元はといえばハルヒの罰ゲームが原因なのだ。古泉が持ってきた人生ゲームを団員全員でやることになったまでは良かった。俺は高校生ながら堅実な性格で有名なので就職はもちろんサラリーマン、ギャンブルゾーンも華麗にスルーし、妻一人子一人マンション暮らしの、絵に描いたような中流家庭生活を満喫していた。しかしそこでゴッホの罠だ。ナニをトチ狂ったのか数十万ドルの絵を即金で買った俺の人生はそこから完全に変な方向に動き出し、最終的には開拓暮らし、所持金六万となっていた。心の底まで人生の苦さを思い知らされた形だ。その俺に追い討ちをかけるように罰ゲームの存在が知らされる。その内容は『鶴屋邸のお掃除お手伝い』。どうやら蔵の中の古いものやらなんやらを整理するというので、お手伝いさんを探しているということだった。意外とマトモな罰だったので直ぐに了承した俺は、その次の休みに鶴屋さん宅へ行き、蔵の掃除を手伝っていた。 
 
「この箱はなんですかねえ」 
 
「開けてみていいよっ。どうせたいしたもんは入ってないからねっ!」 
 
せいぜい百万単位だよっ、という言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだと思い直してその箱を開ける。それなりにちゃんとした箱で、大きさからすれば人がちょうどすっぽり入ってしまうくらいか。高さもそれなりにある。木製で、要所要所に鉄も使われているので耐久性も高そうだ。 
 
「鍵が付いてますね………あ、でも簡単に外れる」 
 
かちり、という音と共に箱を開けると、中には相当昔のものらしい装丁の本がびっしりと入っていた。 
 
「なんでしょうこれ」 
 
「あー、それは枕草子だねっ。こりゃまた古いのが出てきたもんだっ」 
 
「まくらのそうし………っていうと清少納言の?………えらいもんじゃないですかコレ!」 
 
驚く俺を見てからから笑う鶴屋さん。何か間違えたんだろうか。 
 
「ちがうちがう、まくらそうし。要するに春画だねっ。今ならエロ本にょろっ」 
 
「ああ、そういう事ですか………で、これも運び出すんですか?」 
 
「そうだねっ、こんなの十把一絡げだからさっ。ちょちょっと運び出しちゃおうかなっ」 
 
「コレが終わればひと段落ですしね」 
 
そう言って作業に取り掛かる。結構な量があったが、梱包と運び出しは業者に任せてあるそうなので、俺たちは家に置いておかなくてもよさそうなものを廊下に運び出すだけでいい。聞いた話によると、運び出した先で更に専門家による選別作業が待っており、価値のあるものはしかるべき所へ寄贈するなり売るなりするそうだ。二人とも作業に専念したお陰でそれなりにスムーズに進み、二時間ぶりの休憩と相成った。 
 
「………ふう。結構きれいになりましたね、ここ」 
 
「キョンくんが手伝いに来てくれたお陰さっ!お礼にさっきの一冊もってくかなっ?」 
 
「いえいいですから」 
 
「あはは〜、遠慮することないっさ!」 
 
そう言ってふざけて俺を押してくる鶴屋さん。疲れているせいで少しよろけるがすぐに持ち直して………と思ったら、足にさっきのデカイ箱がひっかかった。そのまま倒れこんでしまいそうになる。 
 
「うわわっ」 
 
「わわっ、キョンくん危ないよっ!」 
 
鶴屋さんが支えようとしてくれるが、いかんせん体重差がある。勢いの付いた体を支え切れず、そのまま二人して倒れこんだ。その瞬間、ガチャン、という音と共に視界が暗くなる。 
 
「いてて………一体何が………」 
 
「ははっ、閉じ込められちゃったみたいだねっ」 
 
頭上から聞こえる声。箱のスキマから僅かに入る光で照らされているのは、俺の上に仰向けに乗っている鶴屋さんの姿だった。ちょうど親子のカメの逆みたいな感じで。 
 
「うわっ、すいません!すぐに出ましょう!」 
 
そう言って箱を開けようと手を伸ばすが、どれだけ押しても開かない。 
 
「なんかコレ、閉じると勝手に鍵がかかる仕組みみたいだねっ。当然内側からは開けられないっさ!」 
 
「………………それって」 
 
「あたしたちじゃどうしようもない、ってことかなっ!あははっ!」 
 
笑い事じゃないっす鶴屋さん。 
 
 
 
鶴屋さんといっしょっ! 
 
