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 ああもうっ、思い出しただけでもムカつく!  
 アスファルトを力いっぱい踏みしめて歩くあたしを見て通行人が何事かと振り返るけど、 そんなのどうでもいいくらいに腹が立っていた。  
 ムカつくのにキョンの間抜け顔がいつまでも頭から離れない。  
 売られていく子羊みたいな被害者面しちゃって、ちゃっかり足は自分で前に進めてたじゃないのよ。  
 あたしは近くの電柱をキョンに見立てるとそのアホ面めがけて思いっきり殴りつけた。  
 さすがに痛かったけど、少しだけ鬱憤が晴れる。  
 拳をさすりながら私は再び帰り道を歩き始めた。  
 それにしても朝倉涼子の入団を許したのは誤算だった。  
 人気者が入ればSOS団の認知度が知れ渡って、怪奇現象とか超常現象に関する情報も集まりやすくなって面白くなるかも、なんて考えたあたしが馬鹿だったわ。  
 朝倉が男狙いで来るなんて完全に裏をかかれたわね。  
あの女、キョンにベタベタ触ってやたらと視線絡ませて露骨に誘惑していやらしいったら ありゃしない。  
 今日だってキョンの隣に座るのを見越してスカートの丈をわざわざ上げてくるなんて、あざといにもほどがあるっての。  
 キョンもキョンよ。朝倉のされるがままになっちゃって、バッカじゃないの? 昆虫みたいにフラフラ生きてんじゃないわよ。  
 あんた、あたしはともかくみくるちゃんにだってあんな鼻の下伸ばしたことなかったじゃない、その差は何なわけ? 脚ばっかみてたけどあんた実は脚フェチだったってこと? あたしたちの一体何が不満なわけよ?  
 ・・・・・・ふん、ちょっとエキサイトしすぎね。思考が暴走してたわ。  
 これというのも全部キョンのせい。キョンがふがいないのが悪いのよ。正直もうちょっと骨のある奴かと見込んでたのに。  
 特にさっきの朝倉に連行されていく情けない姿は何なのよ。あんたまさか谷口みたいなのめざしてるわけ?  
 いつものニヒルにカッコつけようとして微妙に外してるくらいがあんたに丁度いいのよ。  
 どうせ今だってすっかり浮ついた調子で朝倉と腕組んで歩いてるに違いないわ。  
 朝倉の部屋で名目の勉強もそこそこにお茶とお菓子を頬張りながら世話話でもして、  
 駄弁ってる内に子供の頃の話になってベタな感じでアルバムを並んで見て、  
 写真を指差して盛り上がる内にだんだん二人の距離は縮まって、  
 ふと会話が戸切れると二人はお互いに見つめあって、  
 ここまでシミュレーションしてふと歩みが止まった。  
 ・・・・・・まさか、キョンに限ってそんな甲斐性なんてあるわけないじゃない。  
 振り返るとキョンと別れた交差点がギリギリ見通せた。  
 でも、ここで朝倉が目を閉じたりしたらどうかしら。  
 両親は居なくて、傍にベッドでもあれば羊だって狼に化けるかもしれない。そうしたらその先だって・・・。  
 あたしは妄想を振り払うように頭を振った。  
 盲点だったわ。普段が幼稚園児のままごとみたいだったから、すぐにリアルに連想できなかったじゃない。  
 SOS団はねぇ、健全な集まりなのよ。公序良俗に反する行為は許さないんだから。  
あたしは来た道を全速力で戻り始めた。  
 
 
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 途中コンビニに寄ったからちょっと時間を食っちまったが、朝倉が住んでいるマンションは歩いて数分の距離にあった。  
 何の偶然かは分からんが朝倉と長門と同じマンションの住人だったのか。  
 朝倉の家を訪問するのは初めてだが、俺は以前二回ほど長門宅を訪れたことがある。  
 いずれも人様にまともに話せない珍妙な経験をさせてもらった。じいさんになって認知症になったとしても墓場までもっていけそうなほど強烈に印象に残ってるぜ。  
 朝倉が玄関口の暗証ナンバーを押すと自動ドアが開く。  
 そう言えば長門はすでに帰宅してるんだろうか。休部の理由として学校が終わってすぐに家に帰らないといけなくなったと言っていたが。  
 エントランスホールを抜けて朝倉がエレベーターのボタンを押すと七階から降下してきた。  
 まさかそんなタイミングの良い話はないだろうが、もしここでエレベーターが開くと長門とばったり、なんてことになったら俺はなんて事情を説明したらいいんだろうね。  
 普段から覚めた感じの奴が本当に覚めるとどんな表情になるのか。想像するのも憚られる。  
 一人で戦慄を覚える俺を余所にポーンと軽い電子音を立ててドアが開く。  
 足を前に出そうとしたが、前の朝倉はどういうわけか動こうとしない。  
 
