体育倉庫に閉じ込められてどれくらい経っただろう。  
同じく体育倉庫の掃除当番だった後藤と葉山は戻ってくる気配がない。  
掃除終了の報告はまだ済んでないんだが、おそらく報告はされちまったんだろう。  
何せ鍵をかけた張本人だからな。  
2学期になってカップルになりやがったからなぁ、これからどっちかの家でテスト勉強だろう。何の科目かは知らないがな。  
 
さて、閉じ込められているのは俺だけじゃないぞ。  
なんとハルヒも一緒だ。  
そもそも俺は掃除当番じゃなかったんだが、ハルヒと一緒の掃除を谷口が嫌がったから変わってやったらこれだ。  
まぁ、後藤たちに当てつけられる横でハルヒと一緒に掃除なぞ、あいつならできんだろうしな。  
恋愛は精神病の一種というハルヒのことだ。ずっと不機嫌でいると思ったんだろう。  
実際はいつもと変わりなく、若干楽しそうなハルヒだったけどな。  
 
閉じ込められたのがわかったのは後藤と葉山がいなくなったのに気づいてからだった。  
オレとハルヒはなぜかリレーのバトンでちゃんばらごっこの最中だったからな。  
呆れて帰ったのかもしれない。  
ついでに、襲い掛かってきたのはハルヒなのでオレは悪くない。  
 
ハルヒは最初はこんな経験めったにないわ!と言って大いに喜んでいたが、五分で飽きたらしい。  
マットに寝っ転がったり、跳び箱の中に入ったりして遊んでいたハルヒは年齢以上に子供っぽくて新鮮だったが。  
オレはというと壁によりかかってそんなハルヒを半ばあきれの入った視線でずっと見ていただけだ。  
一緒になって遊ぼうかなんて思いもつかないね。ちゃんばらで疲れていたしな。  
 
ハルヒは今はマットにちょこんと体育座りしておとなしいもんだ。  
だが、時々オレの顔をチラチラと見るのは何かの合図なのか?  
何の合図かまったくわからないけどな。  
 
 
「キョン、あんたそのままじっとしてて」  
しばらく後、おとなしく黙っていたハルヒが立ち上がりながらオレに近づいてきた。  
「何をする気だ?」  
「そこの窓から誰か呼ぶのよ」  
そこまでしなくてもそのうち運動部の連中の助けがくるだろうよ。  
その時にいらぬ誤解をうけそうだが、掃除中に鍵を閉められたと正直に言えば誰だって納得するさ。  
「…キョン、忘れたの?今週はテスト週間でしょ?」  
ハルヒに言われ思い出す。テスト週間は部活は休みだったな。  
…ということは、ここに用がある生徒というのはいないということか?  
「そうよ。相変わらず色々と鈍いわね、まったく…」  
色々とはなんだ。  
呆れ顔でヤレヤレとか言いながらハルヒはオレの肩に足を…って、オイ!  
「何をする気だ!」  
「いちいちうるさいわね。だからあんたを踏み台にしてそこの窓から助けを呼ぶのよ」  
いや、それはわかる。たぶんハルヒがやろうとしているのは肩車だろう。  
肩車ってのは普通オレの後ろから乗らないか?  
オレは今、倉庫の壁に背中を預けてくつろぎ中だ。  
「よい、しょっと。ほら、キョン立ちなさい」  
 
……………  
こいつはわかっていてやっているのだろうか?  
オレの両肩に足をかけ、そのまま立ちなさい?  
眼前に何があるかわかっているのか!?  
太ももの感触だけでもヤバイってのに、鼻先にあるのはブルマ姿のハルヒの股間だぞ!?  
「とっとと立て、バカキョン!ここに閉じ込められたままだと明日のテストは0点なのよ!」  
オレの顔は今まさに四面楚歌な状況にある。  
前にハルヒの股間、左右にふともも、後ろは壁。  
「おいハルヒ、肩車ってのは後ろから乗るもんなんだぞ」  
なんて冷静なツッコミを入れられるような余裕は全くない。  
ただ余計なことを考えないようにハルヒの言われたとおりに立ち上がる。  
「う、うわっ!」  
普通の肩車と違うからバランスが取り辛く、ハルヒの体が後ろに流れる。  
咄嗟に抑えようと伸ばした手は……ハルヒの尻を掴んでいた。  
「キョン……あとで罰金ね。いいからそのまま押さえてちゃんと立って」  
四面楚歌状況、さらに悪化!  
感触としてはこれ以上ないパラダイス!  
違うところはもう既に直立不動!これを知られたらゲームオーバー!  
岡部と谷口が仲睦まじく絡み合ってる姿を想像してなんとか対抗してみたが、いかんせん生のハルヒには敵わない。  
結局、足も違うところも直立不動してしまった。  
「…うーん、誰もいないわねー。誰かー!いませんかー!!」  
ハルヒが声を張り上げるたびに体がモゾモゾと動く。  
っていうか、いつまでこのままなんだよ!  
そろそろ理性がレッドゾーンに突入しかけてきた。  
マズイ、マズイぞ。このままでは体育倉庫で初体験とか変なAVの王道ストーリーまっしぐらだ。  
「なぁ、ハルヒ、そろそろ降りてく………」  
声をかけようと上を向いたのがまずかった。  
ハルヒのヤツは窓枠にがっしりしがみ付いている。  
おかげでオレの位置からはその、体操服の中が丸見えだ…  
肌色のブラか、頂点に赤い点のワンポイントか、変わったブラしてんだなぁ…  
そう思ったところまでは覚えてる。  
そして気が付いた時は体育倉庫は開いていて、なぜか足を引きずって歩いているハルヒと下校して、この話は終わりだ。  
あの後に一体何があったのか?唯一知っているであろうハルヒは頑として口を割らなかったけどな。  
そういえば、なぜか体がすごくスッキリしていたな。  
 
 
Fin?  
 

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