 
 
 
「あははっ、キョンくん、ちょっとくすぐったいっかなっ………」 
 
「うう………すみません………」 
 
何とか触れる部分を少なくしようともがいてはみるが、なんせ元々の広さがないワケで、今以上に体を離すことは出来そうにない。腕やら足やら腰やら大変なところやらから伝わってくる女性的な柔らかさが脳髄をとろかしてくる。なんとかこの状況を打開できないものかッ………! 
 
「ひゃわっ!なっ、なんか硬いものがお尻に当たってるんだけどっ」 
 
「ええと………想像にお任せします………」 
 
「………バールのようなもの………?」 
 
そこまでのサイズは無かったかと………ではなくて。このままでは色々とマズいことになってしまう。特に腰の辺りが。という訳でせめてそこだけでも触れないように……… 
 
「ちょっと動きますっ………」 
 
「えっ、ちょっとっ、無理しない方がいいんじゃないかなっ」 
 
頭上から掛けられる助言を意識的に無視して腰を動かしていく。当然俺と鶴屋さんでは体格が違うわけで、我が暴れん坊は鶴屋さんの柔らかなお尻の谷間にすっぽりと顔を埋めていた。動くたびに与えられる微妙な擦れに、さすがにこちらとしても我慢が出来なくなってきている。せめて触れる部分を小さくしないと………。 
 
「すみません、ちょっと足開いてください」 
 
「ううっ、まさかキョンくんにそんなこと言われるとは思わなかったよっ………」 
 
「別にやらしい意味じゃないですから………ちょっと持ち上げますよ………!」 
 
「うきゃあっ!わき、わきに指がっ!」 
 
「我慢してくださいっ………!よっ、と………」 
 
鶴屋さんの両脇に手を入れて持ち上げ、鶴屋さんの体を俺の頭の方向へ動かした。これで少しは危険な部位の接触が無くなる筈だ。ちょうど鶴屋さんの足と足の間に俺の聞かん坊が来るように調節した。今日のポジションがセンターで本当に良かった。もしレフトやらライトだった場合はどうしたらよかったか想像もつかない。 
 
「ふう………、これでちょっとは良くなったんじゃないですかね」 
 
「うん………そうかもしれない、かなっ」 
 
何故に疑問系なのか………まあそれは置いておいて、コレでもう少しの時間は耐えられそうだ。倉庫の中とは言っても鶴屋さんの自宅である。ここの掃除をすることは家の人に言ってあるそうだし、いくらおてんば真っ盛りとはいっても良家のお嬢様がいつまでたっても帰ってこないなら、誰かを探しに寄越すだろう。………良家のお嬢様。未だに目の前のすちゃらかな人がそんな家の出であるとは信じがたいのだが、こんなでかい蔵があるところを見せられては納得せざるを得ない。お嬢様と言ったらもっとこう文系的というか、木陰でゆっくり読書みたいなイメージがあるのだが、この人がそんな事していたらドッキリか何かだと思ってしまうかもしれない。………お嬢様、か。 
 
「んっ?もしかしてあたしのこと?」 
 
う、図らずも声に出てしまっていたらしい。最近こういううっかりが多くなっている気がする。俺までドジッ子属性を身に着けても意味が無いというのに。 
 
「あたしはそんな事思ってないんだけどねっ、やっぱこんだけバカでっかい家に住んでるとそう思われちゃうかなっ。………キョンくんはどう思うにょろ?」 
 
「え………?そうですね、初めて知ったときは意外だな、とは思いましたけど」 
 
しかし思いのほかストンと納得できたような気もする。奔放な性格とは別に、人を包み込むような度量の大きさ、一歩引いて眺めていられる大人の余裕。その辺は家のスケールと合っていると言える。 
 
「でもきっと、家が大きくてもそうじゃなくても、鶴屋さんは鶴屋さんだったと思いますよ」 
 
「あははっ、褒め言葉だと思っとくよっ」 
 
「ええ、そうしてください」 
 
少し会話を挟めた事で精神的に余裕も出た気がする。あと二、三時間は保つかな………。身動きが取れないし時計も持っていないので正確な時間は分からないが、脳内時計を信じるとすれば今は夜中の七時位だろう。靴は玄関に置きっぱなしだし、高確率で探し当ててもらえると思うが………そこまで考えて思考が凍りついた。今の状態をここの家の人に見られたとしたら、それってもしかしなくても大惨事じゃないのか………!?鶴屋さんは気にしないでいてくれるようだが、言っても俺は一介の高校生に過ぎないわけで、そのどこの馬の骨とも知れない輩がこの家の娘に後ろから抱きついている(ように見える)この体勢。下手すると………ジャパニーズハラキリ? 
 