「朝倉。エレベーター来たぞ」  
 
 俺の呼びかけにも直立不動のままだ。不審に思って横顔を覗き込むと、なぜか目を細めて薄く笑う朝倉が居た。  
 
「・・・・・・まいったなぁ。相変わらず思ったとおりに動いてくれないんだから。困っちゃう」  
 
 クスクスと手を口元に当ててあくまでもかわいらしく、しかし不気味に嗤い出した。  
 一体何のことを言ってるんだ。マンションの入り口まで続いていた世話話とどこをどんな風に繋いでも整合性を見出せん。  
 事態はよく分からんが俺はこんな朝倉を知っている。痛いくらいに降り注ぐ西日、唐突に意味不明の言動を取り始めた朝倉。気がつけば『あの』日と共通点が多すぎた。  
 
「そんなトコに隠れてないで、出てきたら? 団長さん」  
 
 朝倉はそう言うと踵を返して入り口のガラス戸に向き直った。  
 俺達以外に人影はなかったはずだ。しかし、朝倉の呼びかけに反応するように入り口の傍に置かれた観葉植物の物陰がのそりと動いて、憮然としたハルヒが登場した。  
 
「どうして、わかったのよ。なかなか勘がするどいじゃない」  
 
 ハルヒの額には汗がうっすら浮かんでいた。こころなしか呼吸も乱れている。走って追いかけてきたというのか。  
 
「そんなに急いで、よっぽど大事な伝言でもあるのかしら」  
 
「あるわよ。団長として朝倉家での勉強会は認めないわ。密室で男女が二人きりって何それ。そんなとってつけたような甘ったるいシチュはそう簡単に作らせないわよ。私の目の黒い内はね!」  
 
 言葉の意味は良く分からんがとにかくすごい自信だってのはこういう時に使うんだろう。  
 人差し指を突きつける決めポーズもつつながく決まってハルヒペースかと思われたが、朝倉はそんなに甘くはなかった。  
 
「涼宮さんわざわざお膳立てしてくれるんだもん。我慢できなくなっちゃうな・・・」  
 
 朝倉はハルヒの言葉が耳に届いていなかったかのように、ぼそりとつぶやいた。  
 一気に剣呑な雰囲気へと沈み込む朝倉。さしものハルヒも気圧されている。  
 
「頑張ってるけど思うように成果が上がらないってことを経験したことないかしら」  
 
「唐突に何の話よ」  
 
「やり方が中途半端なのがだめだってことが薄々分かってるとしたら、一度極端なことをやってみて、何がどうなるか試したくならない?」  
 
「わけの分からないこと言ってごまかそうってわけ?」  
 
「でも上の人間は頭が堅くて方針を変えようとしないの。わたしもそんな都合の良い機会はそうそうないかな、なんて半分諦めかけてたけど、ひょんなことからキョン君と涼宮さんと私、三人だけになるシチュエーションが作られた。これはまたとないチャンスだと思わない?」  
 
「あんた頭おかしいんじゃないの」  
 
 暮れなずむエントランスホールに一単語すら噛み合わない朝倉とハルヒの会話が木霊する。  
 今のうちに逃げるべきだと主張する自分と、もうすでに遅いと言い聞かせてくる自分の折り合いがつかず、俺は立ち尽くすだけだった。  
 
「ふふふっ、おかしいかもね。でも、もう止まれそうにないの」  
 
 朝倉が最後だけ会話の歯車を合わせたのが合図のように、エントランスホールが灰色のコンクリートの空間に成り変わった。  
 
「目の前で好きな男子が他人に奪われるのってどんな気分かな。あなたに教えてあげるね」  
 
 朝倉はハルヒにそう言って怪しく微笑むと、俺の背後にから抱き込むようにして腕を回してきた。淫猥な手つきで俺の胸や腰をまさぐり始める。  
 意識ははっきりしてるし感覚もあるから麻痺しているような感じではない。しかし例によって俺の身体は全身紫外線硬化樹脂で固められたように硬直していた。一体何を始める気だ。  
 ハルヒも似たような状況らしく呪縛にかかったように動けないみたいだ。俺と違って首から上の自由があって口が利けるみたいだが。  
 
