた。
…そうか、苦しいんだな。
しかし授業は休みたくない、と言う事か?
偉いぞ、鈴木。
「辛くなったら言ってくれ、いつでも付き合うぞ…保健室に」
鈴木は顔を机に伏せた。
「…ねぇ榊君、わざと言ってる?」
どういう事だ?
「他意は無いつもりだが」
「…ありがとう、心配してくれて」
前の席では由良と植松が肩を揺らしていた