「あっ、あのっ、鶴屋さん?」 
 
「なにかなっ?」 
 
「その………後で俺たちが見つかったときの、おうちの方へのフォローをお願いしたいんですが………」 
 
情けない話だが、それしか道はないし。家の中で黒ヒゲにほっかむりをした男に出合って『ドロボウじゃないです』と言われても誰も信じないだろう? 
 
「それは大丈夫っ。鶴屋家の掟に『男性に抱かれたらその男性を夫にすること』ってのがあるからさっ」 
 
「あわわわわ、それ大丈夫じゃないですって!しかも多分、抱かれるの意味を履き違えてますから!」 
 
その言葉を聞いて鶴屋さんがにやりと笑う。いやはっきりと見たわけではないがそんな気配がにょろっと。 
 
「じゃあどういう意味なのかな〜っ?お姉さんにそっと教えてほしいにょろっ!」 
 
「セクハラで訴えますよ鶴屋先輩」 
 
「あははっ、冗談だよっ!この年で前科持ちは勘弁かなっ!」 
 
この場で言っていい冗談と悪い冗談があると思うのですが………。場を和ませるためのハイソなジョークだったと思って置こう。この分だと掟の存在すら怪しいな………。思わずため息が出てしまう。 
 
「はあっ………」 
 
「ひゃっ!キョンくん、耳、耳っ!」 
 
「うわっ、すみませんっ!」 
 
どうやら吐いた息が耳に当たってしまったらしい。人によってはクリティカルなダメージを与えられる部位だが………どうやら鶴屋さんはその類に属するみたいだ。一息で耳がもう真っ赤に染まっている………と、そこで今更ながら気がついた。この体勢、顔が、すごく近い。それはその筈、さっき俺は鶴屋さんを体ごと俺の頭の方向に動かしたのだ。そりゃあそうなるに決まっている。どうして今まで平気でいられたのか、自分の鈍感さに驚かされる。 
 
「………………………」 
 
「………………………」 
 
なんとなく黙り込んでしまった。今まで平気で喋りあっていた分、沈黙がすごく痛い。 
 
(ええっと………さっきまで何喋ってたんだっけ………?) 
 
それすら思い出せず、会話の糸口が見つからない。こうなるともうドツボだ。気まずい空白の時間が続く。元々この体勢になったときから、なんとなく『喋らなくなったら終わりだ』と感じていたのだが、今が正にその時だと言える。なんとかきっかけを掴めないものか………こういう時に女性の扱いに不得手だと困るな………。 
 
「………………………」 
 
「………………………」 
 
「………ずるいなっ、キョンくんはっ」 
 
「………えっ?」 
 
ずるい、と言われたのだろうか。どの事に対して?男の癖にろくに間を保たせられないことか、それともこの体勢そのものについてか。そう言われてもどうしようもないのも確かで………と言い訳を考えているのもずるいと言えなくもないか。 
 
「キョンくんはあたしの顔が見えるのに、あたしからは見えないよっ」 
 
そういう事で『ずるい』だったのか。確かに、俺たちは同じ方向を向いて重なり合っているとはいえ、下にいる俺からは、目を少し横に逸らすだけで鶴屋さんの横顔がはっきりと………とは行かないまでもそれなりに確認できる。逆に鶴屋さんは顔を動かさないと見えない。常に見えているのと、見ようとしないと見えないのとでは大きな違いがあるだろう。 
 
「………あたしの顔、今、どうなってるかなっ?」 
 
「………それって言わなくちゃダメですか」 
 
「ダメにょろ」 
 
「………………ええと」 
 
「………………………」 
 
「………真っ赤、ですね」 
 
「………………う〜!ものごっつ恥ずかしいんだねっ!」 
 
「いてててて!つねらないでくださいって!」 
 
仕返しなのだろうか、太ももの辺りを何度もつねられる。だがこの程度で気が済むなら我慢をっ………! 
 