「なんなのよっ。もうっ!」  
 
 ハルヒは朝倉から目を背けると。力づく呪縛を振りほどこうと、歯を食いしばって力んだ。しかし、いくら力を入れても身体を震わすだけで徒労に終わる。  
 朝倉は乳首の縁をなぞる様に舐めてはチロチロと舌先で弾き、ときに強く吸い込んだ。  
 左右の乳首を交互に執拗に責められて快楽の虜にされる。  
 俺はしゃべれないくせに呼吸だけはどんどん荒くなっていった。  
 
「乳首ビンビンだね。ふふっ、切なそうな顔しちゃって。次はどこ触って欲しい?」  
 
 朝倉は乳首をピンと爪で弾くと、耳元で囁いてきた。  
 分かっているの言わせたい口ぶりだな。どこだっていい。どうせ俺には選択権なんぞないんだから。  
 ハルヒは・・・、どうしたんだお前、真っ赤に目を充血させて。まさか泣きそうになってるのか?  
 意識が一瞬クリアになったのも束の間、朝倉の手が股間に伸びてきた。  
 
「やっぱりココだよね。キョン君、乳首だけで随分感じちゃったんだ。ガチガチになってるよ。・・・嬉しい」  
 
 朝倉は淀みなくジッパーを下げると、俺の息子を取り出した。いや、息子が飛び出したと表現すべきか。  
 朝倉の言うとおり、俺の意思など解さずに痛いくらいに堅く勃起していた。涎を垂らすように我慢汁まで出してやがる。  
 ああ、俺の局部がハルヒに晒されてしまった。  
 こんな無様は初披露は実に遺憾だ。不思議と恥ずかしさよりも悔しさの方が勝っていた。  
 
「なっ!?」  
 
 ハルヒは一瞬目を見開いて驚くと慌てて目を逸らしたが、やはり気になるのか、顔を紅潮させてこちら、というか主に息子をチラ見しては視線を外すことを繰り返す。  
 
「キョン君のおちんちん、パンパンに張り詰めてるね。ちょっと苦しそう。すぐに楽にしてあげるから」  
 
 朝倉は再び俺の背後から今度は俺の息子を弄び始めた。  
 右手を竿に添えると絶妙のグリップとリズムとストロークでしごきはじめる。  
 
シュッシュッシュッシュッ  
 
 灰色のエントランスホールに俺の息子をしごく音だけが響く。  
 俺の息子がハルヒに向かって突き出される形となる羞恥プレイが始まると、ハルヒは食い入るように俺の息子を観察していた。  
 何開き直ってやがるんだ、ちょっとは恥らえ。  
 しかし、ハルヒが喉をごくりと鳴らしたことに気づくと、俺の興奮は急激に高まっていった。  
 やばいくらいに気持ちが良い。このシチュエーションはともかく、朝倉の柔らかい掌は麻薬のようにクセになる心地よさだった。沸騰直前の水のような勢いで射精感が競り上がってきた。  
 
「ふふっ、イキそうなの? じゃあラストスパートね。涼宮さんのとこまで飛ばせるかな?」  
 
 朝倉は無邪気な顔で楽しそうに笑った。面は見えんがどんな顔してやがるのか想像がつく。それだけで、ぞっとするね。  
 ハルヒとの距離は5メートル程ある。ギネス挑戦じゃあるまいしそんなに飛ぶか。  
 朝倉はここぞとばかりにリズムをモデラート(中くらいの速さ)からプレスト(急速に)まで一気に引き上げた。  
 止めとばかりに余った手で袋を弄ばれると、俺の欲望が身体の奥底から竿を駆け上がってくる  
 ダメだっ、出るっ!  
 かつてない快感と勢いを伴って飛び散った。  
 1センチも動いてないのに心臓が壊れたように鼓動を打ち鳴らしている。酸欠状態で射精の開放感に浸れるほど器用じゃない。もういっぱいいっぱいだ。倒れこみたいがそれすらもかなわない。  
 靄がかかったような視界にエントランスホール引かれた細い白線が写った。長さは1メートル弱ってとこか。快感の高さの証拠だった。  
 
「すご・・・・・・」  
 
 ハルヒの息を呑む音が聞こえた。確かにR指定で済む内容じゃないな。クラスメートの前で宇宙人に手コキされるなんてこれ以上マニアックなシチュエーションはそうそうないだろう  
 
「いっぱい出たね。そんなに気持ちよかったんだ? 涼宮さんもびっくりしてるわよ?」  
 
 朝倉は指に絡みついた粘性の高い白濁液を淫靡に舐め取る。そして、  
 
「せっかくだから見やすい角度から見せてあげるね」  
 
 と、ハルヒに告げると俺と朝倉を取り巻く空間が陽炎のように歪んで90度回転した。ハルヒから見て俺の息子の横顔が正面に来るポジションになる。  
 相変わらず何でもアリだな。  
 そんなことに気を取られていると、不意をつくように下半身を生暖かくてぬめっとした感覚が襲った。  
 
