ハルヒの終了宣言とともに今日もSOS団は解散した。
だが、俺は文芸部室に忘れ物をしたため、黄昏の夕焼けの校舎のなか急ぎ足で歩いていた。
やれやれ・・・
封印したはずの口癖が自然にもれてしまう。こんなのはカウントにはいらないよな?
そう思いながら、部室の戸をあけ電気をつける。
・・・なにやってんだ?
そこにはメイド服を着込み、短い髪を一生懸命ポニーテールにしようとするハルヒがいた。
・・・しばらくの間、永遠とも思われる沈黙が続く。
その沈黙を破ったのはハルヒだった。
「・・・ねぇキョン。キスしていい?」
そうハルヒがたずねたとき、それははるか遠い夜のかなたから響いてくるように思われた。
遠い記憶を反芻させると、どうやら体育の授業の後の着替えのときに女子たちがそういう話をしていたような。ハルヒはそんなことは気にしてなさそうだったが、こいつは人一倍ロマンチストだもんな。
今でも、白馬に乗ったジョン=スミスが現れるのを心待ちにしてるんだろうよ。
まぁ、そんなものは現れないが・・・
ひとりそんな風に感慨に浸っていると
・・・
白い顔が近づいて来た。軽くにおう、ほどけた髪が、俺の額にさわった。
白い広いまぶたと黒いまつ毛におおわれた閉じた目が俺の目のすぐ前にあった。
遠慮がちなくちびるが俺の口に触れたとき、はげしい身ぶるいが俺のからだの上を走った。
俺は瞬間的にふるえてたじろいだが、ハルヒは俺の頭を両手でつかまえ、自分の顔を俺の顔に押しつけ
俺のくちびるを放さなかった。
俺は、ハルヒの口が燃えるのを、また俺の口をおしつけながら俺のいのちを飲みほそうとでもするように、むさぼり吸うのを感じた。
「っぷはぁ。・・・キョンの唇奪っちゃった。・・・みくるちゃんでも有希でもなく。この私が。
私がキョンの所有者なんだから」
そう叫ぶと、ハルヒは俺を押し倒し、飽きるまでのその精を貪りつくした。