「女の子を恥ずかしい目にあわせたからには、キョンくんにもめがっさ恥ずかしい目に遭ってもらわないと割が合わないんじゃないかなっ!」 
 
全然気が済んでない―――――――――! 
 
「キョンくんは目で辱めてくれたからねっ!あたしはこっちを使わせてもらうよっ!」 
 
「こっちってどれ………ってうわ、ちょっと、鶴屋さん、それは………」 
 
鶴屋さんの手が俺の体を撫で始めた。仕返し目的と言う割には柔らかなタッチ。上半身は体勢的に手が届かないので、腰のあたりから太ももに掛けて、重点的に掌が滑っていく。 
 
「なんか手つきがいやらしいんですが………」 
 
「そうなるようにやってるからねっ。恥ずかしくないと意味がないっしょ?」 
 
「ひどいっ………!」 
 
口を動かしながらも手の動きは止まらない。さすが隠れたオールラウンドプレイヤーだけあって、撫で方もどこかこなれた印象だ。掌は腰骨から尻の横にまで這っていく。宣言どおり、滑らかで流れるようなその動きはどこかいやらしい。 
 
「ちなみに処女だよっ!勘違いしてもらったら困るからねっ!」 
 
「聞いてないですっ!」 
 
「あれっ?嬉しくないかなっ?」 
 
「ぐっ………!」 
 
そりゃあ嬉しいか嬉しくないかと聞かれたら嬉しいのだが。それを聞く鶴屋さんがこれまた嬉しそうに聞くものだからタチが悪い。なでりなでりと手が動く。 
 
「うーん、さすがキョンくん、めっさいいお尻してるねっ!きゅってしてるよ、きゅって!」 
 
「うう、鶴屋さん、そろそろハズカシ度合いのバランスも取れたかと思うのですが………」 
 
これ以上愛撫が続くと腰にぶら下げたシャイボーイが―――いまはぶら下がってはいないのだが―――悲鳴を上げてしまう。ジーンズを履いてきてしまったことがこんな所で災いするとは………。 
 
「ダメだねっ!倍倍返しが鶴屋家の掟だからっ!覚悟するんだよっキョンくんっ!」 
 
「お慈悲っ!」 
 
雄雄しく言い放った鶴屋さんの右手は、今度は鶴屋さんの股の下に潜って………ってさすがにそれは! 
 
「なにやってんですかっ!それは洒落にならないですよっ!」 
 
「どうせ掟にしたがって結婚する運命なんだねっ!遅くても早くても一緒じゃないかなっ!」 
 
「あれは冗談だって言ってたでしょうがっ!」 
 
「聞こえないにょろ〜っ」 
 
俺の正論は右から左へ聞き流し、鶴屋さんの股の下あたり………つまり俺の危ない部分の上でごそごそする鶴屋さんの掌。この体勢になってからこっち常にいきり立っていたナニに微妙なタッチが加えられる。さすがに恐る恐ると言った感じだが、じきにそれも無くなり、形を確認するように上下に動き始めた。 
 
「おおっ、これがバールのようなものっ………?」 
 
「その例えはもういいですから………くぅっ………!」 
 
すりすりと何度も擦られた後、手がそこから離れた。満足してくれたのだろうかと思い安心するのも束の間、こんどは指の爪先で何かを探すように、かりかりと引っかくような動きをしてくる。一体ナニを……… 
 
「おっ、あったかなっ?ほいさっ!」 
 
そう言って手を下に動かす………と同時に聞こえる『ジジジジジ………』という音、そして心なしか余裕の出来た下半身の一部………これは……… 
 
「もしかして………第一の扉を開けました?」 
 
「あとは舞台の幕を開けるだけだねっ!………人によってはモノにカバーが付いてる場合もあるみたいだけど、あたしは気にしないよっ!」 
 
「かっ、カバーなんてないですよ失礼な!」 
 
………臨戦態勢のときは、だが。哀しいかな平均的日本男児な自分である。男としての悲しみにくれている間にも、鶴屋さんの手は器用にもトランクスの端を掴み、今にもズリ下ろさんとしている。これ以上やると戻れなくなる予感がビンビンする。 
 