「ん・・・、んぅっ、ずちゅっ、ちゅぱ、ちゅるっ。ちゅるるるる」  
 
 視線を下方に移せば艶々の黒髪を振り乱して、俺の息子をくわえ込む朝倉の姿があった。  
 射精という使命を終えて軟体動物に戻りつつあった息子が再び身体に芯が通ったように姿勢を正して元気を取り戻す。  
 これがフェラチオってやつか・・・。口内の柔い肉感に包まれながら、亀頭にざらつく舌が絡みつくと眩暈のするような快感が駆け巡る。  
 圧倒的弱者である俺に絶対覇者の朝倉が跪き、一心不乱に髪を振り乱して息子を咥える様子を見てると変な嗜好に目覚めそうだ。ハマる奴の気持ちが分かる。  
 
「ちょっと! いい加減止めなさいよ! こんなの・・・、こんなのおかしいわよ」  
 
 ハルヒの声が急に弱々しくなる。  
 横目でに映るハルヒの表情は視界がギリギリ過ぎてよく分からない。泣いてるんだろうか。  
 朝倉は一旦息子から口を遠ざけると、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて嬉しそうに気色ばんだ。  
 
「ふふっ、いい傾向よ」  
 
 言いながら朝倉は亀頭に円を描く様に舌を這わせた。  
 
「キョン・・・・・・」  
 
 悲しそうに呟く声が微かに耳に届いた。無力さが憎い。  
 俺は胸が締め付けられるような感覚に襲われた。  
 朝倉はそんな俺とハルヒなどそっちのけでフェラチオを再開した。  
 
「んんっ、んっ、チュバッ、チュバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ!」  
 
 思い切り吸引しながら長いストロークで責め立てられると、尿道から魂を抜かれるような錯覚に陥った。射精直後なのでなんとか持っているものの、いきなりこれをやられたら30秒も我慢できんかもしれん。  
 
「チュッ、チュッ、チュババ、チュババっ、チュバババ!」  
 
 だめだ、精液が金玉から湧き上がってる、というか吸い上げられるっ。出るっ!  
 
「チュルっ、チュバッ、・・・・・・ふぅっ」  
 
 射精のタイミングを見極めたように朝倉は寸止めし、息子の根元を強く握ってきた。  
 
 身体がビクビクッと痙攣してイったような感覚は確かにあったのにもかかわらず、精液が出ていない。っ、なんだこれ。  
 
「ふふっ、ごめんね。そんな切なそうな表情しないで・・・」  
 
 また空間が歪んで朝倉と俺の姿勢が入れ替わった。  
 気づくと吹き抜けになったエントランスホールの高い天井が正面にあった。  
 床に寝かされた俺を朝倉が上から覗き込んでくる。  
 短いスカートからチラリと下着が覗いたが、朝倉は自らたくし上げてパンティを露にした。そして局部に指を当てて、  
 
「口なんかじゃなくてココでイかせてあげるから」  
 
 と、淫乱に微笑んだ。  
 たまらなく刺激的な光景だったが、俺は圧倒されて興奮の中にかすかな戦慄を覚えた。  
 朝倉のパンティは蜜でぐっしょり濡れていた、よく見るとあふれ出した愛液が股間から足を伝って数条の線を描いていた。  
 このまま最後までヤっちまうのか? ハルヒの前で。  
 視点が変わって横目でハルヒの様子がさっきよりもよく分かる。  
 
「・・・・・・うっ、ううっ・・・・・・」  
 
 ハルヒはさめざめと泣いていた。唇をギュッと噛み締めて。  
 ああ、とうとう俺はこいつを泣かせちまったんだな。無茶なことばかりするやつだが、 泣かせる真似だけはしたくなかったのにな。  
 朝倉は今となってはもうアンバランスとも言える清楚なレース入りの薄いブルーのパンティを脱ぎ捨てると、俺を跨いで局部を開いて見せた。  
 比べたことがないんで良くは分からんが、朝倉の局部には漆黒の森が比較的密度濃く生い茂っていた。そこから覗くピンクの洞穴は待ちきれないとばかりにヒクついている。  
 
