今日も律儀にSOS団巣窟、もとい文芸部部室へ向かう俺。ちなみにハルヒは  
掃除当番だ。わずかな時間だが、ハルヒのいない平穏な時間を朝比奈さんのあ  
たたかいお茶ですごすとしよう。  
コンコン  
部室のどあをノックする。・・・おや?反応がない。  
「おお、長門だけか。」  
「・・・・・・」  
部屋に入ると、そこには無表情の宇宙人が無言でうなづいた。  
「朝比奈さんは?まだ来ていないのか?」  
古泉もいないが、あいつの居所なんてどうでもいいね。俺は早く朝比奈さんの  
笑顔がみたいんだ。  
「・・・朝比奈みくるは体調が悪いといって12分前に下校した。」  
「そうなのか。」  
朝比奈さんが早退?ううむ、SOS団の活動なんてほっといていますぐ看病に  
行きたいね。しかし黙って行くとあの団長様がどんな反応するかわからん。う  
ーん困った。  
「・・・」  
「・・・」  
俺が頭の中で葛藤しているうち部屋は沈黙に包まれる。でも長門とだとまったく  
苦にならない。沈黙が苦にならない仲間ってのはいいもんだ。  
居心地のいい沈黙につつまれているうち、俺はうたたねをはじめてしまった。  
 
 
俺の眠りを覚ましたのはハルヒの馬鹿でかい声だった。  
「こんのエロキョン!起きろぉ!!!」  
「んあっ?!」  
なんだなんだ?なんで俺はたたき起こされたんだ。それにエロキョン?わけ  
わからんぞ。  
「ハルヒ。いつきたんだ?」  
俺が顔を上げると、そこには眉をピクピクとつりあげ、あきらかに怒気のオーラ  
をまとったハルヒがいた。ふと向かいを見ると、古泉もいる。  
「たった今よ!それよりあんた、夢の中で有希にエロいことしてんじゃないわよ!」  
なんのこった?古泉はいつものにやけ顔が少し困った顔になり、肩をすくめる。  
「あ〜もう、今日はみくるちゃんもいないし、こんなエロキョンほっといて  
帰るわ!解散!」  
ハルヒはそういうと、ズカズカと部室を出て行ってしまった。まだ状況がのみこめんぞ。  
 
「まったくあなたにも困ったものですね。またバイトが増えます。」  
おまえのバイトのことより、状況を説明してくれ。  
「いいでしょう。あなたは寝言を言ったんですよ。」  
寝言だあ?  
「そう。はっきりと。『長門、メガネかけてない方がやっぱりかわいいぞ』とね。」  
!?  
「涼宮さんは、その寝言で長門さんがメガネをかけなくなった理由を理解したん  
でしょう。しかしそこへいくいきさつまではわからない。そのイライラが  
さっきの顛末につながるわけです。」  
俺は長門のほうを向いた。おやっ、長門が目をそらしたぞ。どういうことだ?  
「それでは僕も帰ります。バイトがあるやもしれませんので。あなたは涼宮さんを  
なんとかしてください。世界のためです。」  
古泉も部室を出て行った。どうしよう。  
 
 
再び沈黙。しかしさっきまでの居心地のよさはない。  
「あー、長門。俺は本当にあんな寝言いったのか?」  
「・・・言った。」  
「そ・・・そうか、なんかわからんがすまなかったな。」  
「・・・そう。」  
俺はそそくさと部室をでようと席を立ち上がると、  
「・・・どんな夢?」  
は?  
長門のセリフにフリーズした。  
「・・・あなたが見た夢。」  
長門が俺をじっと見る。目の奥が輝いているように見えるのは気のせいか。  
ひょっとしてなにか期待してるのか?  
「知りたいのか?」  
「・・・知りたい。」  
「・・・どうしても?」  
「・・・どうしても。」  
長門は引き下がらない。こんな長門も珍しい。  
「誰にも言わないなら。」  
「・・・分かった。」  
俺は寝言のことは覚えていないが、夢の内容はほぼ覚えていた。  
「俺と長門で図書館に行った夢を見たのさ。」  
「・・・・・・そう」  
あれ?目の輝きが少しくすんだぞ。期待はずれだったか?  
「それも、長門が俺を図書館に誘ったんだ。」  
「・・・えっ?」  
長門が目をパチクリとする。俺はさらに続ける。  
「しかも長門は私服だった。前図書館に行ったときはメガネで制服だったろ?  
メガネなしで私服の長門との図書館なんてはじめてだし、とてもかわいかった  
から、思わず寝言にでたのかもな。」  
言ってて恥ずかしいぞ。長門は目を丸くしている。驚いているのか?わずかだが  
頬が赤いぞ。  
 
「ま・・・、まあそんなとこだ。ハルヒのことは気にすんな。俺がなんとかする。」  
俺はそういって、今度こそ部室を出ようとした。しかし、  
「待って。」  
長門に止められた。なんだ?  
「わたし・・・」  
長門はそこまで言って息を呑んだ。そして  
「・・・わたしは、あなたの見た夢を正夢にしたい。」  
長門ははっきりと、そう言った。  
 
終わり  
 

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