「この手触りは………ユニクロだねっ!」 
 
「何者ですかあなたは………あっ、ちょっと、下げないで下げないでっ!」 
 
「時既に遅しだねっ!大人しくお姉さんにいただかれるがいいんじゃないかなっ!」 
 
必死の制止も届かず、その手があらゆる防壁を突破して内部に侵入をしてきた。この狭い空間の中で蒸れていたそれと、体温の低い鶴屋さんの掌の温度の差が強烈な刺激となって襲い来る。さすがの鶴屋さんもホンモノと相対するのは初めてのようで、その形を確認するために何度も手を上下させるのだが、それがもう絶妙の強さで脳にびびっと。 
 
「つっ………!鶴屋、さんっ!止める気は少しくらいありませんかっ!」 
 
「無いねっ!ここまできたらノンストップ鶴屋さんだよっ!………でわっお外へお連れいたしますにょろ〜」 
 
社会の窓の隙間からそのブツを出そうと根元を握って、砲身の角度を変えてくる………のだが、いかんせん隙間が少ない、なかなかうまくいかない。しかしそんなことは気にせずぐいぐいと動かしてくる麗しの先輩。正直とんでもない痛みが。 
 
「折れる!折れますって!もうちょっとこう優しく………!」 
 
「骨は入ってないって聞いたから大丈夫じゃないかなっ?」 
 
「本当に折れる人もいるんですから!」 
 
「壊れたら直せばいいって偉い人も言ってるよっ」 
 
助けて―――! 
 
「これで準備は万全だねっ!」 
 
「酷いですよほんと………」 
 
横顔は真っ赤になっているくせにまだ続ける気なのだろうか。今この瞬間に誰かが俺たちを見つけてしまったらどうなるのか………想像するだけでも背筋が凍る。俺がこの後の展開に恐れおののいている間、何故か鶴屋さんは少しも動かなかった。また何かあるのだろうか………。 
 
「ねえキョンくんっ、この後はどうすればいいのかなっ」 
 
………………………ここまでやっといてそりゃ無いでしょう。どうやら生娘である鶴屋さんはここからの行為に関しての知識の持ち合わせが無いようだ。 
 
「できればしまっていただけるとありがたいかと」 
 
「それは無理だねっ!上級生として恥ずかしいところは見せられないかなっ!………適当に触ってツボを探してみるにょろっ」 
 
そう言い放って手を動かし始める。と言っても鶴屋さんの太ももと太ももの間からこんにちはしている俺のナニである、自由自在に触るには体勢に無理がある………というか。こっちから見ると鶴屋さんが自分の股間の辺りに手を入れてもそもそしているようにしか見えない。これは………。 
 
「鶴屋さん、その格好、なんかやらしいですよ………」 
 
「ううっ、それはいいっこなしなんだねっ!………キョンくんは言葉責めが好きなのかなっ?」 
 
「勝手に性癖を設定しないでください………」 
 
軽口を叩きながらも鶴屋さんの試行錯誤は続く。まずは細かい部分の探索を行うようだ………ってなんで自分が陵辱されているところの実況などせねばならんのかっ………!ひんやりした右手の指先が先端をこしょこしょと擦ってくる。 
 
「お願いだから爪は立てないでくださいね………ううっ!」 
 
「おっ?この窪みの辺りがいいのかなっ?うりうり」 
 
態勢的に仕方ないとはいえ最初に見つけるツボが尿道とはッ………!そこはせめて中盤やら後半あたりに残しておいて欲しかったっ!もちろんそこを責めることがどの程度の破壊力をもたらすかなんて事は知らない鶴屋さんは、少しの遠慮もなく、くりくりとその窪みを刺激し続ける。 
 