「じゃあ、はじめましょうか。涼宮さん見える? キョン君のドーテー、もらっちゃうね」  
 
 朝倉が中腰になって天を突いて待ちわびる俺の息子を掴んだ。  
 
「ダメッ、ダメダメダメッ! キョン! あんたまさかわざと動けない振りしてるんじゃないでしょうねっ。もしそうだったら許さないわよ!」  
 
「朝倉っ! キョンから離れなさいよ!」  
 
「ふふっ、イヤ。いい加減諦めてよーく見ててね」  
 
 朝倉の蜜壷の入り口の俺の息子の先端が触れると、くちゅんと水音がした。  
 柔肉の感触が亀頭を通して伝わってくる。正直たまらん。この接触面積でこの心地よさなんだったら、全部入ったら一体どんな快感が待ってるんだろうか。  
 
「キョン君、いくね」  
 
 朝倉が腰を沈めてくる。  
 
「っ、キョンのっ、・・・・・・キョンのバカ――――――!」  
 
ドオォォォ―――ン  
 
 ハルヒの馬鹿でかい叫び音が灰色の空間の響き渡ると共鳴するかのように空間そのものが揺らぎ、その直後に壁の一角が崩壊して轟音が響き渡った。  
 砂埃の舞う中颯爽と登場したのは・・・・・・、ちらりと予想した通り長門だった。  
 刹那、長門の身体が目の追いつかない速度で跳ねる。  
 一足飛びで朝倉に接近すると、弾丸のように衝突して強烈無比な膝蹴りを叩きこんだ。  
 たまらず朝倉は吹き飛ばされるが、壁に衝突する直前で踏みとどまる。  
 
「そんな。空間閉鎖と情報封鎖は完璧だった。誰にも干渉できるはずがないのに」  
 
「小規模な空間歪曲が発生しそれに乗じて干渉した。涼宮ハルヒが無意識下で発生させたと推測される」  
 
 平たく言うとハルヒがきっかけを作ってくれた、ってことなのか。  
 ハルヒは・・・、床に伏して気絶していた。呪縛が解けたのか。  
 ハルヒを見て自分の身体が動くことにようやく気づいた。俺はいつしかのように長門の背後に回りこんだ。下半身から飛び出た息子を慌てて引っ込める。  
 ふと顔を上げると同じく視線を上げた長門と目が合った。あのぅ、長門さん俺の股間を見てる場合じゃないですよ。  
 無言の非難に長門は朝倉と向き直った。  
 
「バックアップのあなたがわたしに適うとでも思ってるの? 今のだって全力の攻撃でしょ?」  
 
「あなたの行為は目的の範囲内から大きく逸脱する。情報結合の解除を申請する」  
 
 あくまでも淡々と話を進める長戸に、朝倉はうんざりするような表情を作った。  
 
「自殺行為ね。お望み通り実力の違いを見せてあげる」  
 
 朝倉が身構えた瞬間に、朝倉を取り巻く空間が淡く光り始めた。何か仕掛けてくるのかと思ったが、違う。よく見ると朝倉自身が光の粒となって大気中に分解するかのように舞い散り始めていた。  
 朝倉は目を見開いて自分の身体を見回している。  
 
「保険。有事に備えてあなた自身に崩壊因子を潜り込ませておいた」  
 
「・・・・・・前にもこんなことがあったってことね。あーあ、あともう少しだってところまできたのに、残念。結局涼宮さんを追い詰めたのが逆に裏目にでちゃった。ふふっ、涼宮さんの勝ちね」  
 
 存在が消える直前にもかかわらず、朝倉は茶目っ気たっぷりな様子で自分の頭を小突いた。朝倉の身体は向こう側が透けて見えるくらいに薄くなっている。  
 朝倉は俺に視線を移すと、落ち着き払った様子で語りかけてきた。雰囲気はクラスで話す俺にちょっと好意があるかもしれないと感じさせる委員長の朝倉涼子に戻っていた。  
 
「キョン君、最後だから白状するね。仲良くしてる内にいつの間にか本当にあなたのこと好きになっちゃってたみたい。さっきわたしがすごく濡れてたの知ってるでしょ? 自分でもびっくりしちゃった。それだけ興奮してた証拠だよ」  
 
 朝倉が消える。こんなタイミングで告白するなんて反則だろう。  
 さっきまでのサディスティックなキャラから一転していきなり素直になられても、人生経験がおちょこよりも浅い俺にそれをすぐに受け止められるだけの度量はなかった。  
 無添加100%で真っ白の俺の頭は何か考えることはもちろん、衝動的に何か言うことすらも許してくれない。  
 俺にただ一つ許された行為は、朝倉の目を真正面から見つめることだけだった。  
 朝倉は最期の一瞬まで微笑んでいた。ハルヒが万人の心を奪うと評した癒しの笑みを浮かべて。  
 
「涼宮さんとお幸せに」  
 
 灰色の空間に舞い込んできた秋風に巻かれるように朝倉涼子の残滓が完全に消えた。  
 

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