「うあっ………鶴屋さん、そこちょっとまずいです………」 
 
「ありゃっ?痛くしちゃったかなっ?」 
 
「いえ、そうではなく………逆で」 
 
「………あははっ、嬉しいこと言ってくれるねっ。いいよっ、じゃあここは後にとっておこうかなっ」 
 
言って今度はカリの部分に指を掛ける。というかこの体勢だと敏感な部分ばかり触られるハメになるんじゃないだろうか。上からしか触れないんだし………。 
 
「なんか出っ張りがあるねっ!変な形にょろ」 
 
「そこもまたビンカンですからっ………、できれば優しくお願いしますっ………」 
 
「あははっ、息が荒くなってるよっ。そんな声出されたら止められないねっ」 
 
どうやら逆効果だったようで、カリの下の部分に人差し指と薬指を強く擦り合わせてくる。他人に触られたことの無い部分に、未知の刺激が与えられて、体が無意識にぶるりと震えた。器用なのも考えようで、最初のうちは戸惑うような手つきだったのが徐々に自然な動きに変わってきた。 
 
「ううっ、は、あっ………!」 
 
「う〜ん、ちょっと湿り気が足りないっかなっ?」 
 
弄っていた右手がそこから離れる、と、鶴屋さんの口から何か妙な音が……… 
 
「ちゅっ………れろっ、うんっ、これくらいでいいかなっ」 
 
「………も、もしかして今、指舐めてませんでしたか?」 
 
「ビンゴだねっ!これでちょっとはやりやすくなるんじゃないかなっ!ほらほらっ」 
 
この人は何て事をするのかっ!俺のナニを弄繰り回していた指を口に含むなんて、そんな事されたらさらにいきり立ってしまう。 
 
「あはは、なんだか興奮してきちゃったよっ!キモチいいかなっ?」 
 
「恥ずかしいこと聞かないでくださいよっ………!触ってれば分かるでしょうに………」 
 
「恥じらう声もいい感じだねっ!じゃあ他の事も試してみるにょろっ」 
 
今度は両方の掌を使って、全体を挟み込むようにして上下させてくる。今度は比較的マイルドな刺激………とはいってもこちらもまだ未経験者であって他人から与えられる刺激には全く慣れておらず、このままでは非常にマズいんではなかろうかっ………!この状態でなんとか逆襲するにはどうしたらいいのか………と考えて、もう道は一つしかない、と結論付けた。 
 
「………あなたが悪いんですからね、鶴屋さんっ!」 
 
「えっ?なにか言ったかなっ………わきゃああっ!」 
 
視界の隅でゆらゆらと揺れていた膨らみを鷲掴みにした。常に守っていては勝ちはない、攻撃は最大の防御とも言う。俺に残されたのはこの方法しかないのだっ………!まあ何が勝ちなのかは分からないが、とにかくやらねばならないのだ。どうすれば鶴屋さんにダメージを与えられるのかは初心者ゆえに分からないが、とにかくなんとかしようとこねくり回す。 
 
「きょっ、キョンくんっ!さすがにコレは犯罪じゃないのかなっ!」 
 
「俺のナニを握りながら言う台詞じゃないと思いますが………あむ」 
 
「ふひゃあぁぁぁっ………みっ、耳はダメだよっ!」 
 
「感じすぎちゃいますか?」 
 
「ううっ、年下にやり込められるとは鶴屋さん一生の不覚にょろっ………!」 
 
ふにふにと指先を動かす。朝比奈さんの影に隠れて普段は目立つことも少ないが、このボリューム感といったらどうだ、なんというわがままなおっぱいであることかっ!今になってテクニックがどうとか考えていてもどうしようもないので、とりあえず適当に左右違った動きで刺激を与える。 
 
「あっ、ひゃんっ!キョンくんっ、もうちょっと手加減してほしいっかなっ………」 
 
「そのお願いは聞けませんね。ここまで来たら引けませんっ!」 
 
そう宣言して胸から一旦手を離す。鶴屋さんが戸惑ったような顔をするが、ここで安心してもらっても困る。心のなかでごめんなさいと呟きながら、服の中に手を突っ込んだ。 
 
「ううっ………キョンくんが獣になっちゃったよっ………」 
 
「俺のナニを擦りながら言う台詞ではないと思いますよ………っと」 
 
ちょっとキツそうだったが構わずブラをたくし上げる。これでやっとイーブンの状況だ。さっきからの愛撫………いや、なんかこの言い方は状況に会わない気がするが、とにかく俺の手の動きによってとがった先端を摘む。こりこりというかぷるぷるというか、とにかくずっと触っていたくなるような感触だ。 
 
「本当に硬くなるんですねえ………」 
 
「そんなところで感心されてもっ!あふっ、うんっ………」 
 
俺の指先の動きに合わせて反応が返ってくるのが素直に嬉しい。指先で摘むのを一旦やめ、掌で包み込むように胸全体を覆った。先端は指と指の間に挟み捏ね回すと、お返しとばかりに掌で怒張を擦り上げられる。あちらも引く気は無いようだ。狭い空間の中には二人分の汗の臭いが充満して、危うく酔ってしまいそうになる。………いや、もう酔っているのかもしれない。汗の臭いがこんなに甘く感じられるなんて、きっと普通の精神状態じゃないんだろう。もっとその香りを味わいたくて、思い切り鼻から息を吸い込んだ。 
 
「きょっ、キョンくん?一体何をしてるのかなっ?」 
 
「鶴屋さんの匂いを嗅いでいます」 
 
「獣から変態さんにジョブチェンジしてるっ!」 
 
「失礼な………そんなこと言うともっとやりますよ」 
 
こうなったらとことん変態になってやろう、ということで鼻先を鶴屋さんの髪に押し付けて思いっきり息を吸い込む。シャンプーだろうか、花のような香りと共に、少しだけ感じられる汗のにおいが鼻腔をこれでもかというくらい蹂躙していく。それだけでは治まらず、目の前に広がる髪に舌を這わせた。 
 
「ふあああぁっ………本当に変態さんっぽいよっキョンくんっ!」 
 
何か言われている気もするが耳に入らない。掌に広がる柔らかさを捏ね回しながら舌を動かしていく。何度も繰り返しているうちに地肌が現れたが、構わず舐めあげると、俺の上で鶴屋さんがびくりと跳ねた。気にせずに唇で髪を食む。痛んでしまわないように、優しく優しく。 
 
「はあっ、きょ、キョンくんは長い髪が好きなのかなっ?」 
 
「特に好きという訳ではないですけど………鶴屋さんの髪は好きですよ」 
 
きれいだし、いい匂いがするし。胸にやっていた右手を引き抜いて頭をなでた。思ったとおり手触りもいい。そりゃあ舌触りも良かったんだからそうだろうけど。 
 
「………ふ〜ん、そうかそうかっ。じゃあアレだねっ」 
 
「………?アレって何ですか?」 
 
舌を止めて尋ねる。妙に鶴屋さんが嬉しそうなのが気になる。さっきまでしおらしくなっていたというのに、まるでボス戦直前に自分がチェーンソーを持っていることに気が付いたかのような。 
 
「トドメは髪できまりにょろっ!」 
 
「トドメって何ですか………ってうわっ、急にっ、激しっ………!」 
 
挟み込むようにしていた両手の、今度は左手だけでカリのあたりを勢いよく刺激してくる。どうやら本当にラストスパートに入ったようだ………が、さっきの言い草だとまだ何かあるようなっ。俺が刺激に流されそうになる意識をフル回転させて考えをまとめていると、急に鶴屋さんの動きが止まった。というかまるでナニを固定しているかのような………。 
 
「それはねっ、こ・う・い・う・こ・と・さっ!ほいさっ!」 
 
そう言うと鶴屋さんは、左手で固定していたナニの先、尿道に、細い髪の束を押し込んできた。 
 
「うっ、うあああああっ!鶴屋さん、ちょっとそれイタイイタイイタイ!」 
 
「そんなこと言っても体は正直さっ!さっきよりも固くなってるよっ!」 
 
この人さっきよりも生き生きしてるっ………!やはり攻められるよりは攻める方が性にあっているのだろうか、僅かに見える横顔も、紅潮しながらも目が輝いている。が、本当はそんなことを確認しているヒマだって俺にはありはしないのだ。先端に入れただけでは飽き足らず、どんどん髪の束を中のほうに押し込んでくる。さっきから弄られっぱなしだったせいで出ていた我慢汁が潤滑駅の役割を果たして、内側に導いていく。 
 
「ぐああぁっ、ちょっ、やめっ………」 
 
「き・こ・え・な・い・にょろ〜。ほらぐりぐりぐり〜っ」 
 
内側から与えられる、本当の意味での未知なる刺激に、体中が反応を返す。まるで自分の体じゃないかのようにびくびくと痙攣して、それの刺激を受け取る脳みそももうとろけきってまともな働きをしていない。さっきまであれだけ胸を攻めていた左手も、もう刺激に耐えるだけで精一杯だ。 
 
「ねえキョンくん?」 
 
「はっ、あっ………。何ですか………?」 
 
息も絶え絶えに答える。今の俺にはマトモな思考力なんて残っていないかもしれないが。 
 
「あたしにこんなことされるのは、イヤかなっ?」 
 
「別に………イヤではないですよ………」 
 
「あははっ、そうかそうかっ。それなら遠慮なくいくよっ!」 
 
そう言って手の動きを再開させてくる。余計なこと言わなけりゃ良かったのかっ………?でもなんだか嬉しそうだったしまあいいか………ああ、もうそろそろ我慢が限界に………目の前が、白く……… 
 
「ねえ、キョンくんっ」 
 
「ううっ………何、ですか………」 
 
「こんなことになっちゃったから先に言っとくけどさっ」 
 
「………………はい」 
 
「………………………好きだよっ!」 
 
「………………え、ええっ?」 
 
「………………えいっ!」 
 
その言葉を聞いた瞬間、尿道から勢いよく引き抜かれる髪の感触で俺は、一気に高みまで上り詰めてしまったのだった。もう、全然意味がわからないです、鶴屋さん―――――――――。 
 
* 
 
「あははっ、いっぱい出したねキョンくんっ!髪がべたべただよっ!」 
 
「それは俺のせいじゃないですよ………」 
 
それよりもこれからのことが大切だ。この密室の中は行為の代償かと思わせるような青っぽい匂いで満たされている。よしんば匂いが取れたとしても、誰かがこの箱を開けてくれたとしてその瞬間に、この箱の中に散り散りにとんでいる白い粘性のブツに気づかないと言うことはあるまい。………それに、俺がイってしまう直前に聞いたあの言葉。アレはもしかしなくても……… 
 
「恥ずかしいねっ、あ〜ゆ〜のは性に合わないよっ」 
 
「じゃあどうして………」 
 
「ああいうのは後に言ってもなんか白々しいと思うんだねっ。だから言うならあそこしかなかったんさっ!」 
 
元気よくそう言ってくれるが、やっぱり恥ずかしそうだ。………俺は、どうなんだろうか。目の前のこの人を一体どう思っているのか。確かに頻繁に顔を合わせるわけでもない、それに学年も違う。しかし、ハルヒに罰ゲームを言い渡されたときに嬉しくなかったかといえば嘘になる。ハルヒの気安さともちがう、朝比奈さんの癒しでもなく、長門の強さでもない、この包み込まれるような感覚を俺は心地よく感じている。俺は……… 
 
 
 
 
「あっ、でもキョンくんには、はっきり言って選択の余地はないからねっ!」 
 
 
 
 
「………………………え?それってどういう意味………」 
 
「そのうちわかるさっ!………あ、ほら、外に誰か来たみたいだよっ!お〜い!誰か助けて欲しいな〜っ!」 
 
外に向かって大声を出す鶴屋さんを見ながら、俺はその言葉の意味を考えていた。………選択の余地が無い?そして気になるといえばもう一つ。いま思い出しても顔が熱くなるが、あの告白の前と後に言っていた言葉。 
 
 
 
―――こんなことになっちゃったから先に言っとくけどさっ――― 
 
 
―――ああいうのは後に言ってもなんか白々しいと思うんだねっ――― 
 
 
 
………その時は漠然と、行為の前後のことを言っているのかと思っていたが。何か大事な思い違いをしているような………そういえば俺は鶴屋さんから重要なことを聞いていなかったか………?てっきり冗談だと思って笑い飛ばしていたが、まさか………外では段々と足音が近付いてくる。そして箱の外側の鍵が開く音がして、光が入ってくる。眩しくて少し目を開けていられなかった。徐々に明るさにも慣れてきたところで、箱を開けた人と目が合った。多分お手伝いさんだろう、それなりにお年を召した女性が、俺と、その上にいる鶴屋さんを見て愕然としている。何か、何か言い訳を………そう思っていると、鶴屋さんが俺より先に口を開いた。これ以上元気な声は無いだろうというくらい元気で明るい声で。 
 
 
 
 
 
「お婿さんが決まったにょろっ!」  
 
 
 
 
 
鶴屋さんといっしょっ!/おわり 
   

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